二十面相の娘

二十面相の娘

怪盗・二十面相に救出された少女美甘千津子は、彼と共に美術品を盗む旅に出る。ところがある日、襲撃事故で二十面相は行方不明になってしまう。美甘千津子は彼に会いたいと、危険をおかして足跡をたどっていく。舞台を戦後日本のような架空の世界に設定。戦時中の科学実験ネタを絡めた推理マンガ。江戸川乱歩の『怪人二十面相』『少年探偵団』をモチーフにしている。関連作品として、二十面相一味の活躍を描いた『二十面相の娘 うつしよの夢』と作品の後日談『二十面相の娘 少女探偵団』がある。

正式名称
二十面相の娘
ふりがな
にじゅうめんそうのむすめ
作者
ジャンル
アクション
 
推理・ミステリー
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概要・あらすじ

叔父と叔母に引き取られて育てられている美甘千津子は、彼女が継いだ資産を狙って殺されそうになっていた。ある日彼女は怪盗・二十面相と出会い救出され、一味に加わることとなる。二年間彼と美術品を盗む稼業を行っていたが、列車襲撃事件に巻き込まれ、美甘千津子二十面相は離れ離れになってしまう。彼にどうしても会いたいと願う美甘千津子は、探偵や、大戦中因縁のあった者達が血眼で二十面相を探すなか、危険をおかして彼の足跡を追っていく。

すると二十面相が先の大戦で科学実験を行っていたことが判明。彼の実験を自分のものにしようとする者、彼に恨みを持っている者と対峙しながら、二十面相の目的を美甘千津子は知っていく。

登場人物・キャラクター

美甘 千津子 (みかも ちづこ)

名家美甘家の娘。父母亡き後に叔父夫婦に育てられる。叔父夫婦が資産を狙って彼女に毒を盛り続けていたことに気づき二十面相と共に逃亡する。二年間二十面相たちと楽しく暮らすものの、列車襲撃事件に巻き込まれてしまい、二十面相は行方不明に、美甘千津子は叔父が死んだ叔母の元に戻されてしまう。 小糸春華やトメと親睦を深めつつ、二十面相に再び会おうと考え続けていた彼女は、二十面相の一味であったケンたちと再会。二十面相の足跡を追っていく。次第に田宮清次のような二十面相への恨みを持つものや、柿島耕平のような、大戦時の感情を抱えている人間に出会うことで、問題の根の深さを知りはじめる。 突然二十面相のような瞳で行動することがあり、関係者を驚かせることが多々ある。二十面相と一緒にいた時サーカスで鍛えられた体術で、危機を切り抜けていく。

二十面相 (にじゅうめんそう)

紳士的な身なりをした男性で、美術品を盗んでいく怪盗。変装に長けており、本性は誰も知らない謎の人物。紅玉を盗みに行った時、美甘千津子と出会い、彼女をつれだして、ケンをはじめとした自分たちの仲間に加える。仲間には優しく接しており、慕われていた。特にケンと美甘千津子は実の子供のように大切にしていた。 イギリスで列車襲撃事件があった際、仲間はバラバラになり、二十面相の行方もわからなくなってしまう。田沼清次や柿島耕平のような人々に執拗に追われると同時に、彼を心から慕う美甘千津子やケンも二十面相を探し始める。大戦中は優秀な科学者として名を馳せており、彼はとある強力な研究を完成させていた。

ケン

二十面相に拾われ、一味になった色黒の青年。美甘千津子の先輩格で、彼女のことをとても大切にしている。虎に片目を潰されて以降、眼帯をつけるようになる。イギリスの列車襲撃事件でみなが散り散りになって以降、二十面相と美甘千津子を探していた。しかし、二十面相はいつまでたっても現れず、美甘千津子は日本に送還されてしまったため、二十面相に裏切られたと感じていた。 その後美甘千津子が二十面相をめぐる数々の事件に出くわす度に彼女のことを陰から見守り、手助けをする。

小糸 春華 (こいと しゅんか)

美甘千津子が通うことになった学校の創始者の孫。好奇心旺盛で、妄想力たくましい赤毛ショートカットの少女。小説を書くのが趣味の美甘千津子のクラスメイト。十六歳で結婚が決まっているため、遊べる時間は今しか無いと考えている。最初はクラス全体を牛耳って美甘千津子をいじめようとしていた。 美甘千津子が怪しげな事件に巻き込まれているのを知って、好奇心で飛び込んでいく。事件解決後、他の生徒が美甘千津子から離れていくのに対し、仲良くなりたいと近づき、親友になった。その後はトメと3人で少女探偵団を勝手に結成する。本作の後日談的作品『二十面相の娘 少女探偵団』では、強引に少女探偵団を導く、主要キャラになっている。

トメ

美甘千津子の世話係をしており、ずっと彼女を守ろうとし続けていた少女。美甘千津子が叔母に毒を盛られていたことを知ると、叔母を脅迫する形で、自分と美甘千津子が別の家に住むことを認めさせる。小糸春華とも仲良くなり、3人で「少女探偵団」を組まされることになる。最も美甘千津子と親しい存在であるため、千津子が命を狙われる前に、狙われることがある。 本作の後日談的作品『二十面相の娘 少女探偵団』では、勇猛果敢な主要キャラになっている。

明智 (あけち)

冷静沈着な、メガネの青年。優秀な私立探偵で、二十面相の正体を深いところまで突き止めている。白髪の魔人と二十面相が対峙した時、彼らに追いつこうとするも間に合わず、大戦時から二十面相問題は始まっていると考え、過去をさかのぼって調査を続けている。二十面相の正体よりもその目的に興味を持ち続けている。

空根 太作 (あきねだいさく)

でっぷりと太った私立探偵。美甘千津子と二十面相がイギリスで襲われた時に偶然乗っていたため、自分が二十面相を倒して美甘千津子を取り戻したとホラを吹く。とにかくお金にこだわる性格で、仕事をする時は打算的。大戦直後に生き別れてしまった妹を思い出してからは、良心的な探偵へと変わっていくものの、基本二十面相探しにおいては、ほとんど活躍ができていない。 少女たちには「たぬきの置物」と呼ばれている。

田宮 清次 (たみや せいじ)

黒髪で凛々しい姿をした、有名な映画俳優。普段は白髪の男性の姿をしている。正体は大戦中に二十面相と研究を行っていた女性科学者。何人もの生体実験を繰り返し、挙句の果て自分の体を実験材料として改造している。彼が自分を捨てていったと恨んでおり、二十面相に縁のある人間に手を出して彼をあぶりだそうとする。 美甘千津子の中に二十面相の心が忍び込んでいることに対し激しい嫉妬を感じており、なぜ自分がその役割ではないのかと二十面相に問い詰める。人の心の穴につけ入って操る催眠術が得意で、美甘千津子の周囲の人間を動かして追い詰め、美甘千津子の心の中に二十面相と自分を同居させ、苦しめた。

香山 望 (かやま のぞみ)

清波製薬の研究員で、人体実験で同僚の津矢高志の超人化させようとしていた。研究が中止された後、見殺しにできなくなり、実験を継続。資金集めのために犯罪を働く。二十面相の遺産の中にヒントがあると考えていた。津矢高志が死んだ後、二十面相の恩師・柿島耕平に目をつけ追い続け、ケンと知り合って二人で美甘千津子のピンチを救う。 自分自身にも人体実験を施しており、人並みはずれた怪力を発揮することができる。

津矢 高志 (つや たかし)

清波製薬の研究員。大戦末期に戦車も飛行機もなくなった時のための、人間を戦車の代わりにする実験の被実験体。人体実験で人間タンク化するも、研究は停止。香山望によって細々と実験は続けられて延命。

柿島 耕平 (かきしま こうへい)

長いひげにメガネをかけた、元帝大教授。二十面相は彼の教え子の一人。彼が研究者集団を作った時の立ち上げメンバーに二十面相を選んだ。二十面相は大戦時に軍の資金提供をとりつけ、大きな発明をしてきた。彼が新しい災厄を起こすためのコマとして利用されている、と美甘千津子に警告。 引導をわたし、実験を封印するため二十面相を追っている。実際は別の大きな目論見を持っている。

おかっぱの外人 (おかっぱのがいじん)

柿島耕平の運転手として共に行動している男。オカルト主義者。二十面相を追う手伝いをしている。

美甘夫人 (みかもふじん)

美甘千津子の叔母。美甘家の財産を狙って、美甘千津子を殺そうと、食事に毒を盛るなど様々な手段を講じ続ける。しかし次第に美甘千津子を守ろうとしている人々に、彼女の目論見がバレてしまう。

(とら)

鋭い鉤爪を持った盗賊。幾度も二十面相を襲っており、その際二十面相の仲間の一人であるケンの片目をつぶしている。イギリスでは列車襲撃事件を起こしたものの返り討ちにあい、二十面相もろとも自爆する。

船長 (せんちょう)

二十面相一味の一人で、ガタイのいいまとめ役的な存在。最初は美甘千津子が加わることに反対していたものの、彼女の境遇をすぐに理解。仲間に入れてからは彼女を娘のようにかわいがっていた。虎の列車襲撃事件で死亡。

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