宗像教授シリーズとは
本作は、星野之宣の代表作「宗像教授シリーズ」の一つで、前作『宗像教授異考録』の完結から、約13年ぶりとなる連載作品である。独自の考察・大胆な仮説で、とんでもなく飛躍しながら、もっともらしいストーリーが展開される点が最大の魅力で、SFやサスペンス、ミステリー、ホラーといった複数の要素が含まれている。民俗学者の宗像教授の活躍を描いた本シリーズは、スコラ「コミックバーガー」1990年20号、21号に掲載された『巨人(ダイダラ)伝説』が始まり。その後、掲載誌を変え『宗像教授伝奇考』(1995年~2000年、潮出版社)、『宗像教授異考録』(2004年~2010年、小学館)へと続く長期連載シリーズとなり、伝奇SFの傑作として人気を博した。その他、登場人物の一人、忌部神奈を主人公にした『神南火』(2001年~2004年、小学館) 、読切作品『スサノオ最後の戦い』(2013年、小学館)、番外編『クビライ ~世界帝国の完成~』(2003年、日本放送出版協会)といった関連作がある。また『宗像教授伝奇考』は、2000年、2003年、2007年に高橋英樹主演でテレビドラマ化され、TBS系列で放送された。
前作の主要人物の死
前作『宗像教授異考録』の最後で、ヨーロッパに旅立った宗像教授が、帰国するところから物語は始まる。講演を終えた宗像のもとにやってきた忌部捷一郎は、妹の神奈が昨年亡くなったという、衝撃的な事実を伝えた。神奈は『宗像教授異考録』に登場した女性歴史研究家で、『神南火』 では主人公を務めた主要人物。当初は宗像のライバルだったが、やがて宗像に想いを寄せるようになった女性である。英国でも一緒に活動していたが、自分への気持ちを察していた宗像は、神奈を諭して先に帰国させたのだ。宗像は、捷一郎とともに、神奈の研究を引き継ぎ、帰国後の彼女の最後の旅の意味を解き明かそうとする。なお、第1作『宗像教授伝奇考』から登場の捷一郎は、胡散(うさん)臭い歴史研究家だったが、本作では妹の死を経て、改心した様子が描かれている。
新登場のキャラクター
本作から登場するキャラクターとしては、「月刊ビッグヒストリー」という雑誌の編集長、芹沢とその部下、早乙女がいる。どちらも女性で、大学の先輩と後輩という間柄で、さらにプロレス同好会に在籍していた変わり種。また、芹沢は右目にアイパッチをした押しの強いキャラ、早乙女は大柄で力持ちというユニークなキャラである。第4話「斑の馬」で初登場し、宗像の研究室に押しかけ、九州の「古墳文化館」から講演依頼がきていることを伝えた。多忙な宗像は受ける気はなかったが、テーマが「装飾古墳」だと聞いて引き受けた。「装飾古墳」には亡くなった神奈とのちょっとした思い出があったのだ。こうして縁ができた芹沢と早乙女は、宗像への執筆依頼でしばしば姿を現すようになる。
登場人物・キャラクター
宗像 伝奇 (むなかた ただくす)
東亜文化大学に所属する民俗学教授の男性。専門は、古代の鉄器文化の発祥と日本への伝播(でんぱ)。大柄、スキンヘッド、口ひげが特徴の中年男性で、山高帽、黒いマント、ステッキがトレードマーク。フィールドワークに出かけることが多い行動派で、深い知識と大胆な発想により、歴史に隠された秘密を考察する。
忌部 神奈 (いみべ かな)
歴史研究家でショートカットの美女。宗像が嫌う歴史研究家の忌部捷一郎の妹。雑誌社の企画で初めて宗像と出会う。聖徳太子とキリストの類似性から「キリシタン以前の古代に大量のキリスト教徒が渡来した」という仮説を唱え、宗像に挑戦状を叩きつけた。以後、しばしば宗像と行動を共にする。
忌部 捷一郎 (いみべ しょういちろう)
神奈の兄。痩せ型で目付きが鋭くオネエ口調が特徴の中年男性。歴史研究家だが、いい加減な話をテレビ局に持ち込んでは、胡散臭い番組を作ることから、宗像から軽蔑されている。妹の神奈の死を悲しんでおり、宗像に神奈の最後の旅の解明を依頼する。
前作
宗像教授伝奇考 (むなかたきょうじゅでんきこう)
東亜文化大学で民俗学を教えている宗像伝奇は、各地の伝説や歴史に関するフィールドワークで、さまざまな事件や騒動に遭遇。民俗学の知識と想像力を駆使して、真相を見極める。潮出版「月刊コミックトム」(後に「月... 関連ページ:宗像教授伝奇考
宗像教授異考録 (むなかたきょうじゅいこうろく)
星野之宣の代表作「宗像教授シリーズ」の第2作。続編に『宗像教授世界篇』、関連作に『神南火』などがある。舞台は現代の日本。東亜文化大学の民俗学教授、宗像伝奇が、伝説や神話、風習などに秘められた歴史的事実... 関連ページ:宗像教授異考録
書誌情報
宗像教授世界篇 4巻 小学館〈ビッグ コミックス〉
第1巻
(2023-07-28発行、 978-4098625611)
第2巻
(2023-11-30発行、 978-4098626656)
第3巻
(2024-04-30発行、 978-4098628155)
第4巻
(2024-08-30発行、 978-4098630523)