蒼崎 橙子

元封印指定の魔術師にして、最高位の階位である冠位を頂く女性。みごとな赤毛の長髪に眼鏡をかけている。穏やかな口調の心優しい美女だが、眼鏡を外すと途端に男勝りで攻撃的な口調と性格に変貌する。橙子本人は、眼鏡の着脱が性格のスイッチになっており、状況に応じて適宜切り替えるのだと語っている。ただし、あくまで性格とそれに応じて物事の優先度を切り替えているだけであり、一般にいう多重人格のように複数の人格や記憶があるわけではない。過去に時計塔に在籍していた折、創造科(バリュエ)のイノライ・バリュエレータ・アトロホルムに師事しながら魔術基盤として衰退した「ルーン魔術」と「人体模倣概念」の再構築に成功しており、その功績から冠位(グランド)という最高位の階位に叙されている。一方で、その傑出した才能から当代限りの貴重な才能という判断が下された結果、秘儀祭示局・天文台カリオンより封印指定を受け、数年前に起きたとある事件により解除されるまで身を隠していた。イノライ家が主催した黄金姫と白銀姫のお披露目会に招かれ、同じく招待客だったライネス・エルメロイ・アーチゾルテとグレイに出会う。エルメロイ家とは過去に先代の君主であるケイネス・エルメロイ・アーチボルトが参加した第四次聖杯戦争において、彼が使用した義手を用立てたというつながりがある。魔術師らしい好奇心の強さと研究家気質を持ち合わせており、たとえ戦闘時でも相手の魔術を分析する悪癖がある。理想とするのは仙人のように俗世から離れて暮らす達観した魔術師だが、現在でもその境地には至れていない。また妹が一人おり、彼女の名前で時計塔から借金を重ねては、嫌がらせも兼ねて浪費することを繰り返している。戦闘では橙子自身が時計塔時代に再構築したルーン魔術と人形師としての腕前を駆使する。その技の冴えはエルメロイ教室の俊英の一人であるフラット・エスカルドスとグレイを同時に手玉に取るほどである。また、封印指定されたことで数多くの襲撃に遭ってきたため、現在では自分と寸分違わない人形の体で行動している。それが橙子本人であるか、それとも人形であるのかは誰にもわからない。ただ、ここ最近は以前に不意をつかれた時の反省として、人形の体の内側に形容できない怪物を飼っている。ロード・エルメロイⅡ世をして「名前のないくそったれの怪物」と言わしめるそれは、時計塔内の一部のあいだでは橙子の持つ切り札の一つとして語られ、恐れられている。