お兄さん

会社勤めをするサラリーマンの男性。毎週月曜日に委員会へ出席するため、早朝の満員電車に乗るアイちゃんという名の女子高校生のボディガード役を務めており、それを口実に彼女と親しくしている。アイちゃんとの出会いは、会社へ出勤するのを憂鬱に感じていた夏のある月曜日、満員電車で彼女の正面に乗り合わせてしまった時からの付き合い。電車内に落とした名刺ケースを届けようと追いかけてきたアイちゃんが階段で蹴つまずき、上に落ちてきたのを受け止めたことでケガを負ってしまう。それ以降、彼女からケガの経過観察を受けるついでに、満員電車に慣れていない彼女のボディガード役を引き受けて現在に至る。男性の中でも高い部類の身長で、小柄なアイちゃんとはかなりの身長差がある。自分の感情には素直なところがあり、女子高校生のアイちゃんの魅力を前に、異性としての浅ましげな欲望をぶつけまいとしながらも、毎回我慢できずに、隠しきれない様子を彼女の前でよく見せている。また、煩悩に塗れた妄想を脳内に展開する悪癖もあり、その度にアイちゃんからは白い目で見られている。しかし、そんな性格はアイちゃんに嫌がられていないようで、毎週月曜日に一喜一憂するお兄さんと会うのを彼女も楽しみにしている。ある日の月曜日に楽しげに学校へ登校するアイちゃんとは裏腹に、会社へ出勤するのが憂鬱な様子を見せていた際に、元気の出る「お守り」として彼女の制服から弾けた胸元のボタンをもらった。成長著しい彼女は毎週のようにボタンを弾けさせているため、それは習慣化され、二人のあいだでだけ通じるやりとりとなっていく。そんなお守りをもらうたびにわかりやすく喜ぶ様子を見せる一方で、アイちゃんがダイエットなどの諸事情でボタンが弾けなかった週にはお守りをもらうことができないため、非常にガッカリとしたリアクションを見せる。その様子を見たアイちゃんから、自分の制服のボタンが弾けなければ生きていけない人がいると言わしめるほど。そこで気を使った彼女は、お兄さんをガッカリさせないために、お守りができやすい服装を心がけている。これ以外にも、学校には秘密で働いているバイト先に招かれたり、バレンタインのチョコレートのやりとりをしたりと、アイちゃんとの仲は年の差があれども親密で、その様子を偶然見かけた前髪ちゃんから恋人同士だとカンちがいされた。その一方で、知り合ってからいまだにアイちゃんの本名を知らせてもらっておらず、出会った当初に彼女から言われた偽名である「アイちゃん」という愛称で彼女を呼んでいる。また、お互いの私生活の様子についても会話で語られた以上のことは知らず、二人が会っているのは電車を除けばバイト先が精々と、非常に限られた接点しかない。しかし、本人たちのあずかり知らぬところでは、アイちゃんの親友であるバレー部ちゃんが実はお兄さんの従妹であるなど、つながりがある。バレー部ちゃんとは幼い頃からの付き合いで、彼女の親である叔母の家にしばしばご飯をたかりに訪れている。そのため、彼女からは「従兄ちゃん(にーちゃん)」と呼ばれて親しまれており、兄妹のように歯に衣着せぬ軽口を叩き合う仲。また、現在バレー部のエースとして活躍する彼女にバレーを手ほどきしたのもお兄さんで、現在でこそ中年の宿痾（しゅくあ）からメタボ体型になりつつあるものの、運動神経のよさがうかがえる。