あらすじ
最強賢者、転生する
魔法技術が発達した、とある世界に、魔法戦闘を極めて賢者と呼ばれた男、ガイアスがいた。ガイアスは最強を求めてあらゆる魔法を研究し続け、それでも未(いま)だに倒せない強敵がいると考えながらも、自らの持つ紋章に限界を感じていた。最終的に自分の紋章が魔法戦闘に向かず、これ以上は自分の成長も望めないと悟ったガイアスは自ら転生魔法を発動し、その魂を封じて数千年後の未来に転生を果たす。長い年月をかけて記憶を取り戻したガイアスは、ヒルデスハイマー準男爵家三男のマティアス=ヒルデスハイマーとして生きていた。前世のガイアスとしての記憶や、知識を取り戻す頃には6歳にまで成長していたマティアスは、手に入れた紋章が魔法戦闘に最適とされる紋章「第四紋」であることを確認して喜ぶが、この時代においてその紋章は「失格紋」と呼ばれ、侮蔑の対象となっていた。魔法に最適であるはずの紋章を失格紋扱いして見下すほどに変わり果てた世界では、前世で魔法を極めていたマティアスにとって信じられないほどに、レベルの低い魔法理論が常識と化していた。それでも最強クラスの才能の知識を引き継ぐマティアスは、変わり果てた世界で「賢者」と呼ばれていた実力を成長と共に発揮し、周囲を驚かせる。やがて12歳になったマティアスは、家族に勧められて現代の魔法の基本を調べるため、エイス王国の王都にある「王立第二学園」の入学試験を受けることになる。襲って来たモンスターをあっさりと退けて学園に到着したマティアスは、入学試験を受けに来たルリイ=アーベントロートとアルマ=レプシウスに出会い、二人に常識離れの術を披露したことで友人となる。試験本番でも圧倒的な力を見せたマティアスは、失格紋でありながら高い実力を持つ謎の少年として注目を集めて特待生となり、同級生となったルリイやアルマと楽しい学園生活を始める。そんな中、学園同士の代表が戦う対抗戦に出場したマティアスたちは、余裕で勝利するも相手の正体が前世で滅ぼしたはずの魔族であることに気づく。これをきっかけに王都への侵略を企てて動き出した魔族たちとの戦いに備えるべく、結界に必要な材料集めが必要と判断したマティアスは、ルリイとアルマを連れてある場所へと探索へと向かう。
最強賢者、襲撃者に反撃する
紋章にまつわる情報を歪(ゆが)め、魔法理論を退化させていたのは、かつてガイアスが滅ぼしたはずの魔族だった。それに気づいた人間たちを滅ぼすため、魔族たちは王都に侵攻を開始し、探索から帰還したマティアス=ヒルデスハイマー一行は王都に現れた2体の魔族に遭遇する。賢者としての実力と真価を発揮するマティアスは、1体を自分が受け持ち、残り1体はルリイ=アーベントロートとアルマ=レプシウスに任せ、さまざまな手を駆使して強大な力を持つ魔族と戦う。転生前に比べて魔力や身体能力が未熟なマティアスは、知恵と工夫を凝らして仲間の協力を得ながら、強敵に立ち向かっていく。この戦闘を通して敵の潜伏先を察知したマティアスは、引き続き魔族との戦いの最前線を国王に任されながら、ルリイやアルマと王都を守るための準備のため、何千キロも離れた土地への移動手段を求め、前世の頃からの知り合いであった暗黒竜のイリスに会いに向かう。長い時を生きるイリスは、マティアスがまだガイアスだった頃に戦って惨敗し、彼のことを転生者だと知っている数少ない存在でもあった。規格外の力を持つイリスを仲間に引き入れたマティアスたちは、神話級のドラゴンである彼女の背に乗って魔族が潜伏する廃村に向かう。突然のマティアスの襲撃に困惑する魔族たちだったが、魔族たちはこの戦いにそなえてある秘策を用意していた。しかしマティアスの実力の前には通用せず、村に潜んでいた魔族2体を返り討ちにして王都に戻ろうとする彼は、イリスに対してとんでもないことを提案する。それはドラゴンが人間の姿になる魔法をイリスにかけ、人間の姿になった彼女を仲間として迎え入れて、王都での戦いに協力してもらうというものだった。提案どおりにマティアスが魔法をかけた瞬間、イリスは赤毛の美少女の姿に変身する。
最強賢者、逃げられる
強力な暗黒竜のイリスを人間にして仲間に迎え入れ、王立第二学園の女子生徒として編入させることに成功したマティアス=ヒルデスハイマーは、新たな仲間たちと共に修行や魔族対策に明け暮れていた。以前の遠征で訪れた魔族が潜む村で、魔族たちが王都に向けて魔物を大量発生させる装置を作り出していたことをつき止めていたマティアスは、防衛策として結界を構築するために王立第一学園の校長に協力を求めたり、再び迷宮に挑んで結界の材料を集めたりと、大忙しの日々を送る。しかし、第二学園への対抗意識が強い第一学園に協力を断られたり、迷宮内ではイリスが誤って巨大竜を召喚してしまうなどのトラブルが続いていた。なんとかトラブルを乗り越えて準備を整えるマティアスたちは、学園の仲間の力を最大限に引き出しながら、強大な魔族に立ち向かっていく。マティアスが王都を守る大結界の構築中に、複数の魔族が王都周辺に侵入して来た。結界から手を離すわけにはいかないマティアスは、魔族の討伐をルリイ=アーベントロートとアルマ=レプシウスに任せて、自分は結界の構築に集中することになる。二人はマティアスの期待に応えながら、あっさりと魔族を討伐して侵入を防ぐことに成功。だが、魔族は最終手段を用いていよいよ全軍を王都に集結させ、ほかの生徒たちも集結し魔族との全面衝突を開始し、王都に侵入した魔族の予想以上の数と力の強さにルリイたちは苦戦を強いられる。二人のピンチに駆けつけたマティアスは、敵が実戦慣れしていないことや、人間を侮っていることを察知しながら複数の魔族を一気に討伐し、王都のピンチを救う。一方、魔族が廃村で用意していた謎の装置が起動し、強大な魔物が呼び出されようとしていた。それを察知したマティアスは、その場にいた魔族に探知魔法を仕掛け、王都に戻って大結界を起動させることにも成功。後日、学園の生徒たちは王都に向かって押し寄せて来た大量の魔物たちを撃退するために戦っていたが、「ヴォイドイーター」という強大な魔物が王都周辺の平原に出現。ほかの魔物たちの力を吸い込み、王都の尖塔(せんとう)すら超える大きさにまで成長したヴォイドイーターに、マティアスはある秘策を用意して仲間と共に立ち向かう。
最強賢者、旅路を往く
エイス王国を狙う魔族を撃滅してさらに注目を集めたマティアスは、わけあって王立第二学園を退学することを決意していたが、エデュアルトの提案により学園の「特殊特待生」として籍を残すことになる。ルリイ=アーベントロートとアルマ=レプシウス、そしてイリスも同様に特殊特待生となって学園を離れることになり、彼女たちと旅立つことになったマティアスの次なる目的地は、迷宮都市「メルキア」であった。龍脈のある巨大迷宮の上に建てられたメルキアでの目的は、大地の奥底に秘められた魔力の流れの調査で、マティアスは以前の戦いで龍脈を使った魔族の謀略を察知していた。自ら乗り込んだ未知の土地で龍脈に仕掛けられた企みを探るマティアスたちは、悪徳領主のドギエル=メルキアによる無茶な命令や、魔物に出現によって街がすっかり寂れていることを悟る。許可を得たうえで王家代理人のエイクと共に、ドキエルの屋敷を襲撃して捕えたマティアス一行は、ドキエルが魔族とつながっていることや不自然な行動の裏で魔族がメルキア迷宮を利用しようとしている可能性に気づき、街の中に罠(わな)を仕掛けて、周囲に集まって来た魔族や魔物に戦いを挑むこととなる。魔物を殲滅(せんめつ)して街を守ったマティアスたちは、メルキア迷宮に進んでそこに潜む魔族と戦う中で、魔族たちを指揮している何者かの干渉を受ける。その者の正体を探るべく、マティアス一行はガイアスが作り出した古代の魔道具である探知装置を求めて王国を旅立ち、他国へと進撃することになる。次なる目的地のラジニア連合では、目的の探知装置を探すためにギルドに登録してAランク冒険者となり、許可証を取得する必要があった。時間が惜しいマティアスはある秘策によって仲間と共に爆速のランクアップを果たそうとするが、その中で平原に潜む強化された魔物に挑むことになる。無事に魔物を倒してギルドに戻り、Bランクにまで昇格したマティアスたちだったが、昇格試験の途中で彼らの試験官には天才Sランク冒険者のギルアスが名乗りを上げる。余裕に見えた試験に挑む中で思いがけない強敵に出会ったマティアスは、好戦的なギルアスに興味を持たれて一対一の勝負を挑まれる。
最強賢者、連携する
強大な魔族の存在を察知し、その居場所を探知するために古(いにしえ)の魔道具を求めてラジニア連合へ旅立ったマティアス=ヒルデスハイマー一行は無事にAランク冒険者となり、フォルキアの街を訪れていた。しかし、フォルキアの冒険者を含む住人たちは、連携を得意とする魔族の亜種「亜魔族」に洗脳・支配され、一国を滅ぼす魔法爆弾を作るための魔法石を加工する工場で延々と働かされていた。この異常事態を見逃すわけにはいかないマティアス一行は、危険な陰謀を阻止しようと立ち上がり、工場に侵入してフォルキアに蔓延(はびこ)る32人もの亜魔族を倒すという壮絶な戦いが始まる。亜魔族対策としてマティアスが考案した作戦は、イリスがふだん隠している膨大な魔力を開放して活用するという、意外な内容だった。マティアスたちを追っていたギルアスによって、街の人々を支配していた魔族のボスは倒され一見平和が戻ったように見えたが、その魔族は何者かの魔力によってあやつられた死体であった。マティアスは死体をあやつっていた魔族こそが一連の事件の黒幕だと悟り、彼らはギルアスの協力を得て禁止区域に立ち入り、古代の魔法文明が眠る古代遺跡へと侵入する。マティアスは前世の自分が作り出していた探知装置を使って魔族の気配や位置を探る中で、最高位の魔族、ザリディアスの目覚めが近いことを知る。今まで魔族たちを使ってさまざまな陰謀を巡らせていた強敵の魔力を察知したマティアスは、膨大な魔力と戦闘力を持つザリディアスには今の自分たちでは敵(かな)わないと断言する。エイス王国へと急ぐマティアスたちだったがすでにザリディアスは復活し、イリスと共に立ち向かうもその圧倒的な力の前には太刀打(たちう)ちできず、重傷を負ってピンチに陥る。一方、マティアスたちと別行動を取って王都に戻ったルリイ=アーベントロートとアルマ=レプシウスは、かつてガイアスが作り今は宝物庫に眠っている魔剣を回収しようと奔走するが、魔族に学園の生徒を人質に取られたことで足止めを食らう。周囲の協力を得ながらなんとか宝物庫に入り魔剣を手に入れ、ルリイたちは急いで魔剣を届けるも、マティアスは一瞬のスキを突いたザリディアスの一撃を食らう。
最強賢者、再会する
かつてない窮地の連続の中で強敵に立ち向かったマティアス=ヒルデスハイマーたちは、魔族との激烈な戦いを経て仲間同士の絆(きずな)をさらに深めていく。ザリディアスとの死闘を終えたマティアスたちは、エイス王国の王都で束(つか)の間の休息をしていたが、彼らのもとへはエデュアルトからの新たな要請が入る。それは隣国であるサイヒル帝国との国境に、謎の木製自動人形の軍勢が現れたという奇妙な情報で、敵の正体は人間ではなく魔族の可能性が高いという。さっそくエイス王国とサイヒル帝国の国境付近にある貴族の領地に向かったマティアスは、懐かしき故郷の家族と再会し、わずかな情報をもとに国境に流れている大きな川を探る。そのまま自動人形をあやつっている者の正体をつき止めるべく、サイヒル帝国の施設に潜入したマティアスは人形使いの人間を捕えるが、それはすでに死んでいる人間が何者かの魔力で動いていただけで、情報を引き出させないための用意周到な魔法も施されていた。人間の死体をあやつり、毒を使って人の生命力を奪っている自動人形の軍勢で人類を脅かす元凶について詳しく探ろうと、サイヒル帝国に進んだマティアスたちが出会ったのは、彼の転生前の時代に滅びたはずの土の魔族と、それを従えるグレヴィルであった。大魔族を自称するグレヴィルは、かつてガイアスの生きた古代では国民に慕われる有能な国王でもあった。3か月後には人類を滅ぼすという、当時とは真逆の目的を持つグレヴィルとの戦いに備えて、マティアス一行は迷宮都市を訪れ、ギャンブル迷宮と呼ばれているダンジョンに挑むことでレベルアップを図る。そして2か月後、魔力操作を鍛えたマティアスたちはグレヴィルと有利に戦うために、残り1か月を待つことなく先制攻撃で奇襲を仕掛けることになる。グレヴィルが潜むのは、エイス王国の王都周辺にある、湖の底に沈む巨城だった。王都を守っていた大結界を破壊したグレヴィルは、マティアスたちの前にその姿を現し、城を守る魔族たちを倒して自分のところへ来いと言うが、マティアスはグレヴィルの魔族としての姿や言動に違和感を抱く。古代王国の国王であったグレヴィルが現代に蘇(よみがえ)って魔族になった謎、そして彼が人類を滅ぼそうとする理由を求め、マティアスたちは新たな強敵と過去に立ち向かう。
最強賢者、選ばれる
最高位魔族であるザリディアスやグレヴィルとの壮絶な戦いを終えたマティアス=ヒルデスハイマーは、前世の魔法知識や経験を活かして人々を驚愕(きょうがく)させ、あらゆる地で無双伝説を作り上げていた。古代の賢王であったグレヴィルと滅んだはずの土の魔族が復活した原因には、「壊星」と呼ばれている宇宙の魔物の欠片(かけら)が関係していた。人間の持つ魔法理論を超越した壊星が持っていた死者蘇生(そせい)の力の影響を受けた現代には、かつて古代の時代で悪事を働いていた危険な魔族や人間が、「理外の術」で少しずつ復活しているという。その中には魔族以上に厄介な人間も存在し、特に魔法戦闘を熟知した10人の戦闘集団「戦技を極めし者」を撃退できるのは、同様に魔法戦闘の修行を積んだマティアスたちだけであった。「戦技を極めし者」は強い者との勝負だけを求めているが、不完全な状態で復活し弱体化している彼らが狙っているのは、上級冒険者ばかりだという。グレヴィルからこれらの情報を得たマティアスたちは、これらの危険な古代人たちと戦うべく再び旅立ち、持てる力のすべてを注いで新たな強敵に立ち向かうこととなる。冒険都市ハイギスを訪れたマティアスたちは、街のギルドを訪れたあとに近くの平原に向かって「戦技を極めし者」の一人、ミラと戦いになるが、彼の復活は不完全で能力は半減していたうえに、特殊な魔法がかけられて自分たちの復活に関する秘密を話せずにいた。ミラたちを復活させた者こそが壊星を持っていると推測するマティアスだったが、敗北したミラは情報を話すことなく自害し、死ぬ間際にほかの仲間たちを呼び寄せる。ミラの仲間たちをすべて倒したマティアスたちは、ミラたちを蘇生し実験体にしていたのが古代のマッドサイエンティスト、アンモール兄弟だと悟り、彼らが行っている実験を止めることを決意。そのため、実験に協力するフリをして研究所に乗り込むが、兄のサイキアは実験で強化した弟のルナートをマティアスたちにぶつけ、一度は結界で分断されるもマティアスが破壊したことで無事に合流することができた。アンモール兄弟を倒したマティアスは彼らが壊星の欠片「壊星片」を使っていたこと、壊星の力が広まれば強力な魔物が次々と復活し、それを放置していればたったの3年で人類が滅びるという情報を得る。危険な壊星の力を排除するため、マティアスはイリスと共に、壊星の周辺で蘇った古代の魔物の群れに突撃する。
最強賢者、因縁を断つ
下級魔族が持っていた報告書類から、封印された「混沌の魔族」という強大な存在を復活させるという、魔族の新たな計画が明らかになった。混沌の魔族は、以前にマティアス=ヒルデスハイマーが対峙(たいじ)し苦戦を強いられたザリディアスよりも強いこともわかり、恐ろしいこの計画を阻止するため、マティアスたちは対抗策になりうる魔剣「人食らう刃」の入手を最優先に行動を開始する。魔剣が封印されているのはエイス王国の海辺にあるリゾート地のザドリアの街で、そこには有名人になったマティアスの名を騙(かた)る偽者のほか、戦闘の修行に来ていたギルアスも訪れていた。ギルアスによって偽者は倒され、マティアスたちは夜更けに領主の館を目指すも、魔剣を守る役割を持つ上級魔族と戦うことになる。魔剣を手に入れるべく強敵に立ち向かうマティアスたちは、仲間に引き入れていたギルアスの協力もあって無事に魔剣を手に入れ、龍脈に干渉する作戦で上級魔族の討伐に成功。だが、この戦闘の直後に龍脈に変化が現れ、覚醒した混沌の魔族の正体が、かつてガイアスがもっとも苦戦した破壊の魔族、ザドキルギアスであったことが判明する。かつてガイアスが滅ぼしたはずのザドキルギアスは、ほかの魔族とは異なり戦闘技術を極めた危険な存在でもあったが、なぜこの時代に再び現れたのか不明だった。そんな最強最悪の魔族を撃滅するべく、マティアスたちはザドリアを離れて王都に戻り、グレヴィルたちを交えて報告や作戦会議を行ったあと、復活地点の街、ボウセイルに急行する。しかしギルドには、人間の冒険者たちに紛れて怪しい男が紛れ込み、マティアスは膨大な魔力の気配から、冒険者の格好をしたその男こそがザドキルギアスだと確信する。イリスの協力を得て街から人々を避難させたマティアスは、手に入れた魔剣を新たな武器として携え仲間たちの協力を得ながら、絶対に負けられない戦いに挑む。街の外に向かって逃げ出す人々に紛れて背後から奇襲を仕掛けたマティアスだったが、それを察知していたザドキルギアスは余裕でかわし、対峙した彼は一瞬でも気を抜けば即座に殺されると確信する。ドラゴンの姿に戻ったイリスの不意打ちにより地上は崩れ、空に飛び上がったザドキルギアスとマティアスの空中での死闘が始まる。
小説
本作『失格紋の最強賢者 ~世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました~』は、進行諸島の小説『失格紋の最強賢者 ~世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました~』を原作としている。原作小説版はSBクリエイティブ「GAノベル」から刊行され、イラストは風花風花が担当している。
メディア化
テレビアニメ
2022年1月から3月にかけて、原作小説『失格紋の最強賢者~世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました~』のテレビアニメ版『失格紋の最強賢者』が、TOKYO MXほかで放送された。監督は秋田谷典昭、キャラクターデザインは大沢美奈が務めている。キャストは、マティアス=ヒルデスハイマーを玉城仁菜が、ルリイ=アーベントロートを鈴代紗弓が演じている。
登場人物・キャラクター
マティアス=ヒルデスハイマー
かつて世界最強と謳(うた)われた賢者のガイアスが、最強の紋章を手に入れるために転生した魔法戦闘師の男性。ヒルデスハイマー準男爵家の三男として生を受け、希望どおりの第四紋を獲得した。愛称は「マティ」。6歳になった日にガイアスとしての記憶を取り戻してからは、宇宙に住まう強力な魔物との戦いを目指して鍛錬を重ねては、幼いながらも異常な実力の高さを家族に驚かれていた。ガイアスの記憶や経験を保持しているが現代の常識には疎く、現代では廃れたり知られていない技術や魔法を平然と多用するため、いつも周囲の者を驚愕・困惑させている。12歳の頃には家族の勧めで王立第二学園に特待生として入学し、成長と共に現代の知識を得るうちに魔法戦闘に適しているはずの第四紋が「失格紋」呼ばわりされるなど、魔法の常識が大きく劣化しつつある現状を知り、エデュアルトに才能を見込まれて正しい魔法理論の普及と第二学園の救済のための協力を求められる。これをきっかけに、学園の仲間たちと共に魔法の復興を目指しながら、人類の常識を歪めた黒幕が魔族であることに気づき、王都を狙う魔族たちと戦いを繰り広げた。目的を遂げたあとは退学するつもりでいたが、学園側の提案で授業が免除される特殊特待生という形で籍を残しながら、学園を旅立つ。これ以降はルリイ=アーベントロート、アルマ=レプシウス、イリスとの四人で行動しており、さらなる強敵と戦うためにエイス王国を旅立つ。性格は基本的に戦闘狂で大抵の問題は強さで解決できると思っているが、仲間の修行やサポートにも力を入れている。恨み深い一面があり、特に魔族や魔物には容赦がなく、人間であっても仲間を侮辱した相手や敵意を抱いた者には厳しく対処・報復する。一方で何かと面倒見がよく、つねに味方が失敗した場合の準備を整えたうえで作戦に臨んでいる。自分の前世がガイアスであることは周囲に明かしておらず、単純に信じてもらえないという理由や、転生魔法を使ったことが宗教上の問題で厄介事に発展しやすいという理由で、隠すようにしている。このため前世のことを知っているのは、前世からの知り合いであるイリスを中心にグレヴィルやザドキルギアスのみとなっている。
ガイアス
かつて世界最強の賢者と謳われていた古代の魔法使いの男性。マティアス=ヒルデスハイマーの前世。誰よりも魔法戦闘を好み探求心も旺盛で、魔法の技術や儀式を極めるためであれば努力は惜しまず、あらゆる修行や研究を重ねながら生きていた。しかし戦いや修行の果てに、自分が持つ紋章である第一紋(栄光紋)に限界を感じて紋章を変えることを決意し、転生魔法を使って数千年後の未来に転生する。本来は魔法戦闘向きではない第一紋でありながら、1000年以上の長い時を生きて賢者や戦神などと評され、圧倒的な実力を持っていたがそれでも満足することができず、転生の際には宇宙にいるといわれている魔物との戦いに備えることや、魔法戦闘向きの肉体や紋章を得られることを望んでいた。人類の敵である魔族とも戦い、その大半を滅ぼすほどの力を持っていたため、多くの魔族から恐れられていた。一方で共に戦う仲間がいなかったため、集団戦は苦手としている。かつて戯れで作り出した武器やアイテム、施設などが各地に残されており、現代の人々からは破格の性能として絶賛・重宝されている。しかし、自信作といえるほどの性能を秘めた武器やアイテムの中には、現代では起動方法が不明であったり魔力が不足したりと、使い方がわからないなどの理由で大半が活用されていない。転生後はマティアスとして新たな人生を歩むが、魔法理論が大きく退化していることにショックを受け、人類の魔法を退化させた原因を探っている。現代人からは魔術の神として崇(あが)められているが、鈍感なマティアスはたまたま名前が同じなだけの偶然とカンちがいしている。魔族の中にはマティアスこそがガイアスの生まれ変わりだと疑い始める者も出ているが、マティアスが転生者であることを隠しているのもあって、確証を得られていない。
ルリイ=アーベントロート
王立第二学園に通う女子。マティアス=ヒルデスハイマーのクラスメイト。金髪のセミロングヘアで、控え目でおとなしく、礼儀正しい性格をしている。紋章はガイアスと同じ栄光紋。親友のアルマ=レプシウスと共に入学試験を受けに来た際に王都の鍛冶(かじ)屋でマティアスと出会い、試験用の剣に二重付与魔法をかけてもらったのをきっかけに親しくなり、その剣の力で大活躍したため試験には次席で合格した。剣術・魔術共に優秀だが、もとは魔法付与師を目指しており、付与のためなら戦闘ができなくても構わないと豪語するほどにあこがれている。入学後は何かとアルマ、マティアスの三人で行動して彼女と共に彼のパーティに加わる。マティアスに対しては、あこがれを抱くうちに恋心も寄せるようになっていく。マティアスの教えもあって、戦闘では魔法付与師として味方をサポートする形で活躍している。前世で栄光紋を極めていたマティアスが感心するほどの吞(の)み込みの早さと付与技術への熱意を持ち、彼からは武器の作り方や魔法陣の書き方も教わって着実にサポート能力を上げている。ふだんは味方の武器の作成や後方支援に徹しながらも、家系に伝わる剣技や無詠唱攻撃魔法などが使えるため、単独でもそれなりの戦闘力を持つ。当初から無自覚にマティアスを異性として意識しており、初対面時には婚約者や恋人がいないことをアピールすることもあった。また、マティアスに触れるたびに赤面したり、危険な戦いに向かう彼を心配したりしている。しかしマティアスが鈍感なため、必死のアプローチも空回りに終わることが多い。王都での魔族との戦いのあとは、マティアスたちと同様に授業が免除される特殊特待生として学園に籍を残し、彼らと共に旅をしたり魔族との戦いに参加したりしている。胸が小さめなのをひそかに気にしている。
アルマ=レプシウス
王立第二学園に通う女子。マティアス=ヒルデスハイマーのクラスメイト。銀髪のショートヘアで帽子をかぶっている。物怖(ものお)じしない明るい性格で、剣よりも弓を得意としている。田舎の小貴族の三女として生まれ、むやみな縁談を嫌がって故郷を出て来た。学園への入学を目指して親友のルリイ=アーベントロートと共に入学試験を受けに来た際に、王都の鍛冶屋でマティアスと出会って親しくなり、試験に合格して彼らと共に入学したあとは三人で行動することが多くなる。ルリイがマティアスのパーティに加わった際に、彼女についていく形で自らもパーティに加わり、彼からはさまざまなことを教わっている。もとは弓使いだったところを、弓矢への評価が低い周囲に矯正される形で仕方なく剣士に転向した過去を持つが、マティアスから威力特化型の紋章である常魔紋が弓と相性がいいことを聞かされ、持っていた剣を魔法で弓に変えてもらい、改めて弓使いに転向した。このほかにもマティアスからは弓矢用の魔法を教わり、戦闘時は彼の攻撃が届きにくい中・遠距離攻撃を引き受けている。ルリイがマティアスを異性として意識していることにいち早く気づき、照れたりアプローチしたりする彼女のことを時おりからかったり応援したりしているが、彼の鈍感さが災いし彼女が空回りした時は同情していた。パーティのツッコミ役でもあり、特にマティアスの非常識な発言や常識を超えた能力を持つ彼にツッコミを入れている。マティアスの秘めた才能を初対面時から見抜いて声をかけるなど、人を見る目もある。王都での魔族との戦いのあとは、マティアスたちと同様に授業が免除される特殊特待生として学園に籍を残し、彼らと共に旅をしたり魔族との戦いに参加したりしている。料理が壊滅的に下手。
イリス
超天災級の巨大暗黒竜の少女。非常に長い時を生きており、ガイアスとも戦ったことがある知り合いで、マティアス=ヒルデスハイマーの正体がガイアスの転生した姿だと知る数少ない人物でもある。漆黒の鱗(うろこ)を持つドラゴンの中でも格段に強く、ルリイ=アーベントロートたちからは神話に登場する伝説のドラゴンとして知られている。ガイアスがさまざまなドラゴンと戦っていた頃は彼との戦いに消極的で、結果として竜族の中で生き残るなど、竜族の中でも変わり者扱いされている。エイス王国付近の山奥にひっそり暮らしていたが、魔族が潜む廃村への交通手段を求めたマティアスと再会し、彼らを背に乗せて移動や戦闘のサポートを行ったのをきっかけに、彼の要請で一行に加わることになる。過去に起こった事故に巻き込まれて翼がボロボロになっていたが、マティアスと再会した際に応急処置を受け、とりあえず飛べる程度には回復した。完全な回復魔法をルリイに施してもらうために仲間となったあとは、スムーズに王都で行動できるようマティアスの提案で人間に変身し、女子生徒として王立第二学園に入学する。人間体の時は赤毛をツインテールにまとめた美少女の姿をしているが、マティアス以上に常識に疎く、人間基準に合わせた細かい力のコントロールもできないため、当初はよく災害級のトラブルを起こしていた。人間体の状態でも身体能力や魔力の保有量はマティアスを上回り、素手でほかのドラゴンや魔物を蹴散らせるほどの怪力や膨大な魔力量を、彼の大胆な作戦に活かしている。それでも決め手には欠けるため、頑丈さのみを重視した杭(くい)のような形状の槍(やり)を武器として使うようになる。かなり食欲旺盛で、ふだん背負っている大きめのリュックには食料が大量に詰まっており、依頼達成時などに分配される報酬もほとんど食費で消えてしまっている。王都での魔族との戦いのあとは、マティアスたちと同様に授業が免除される特殊特待生として学園に籍を残し、彼らと共に旅をしたり魔族との戦いに参加したりしている。
エデュアルト
王立第二学園の校長を務める男性。豪快でさっぱりとした性格をしている。いかつく筋肉質な体型で、顔に古傷がある。校長でありながら、マティアス=ヒルデスハイマーたちが在籍するA組の担任も兼任している。詠唱魔法が普及し無詠唱魔法の有用性が一般的に知られていない現状を危惧し、特待生として迎えたマティアスの驚異的な実力を見込んで、学園に正しい魔法知識を広める役割を依頼する。王立第一学園とは対照的に実力主義を掲げており、生徒同士の教え合いも積極的に推奨したり、マティアスの無詠唱魔法の知識をすぐに授業に取り込んだりと、生徒を正しく導くために柔軟に対応している。国王のエイス=グライア四世とは旧友でもあり、彼からの信頼も厚く、時おり砕けた口調で会話していることもある。
フェイカス
王立第一学園の校長を務める男性。貴族主義であると同時に強烈な栄光紋の信者で、反対に失格紋を見下している。実力主義で何かと正反対な王立第二学園には執拗(しつよう)に対抗心を燃やし、第二学園との対抗戦ではデビリスを代表生徒として送り込むが、彼が魔族であることにはまったく気づいていなかった。魔族が現れたことを理由に対抗戦の再戦を要求したが、マティアス=ヒルデスハイマーに第二学園が惨敗したうえに、仲間を馬鹿にされたことに怒りを覚えた彼の策略にはめられ、反逆者として厳しく処罰された。
エイス=グライア四世 (えいす ぐらいあよんせい)
マティアス=ヒルデスハイマーたちが住むエイス王国の国王を務める男性。魔族が目論む間違った魔法知識の蔓延に関するマティアスからの警告を素直に受け入れ、魔族対策の準備を彼のパーティに任せるなど、エデュアルトと同様に柔軟な考えを持つ。また、エデュアルトとは旧知の仲で互いに信頼も厚く、彼に謁見を求められた場合は手続きの省略などを認めている。マティアスをはじめ、魔族を倒した者には報酬として領地や金貨、宝物庫にある武器などを与えている。マティアスの報告や警告を受けてからは、王立第一学園・王立第二学園に無詠唱魔法の必修化を要請する形で、無詠唱魔法の普及に協力している。
レイク=ヒルデスハイマー
ヒルデスハイマー準男爵家の長男。マティアス=ヒルデスハイマーの兄。紋章は常魔紋。優しく家族思いで責任感も強い性格で、冷遇されがちな失格紋を持つマティアスにも兄として好意的に接する。将来の目標は、魔法の力でヒルデスハイマー領に住む人々の生活を豊かにすること。マティアスが前世の記憶を取り戻したばかりの時点では、魔法の才能を持つ長男ではあるが紋章が栄光紋でないばかりに、栄光紋を持つが能力にも人柄にも問題があるビフゲル=ヒルデスハイマーが跡取り候補になっていることに悩んでいた。しかし、マティアスから無詠唱魔法の基本を教わったことで、ビフゲルを遥(はる)かに超える威力の魔法を使えるようになり、領内一として有名になると共に、跡取り候補として認められる。剣術にも優れ、騎士養成学校の試験に余裕で合格できるほどの実力を持つ。
ビフゲル=ヒルデスハイマー
ヒルデスハイマー準男爵家の次男。マティアス=ヒルデスハイマーの兄。紋章は栄光紋。社会的に優遇され羨望を向けられる栄光紋を、兄弟の中で唯一持って生まれたことを誇らしく思っているが、そのせいで我儘(わがまま)で傲慢な性格になっている。マティアスが失格紋持ちであることを理由に家族の恥と見下しているが、彼との勝負には全敗している。自己中心的な言動・行動が多く、マティアスからは無能扱いされて心底毛嫌いされているうえに、カストル=ヒルデスハイマーやレイク=ヒルデスハイマーも頭を悩ませている。栄光紋が評価の高い紋章であることに加え、魔法技術ではレイクに勝っていたためにヒルデスハイマー家の次期領主候補となっていたが、無詠唱魔法をマティアスに教わったレイクに敗れ、次期領主の座を失う。
カストル=ヒルデスハイマー
ヒルデスハイマー準男爵家現当主で、マティアス=ヒルデスハイマーの父親。息子たちに剣術の指導をしており、マティアスからも剣術が超一流と評され、魔法を使っていなくても高い戦闘力を誇る。もとは王立第二学園の卒業生で、幼少期から驚異的な実力を持つ非常識なマティアスには何度も驚かされ、彼が12歳になる頃には第二学園に特待生で入学することを勧める。この際にかつて自分が実践した特待生で入学する方法を教えるが、筆記試験を捨てて剣術の試験官との勝負に次々と勝ってギリギリで合格するという、かなり豪快で無理矢理な方法だった。
デビリス
王立第一学園に通う男子。その正体は魔族で、栄光紋を持っているが、実際は偽物。生徒になりますまして魔法の申し子と評されるほどの実力で注目されていたが、代表チームのリーダーとして第二学園との対抗戦に出場した際、マティアス=ヒルデスハイマーに正体を見抜かれ、討伐される。この戦闘の中で人間に偽装する魔法を、マティアスに解除されたために本来の姿があらわになり、魔族が人間社会に紛れ込んで暗躍している事実が公になった。
エルハルト
エイス王国に紛れ込んでいた魔族の男性。人間のフリをしながら魔法師団長を務めていたが、デビリスが敗れて正体を暴かれたのをきっかけに逃亡する。王宮内にある謁見の間に設置型盗聴魔法を仕掛けて人間の動向を監視していたが、見破ったマティアス=ヒルデスハイマーによって居場所を逆探知される。マティアス一行と戦い凶化という能力で対抗するも、彼の罠にはまって大量の毒を浴びせられて死亡した。
エイリアス
エイス王国に紛れ込んでいた霧の魔族の男性。エルハルトと共に人間の動向を探っていたが、マティアス=ヒルデスハイマーに居場所を逆探知されて彼らと戦うことになる。実力はエルハルトよりも高く、体を霧化して防御できるうえに相手の体も霧に変えて戻れなくする恐ろしい魔法も使えるが、マティアスの策略にはまり周囲の魔力を強制的に吸収させられたことで制御不能になって敗北・死亡した。
ザリディアス
長年封印されていた魔族の男性。ガイアスが生きた時代から存在する強力かつ狡猾(こうかつ)な混沌の魔族であり、封印されながらも迷宮都市メルキアの魔族をはじめ、手下の魔族を使って人類に危害を加えていた。魔力量はかなり膨大で、マティアス=ヒルデスハイマーさえも敵わないと考えていた。エイス王国の王都で復活した際に、マティアスと死闘を繰り広げた際に彼の心臓を貫くが、直前に手に入れた魔剣によって蘇生したマティアスに返り討ちにされる。
ロイター
古代で名を馳(は)せた凄腕(すごうで)の剣士の男性。ガイアスの数少ない友人の一人で剣術バカと評されているが、「自分の次くらいに強い」とガイアスが認めるほどの実力を誇る。現代では剣術の神としてガイアスと同様に信仰されており、ロイターの名を持つ剣術学も普及している。豪快そうな見かけによらず意外と書類仕事が得意で、報告書などは、わかり切ったような内容まで難しい文章で長々と書く癖があった。
ドギエル=メルキア
迷宮都市メルキアの領主を務める男性。長髪を一つに縛り、丸い眼鏡をかけている。魔石の使用を制限したり冒険者に無茶な討伐命令を出したりと、住民からの評判はかなり悪く、本来なら迷宮都市として栄えているはずのメルキアが寂れてしまった元凶ともいえる悪徳貴族。不審な行動が多いために屋敷に乗り込んで来たマティアス=ヒルデスハイマーによって捕まり、前の領主の突然死との関係に加え、魔族と裏でつながっていることが明らかになった。
ギルアス
Sランク冒険者の青年。ラジニア連合にあるフレディア領ギルドの一員として活躍している。紋章は失格紋で実力は凄(すさ)まじいが、かなりの戦闘狂で戦闘以外のことはやりたがらないため評判はよくない。昇格試験には興味がなかったが、強力な魔物を討伐していたらいつの間にか、ギルドにSランク認定されていた。ギルドの依頼でAランクの昇格試験の試験官を渋々引き受けているが、前回の試験では受験者全員を無条件で不合格にしていた。Aランク昇格を目指すマティアス=ヒルデスハイマー一行の試験官を担当した際は、以前から聞いていた彼の評判や噂(うわさ)に加え、一目で実力を見抜いてほかのメンバーを無条件で合格にしたうえで、マティアスに一対一の勝負を申し込んだ。無意識に身体強化をはじめとする無詠唱魔法を使っているが、ギルアス自身が魔法を使っているという自覚はなく、本来は意識しないで魔法を使うことが原則的にありえないこともあって、マティアスからは現代人にしては高いセンスを持っている紛れもない天才と評されている。マティアスには敗北したものの、彼から無意識に使っている無詠唱魔法を自覚的に使えるようになればさらに強くなると助言を受け、マティアスが監修した本で魔法を学ぶことになる。マティアス一行とは一旦別れていたが、彼らを追ってフォルキアに向かう中で新たな技「反動斬鉄」を習得し、マティアスらと合流後にフォルキアで暗躍していた魔族を一人で討伐することができた。その後は、Sランク冒険者の特権を行使して臨時の領主代理を務めるようになり、マティアスたちが求めるフォルキア領規制区域への立ち入り許可証を発行する形で、彼らの目的をサポートする。また、リゾート地のザドリアで修行していたところで偶然マティアスたちと再会し、彼の偽者を撃退したり魔剣の入手に協力したりもした。戦闘力は高いが、文字を読むと頭痛がするほどに座学や読書を苦手としている。
グレヴィル
かつてガイアスが生きた時代で、ある王国の国王を務めていた男性。つねに国をよくしようと考え、国民からも慕われる賢王として、ガイアスからの評価も高かった。ガイアスとは友人や修行仲間でもあったが、古代人でありながらなぜか現代に復活し、大魔族を自称しながら魔族や亜魔族を従えて人類を滅ぼそうとしている。エイス王国とサイヒル帝国のあいだに多数の木製自動人形の軍勢を送り出し、その動力源は毒を水道に撒(ま)くことで人間の生命エネルギーから少しずつ得ていた。これらの事件を解決しようと動いていたマティアス=ヒルデスハイマーと戦うことになるが、彼と一騎打ちになった際に殺意がないことに気づかれ、降参して本当の目的と過去を語り出す。現代に蘇(よみが)るも無詠唱魔法が廃れて詠唱魔法の普及など間違った魔法文化が進んでいることを恐れ、大魔族のフリをしながら人間の実力者が戦いを挑んでくるよう仕向け、その実力者に倒されることで人間の英雄を作り出し、発言力や信頼を得たその人物に無詠唱魔法を広めてもらおうとしていた。だが、討伐に来たのがガイアスの生まれ変わりであり、無詠唱魔法の普及を進めているマティアスだと知ったことで計画を中断し、彼らの協力を得て改めて人間として現代に生きるようになる。戦いのあとに現代に蘇った原因が、壊星の影響であったことが判明し、その後はマティアスの提案で王立第二学園の教師として、正しい魔法知識の普及に努めるようになった。下級魔族であれば従えられるほどの実力は持っているが、マティアスから見れば決して魔法の才能がある方ではなく、昔から努力を重ねることで実力を大きく伸ばした努力家でもある。このため魔法の実力そのものだけでなく、教師としての教え方がうまくてわかりやすいと好評で、容姿のよさもあって特に女子生徒からは大人気になっている。
ザドキルギアス
ザリディアスと同じく混沌の魔族の男性。ザリディアスのように封印されていたのではなく、ガイアスと同じように転生魔法で転生を果たす形で現代に現れた。かつてガイアスがもっとも苦戦した最悪の魔族であり、ほかの魔族と違って戦闘技術を極めていることなどから、彼がもっとも警戒する相手でもある。若い頃のガイアスに討伐されるまでは一人でいくつもの国を滅ぼし、ガイアスが専用の対策魔法として発動した「共振剣」によって、ようやく倒すことができたほどの戦闘力を持つ。単純な身体能力や魔力量などは魔族としては平均レベルだが、魔法技術や戦闘技術を徹底的に磨き上げているため、魔族としてはかなり異質な存在でもある。ボウセイルの街ではギルドの冒険者たちに紛れて人間のフリをしていたが、イリスの協力で住人を避難させたマティアス=ヒルデスハイマーの奇襲を受け、街の上空で彼と死闘を繰り広げる。
場所
ダンジョン
魔物が出現し、さまざまな素材が眠る地下洞窟。単に「迷宮」と呼ばれていることもある。複数の階層が存在し、一般的には深くなるほど危険が増す。人の集まりやすいダンジョンによって栄えた土地は「迷宮都市」として親しまれており、冒険者も多く活躍している。ガイアスが生きた時代では壁を通して魔石や迷宮粗鉱などが集めやすいうえに、魔物の戦闘を通してレベルアップを図るという使い方が一般的だったが、現在は壁からの素材集めは難しくなっている。まれに発生する魔物の大量発生地点は「モンスターハウス」と呼ばれ、魔物の大量討伐によるレベルアップや、魔物の体内にある魔石集めに活用されている。このモンスターハウスの存在や階層主と呼ばれている強力な魔物の出現があるため、実力に見合わない階層は命のリスクすらある。魔族による工作で現代人のあいだでは攻略が進んでおらず、迷宮粗鉱の存在は忘れられている。
その他キーワード
魔剣 (まけん)
魔法効果が付与された剣。単に切れ味が増すだけでなく、壁などを砕くこともできる。剣に直接魔力を流す方法と、手間はかかるが剣にはめ込まれている魔法陣が刻まれた魔石に魔力を流し込んで付与する方法がある。付与魔法との相性がいい栄光紋の持ち主が付与すると、より高い効果を得られる。かつては駆け出しの魔法付与師でも三つから四つくらいの付与が当たり前であったが、魔法技術が低下した現代では二つ付与されているだけでも国宝級として重宝されている。一部の国では、かつてガイアスが使っていた魔剣も宝物庫などに保管されている。
失格紋 (しっかくもん)
人間が持つ魔法の性質を示す紋章のうち、栄光紋(第一紋)、常魔紋(第二紋)、小魔紋(第三紋)に次ぐ四つ目の紋章。ガイアスの生きた時代では「第四紋」と呼ばれていた。常魔紋の火力と小魔紋の連射性能が組み合わさったような紋章で、かつては魔法戦闘においてもっとも適していると高く評されていた。ただし射程はほかの紋章よりも短いために、剣術での攻撃などを組み合わせるのが一般的である。現代では失格紋の名称どおり魔法レベルの低い者の烙印(らくいん)のように扱われて社会的に冷遇されており、特に貴族の跡取り選定においては失格紋を持つだけで大幅なマイナスとなり、入学試験などにおいても不利を強いられている。これらの間違った知識を人類に広めたのは「魔族」と呼ばれている人型の魔物たちであり、繁殖力が弱くガイアスにほとんど倒されたために、現代では人間に化けて人間社会に溶け込みながら魔法知識を歪ませる工作を進め、人類を少しずつ弱体化させている。
栄光紋 (えいこうもん)
人間が持つ魔法の性質を示す紋章のうち、一つ目の紋章。ガイアスの生きていた時代では「第一紋」と呼ばれ、彼が持っていた紋章でもある。完成度の高い武器作りや付与魔法にもっとも優れており、強力な魔剣を生み出すことも可能。一方で魔法戦闘においてはもっとも弱く、同じような訓練をしていても成長限界が低いために、すぐにほかの紋章と差が出るようになる。このため武具の制作や修繕、結界用具の作成などのサポート役として、この紋章を持つ者がパーティに一人は必要である。また、魔族によって魔法知識が歪められ無詠唱魔法よりも詠唱魔法が優れているとされている現代では、戦闘に優れた紋章として広まっており、社会的にもっとも優遇されている。
壊星 (かいせい)
宇宙から飛来した謎の物体。その正体は宇宙の魔物の死体の破片。「理外の術」と呼ばれている人間の能力や常識を超えた不思議な力を宿しており、一部が落ちるだけでその土地全体に深刻な影響をもたらす。現代には死者蘇生の力を宿した壊星が落ちていた影響で、死んだはずの魔族や古代の危険人物が蘇生する事態に発展し、落下現場の周辺では古代の魔物の大量発生も起こっていた。
クレジット
- 原作
-
進行諸島
- キャラクター原案
-
風花風花
書誌情報
失格紋の最強賢者 ~世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました~ 28巻 スクウェア・エニックス〈ガンガンコミックスUP!〉
第1巻
(2017-12-13発行、 978-4757555457)
第19巻
(2022-06-10発行、 978-4757579705)
第20巻
(2022-09-12発行、 978-4757581463)
第21巻
(2022-12-12発行、 978-4757583122)
第22巻
(2023-03-10発行、 978-4757584747)
第23巻
(2023-06-12発行、 978-4757586178)
第24巻
(2023-09-12発行、 978-4757588028)
第25巻
(2023-12-12発行、 978-4757589667)
第26巻
(2024-03-12発行、 978-4757591103)
第27巻
(2024-06-12発行、 978-4757592551)
第28巻
(2024-09-12発行、 978-4757594265)