幕末スピンオフの概要と魅力
『無限の住人』は沙村広明による人気作品で、講談社「月刊アフタヌーン」にて1993年8月号から2013年2月号まで連載された。コミックスは全30巻が刊行され、二度のアニメ化や実写映画化も実現し、1997年には第1回「文化庁メディア芸術祭」マンガ部門で優秀賞を受賞するなど、多くの支持を集めている。本作『無限の住人~幕末ノ章~』は、原作の約80年後、幕末の時代を舞台にしたスピンオフ作品。不死の剣客、万次が変わらぬ姿で登場し、天下無双の活躍を繰り広げる。また、綾目歩蘭人のひ孫である歩蘭など、原作で万次と因縁のあった人物の血縁者が登場する点も見どころの一つとなっている。
不死の剣士、万次と龍馬の出会い
1850年、逸刀流との戦いを終えた万次は、単身アメリカへ渡った。サンフランシスコでは、大太刀一本で銃を持つマフィアの軍勢を制圧するなど、一騎当千の活躍を見せていた。それから14年後、帰国して土佐で隠棲(いんせい)していた万次のもとに、「坂本龍馬」と名乗る男が訪れる。龍馬は、万次が不死となった経緯や、贖罪(しょくざい)のために1000人の悪党を斬り続けているにもかかわらず、なお不死から逃れられないことを聞くと、「天」が万次に生きることを望んでいるのではないかと推測する。そして、現在日本にせまる危機を説いたうえで、「贖罪のために1000人の悪党を斬るのではなく、1000人の人を助けてみてはどうか」と提案した。その言葉に興味を抱いた万次は誘いに応じ、龍馬と共に京の都へ向かうのだった。
京の都で繰り広げられる新選組との抗争
京の都にたどり着いた万次は、桂小五郎の護衛を任される。彼の前には、病に苦しみながらも圧倒的な剣の腕を誇る沖田総司や、龍馬と同じく北辰一刀流を極めた山南敬助、かつて反逆者として葬られたものの、「血仙術」と呼ばれる秘術によって蘇(よみがえ)り、化け物と化した鴨壱號など、新選組の強敵たちが次々と立ちはだかる。彼らが万次を執拗(しつよう)に狙う理由は、単に龍馬たちの味方だからというだけでなく、万次の体内に埋め込まれた血仙蟲(けっせんちゅう)こそが、彼らが用いる血仙術の起源であるためだった。
登場人物・キャラクター
万次 (まんじ)
長い年月を生き抜いてきた剣客の男性。右目は隻眼(せきがん)で、背中には「卍」の模様が入った着流しを身にまとっている。かつて「八百比丘尼(やおびくに)」と名乗る老婆により体内に血仙蟲を埋め込まれ、不老不死の身体を手に入れた。そのため、逸刀流との戦いから約80年が経った現在も、まったく変わらぬ姿を保っており、100歳を超えてからは自分の年齢を数えることすらやめている。ただし、完全な不死身ではなく、首を刎(は)ねられたり飢えたりすれば死ぬと自ら公言している。かつて共に戦った仲間たちはすでに亡く、現在は土佐の海沿いにある小屋でひっそりと暮らしている。なお、約10年前にアメリカに滞在していた経験により英語が堪能であるため、勝海舟をはじめとする一部の関係者から「ジョン・マン」と呼ばれることもある。
坂本 龍馬 (さかもと りょうま)
長州藩を支援する若き青年。隠遁生活を送っていた万次を奮い立たせるほどの説得力と、周囲を惹(ひ)きつけるカリスマ性を併せ持つ。人をまとめて仲間を増やす才能に優れる一方で、北辰一刀流の達人でもあり、かつて同門だった山南敬助を打ち負かすほどの剣の腕前を誇る。かつては幕府の軍艦奉行、勝の暗殺を企てたが、対面した際に彼の語る未来のビジョンに感銘を受け、同志となった。勝から万次の存在を知らされ強い関心を抱き、力を借りるために単身で土佐へ赴く。万次と合流後は彼を京へ招き、新選組をはじめとする幕府軍と激闘を繰り広げながら、討幕の足掛かりとして「会社」という概念について万次に教えを乞う。実在の人物、坂本龍馬がモデル。
クレジット
- 原作
-
滝川 廉治
- 協力
関連
無限の住人 (むげんのじゅうにん)
沙村広明のデビュー作で代表作の一つ。江戸時代を舞台に、不老不死の肉体を持つ男、万次と、両親を殺され復讐を誓う少女、凜の姿を描く。剣客集団・逸刀流に両親を殺された凜が、仇討ちを遂げるため万次に用心棒を依... 関連ページ:無限の住人
書誌情報
無限の住人~幕末ノ章~ 10巻 講談社〈アフタヌーンKC〉
第1巻
(2019-10-23発行、978-4065171783)
第2巻
(2020-04-23発行、978-4065190852)
第3巻
(2020-10-23発行、978-4065211069)
第4巻
(2021-04-23発行、978-4065229101)
第5巻
(2021-10-21発行、978-4065251638)
第6巻
(2022-04-21発行、978-4065274200)
第7巻
(2022-10-21発行、978-4065294710)
第8巻
(2023-04-21発行、978-4065313718)
第9巻
(2023-11-22発行、978-4065335352)
第10巻
(2024-08-22発行、978-4065364987)








