あらすじ
第1巻
日置七生が通う学校で死体が発見された。見つけたのは七生の幼なじみである篠原音子と美山小枝子の二人で、死体は皮を剥がされていた。その事件を皮切りに次々と生徒や先生が妖怪、魍魎に喰われ、毎日少しずつ姿を消していくようになる。そんな中、魍魎に襲われて殺されかけた七生は、父親の主計に助けられる。実は主計は人間ではなく、妖怪を喰う吸血鬼であった。主計の活躍によって学校を根城にしていた魍魎は退治されたものの、妖怪に好まれる体質の七生は、普段の生活の中でも妖怪を引き寄せてしまう。一方の主計は、吸血鬼としての能力を使うと疲弊してしまい、助けた代償として七生に血を要求するのだった。
第2巻
幼い頃に亡くなった母親の夢を見た日置七生は、少し感傷的な気持ちになっていた。そんな弱みにつけこんだ主計に血を吸われた七生はダウンし、学校には午後から登校する。そんな七生の前に、人の記憶さえもあやつる事ができる蜘蛛の妖怪が出現。蜘蛛の妖怪は次々と生徒や先生達を襲い、七生にも襲いかかるが、駆けつけた主計によって、すんでのところで成敗される。
その後、デパートで開催された吸血鬼の展示会に行った七生と篠原音子は、金髪の美少女、シビュラ=サウジーネ=ド=ラ=トゥルダと出会う。実は彼女は吸血鬼で、トランシルヴァニアから主計を連れ戻しに日本へやって来たのである。主計は力ずくで連れ帰ろうとするシビュラと戦うものの、二人の実力は拮抗し、なかなか勝負がつかない。ひとたび停戦となり、主計と七生は家へと帰るが、そんな二人の前に七生の本当の親だと名乗る男性、日置一郎が姿を現す。そして一郎は七生に対し、主計が、かつて自分が吸血鬼の灰を使って甦らせた存在であると語る。
登場人物・キャラクター
日置 七生 (ひおき なお)
主計の息子で男子高校生。妖怪に好かれる体質の持ち主で、妖怪を次々と引き寄せてしまう。亡くなった母親の術によって守られているが、ピンチに陥った際には、それを察した主計が助けにやって来る。まじめで堅実な性格をしており、自分を溺愛する主計に対しては憎まれ口をたたきながらも、心の底では信頼している。
主計 (かずえ)
ミステリー作家の男性。日置七生の父親。イケメンで女性に人気があり、主計本人も女ったらしなところがある。実は人間ではなく、その正体は妖怪を喰う吸血鬼。人間と同じ食事もするが、人間の血も好む。七生を溺愛しており、何かと彼の血を吸いたがる。
シビュラ=サウジーネ=ド=ラ=トゥルダ
トランシルヴァニアからやって来た女性。金髪の若い美人だが、その正体は人間を喰らう吸血鬼。かつては主計と共に人間を喰らっていたが、主計が日本へ行ってしまったため、そのあとを追いかけて来た。日置一郎によって倒される。
日置 一郎 (ひおき いちろう)
日置七生の実の父親だと名乗る男性。十数年ぶりに外国から戻って来た。不思議な呪術を使いこなす。実は20年以上前に東ヨーロッパで手に入れた吸血鬼の灰から、主計の生命を甦らせた張本人で、主計を溺愛している。
篠原 音子 (しのはら おとこ)
日置七生と同じマンションに住む女子高校生。七生の幼なじみでクラスメイトでもある。篠原楽子とは双子の姉妹。主計に憧れてミステリー作家を目指しており、七生の身の回りで起こる事件に興味津々。グロテスクな死体を見ても、まったく驚く様子を見せない、図太い神経をしている。同人誌の絵を描くのが趣味で、好きなジャンルはBL。
篠原 楽子 (しのはら らくこ)
日置七生と同じマンションに住む女子高校生。七生の幼なじみの篠原音子の双子の姉妹。見た目は音子そっくりで、幼なじみの七生でも見分けがつかないほどよく似ている。同人誌の絵を描くのが趣味で、好きなジャンルはBL。
美山 小枝子 (みやま さえこ)
日置七生のクラスメイトの女子高校生。七生に憧れの気持ちを抱いている。篠原音子と共に死体を発見し、そこに落ちていた佐伯のブローチを発見した。この件について佐伯本人に確かめに行ったところ、殺されて皮を剥ぎ取られてしまう。
佐伯 (さえき)
日置七生の通う高校の女性教師。英語を担当している。肉感的で、性的魅力にあふれた人物。妖怪に殺されて、皮を剥ぎ取られ、以降その妖怪に成り代わられてしまう。
川西 (かわにし)
日置七生のクラスメイトの女子高校生。古着屋で買ったワンピースに取り憑いていた霊に苦しめられ、交通事故に遭って重体になってしまう。
土田 (つちだ)
日置七生のクラスメイトの女子高校生。派手好きな性格で、金欲しさに自らの下着を売っていたが、さらに援助交際をしていたところで妊娠してしまう。病院で堕胎するものの、のつごに取り憑かれ、階段から落ちて意識不明になる。
三宅 麗子 (みやけ れいこ)
日置七生のクラスメイトの女子高校生。金持ちのお嬢様で、いっしょに豪邸に住む「ミミ」という名の飼い猫をかわいがっていた。二人組の強盗に殺されてしまう。
魍魎 (もうりょう)
人間を喰らい、皮を剥ぎ取ってその人物になりすます妖怪。日置七生の学校に潜入し、最初に佐伯を、次に深山小枝子を襲って本人になりすまし、七生を襲おうとするが、主計によって倒される。
おぼろ車 (おぼろぐるま)
道行く人を次々とはねる車の妖怪。日置七生を襲おうとして、主計によって倒される。もとは人間の女の子だったが、ひき逃げに遭い、まだ息があるにもかかわらず山中に遺棄された事を恨み、妖怪になった。自分を殺した相手を殺しても飽き足らず、関係のない人を殺していた。
ヒダルガミ
餓死した人の霊が変化した妖怪。お腹を空かした人を襲い、身体を動けなくする。日置七生を襲おうとして、主計によって倒される。もとは古アパートで誰にも知られず餓死した人物だった。
樹木子 (じゅぼっこ)
たくさんの人の血を吸った樹木が変化した妖怪。かつては古戦場などでよく見られた。もともとは大きな事故が多発する場所に生えていた桜の大木だったが、切り倒そうとした工事現場の人達を襲った。その謎を解明しようとした篠原音子と、彼女を止めようとした日置七生を襲おうとして、主計によって倒される。
付喪神 (つくもがみ)
年を経た道具類に精霊が宿って事から変化した妖怪。不法投棄の粗大ごみから生まれた。不法投棄するためにやって来た人間を次々に襲った。その謎を解明しようとした篠原音子に付き合わされた日置七生を襲おうとして、主計によって倒される。
古着の怪 (ふるぎのかい)
死んだ女の念が、その時に着ていたワンピースに乗り移って妖怪化したもの。古着屋で川西によって買われたワンピースで、まず彼女に呪いをかけ、次に譲渡された篠原音子に乗り移る。主計によって倒される。
橋姫 (はしひめ)
橋のたもとに建つ洋館に住んでいた女性の怨念。いっしょに住んでいた男性に捨てられ、怨念として橋姫になった。日置七生を襲おうとして主計によって倒される。橋姫は川に人を引き込むといわれているが、同時に川の守り神でもある。
蜘蛛 (くも)
蜘蛛の妖怪。人間の女子高校生に変身し、日置七生のクラスメイトや校内の人物に幻惑の術を使って、自分もクラスメイトだと思い込ませた。七生が生前の母親に託されたものを奪いにやって来たが、主計に倒される。
のつご
間引きされて野原に埋められた子供が化けた妖怪。低級妖怪で、地面からはい出て人を捕まえて動けなくする。赤ちゃんを堕胎した土田を襲った。たまたま居合わせた篠原音子に憑りつき、日置七生を襲おうとするが、七生によって浄化される。
化猫 (ばけねこ)
三宅麗子が飼っていた猫。「ミミ」という名前だったが、強盗に殺された麗子の仇討のために化猫が麗子に化けて、犯人の二人組を喰い殺した。復讐を遂げたあとは七生や篠原音子を襲おうとするが、主計によって倒される。
夜行 (やぎょう)
節分や庚申(かのえさる)の晩に、首のない馬に乗って現れる妖怪。夜行封じの塚が交通事故で破壊されたため出没するようになる。好奇心に駆られて現場を訪れた篠原音子が襲われ、日置七生が術を使って初めて一人で倒した妖怪。