あらすじ
第1巻
基礎的なテクニックばかりにこだわり、マイペースに体操を続けていた天原満月は、中学3年の終わりに初めて体操の大会に参加する。堅実に技をまとめると同時にぶっつけ本番の大技を決めて優勝を飾った満月は、この大会で出会った堂ヶ瀬朔良の、自分とは異なる体操観に衝撃を受け、強引に朔良の進学先を聞き出して彼と同じ兎田高校への進学を決める。体操部に入部した満月は、相変わらずマイペースな言動で、いきなり難易度の高い「新月面」の練習を始め、周囲を呆れさせる。そんな中、部内で試技会が開かれることになり、顧問である瓜生春馬は満月や朔良に対する配慮から、難易度の限られた技だけで試技会を行うように命じる。
第2巻
兎田高校男子体操部の試技会が始まった。天原満月は堅実な技を重ねて点数を稼いでいくが、堂ヶ瀬朔良はルールの上限ぎりぎりの難易度の大技を繰り出し高得点を重ねていた。しかし、朔良は最後の種目で失敗し、最終的に1位は部長の浅沼達也、2位が満月、3位が朔良という結果に終わった。そんな中、陽田あかりの誘いで、満月と朔良、そして九藤臣は全日本体操個人総合選手権を見学しに行くこととなる。その大会には朔良の兄の堂ヶ瀬暁良が出場しており、彼は8位と大健闘の成績を収める。後日、体操部顧問の瓜生春馬と先輩の紅村右京は、6月のインターハイ予選大会の参加に先立ち、5月に開催される小さな体操大会「第1回ムサシノ杯」に、競技大会の経験の浅い満月を出場させることを決める。
第3巻
兎田高校体操部は、第1回ムサシノ杯に出場することになった。大会は「5-3-3制」と呼ばれる、オリンピックでも採用されていた団体戦方式で行われ、先に行われた女子部は見事優勝を飾った。一方、男子部は東京のインターハイ常連校で、浅沼達也と顔見知りの市原証がいるひばり山高校が最大のライバルとして立ちはだかる。ひばり山高校のエースの後藤真里央は華麗な演技で高得点を稼ぎ、堂ヶ瀬朔良も難易度の高い技に挑戦し得点を重ねていく。一方、団体戦が初体験の天原満月はスランプに陥っていた。自分の体操ができていないと感じた満月は、いったん団体戦であることを忘れ、自分自身の体操だけに集中してどうにか調子を取り戻す。
登場人物・キャラクター
天原 満月 (あまはら みつき)
兎田高校に通う男子。1年3組に在籍している。自分の体を思い通りに動かしたいという考えから、小学校の頃からクラブに所属して体操を続けていたが、堂ヶ瀬朔良と出会って真剣勝負の体操に衝撃を受け、朔良と同じ兎田高校に進学する。長年、基礎的なトレーニングばかりしてきたことから体幹がしっかりしており、難易度の高い技にも果敢に挑戦している。体操種目の中では、特にあん馬を得意としている。成績優秀で一見まじめそうに見えるが、体操以外のことにはあまり興味がなく、授業中は居眠りをしている。周囲からは「ミツ」のあだ名で呼ばれている。
堂ヶ瀬 朔良 (どうがせ さくら)
兎田高校に通う男子。1年1組に在籍している。陽田あかりとは幼なじみ。中学時代の体操大会で全国1位に輝き、エリートとして将来を嘱望されている。兄の堂ヶ瀬暁良とは険悪な関係で、同じ学校に進学するのを避けて兎田高校に入学した。これまで体操一筋の生活を送っていたため世事に疎く、私服のセンスも悪い。
九藤 臣 (くどう おみ)
兎田高校に通う男子。1年3組に在籍している。天原満月とはクラスメイト。陽田あかりが体操部に所属していたことから、未経験ながら軽い気持ちで体操部に入部した。体操の技術は未熟ながら、良好な人間関係を築くのが得意で、家事もそつなくこなす器用な一面がある。
陽田 あかり (ひだ あかり)
兎田高校に通う女子。1年3組に在籍している。天原満月とはクラスメイト。堂ヶ瀬朔良と朔良の兄の堂ヶ瀬暁良とは幼なじみで、昔からいっしょのクラブで体操を続けていた。芸術一般が苦手で、極度の音痴なうえに絵を描くのも下手。
浅沼 達也 (あさぬま たつや)
兎田高校に通う男子。3年5組に在籍している。天原満月の2学年上の先輩で、体操部では男子部長を務めている。飛び抜けた体操の才能があるわけではないが、地道にコツコツと練習に励んでいる努力家で、部員たちからの信頼は厚い。同学年の体操部員からは、「タッツン」のあだ名で呼ばれている。
紅村 右京 (べにむら うきょう)
兎田高校に通う男子。3年1組に在籍している。天原満月の2学年上の先輩。体操部に所属しているが、体操が好きというより勝負に勝つことを一番の目標としている。かつて挫折して体操をやめようとしたことがあるが、浅沼達也に引き止められて今も体操を続けている。
伊集院 奏子 (いじゅういん かなこ)
兎田高校に通う女子。1年3組に在籍している。天原満月とはクラスメイト。非常に背が高く、将来はモデルを目指している。容姿端麗なことから男子に人気が高いが、女子には嫌われている。自分のモデルとしての才能に限界を感じ、行き詰まりを覚えている。ちょっとしたきっかけから、満月に惹かれるようになる。
瓜生 春馬 (うりゅう はるま)
兎田高校に勤める中年の男性教師。体操部の顧問も務めている。生徒の自主性を尊重するとうそぶいており、ふだんは昼行灯めいた言動を取っている。しかし実は体操への造詣が深く、生徒たちを見る目も優れた有能な指導者である。
堂ヶ瀬 暁良 (どうがせ あきら)
堂ヶ瀬朔良の2学年年上の兄。体操界の名門、金烏台高校の体操部に所属している。高校3年生にして既にシニアを含めた男子体操選手の中で十指に入るほどの実力の持ち主。朔良とは昔からいっしょに体操をしていたが、現在はあることが原因で対立している。陽田あかりとは幼なじみ。
柴田 周一朗 (しばた しゅういちろう)
天原満月と同学年の幼なじみの男子。満月を体操の世界へと誘った人物。満月が初めて出場した大会で、その才能を目のあたりにして刺激を受け、体操界の名門、金烏台高校に進学し体操部に入部した。しかし体操部のレベルが高過ぎて、現在は伸び悩んでいる。
市原 証 (いちはら あかし)
東京の強豪校、ひばり山高校の体操部に所属している男子部員。学年は天原満月より二つ上。インターハイ出場2回の経験を誇る、全国レベルの実力の持ち主。後藤真里央とは同郷の幼なじみで、東京に上京する前からいっしょに体操をしていた。
後藤 真里央 (ごとう まりお)
東京の強豪校、ひばり山高校の男子体操部の部長を務める男子。学年は天原満月より二つ上。インターハイ出場2回の経験を誇る、全国レベルの実力の持ち主。毒舌家かつナルシストな性格ながら、体操に対する愛と情熱は本物。市原証とは同郷の幼なじみ。
クレジット
- 監修
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水鳥 寿思