概要・あらすじ
未来のとある宇宙船が舞台。木星の宇宙観測基地の任務を解かれた2人の男が地球に帰ることになった。2人は犬猿の仲で、周りの制止を聞かずに決闘を始める。ついに相手を殺した主人公の隊員は、死体を船外へ放り出す。自分には良心がないと豪語する隊員だったが、良心の呵責からか、窓の外に殺した相手の姿を見てしまう。密閉された空間と、窓から船内を覗く被害者の姿に、次第に正気を失っていく主人公の姿を描いたSF。
掲載誌が「空想科学少年誌」とサブタイトルされた貸本漫画短編誌『鉄人』だったために描かれた、つげ義春にしては珍しいSF設定の作品。
登場人物・キャラクター
隊員 (たいいん)
木星の宇宙観測基地の隊員。任務を解かれ、迎えに来た宇宙船に乗って地球へ戻る。木星で一緒に勤務していた男とは犬猿の仲で、ついに相手を殺してしまう。罪の意識はなく、殺人罪で罰せられるよりも、相手の死のほうが喜びが大きいという。罪人として個室に閉じ込められ、右舷の窓に自分が殺した相手の姿を見てしまう。
被害者 (ひがいしゃ)
木星の宇宙観測基地の隊員。隊員とは犬猿の仲で、決闘の末に殺され、船外に放り出されてしまう。
機長 (きちょう)
木星から地球を目指す宇宙船の機長。殺人を犯した主人公の隊員を、密室に閉じ込める。自分に良心はないという隊員に、魂の存在を肯定するような発言をし、殺人者が死者の霊に怯えることがある、と話す。