甲鉄城のカバネリ

甲鉄城のカバネリ

TVアニメ『甲鉄城のカバネリ』のコミカライズ作品。死体のまま動き回り、嚙んだ人間をウイルス感染させて同族へと変える怪物、カバネが跋扈する世界を描いたSF作品。カバネリとなった少年、生駒と、同じくカバネリである少女、無名を中心として、カバネに抗う者達による人間ドラマが展開される。時代劇を模した登場キャラクターなど、独特の世界観を持つ。「月刊コミックガーデン」2016年6月号から連載の作品。

正式名称
甲鉄城のカバネリ
ふりがな
こうてつじょうのかばねり
原作者
カバネリ製作委員会
漫画
ジャンル
その他SF・ファンタジー
関連商品
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あらすじ

第1巻

顕金駅で暮らす少年整備士、生駒は、周囲から「無謀だ」と馬鹿にされつつも、カバネと戦う方法を見つけ出すため、日々カバネについての研究に明け暮れていた。そんなある日、顕金駅はカバネの侵入を許してしまう。生駒もまたカバネに襲われるものの、自らの研究成果である武器、ツラヌキ筒を利用し、カバネを倒すことに成功。その時に負った傷によりカバネウイルスに侵されてしまうが、ウイルスが脳に達する前に進行を食い止めたために、半分カバネの状態となって生き残る。

一方、顕金駅を治める四方川家当主の四方川堅将は、カバネ襲撃により顕金駅の放棄を決定。堅将の娘、四方川菖蒲は、顕金駅を脱出するための駿城甲鉄城の確保へと向かう。甲鉄城へと向かう道はカバネにより埋め尽くされていたが、そこへと現れた少女、無名が類まれな戦闘力を発揮。菖蒲は彼女の力を借りて甲鉄城を確保し、顕金駅からの脱出を図る。ここに生駒も合流するが、半カバネ化していた彼は武士である来栖により粛清されてしまう。一度は強制的に甲鉄城から降ろされる生駒だったが、友人の逞生や無名に助けられ、彼もまた甲鉄城へと乗ることになった。

第2巻

生駒無名は、カバネリとして甲鉄城へと乗り合わせた。だが甲鉄城の乗員達には、カバネを乗せているという不安が広がっていた。その不安は次第に大きくなり、遂に爆発。生駒と無名、そして彼らを庇う者達はボイラー車へと押し込められ、甲鉄城との連結を切り離されて処分されそうになってしまう。だがそんな中、新たなカバネの集団が甲鉄城へと襲い掛かる。カバネの被害を防ぐために四方川菖蒲は武士達を引き連れ、カバネを迎え撃つ。

一方、カバネ襲撃騒ぎによってボイラー車の切り離しを逃れた生駒と無名は、甲鉄城の天井を伝って皆の救援へと向かう。戦を覚えたカバネ、ワザトリを前に苦戦を強いられていた菖蒲達の前に現れた生駒は、協力してワザトリを撃退に成功。生駒と無名はこの戦闘での功績を評価され、皆に仲間として認められる。

その後、甲鉄城は八代駅へと到着するが、先に進むためには、線路に倒れ掛かった障害である竪坑櫓を除去する必要があった。甲鉄城の乗員達はこの障害を除去するための作戦を立て始める。そんな中、無名は、知り合いである榎久と出会う。彼の言葉により不安を掻き立てられた無名は仲間達に反発し、単身、カバネを倒すために飛び出してしまう。その後、無名は彼女を助けようとした生駒もろとも、崖下へと転落していく。しかも、カバネを刺激したために、新たな脅威である黒けぶりを呼び寄せてしまう。

登場人物・キャラクター

生駒 (いこま)

顕金駅で整備士として働いていた少年。ボサボサの黄土色の髪で、眼鏡をかけており、右手の手のひらに緑の石を縄で巻き付け、つねに持ち歩いている。勇敢な熱血漢だが、相手が身分の高い武士であっても、喧嘩を売ってしまうような無鉄砲な一面がある。それ故に理不尽な理由で牢屋に入れられてしまうなど、しばしば不当な扱いを受ける。その無謀さから、同僚達からは「英雄」と呼ばれているが、これは言葉どおりではなく揶揄してのものである。 化け物であるカバネに対抗する手段を模索するため、友人である逞生と共に日夜研究に明け暮れている。顕金駅がカバネに襲われた際、自らの研究成果である武器、ツラヌキ筒を用いて撃退するが、その時の戦闘でカバネに嚙まれてしまう。 その後、カバネのウイルスが脳へと達する途中で、その浸食を食い止めることに成功。結果、半身のみがカバネ化し、「人とカバネの狭間にある存在」であるカバネリになった。カバネリになった際、前髪の一部が白色化している。カバネリになった後は、栄養源となる血が足りなくなると正気を失い、カバネとしての性質が色濃く出てしまう。 のちに甲鉄城にて顕金駅を脱出するが、当初はカバネと近しい存在であったため、周囲には受け入れられなかった。しかし、カバネ襲来の危機において率先して対応してみせてからは、仲間として受け入れられるようになる。

無名 (むめい)

四方川家の客人として顕金駅を訪れていた少女。ショートカットの髪型で可愛らしい容姿をしているが、見た目に反して凄まじい戦闘力の持ち主。カバネとの戦闘に際しては、銃身の先に刃が装着されている特殊な銃を二挺用いて戦う。カバネの群れを相手にしても圧倒するほどの実力者で、顕金駅がカバネに襲われた際は、脱出手段である駿城、甲鉄城への道を単身で切り開いた。 天真爛漫で、世話好きな性格だが、多くの死線を超えてきたゆえのシビアさも併せ持つ。実は「人とカバネの狭間にある存在」であるカバネリで、高い身体能力はカバネリ化したために得た能力である。そのため、血が足りなくなると活動できなくなり、眠ってしまう。兄様と慕う存在に会うため、金剛郭を目指しており、その道中が同じため甲鉄城に乗り合わせ、用心棒のような役割を担っている。 長く戦うと眠ってしまうという弱点をカバーするため、自らと同じくカバネリ化した生駒を「生きてる盾」として必要としている。かつて兄様に命を助けられたことがあり、彼を慕っているが、同時に彼に見捨てられることを強く恐れている。 兄様の言う「弱い者は切り捨てられる」という言葉を自らの教訓としており、「弱くなった」と、兄様の部下である榎久に言われた時には、兄様に見捨てられることに恐怖し、激しく動揺した。この際、甲鉄城の者達と「仲間ごっこ」をしているのが、弱くなった理由だと思い込み、彼らに独善的な態度を示してしまう。さらに八代駅における作戦では、四方川菖蒲の指揮を無視して独断でカバネと戦った結果、窮地に陥る。 「弱い者は切り捨てられる」という兄様の教え通り、皆に見捨てられるのを覚悟したが、それに反して助けに来た生駒や甲鉄城の仲間達に心を打たれ、「弱い者は切り捨てられる」という兄様の教えが絶対的でないと知る。

四方川 菖蒲 (よもがわ あやめ)

顕金駅をおさめる領主、四方川家で惣領を務める女性。長い髪を頭後ろで束ねており、頭には花飾りを付けている。さらに上品な着物を着用しており、気品溢れる外見をしている。顕金駅がカバネに襲われた際に、父親である四方川堅将を失い、なし崩しに四方川の実質的な当主となり、甲鉄城の指揮決定権を握る。指導力に欠けると自覚しており、皆をまとめる自信もなかったため、当初は四方川家の重鎮である六頭領に指揮決定権を譲っていた。 しかし、のちに六頭領が皆を導く器ではないと悟り、四方川菖蒲自身が、皆を指導する存在として強くあらねばならないと決意。その後、甲鉄城においてカバネによる被害を最小限に抑えたことが認められ、再び指揮決定権を握る。 指導者としては皆を優しく取りまとめるタイプで、周囲から恐れられていたカバネリの生駒や無名にまで気遣うほどの人格者。生駒とは、彼がカバネリになる前から面識があり、彼が正しくあろうとするその姿勢を高く評価。カバネリとなったあとも彼の行動には強く期待している。

来栖 (くるす)

四方川家に仕えている武士の男性。黒髪で、鋭い目つきをしている。実直な性格ではあるが、その分融通が利かない頑固者。カバネの疑いがあった生駒に対しても冷酷な態度を見せるなど、危機意識が強すぎる一面がある。四方川家の当主である四方川堅将により、その娘の四方川菖蒲を託されており、堅将が亡くなったあとはより一層、菖蒲を守るため忠誠を誓っている。 剣術に長けており、カバネを一刀両断するなど戦闘における実力は非常に高い。当初はカバネリである生駒や無名を信用してはいなかったが、甲鉄城においてワザトリを共に倒して以降は、生駒達を一応は仲間として認めるようになる。

逞生 (たくみ)

顕金駅で整備士として働いていた少年。黒髪短髪でふくよかな体系をしている。友人である生駒と共に、化け物であるカバネの研究に明け暮れていた。生駒がカバネに嚙まれたと知った際は、内心では恐れを抱いていたが、それでもなお、彼を助けるために行動を起こすなど、友人想いの一面を持つ。生駒がカバネリであると知ってからは、つねに彼の理解者として共に行動している。 八代駅での作戦において、カバネリである生駒を見捨てるような発言をした六頭領に対しては、反論するような姿勢を見せている。

(かじか)

顕金駅で暮らしていた、サイドテールの髪形をした少女。顕金駅がカバネの被害を受ける中、甲鉄城にて脱出した。生駒や逞生とは以前からの友人で、甲鉄城での脱出時に武士に捕らえられた生駒の安否を信じ、彼を心配をする逞生を励ましていた。心優しく世話好きな性格で、カバネリである生駒や無名が皆の非難を受ける中も、彼らを擁護するなど人格者でもある。

巣刈 (すかり)

顕金駅で整備士として働いていた少年。ボサボサの髪を頭の後ろで束ねている。皮肉屋で斜に構えた態度を取ることが多く、その対応は誰に対しても公平。それが災いし、カバネリに対する非難が高まった際には、彼らの味方であると見なされ、生駒や無名達と共にボイラー車に監禁された。ここ一番には力を発揮する勇気のある人物で、八代駅における作戦でも、逞生と共にクレーン車を動かす役割を担った。

侑那 (ゆきな)

駿城の運転士見習いの少女。ショートカットの髪型で、クールな雰囲気を漂わせている。顕金駅がカバネに襲われた際、見習いながら、甲鉄城の運転を任された。寡黙で冷戦沈着だが、カバネリである生駒や無名に血を分ける役割として名乗りを上げるなど、人情深い一面もある。

吉備土 (きびと)

四方川家に仕えている武士。黒髪をショートカットにした大柄な男性。来栖と共に四方川菖蒲の身辺警護を任されている。先入観や周囲の声に流されず、自らの判断を信じるタイプ。カバネリである生駒や無名が、仲間として心強い存在であると、いち早く気づいていた。

四方川 堅将 (よもがわ けんしょう)

顕金駅をおさめる四方川家の当主を務めていた男性。黒髪で、口ひげと顎ひげを生やした、威厳のある外見をしている。カバネが蔓延る世界において「秩序」を重要視しており、そのためならば冷酷な判断を下すことも辞さない。顕金駅がカバネによる被害を受けた際には早々に放棄を決め、甲鉄城を確保しに向かった。しかし、その途中でカバネ化し、甲鉄城に乗る者達の前に姿を現す。

兄様 (あにさま)

無名が慕っている謎の男。金剛郭にいるとされている。無名の恩人にして、使えない者は即座に見捨てる容赦のない人物で、無名に「弱い者は切り捨てられる」という教えを説いた。榎久などの部下達を「耳」として方々に派遣し、有用な情報が即座に耳に入る体勢を整えている。榎久からは「若様」と呼ばれ、忠義を尽くされている。

信乃 (しの)

顕金駅で暮らしていた女性。もうすぐ生まれる赤子をその身に宿していた。顕金駅がカバネ被害を受ける中、甲鉄城にて脱出したが、実はその時すでにカバネのウイルスに蝕まれていた。その後、カバネ化して赤子と共に、無名によって処分される。

榎久 (えのく)

兄様の部下である男性。白髪で、右目を布で覆い隠し、左足を失っている。「耳」として方々の情報を兄様に流す役割を担っており、幕府がきな臭い動きをみせている、と兄様に知らせるため、無名に言伝を頼んだ。現在は怪我などを理由に前線を引いた身であるが、「耳」として兄様に有用な情報を流して、再び兄様の部下として前線で戦えるよう願っている。

場所

日ノ本 (ひのもと)

カバネの被害を受けている島国。20年前、幕府の将軍を中心とした判断により、高い壁に囲まれた駅が建設され、人々はそこでカバネを避けながら生活している。武士などを中心とした身分制度が存在しており、そのほか民衆の服装や生活レベルは江戸時代をモチーフとしている。ただ、蒸気機関が発達しているなど、現実の江戸時代とは大きく異なる点もある。

顕金駅 (あらがねえき)

四方川家がおさめている駅。重工業が盛んな駅で、それ故に駿城の訪れる機会が多い。大量のカバネが乗った扶桑城の侵入を許して壊滅的打撃を受け、領主である四方川堅将の判断で放棄される。

金剛郭 (こんごうかく)

顕金駅を脱出した甲鉄城が目指している駅。最先端のカバネ研究が行われている駅であり、無名が慕っている人物、兄様がいるとされている。無名は顕金駅が壊滅する以前から、ここを目的地としていた。

八代駅 (やしろえき)

狼煙が上げられていたために、甲鉄城が訪れた駅。甲鉄城が到着した時には、すでにカバネによる壊滅的被害を被っていた。周囲を高い塀に囲まれていたものの、黒けぶりに塀を乗り越えられ、被害を受けた。

扶桑城 (ふそうじょう)

顕金駅に訪れた駿城。顕金駅に着いた時には、すでに乗客全員がカバネ化しており、そのまま顕金駅へと侵入したため、顕金駅が壊滅するきっかけを作った。

甲鉄城 (こうてつじょう)

顕金駅が壊滅した日の昼間、偶然訪れていた駿城。顕金駅がカバネによる壊滅的打撃を受ける中、生き残った者達が脱出するために利用された。顕金駅をおさめていた四方川家の惣領となった四方川菖蒲によって指揮されている。

その他キーワード

カバネ

かつて人間であった化け物。死体でありながら動き回り、非常に攻撃的。血を求めて人間を襲い、嚙んだ部分からウイルスを感染させ、人間を同じくカバネへと変えてしまう特性を持つ。カバネに嚙まれた場合、即座にカバネとなるケースと、潜伏期間を経てカバネとなるケースの2種類があるが、嚙まれた時点ではカバネを逃れる手段はなく、カバネとなった者を治す手段も存在しない。 生前よりも身体能力が著しく強化されており、身体に付けられた傷はすぐに塞がり、頭を破壊されても活動を続けるなど、人間を遥かに上回る能力を持つ。心臓を核として動いており、活動を停止させるには、この核を破壊する必要がある。ただ、「心臓被膜」と呼ばれる非常に硬い膜で覆われているため、刀や銃弾などで破壊するには高い技術を必要とする。

カバネリ

人とカバネの狭間にある存在。無名や生駒がこれに該当する。半身がカバネ化しており、カバネのように身体能力の上昇や、傷がすぐに塞がるなどの特性を持つが、そのうえで人間の思考力も維持している。ただし、カバネと同じく血液を必要とし、血がなくなると活動が難しくなる。その時に起こりえる弊害は各個人によって異なり、無名の場合は眠くなり、生駒の場合は正気を失ってカバネのようになってしまう。 さらに血液が不足すると、完全にカバネ化する危険性もある。

(えき)

日ノ本に存在する、人が生活するための拠点。カバネの侵入を防ぐために、高い壁に周囲を覆われており、それぞれの駅は領主によって支配されている。駅同士は鉄道網でつながっており、駿城でそのあいだを行き来している。駿城が駅に到着した際には、潜伏期間中のカバネ予備軍が存在していないか調べるために検閲を行うなど、人の出入りに関しては細心の注意が払われている。 検閲にてカバネの疑いがあると判断された者は、3日間牢屋に閉じ込めて、その真偽を判断するという決まりとなっている。

駿城 (はやじろ)

駅間を張り巡らされた鉄道網を行き来するための蒸気機関車。カバネの侵入を防ぐために強固な鉄板で覆われており、各種の武装も施されている。駿城を動かすためには、「親鍵」と呼ばれるマスターキーが必要であり、これらの多くは領主などが管理している。

ワザトリ

カバネの中でも、戦を重ねて戦い方を覚えた個体。走行中の甲鉄城に襲い掛かることが多く、無名にも「厄介だ」と言わしめるほどの戦闘能力を持っている。甲鉄城を襲ったワザトリは二振りの日本刀を用いて戦っており、剣術の達人である来栖をも追い詰めるほどの実力を備えていた。

アワサリ

カバネの中でも、身体がつながった特殊な個体。八代駅における作戦展開中に、無名の前に立ちはだかった。血が足りなくなって動きが鈍っていたとはいえ、実力者である無名を圧倒するほどの強さを誇った。

黒けぶり (くろけぶり)

無数のカバネが一つに合わさり、巨大な人型のカバネとなったもの。高く、強固な壁に覆われていた八代駅へと侵入、崩壊の原因を作った。八代駅での作戦を展開する甲鉄城にも襲い掛かる。

ツラヌキ筒 (つらぬきづつ)

生駒と逞生が開発した、対カバネ専用の武器。釘打ち機を改造しており、圧縮した蒸気を用いて先の尖った金属を射出、「心臓被膜」で覆われたカバネの核をも貫くほどの破壊力を持っている。ただし、射程距離が短く、接近して使わないと効果がないという弱点を持っている。

自決袋 (じけつぶくろ)

紐を引くと起動する、お椀型の小型爆薬。カバネに嚙まれた際に自決するための物。胸に当てて起動して心臓を破壊し、心臓を核とするカバネへと変わることを防ぐ。カバネを巻き込んで自爆するという、ある種の攻撃手段としても用いることが可能。

クレジット

原作

カバネリ製作委員会

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