ここは今から倫理です。

ここは今から倫理です。

雨瀬シオリの代表作の一つ。現代の高校を舞台に、倫理科教師の高柳がさまざまな悩みや問題を抱える生徒たちと向き合う姿を描いた物語。各エピソードごとに異なる生徒が主人公となり、いじめや家庭問題、自己肯定感の欠如といった現代的な課題に直面する。高柳は、生徒たちに直接的な解決策を示すのではなく、倫理的な思考法を授けることで、生徒自らが問題と向き合うことをうながす。生徒たちは、そんな高柳の言葉を通して成長していく。本作は、哲学的・教育的な要素を含む学園ヒューマンドラマで、倫理学の概念が物語に織り込まれている。モノクロ基調の画面に象徴的なアクセントカラーを効果的に用いた視覚表現が特徴で、教育現場の日常と非日常が絶妙なバランスで描かれている。集英社「グランドジャンプPREMIUM」2016年11月号に読み切り掲載後、2017年7月号から2018年11月号まで連載。その後、同社「グランドジャンプむちゃ」2019年1月号から2025年9月号まで連載。2018年に第2回「みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞」ネクストブレイク部門第2位を獲得。テレビドラマが2021年1月から放送。小説が2020年12月に刊行された。

正式名称
ここは今から倫理です。
ふりがな
ここはいまからりんりです
作者
ジャンル
その他学園
レーベル
ヤングジャンプコミックス(集英社) / ヤングジャンプコミックスGJ(集英社)
関連商品
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作品の概要

基本情報

雨瀬シオリの代表作の一つ。

要旨と舞台設定

現代の高校を舞台に、倫理科教師の高柳がさまざまな悩みや問題を抱える生徒たちと向き合いながら、「人倫の道」や「道徳の規範」について考えさせていく物語。学校という閉ざされた空間の中で、普遍的な人間の本質にせまるテーマを扱っている。

ストーリー展開

物語ごとに各エピソードで異なる生徒が主人公となり、いじめや家庭問題、自己肯定感の欠如など現代的な課題に直面する様子が描かれる。高柳は直接的な解決策を示すのではなく、倫理的な思考法を授けることで、生徒自らが問題と向き合うことをうながす。生徒たちは、そんな高柳の言葉を通して成長していく。

ジャンル的特徴と位置づけ

本作は、哲学的・教育的な要素を含む学園ヒューマンドラマで、倫理学の概念が物語に織り込まれている。「問題解決型教師」を主人公とした学園もの作品とは一線を画し、生徒たちが自ら考え、答えを見出していく過程が重視されている。

作品固有の表現技法と特徴

作中では、クールな高柳と生徒たちの多様な心理描写の対比に重点が置かれている。高柳は教科書的な知識の提示ではなく「生きるための倫理」を追求する姿勢を貫き、それに触れた生徒たちの内面の変化が丁寧に描写される。また、モノクロを基調とした画面に象徴的なアクセントカラーを効果的に用いた視覚表現も、本作の特徴となっている。

連載状況

集英社「グランドジャンプPREMIUM」2016年11月号に読み切り掲載後、2017年7月号から2018年11月号まで連載。その後、同社「グランドジャンプむちゃ」2019年1月号から2025年9月号まで連載。

受賞歴

2018年第2回「みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞」ネクストブレイク部門第2位。

メディアミックス情報

テレビドラマ

2021年1月から3月までNHK総合にて放送。主演は山田裕貴で、脚本は高羽彩が務める。

小説

『小説 ここは今から倫理です。』:2020年12月18日刊行。

あらすじ

第1巻

女子高校生の逢沢いち子は、倫理の教鞭を執る高柳と出会う。多少の事では動じる事のない高柳に興味を抱いた逢沢は、倫理の科目を履修して高柳を誘惑しようとする。だがそんな逢沢に高柳は、「教養のある女性がタイプ」とはぐらかすが、高柳にどんどん惹かれていく逢沢は教養を身につけようと勉強に励む。(エピソード「知らない事」。ほか、4エピソード収録)

第2巻

教師である高柳は、同僚の松田から生徒の深川時代に恋をしている事を聞かされる。高柳は、生徒と教師との恋愛は問題が多いため卒業まで待つべきだとしつつも、そこに真実の愛があれば否定する権利はないと告げる。松田自身もそのリスクを理解しつつも、本気で深川の事を好きになってしまう。一方の深川は、松田を陥れるために接近しようとしていた。(エピソード「見たい顔」。ほか、4エピソード収録)

第3巻

高柳が学校の図書館で出会った田村創は、成績が思うように伸びない事に悩んでいた。親の期待に応えるために大学への進学を目指す田村に対して高柳は、何のために勉強するのかを語る。高柳は本来勉強とは楽しい事なのに、親の期待に応えようとするがあまり、田村を追い込んでいるのではないかと考えていた。(エピソード「自分の為の勉強」。ほか、4エピソード収録)

登場人物・キャラクター

高柳 (たかやなぎ)

高校で倫理を担当する男性教師。生徒達からは名前を略して「たかやな」と呼ばれている。つねに冷静沈着で、多少の事があってもまったく動じる事がない。傷ついた生徒がいても安易にスキンシップを図る事をよしとせず、あくまでも言葉により生徒の心に寄り添う事を心掛けている。そのため、逢沢いち子のように高柳に恋愛感情を抱く生徒も多い。ちなみに高柳自身は、教師と生徒の恋愛についてはさまざまな問題点があるとしつつも、そこに真実の愛があれば否定はしていない。好きな女性のタイプは「教養のある女性」で、教養を身につける事の重要さを過去の先人達の言葉を引用して生徒達に伝えている。授業のない時間は喫煙している事が多く、それがもとで同僚の教師達から疎まれている。

逢沢 いち子 (あいざわ いちこ)

高柳が教師を務める高校に通う女子高校生。授業態度が不まじめで私生活も乱れている事から、職員室でも話題にのぼる事が多い問題児。誰とでも性行為に及ぶため男子生徒達からの人気が非常に高い。逢沢いち子自身も男子生徒が喜んでくれるのはいい事だと考えていたが、高柳と出会い自分の考えを改め始める。やがて高柳に思いを寄せるようになり、高柳が「教養のある女性」がタイプだという事を知ると、高柳に認められるために自分を磨く事を決意する。その後も積極的に高柳にアプローチを繰り返し、なんとか距離を縮めようとしている。

酒井 美由紀 (さかい みゆき)

高柳が教師を務める高校に通う女子高校生。品行方正な優等生ながら、親や教師も含め周囲の人間を「くだらない人間」だと見下している。気に入らなければ相手がたとえ教師であっても遠慮なく抗議をするため、周囲と軋轢を生む事が多い。高柳の事もくだらない人間の一人だと思っていたが、クラスメイトの八木まりあが自殺騒ぎを起こした際に、その場を収めた事で評価を改め始める。八木が自分とは正反対の性格のため、積極的にかかわる事をしてこなかったが、倫理の授業を通して少しずつ交流を深めるようになる。

八木 まりあ (やぎ まりあ)

高柳が教師を務める高校に通う女子高校生。裏表のない性格のため男女を問わず人気があるが、クラスメイトの酒井美由紀とは性格が合わない事を互いに自覚しており、交流はなかった。高柳の倫理の授業を酒井といっしょに受ける事となり、それを機に少しずつ酒井とも交流を深めるようになる。男子大学生と付き合っていたが、その男性のサークル仲間に強姦された事で自暴自棄になり、自殺騒ぎを起こし、高柳に助けられる。その後は高柳に懐き、酒井と共になにかと彼のもとへ顔を出すようになったため、高柳に好意を抱いている逢沢いち子から敵視されている。

谷口 恭一 (たにぐち きょういち)

高柳が教師を務める高校に通う男子高校生。間違っていると感じた事は、はっきりと口に出す事から周囲に敵を作る事も多く、中学時代はいじめを受けていた。「自分にとっての正義を守りたい」という考えから、将来は教師になる事を志すようになり、高柳を自身の目指す姿としている。しかし、高柳が同僚の教師達から疎まれているため、自分の理想とは違うと考え始めている。高柳からは、いい教師とは何なのかを考えるべきだと伝えられ、改めて谷口自身の理想を見つめ直す事となる。

本田 奈津子 (ほんだ なつこ)

高柳が教師を務める高校に通う女子高校生。ほかの生徒よりも積極的に倫理の授業に参加し、高柳の事も慕っていた。ある日、同じ学校の生徒を殴ってしまう事件を起こすが、その理由を親や担任教師には語ろうとせず、高柳にのみ話すと告げる。自分の事を「僕」と呼び、つねに鞄の中に「リュウ」と名付けたぬいぐるみを入れて持ち歩いている。

間 幸喜 (はざま こうき)

高柳が教師を務める高校に通う男子高校生。母子家庭のため、母親は夜に仕事に出かけている事が多いために自然と夜に出歩くようになっていた。そのため、学校の授業中はいつも眠っている。高柳の受け持つ倫理の授業も例外ではなかったが、高柳から「正しい夜の過ごし方」として家でDVDを見たり、電話をしたりする事を教えられる。その後は夜に出歩く事は減ったものの、相変わらず昼間の学校で眠い状態が続いている。山野亮太、近藤陸と仲がいい。

深川 時代 (ふかがわ ときよ)

高柳が教師を務める高校に通う女子高校生。モデルをしている姉に対するコンプレックスから、他人を陥れる事に喜びを感じるようになっていく。過去に高柳を陥れようとしたが失敗し、物理教師の松田を新たなターゲットとして誘惑している。しかし、松田が本気で深川時代の事が好きになり、さらに深川の真意を高柳にも見抜かれてしまったため、松田を陥れる事を中止する。

松田 (まつだ)

高柳が教師を務める高校で物理を担当する男性。高柳とは対照的に生徒からの人気は低く、特に女子生徒からはまったくといっていいほど相手にされていない。深川時代が自分を陥れようとしている事を知らずに彼女の事を本気で好きになってしまい、どうすればいいかを高柳に相談する。高柳は教師と生徒の恋愛は問題が多いとしながらも否定はしなかったが、のちに深川の真意に気づいた松田は深く絶望する事となる。

都幾川 (ときがわ)

高柳が教師を務める高校に通う男子高校生。感受性が強すぎるために周囲とのトラブルが絶えず、不登校になっていた。登校しても教室には入る事ができずに、保健室で過ごす事が多い。倫理の授業も大好きで高柳を信頼しているが、教師としてのモラルを重視する高柳からは一定の距離を置かれている。

山野 亮太 (やまの りょうた)

高柳が教師を務める高校に通う男子高校生。間幸喜や近藤陸と仲がよく、いつも三人で高柳の授業を受けている。母子家庭の間や、兄が犯罪に加担している近藤と異なり家庭環境は至ってふつうで、山野亮太自身も特別な人間ではない事を自覚している。交通事故に遭った際、自分はなぜふつうなのかと悩む山野亮太の姿を見た高柳から、特別な存在であると言葉を掛けられる。

安村 (やすむら)

高柳が教師を務める高校に通う女子高校生。SNSで安村自身の私生活を投稿し、フォロワーが伸びている事に喜びを感じている。SNSに没頭するあまり授業中もスマホを手放せず、高柳に没収されてしまう。高柳はSNSは悪い事ではないとしつつ、あくまでもSNSは自己表現の一つにすぎないと語る。そして自分の教え子であるという役割を演じるように高柳に諭され、SNSのアカウントを削除する事を決意する。

近藤 陸 (こんどう りく)

高柳が教師を務める高校に通う男子高校生。母親が幼い頃に離婚し、父親も仕事でほとんど家にいないため家では兄と二人きりで生活している。その兄が麻薬の密売にかかわっており、金を盗んで逃げているため近藤陸自身もトラブルに巻き込まれてしまう。結局兄は警察に逮捕されるが、近藤は兄がいない方が平和だと考えていた。間幸喜や山野亮太と仲がよく、ふだんからいつもいっしょに行動している。

ジュダ

街でバーを経営している男性。麻薬の密売など犯罪にもかかわっている。そのため、不良達の世界では名が知られており、「ジュダ」の名前に震え上がる者も多い。過去に高柳ともかかわりがあり、近藤陸が高柳の教え子である事を知ると手を出さずに解放した。「ジュダ」はあくまでも通り名で、本名は「川村」だが、ジュダはその名前で呼ばれる事を嫌っている。

曽我 涼馬 (そが りょうま)

高柳が教師を務める高校に通う男子高校生。学校ではほとんどしゃべる事はなく、同じクラスの生徒も曽我涼馬の声を聞いた事がある者は極めて少ない。決して声が出せないわけではないが、あくまでも自分の意思で話さない事を決めており、高柳はそんな曽我に興味を抱いて何度も彼のもとへ足を運んでいる。

田村 創 (たむら はじめ)

高柳が教師を務める高校に通う男子高校生。いい大学に入っていい企業に就職する事を母親から期待されているが、田村創自身の成績が母親の期待に反して伸び悩んでいる事を不安に思っている。高柳からは何のために勉強するのかを問いかけられ、大学に行くための勉強が母親のための勉強になってるのではないかを悩み始める。それでも母親の期待に応える事は悪い事ではないと考え、自分のための勉強は大学に入ってからやろうと決意する。

(みなみ)

高柳が教師を務める高校に通う女子高校生。クラスには友人がいないが、決して学校で孤立しているわけではなく、敢えて自分から周囲と距離を置いている。「団結心」を煽るクラスのみんなの事を白々しく感じており、同じように感じている逢沢いち子に対して一種の仲間意識が芽生え始める。高柳からは「個人主義」という言葉を教えられ、自分は正に個人主義だと考えつつも、もう少し自分というものを見つめ直そうと考えている。

高崎 由梨 (たかさき ゆり)

高柳が教師を務める高校に通う女子高校生。日常をつねに退屈だと感じており、衝動的にリストカットをする事で刺激を感じるようになる。リストカットをしているが、決して死にたいと考えているわけではなく、あくまで日常に刺激を得るためにやっている。趣味はゲームをプレイする事で、ゲームを通じて都幾川とも交流をするようになる。高柳が好みのタイプのため倫理の授業も楽しんで受けているが、逢沢いち子のように恋愛感情はいっさいない。

書誌情報

ここは今から倫理です。 10巻 集英社〈ヤングジャンプコミックス〉

第1巻

(2017-11-22発行、978-4088907918)

第7巻

(2022-06-17発行、978-4088923482)

第8巻

(2023-08-18発行、978-4088928081)

第9巻

(2024-05-17発行、978-4088933702)

第10巻

(2025-11-19発行、978-4088940212)

ここは今から倫理です。 6巻 集英社〈ヤングジャンプコミックスGJ〉

第2巻

(2018-06-01発行、978-4088910567)

第3巻

(2019-04-01発行、978-4088912615)

第4巻

(2020-02-01発行、978-4088914879)

第5巻

(2020-12-01発行、978-4088917405)

第6巻

(2021-06-01発行、978-4088920245)

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