奄美群島を舞台にした蝶人と自然の物語
本作の舞台は、美しい自然が残る奄美群島。ここには、カラスやネコよりも小さな「蝶人」と呼ばれる人型の生物が古くから存在していた。彼らの多くは人間の管理下で生活しているが、主人公の忍野は自由を求め、人間からの解放を目指して立ち上がる。蝶人たちの戦いや恋愛模様が、青春ドラマやサバイバルファンタジーと共に展開される。小さな体で自然と共に生きる蝶人たちは、植物や昆虫など島のあらゆるものを活用し、独自の道具や技術を生み出していく。彼らがどのように厳しい自然を生き抜いていくのか、その知恵や工夫も大きな魅力となっている。また、奄美群島に実在する雄大な自然と、本作ならではのファンタジックな世界観を楽しめる。
主人公は人間に保護された蝶人の青年
奄美群島の孤島「羽部良島」には、「蝶人」と呼ばれる妖精のような小型生物が生息している。しかし、開発の波は彼らの住処を脅かし、絶滅の危機に瀕した蝶人たちは、人間による保護・管理を受けることになる。外敵から守られた「保護区」での生活は、安全と引き換えに自由を奪われる日々だった。特に、生殖の管理は蝶人たちにとって屈辱的であり、「つがい」は人間によって決定され、彼らの意思は無視されている。「マイ」という名の蝶人とつがいになった忍野は、彼女に思いを寄せるが、その気持ちをなかなか伝えることができずにいた。そんなある日、忍野はマイが外の世界にあこがれ、自由を求めていることを知るが、彼らの穏やかな日常を根底から覆す出来事が起こる。
蝶人たちの解放区を目指す
蝶人たちがカラスに襲われた責任を問われた忍野の担当職員は暴走し、忍野とマイを無理やりつがわせようとする。忍野は、人間に管理された生活ではマイの笑顔を守れないと確信し、彼女を連れて保護区を脱出することを決意する。二人が目指すのは、人間からの解放を求める蝶人たちが作った「解放区」だが、そこに至る道のりは野生動物やほかの蝶人に襲われる危険に満ちていた。人間に頼らず逞(たくま)しく生きる解放区の蝶人たちと出会いながら、忍野たちは過酷な旅と戦いに身を投じていく。当初、平和な雰囲気で物語は進行するが、蝶人たちを取り巻く厳しい現実が明らかになるにつれて、シリアスな展開へと変わっていく。柔らかく素朴なタッチで描かれるキャラクターや美しい風景と、残酷で重苦しい展開とのギャップが本作の大きな特徴となっている。
登場人物・キャラクター
忍野 (おしの)
奄美群島の孤島「羽部良島」に住む蝶人の青年で、マイの「つがい」。茶色のショートヘアと、どんなに隠そうとしても隠せない濃いそばかすが特徴。内向的でおとなしい性格だが、幼少期に母親から虐待やネグレクトを受けたため、心を閉ざしていた。しかし、つがいのマイと出会ったことで心を救われ、次第に彼女に思いを寄せるようになる。そんな中、仲間たちがカラスに襲われ、次々と命を落としていく。その後、人間に管理される生活に疑問を抱き、マイを連れて保護区を脱出する。
マイ
奄美群島の孤島「羽部良島」に住む蝶人の女性で、忍野の「つがい」。黒色のロングヘアの美女で、明るく活発な性格の持ち主。強い意志を持ち、時に周囲をハラハラさせるような行動をとることもある。つがいの忍野には優しく接しているが、心の奥底では自由を求め、彼の気持ちに応えることができずにいる。みんなに慕われている蝶人の青年、沖とは親しい関係。人間に管理されながら保護区での生活に疑問を抱き、忍野と共に脱出を決意する。
その他キーワード
蝶人 (はゔぃらっちゅ)
奄美群島の孤島「羽部良島」に生息する小さな人型生物。人間の言葉を理解し、会話することもできる。蝶人の存在は一般にも広く知られており、彼らに関するニュースが報じられることもある。江戸時代中期には絶滅したと考えられていたが、島の開発中に再発見された。現在、島内に生息する蝶人の半数以上は人間の保護下で生活している。しかし近年、野生の蝶人を中心に、保護されている個体の自然への復帰を求める声が高まり、島内各地で解放運動が活発化している。
書誌情報
ハヴィラ戦記 5巻 集英社〈ヤングジャンプコミックス〉
第1巻
(2024-09-19発行、978-4088934051)
第2巻
(2025-01-17発行、978-4088935300)
第3巻
(2025-04-17発行、978-4088936208)
第4巻
(2025-07-17発行、978-4088937410)
第5巻
(2025-10-17発行、978-4088938370)







