無視対象者は想像以上に過酷な生活を強いられる
無作為選出対象者無視法によって選出された無視対象者は、友人や先生、家族からも徹底して無視される。授業は受けられてもテストには参加できず、家庭では自分の食事も用意されない。果ては道で動けない状態だとしても、車は無視対象者をそのまま轢(ひ)かなければならない。さらに無視対象者を庇(かば)うような行動を取る人間は「周囲の話を乱す存在」として罰が下されるため、無視対象者は最初は心配をかけないように空元気に振る舞うものの、どんどん精神的に疲弊していく。
前回の無視対象者は自殺
全国民は「国八分法」による無視対象者を1年間無視することが義務付けられるが、道端たんぽぽは年度途中から無視対象者に選定された。その理由は、前回の無視対象者だった野原なずなが電車に飛び込んで自殺したため。無視対象者は全国民の中から無作為に選ばれるものの、実際は「対象者は自殺しない程度に強く、法に逆らえない程度に弱い者」に限定されている。
敵は国民全員か、法律そのものか
道端たんぽぽは、菊池あざみの協力を得ながら学校に通い続ける中で、自分を苛(さいな)んでいるのは躊躇(ちゅうちょ)なく嫌がらせを行うクラスメイトを含めた全国民なのか、それとも無作為選出対象者無視法そのものなのかを考え始める。「国八分法(くにはち)」により、他者がうっかり反応して逮捕されないようにしろと責められたり、多額の報酬の代わりに1年間引き籠もるよう勧められたりする。くにはちに違反した者が次々逮捕される中で、たんぽぽとあざみは自分たちが本当に戦うべき相手を見つけていく。
登場人物・キャラクター
道端 たんぽぽ (みちばた たんぽぽ)
花中学校に通う女子。2年1組に在籍している。明るく人懐っこい性格で、黒髪をおかっぱ頭にしている。無作為選出対象者無視法の無視対象者に選出されてしまう。非常に甘えん坊で、無視対象者に選出されるまでは起床から歯磨きまで、すべての世話を母親にやってもらっていた。無視対象者に選出されてからは、自分を無視し続けなければならない家族が一人で辛さを抱え込まないように、元気なふりをし続ける健気な一面を見せる。また、親友である菊池あざみの「無視しつつ無視しない」という態度や、逮捕されることも辞さない友人たちの優しさに精神的に救われ、次第に悪法そのものに立ち向かう強さを培っていく。やがて、国八分法に反旗を翻す「反くにはち」の中心的な人物となる。
菊池 あざみ (きくち あざみ)
花中学校に通う女子。2年1組に在籍している。道端たんぽぽの親友。黒髪ショートへアで、眼鏡をかけている。たんぽぽが無視対象者に選定された直後から、たんぽぽが本当の意味で孤立しないよう、はっきりと味方であることを示しつつ支えている。そのため、クラスメイトから菊池あざみ自身もいじめられるようになるが、負けん気の強さと明晰(めいせき)な頭脳で状況を打開している。この行動がやがて、国八分法に反発する「反くにはち」を掲げる者たちに勇気を与え、動画配信者「あざみん」としてたんぽぽの生の声を世間に伝える役を担うようになる。
書誌情報
くにはちぶ 12巻 講談社〈マガジンエッジKC〉
第1巻
(2017-12-15発行、 978-4065109359)
第2巻
(2018-04-17発行、 978-4065113271)
第3巻
(2018-08-17発行、 978-4065127339)
第4巻
(2018-12-17発行、 978-4065143827)
第5巻
(2019-04-17発行、 978-4065153703)
第6巻
(2019-08-16発行、 978-4065169087)
第12巻
(2021-08-17発行、 978-4065243947)