パルノグラフィティ

本作は、作者の板垣巴留が幼少期から青春時代までの実体験をもとに描いた、1話完結形式のエッセイ漫画。物語は、板垣家の末っ子、パルの視点から進行し、賑やかな日常や友人との思い出、さらには漫画家としての苦労話がユーモラスかつ赤裸々に綴られている。序盤では、女性ばかりの家庭環境で育ったパルの幼少期が描かれ、姉妹や母親との日常生活、時おり遊びにやってくる祖父との愉快な思い出などが展開される。くすりと笑えるコメディから、思わず涙を誘うホームドラマまで味わい深い物語が楽しめる。

有名な漫画家の恵介を父親に持ち、二人の姉と優しい母親と共に育った板垣家のひねくれた末っ子のパル。穏やかな長女のりーちゃんや流行に敏感な次女のあやちゃんとの日々は、多感なパルの心にさまざまな影響を与えていく。母親は、パルが幼稚園でユニークな絵を描いて先生を驚かせても、いつも彼女を褒めてくれる一番の理解者だ。また、2度も帰りの挨拶をしてしまうほど大好きな祖父をはじめ、個性的な家族や友人に囲まれながら、パルは楽しい日常を送っている。

板垣家の大黒柱である恵介は、パルが生まれる前から活躍している多忙な漫画家。連載の合間を縫って月に数回しか家に帰ってこない父親の帰宅は、家族にとって特別なイベントであり、母親や姉たちは腕によりをかけて豪華な食事やお酒を準備する。偉大な父の背中を見て育ったパルは、次第に自らも漫画家の道を志すようになる。長女のりーちゃんは小学校の教師、次女のあやちゃんは主婦としてそれぞれの人生を着実に歩んでいく中、就職に苦戦するパルが漫画家になるまでの過程も、本作の大きな見どころとなっている。