ランレッタ

ラノア王国のラノア魔法大学に通う少女。父親がシャリーアの街に居を構える大店（おおだな）の商人で、裕福な家庭で育った。しかし、商人の娘としては不器用過ぎる欠点があり、触った商品をことごとく壊してしまうという困った性質の持ち主だった。それはランレッタ自身にも自覚があり、魔術の素養があったと判明した時には、魔術師は術で何かを破壊する人たちという偏った認識のもとに、ラノア魔法大学に通うことを父親に熱望している。それにより、卒業後に商店の後を継ぐ勉強をするという条件付きで入学を果たしているが、その後は成績不振により留年している。ロキシー・ミグルディアとはラノア魔法大学の学生寮におけるルームメイトで、あとから入学したロキシーがランレッタの同室となる形で共同生活を始めている。当初はずぼらで自ら掃除ができず、細かい雑事を金で学友などに押しつけて過ごす自らの性格が、生真面目なロキシーの生活と相反したため、ソリが合わずに喧嘩（けんか）を重ねていた。しかし、言い争いを重ねながらお互いの妥協点を探り合っていき、関係は改善されていく。また、ランレッタが初級魔術すらうまく使えず、深夜に人知れず練習を重ねている姿をロキシーに見つかったことをきっかけに、そのことを周囲に言いふらさなかったロキシーと、魔術に対して真剣に取り組む姿勢も見せたランレッタという形でお互いに少しだけ歩み寄る。その後、ロキシーが図書館の本を大量に盗難したとして冤罪をかけられた際には、彼女を心配する小人族の少年、ガ=フゥに引っ張られる形ではあるものの、ロキシーの疑いが晴れるよう証拠集めや、真犯人捜しに尽力している。その結果、ロキシーの冤罪を晴らし、犯人を見つけ出すに至ったが、ロキシーが望むような勧善懲悪的な晴れ晴れとした結果にはならず、落ち込んで鬱屈とした彼女の態度を見るに見かね、酒の席に誘っては愚痴を強引に聞き出している。この時、酔いつぶれたロキシーを介抱したことで、夜中に目を覚ましたロキシーがランレッタに絡みつく悪霊の存在に気づくこととなった。ランレッタはラノア魔法大学に入学した当初は初級魔術も使えただけでなく、冒険者ギルドでは冒険者としてふつうに活動できるだけの素養も持ち合わせていたのだが、ある時期を境に突然、魔術がほとんど使用できなくなっていた。それだけでなく、日中に気を失うようにして眠りに落ちてしまうなど、体調に異常が生じていたのを周囲にはひた隠しにしていた。ロキシーが悪霊に気がついたことで、それが「呪い」によるものだと判明し、さらにはその原因が冒険者の依頼で訪れた村の悪霊にあることが明らかとなっている。結果、ロキシーと彼女の知人である吟遊詩人と共にランレッタは原因となった村へ赴いて悪霊と対峙（たいじ）することとなる。そして呪いの媒介となっていたのが、野営した際にカバンに紛れ込んでいた石だと明らかにされて呪いから解放されると、それ以後はほかの学生と同じように魔術を使えるようになっている。また背景には、魔術のことを家を飛び出すための道具でしかないと見なし、魔力がなくなれば家に帰ることができるという未練を抱えていたことがあった。ランレッタ自身も自覚していなかったその思いを悪霊に読み取られた結果、魔術を使えないように呪われていたのだが、この出来事によって魔術を失ったことで、自分は魔術が好きだという思いを自覚することとなる。その後、ロキシーと共にラノア魔法大学の生徒として過ごしていたが、次に昇級する際に必要となる上級魔術の習得に際して、自らの魔力では発動時の消費に耐えられないことを自覚し、進級をあきらめざるを得なくなった。しかし、そのことをロキシーには漏らさず、最終的にはアスラ王国で冒険者として活動するため、ラノア魔法大学を退学している。その際、同じ商人の後継ぎであり、ロキシーの友人でもあったガ=フゥに父親を騙（だま）す片棒を担いでもらい、アスラ王国への旅路なども同道している。また、アスラ王国での冒険者家業もガ=フゥがサポートしてくれることとなっており、向こうへ渡ったその後も長い付き合いとなった様子が窺（うかが）える。基本的には「ランレッタ」としか呼ばれていないが、フルネームは「ランレッタ・クレイシス」。