あらすじ
第1巻
県庁の観光課で働いていた天海航平は、突然何某村へ出向させられてしまう。森の中の道を車で村役場に向かっていた航平は、うっかり神社の祠らしきものを破壊してしまい、何某村の守り神であるニャンタロ様にまとわりつかれる事となる。そしてニャンタロ様は、壊された住処の代わりに、航平の家に勝手に住みつくのだった。
一方の航平は、新たな職場において、何某村を限界集落から脱却させるために村を立て直すべきと提唱。しかし、村には予算がまったくない。そこで槐コマ子からヒントを得た航平は、資金稼ぎと宣伝のために、ニャンタロ様をゆるキャラとして売り出そうと考える。コマ子の友達のつてでテレビ出演したり、地域のポスターなどで露出していくニャンタロ様だったが、その一種独特なビジュアルとキャラクター性のせいで、ちっとも売れる気配がない。こうして信用を失っていったニャンタロ様は村人たちから避けられるようになり、激しく落ち込む事となった。そんな中、ニャンタロ様の様子がおかしくなり始め、身体がどんどん崩壊していく。ついに目だけになってしまったニャンタロ様の姿に驚愕する航平だったが、これは数百年に一度起こる脱皮のようなものだという、コマ子の説明を受けて安心する。
第2巻
脱皮のため村中にまき散らされたニャンタロ様の身体のかけらは、夜になると幻想的な光を放つようになっていた。これが夜景スポットとしてネット上で大好評。何某村には、都会から若者が押しかけるようになった。これにより大きな経済効果が生まれたが、静かだった村が騒がしくなり、わざと村人に迷惑をかける連中も出現。天海航平と村人たちは、集客するためには受け入れる側にも用意が必要なのだと、苦い経験と共に学ぶのだった。
それからしばらく経ったある日、数年前にロックミュージシャンになると言って都会に出て行った原田陽一が、何某村に戻って来た。陽一は実はロックミュージシャンとしての夢をとうに諦め、絵本作家として活動していた。かたくなだった陽一の父と和解した陽一は、妻を伴って何某村への帰って来たのだ。こうしてわずかながら若者が増えた何某村は、20年ぶりに復活させたお祭りで盛り上がり、活気を見せ始める。そして村への愛着を持つようになっていた航平は、何某村を復興させた能力を買われて再び県庁に戻る事になるのだった。
そんな中、村では新たな遺跡が出土し、ニャンタロ様はそれにまつわる新しいゆるキャラに取って代わられてしまう。絶望のあまり異形化するニャンタロ様だったが、土砂崩れに襲われた航平と槐コマ子を守るために力を使い果たし、亡くなってしまう。県庁に頼み込み、再び何某村へ戻った航平はコマ子と結婚。村人たちも自分を犠牲にして村のために生きたニャンタロ様に感謝し、よりよい村になるようにと立て直しを進めていくのだった。
登場人物・キャラクター
天海 航平 (あまみ こうへい)
県庁から何某村の役場に出向でやって来た青年。まじめなモラリストで、ニャンタロ様の存在をなかなか受け入れられない。村人たちのニャンタロ様信仰には、一人だけ一般的な価値観を持って冷静に対応している。村人たちと違ってニャンタロ様を恐れる気持ちも敬う気持ちもなく、ゆるキャラとして売り出して村の財政を潤し、その功績から再び県庁に返り咲きたいと思っている策略家的な一面がある。
ニャンタロ様
何某村の守り神。かつて村で養蚕が盛んだった頃に、ネズミを追い払う猫の神様の信仰があり、そこから生まれた存在。語尾に「ギ」と付けて話す。身体は小さいが態度は大きく、相手の足元を見るのを得意としている。一見愛くるしいものの、よくよく見ると目が怖いため、子供からは怖がられている。天海航平と協力しながら、村を活性化させるため奔走する。
槐 コマ子 (えんじゅ こまこ)
ニャンタロ様の社を代々管理している神社の巫女をしている女性。まじめな努力家で、可愛いらしく社交的な性格をしている。ゆるキャラが大好きで、好きなもののためには行動が猪突猛進気味になり、暴走しがち。何某村を愛しており、ニャンタロ様の魅力をもっと多くの人に伝えたいと思っている。
千田 (せんだ)
何某村の近隣の市で公務員をしている男性で、槐コマ子とは同じ高校に通っていた。市のゆるキャラを生み出して、経済効果を上げた事で調子づいてしまい、地味だった学生時代とは正反対のチャラい見た目と性格になった。自分の手柄を延々と熱く語り、相手にストレスを与える。
原田 陽一 (はらだ よういち)
ロックミュージシャンになる事を夢見て、何某村を出て行った若い男性。その際に陽一の父と激しい喧嘩になり、それ以来、何年も仲直りができずにいる頑固な性格。ロックミュージシャンになる夢を諦め、生活のために「たんぽぽよういち」というペンネームで書いた絵本がヒット。以降、絵本作家として活躍している。
陽一の父 (よういちのちち)
原田陽一の父親。頑固な性格で、自分の気持ちを素直に口にできない。何某村を飛び出して行った陽一の事を心配しており、内心は村に戻ってきてほしいと思っていながら、彼の顔を見るとつい憎まれ口ばかり叩いてしまう。
場所
何某村 (なにがしむら)
山の中にあり過疎化が進んでいる村。65歳以上の高齢者が人口の半数を超えており、若者は次々と都会に出て行って、誰も村には寄り付かず、社会的共同生活が困難な限界集落となっている。そのため打ち捨てられた古民家も多く、都会から移り住む人に貸し出すなどの施策を行っている。
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