国民の選挙で決まる次期国王
本作の舞台である「櫻田王国」は、王制国家でありながら、住民たちは現代の日本と変わらない日常生活を送っている。しかし、櫻田王国には特異な点がある。それは、次期国王の継承権が王様の子供たち全員に平等に与えられ、国民の選挙によって決定されるということだ。現国王には三男六女、合計九人の子供がおり、彼らの行動は町中に設置された監視カメラを通じて全国に配信されている。国民は彼らの一挙手一投足に注目し、未来の王を選ぶことになる。
個性豊かな櫻田家の兄弟姉妹
本作の主人公は櫻田王国の第3王女の茜で、物語は彼女の視点から櫻田家の日常を描写しつつ、国王選挙に挑む姿を中心に展開される。櫻田家には九人の兄弟姉妹がおり、第1王子でありながら選挙に対してあまりやる気を見せない長男の修や、心優しく誰に対しても分け隔てなく接する完璧な葵など、個性豊かなキャラクターがそろっている。彼らは家族でありながら、選挙のライバルとして対決する様子がコミカルに描かれている。また、櫻田王家の人々はそれぞれ王家の証である「特殊能力」を持っており、日常生活でトラブルを引き起こしたり、選挙活動に活用したりする場面も見どころとなっている。
櫻田家の穏やかな日常と王位争い
櫻田家は国王の方針に従い、庶民としての生活を送っている。彼らの和やかな日常生活の何気ないやり取りが描かれる一方で、選挙のために彼らの行動は全国に設置された監視カメラで配信され、世論調査での人気が発表される。このように、日常の穏やかな雰囲気と王位を巡る勢力争いの緊張感が共存している点が特徴となっている。物語が進むにつれて、当初は単なる人気争いであった国王選挙に対し、櫻田家の人々が「国王」という存在についてそれぞれの考えを深め、成長していく様子が描かれている。
登場人物・キャラクター
櫻田 茜 (さくらだ あかね)
櫻田王国の第3王女。高校1年生で、年齢は15歳。スラリとした体型に長く細い手足を持ち、スポーティな雰囲気を漂わせている。赤い髪を二つ結びにしているのが特徴。友人や家族には明るく接し、クラスのムードメーカーとして人気を集め、委員長を務めている。しかし、極度の人見知りで、通りすがりの人に対しても監視カメラに写ることすら恥ずかしく感じてしまう。「重力制御(グラビティコア)」という能力を持ち、自身が触れている物体の重力をあやつることができる。この能力を使って空中を浮遊したり、低重力状態で高速移動することが可能だが、間の悪さから頻繁にスカートがめくれ、人前で下着姿をさらけ出してしまう。そのたびに恥ずかしい思いをして、人見知りがさらに悪化するという悪循環に陥っている。しかし、緊急時にはためらうことなく能力を駆使して人助けに奔走するため、国民からの人気は非常に高い。人気が上がるにつれて、知らない人から声をかけられる機会が増え、外出が苦手になったが、家事当番のくじ引きでは毎回のように買い物役を引き当ててしまうため、必然的に外出せざるを得ない状況に追い込まれている。
櫻田 修 (さくらだ しゅう)
櫻田王国の第1王子。高校2年生で、年齢は15歳。青みがかった黒い髪を短く整えている。第2王女の奏と双子だが、30分早く生まれたため兄。長男らしく面倒見がよく、家族に対してはひょうきんな一面を見せる。特に妹の茜を溺愛しており、彼女のファンクラブができた際にはすぐに加入し、会員No.2となっている。また、人見知りの茜をからかって遊ぶこともあり、漫才のような掛け合いを楽しんでいる。第1王子でありながら、国王になる意義を見出せず、国王選挙には消極的なため、国民からの人気は低い。自身が触れた物体を瞬時に移動させる「瞬間移動(トランスポーター)」の能力を持つ。
櫻田 葵 (さくらだ あおい)
櫻田王国の第1王女。高校2年生で、年齢は17歳。三男六女の兄弟姉妹の長女であり、第一子でもある。青いストレートロングヘアで、美しさと優しさを兼ね備えている。個性豊かな櫻田きょうだいを公私にわたり支え、皆から慕われている。自ら前に出るタイプではないため、国王選挙には消極的だが、容姿端麗で頭脳明晰なため、同じく選挙に消極的な修とは対照的に国民からの人気は非常に高い。一度見聞きしたことを決して忘れない「完全学習(インビジブルワーク)」の能力を持つとされているが、実際には対象者を洗脳する「絶対順守(アブソリュートオーダー)」の能力を有している。街で銀行強盗に遭遇した際には、たった一言で強盗団を制圧し、犯人をはじめ目撃者の記憶を消し去った。その能力があまりにも強大であるため、彼女の能力を知っているのは両親と一部の人々だけで、国家機密となっている。葵自身は、その優しさゆえに絶対順守を嫌っており、選挙に消極的なのは、他者を強制的に服従させる能力を持つ自分が王になるべきではないと考えているため。
書誌情報
城下町のダンデライオン 8巻 芳文社〈まんがタイムKRコミックス〉
第1巻
(2013-03-27発行、978-4832242821)
第7巻
(2023-04-27発行、978-4832274570)
第8巻
(2025-05-27発行、978-4832296381)







