影繰姫譚

影繰姫譚

影の中に異形の怪物を見る力を持ち、暗闇を恐れながら生活していた高校生の少年の灯下肇は、影に潜む不思議な少女の朔夜と出会い、忍者同士も戦いに巻き込まれていく。自らも忍者となって戦う肇の姿を描く、ダークニンジャアクション。「電撃マオウ」2018年11月号から掲載の作品。

正式名称
影繰姫譚
ふりがな
かげくりきたん
作者
ジャンル
バトル
 
異能力・超能力
レーベル
電撃コミックスNEXT(KADOKAWA)
巻数
全7巻完結
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あらすじ

影と忍者と金剛器

幼い頃、高校生の灯下肇は、弟の死を目撃したのをきっかけにして、影の中に異形の存在を目にするようになった。影に怯え、異形を見て見ぬフリをして生きてきた肇であったが、ある日、クラスメートの鏃真琴が見たこともない影を連れているのを目撃。人間そっくりで、言葉をあやつる影の朔夜は、肇が影を見ることができることに気づくと、肇に真琴が持つ「金剛器」を奪ってほしいと頼む。正体不明の朔夜のことを無視しようとする肇だったが、彼女に異形の影から助けてもらったのをきっかけに思い直し、一時力を貸すことを約束する。そして、肇は真琴から金剛器を盗み出すことに成功するものの、実は影をあやつる「影繰」の力を持つ忍者だった真琴に襲われ、窮地に立たされてしまう。肇はすべてをあきらめ、死を受け入れようとするが、身を挺して自分を守る朔夜の叫びを聞いて、奮起する。朔夜の言葉に従い、金剛器を解放した肇は朔夜の依り代となり、彼女を実体化させることに成功する。真琴たち影繰忍者「鏃家」の御旗である、朔夜の鶴の一声で、真琴は矛を収める。そして肇は朔夜の力によって長年苦しめられていた、影の恐怖から解放される。再び闇の中の孤独に戻るのを恐れた肇は、朔夜と共に生きていく覚悟を決める。真琴も肇の覚悟を見て彼を仲間と認め、こうして肇は影の世界に足を踏み入れていく。

宣戦布告

灯下肇鏃真琴と鏃の三老のもと、影繰忍者としての訓練を始めるが、そんな中、真琴が熊須累に襲われるという事件が起きる。真琴が暫定当主を務める鏃家は1年半前に兄の鏃龍堂が起こしたクーデターによって壊滅。数少ない同門の生き残りである累も龍堂に寝返り、金剛器を奪うべく真琴に襲い掛かったのだ。金剛器を奪い、その力で三老を殺そうとする累であったが、駆けつけた朔夜に成す術もなく敗れる。しかしそこに破顔が現れ、累を奪って逃走する。敵には逃げられたものの、金剛器を取り返し、肇も真琴たちとの絆を深めることに成功する。つかの間、平穏な日々を過ごしていた肇たちであったが、そこに龍堂が襲来。圧倒的な力で肇を翻弄し、朔夜をいたぶる龍堂は「夜」の支配を宣言し、鏃家を除くすべての影繰衆に宣戦布告をする。

五情の影

鏃龍堂の宣戦布告によって、それまで動向を注視するにとどめていた他勢力は龍堂の排除を決定し、鏃真琴たちに合流して龍堂と戦うこととなった。しかし、龍堂の仲間たちも精鋭ぞろいで、影繰衆たちは次第に劣勢となっていく。灯下肇も傷つく朔夜を前にして闘志を燃え上がらせ、今までにない力を発揮する。必死に龍堂に食い下がる肇であったが、力及ばず敗北。影繰衆も倒れていく中、龍堂は肇の奮闘に満足し、そのまま去っていくのだった。鐙絢音たちの力を借り、治療を受けた肇と真琴は、影繰衆最強の絢音たちと協力して再び龍堂と対峙することを決める。朔夜を守るため、強くなる決意を固めた肇は、鏃家に伝わる術書「器炭」を手に入れに向かう。かつて鏃家の本拠地だった館に忍び込む肇と真琴だったが、そこには龍堂の仲間である熊須累海鈴ミツタカが待ち受けていた。海鈴の能力によって恐怖に支配される肇と真琴だったが、絢音との会話で「五情の影」の力に目覚めつつあった肇は逆襲を開始する。恐怖をより強い恐怖で上書きしていき、海鈴を逆に恐怖で支配して、彼を打ち倒すのだった。

意志(カタ)崩れ

灯下肇海鈴ミツタカを打ち倒し、鏃真琴を助けて、邸宅から脱出する。器炭も無事に回収できた一行は、あらためて肇に覚悟を問い、肇はその問いに命を賭して応える。鏃龍堂との決戦が1か月後に決まったのもあり、肇は器炭と三老による特訓を受けることとなる。順調に成長していき、新たな技を身につけていく肇だったが、そんな中、彼の耳に届いたのは真琴が影繰の力を使えなくなったという知らせだった。海鈴との戦いで真琴は恐怖に負け、影を形作る意志が崩れる「意志崩れ」を引き起こしてしまったのだ。決戦を前にして戦線離脱を余儀なくされた真琴を見て、肇は一層闘志を燃やす。一方、独自に龍堂との戦いに備えていた「鈎一門」は、内通者が存在すると考え、調査をしていた。彼らは鏃家の残党が内通者と推測し、肇たちのもとに襲撃を掛ける。

登場人物・キャラクター

灯下 肇 (とのした はじめ)

高校2年生の少年。クラスでは人付き合いの悪い陰気な生徒として通っているが、弟の聖の死を見て以降、暗い影の中に人の出来損ないのような存在が見えるようになってしまい、つねに暗闇を恐れ、孤独に過ごしていた。真夏の炎天下でも日光の下にいることを選び、寝室は電灯で至る場所を照らし、光しか見えなくしているほど闇を恐れている。また孤独の中、恐ろしいものを見続けてきたため、追い詰められたときほど無意識に不気味な笑みを浮かべるという癖を持っている。いつも見ている闇の怪物たちの中に、朔夜の姿を見つけ、彼女に頼まれ、鏃真琴から金剛器を盗み出す。その後、金剛器に宿る「月夜見の朔夜」から主に認められ、彼女の力のおかげで化け物を見えなくしてもらう。孤独から救ってくれた朔夜のことを本当に大事に思っており、真琴に頼み込んで影繰忍者「鏃」一門に入る。一般人であるために体術は素人レベルだが、「冥視(めいし)」と呼ばれる力を持ち、影の力を見抜くことに関しては三老すら舌を巻くほどの力を誇る。また、影繰の力も実践の中で急激に成長しており、特に五情の一つ「恐の情」を使った攻撃は絶大。今まで体験してきた闇への恐怖を影を通して相手に伝えることができ、当たれば格上であろうと恐怖の感情で精神を蝕み、打ち倒すことができる。

朔夜 (さくや)

「鏃家」に伝わる金剛器に宿る美少女。足まで伸ばした白いロングヘアに、赤い瞳を持ち、10代前半くらいの幼い外見をしている。鏃家の御旗であり、「月夜見の朔夜」とも呼ばれる。当代の暫定当主である鏃真琴が力量不足であったため、彼女の姿を見ることはおろか、声を聞くことすらできず、孤独なまま闇の中を過ごしていた。辛抱強く彼女が気づいてくれるのを待っていたが、ついには孤独に耐え切れず、偶然自分の姿を見た灯下肇に、金剛器を奪って自分を解放してほしいと頼み込む。闇の中の孤独から自分を救ってくれた肇には強い思慕の念を抱いており、彼が金剛器を解放してからは肇を主と認め、かいがいしく仕えている。自分を解放した肇を「依り代」とし、彼の影と一体化する。彼のそばにいればその存在は安定するが、力を使いすぎると存在が不安定となり、体の色が抜けて真っ黒となる。一人称は「うち」で、肇の言動をすべて全肯定するほどの惚れ込みっぷり。一方で他者、特に真琴に対しては辛らつな態度を見せる。また、肇の言葉を優先するあまり、朔夜自身の身を顧みない部分もあり、肇に心配を掛けている。その存在は実態のある影のようなもので、強力な影繰の力をあやつることができる。金剛器の中には朔夜とは「別の朔夜」も存在しており、状況に応じて交代して表に現れる。鏃龍堂との対決に敗れた時には、一人称が「おら」で、見た目が10代半ばほどの朔夜が一時的に現れている。

鏃 真琴 (やじり まこと)

影繰忍者「鏃家」の暫定当主を務める少女。赤い髪をショートカットにした女子高校生で、スタイルが抜群。服の上からもわかるほどの巨乳の持ち主。学校ではおとなしくまじめな性格で通っているが、生まれてから影繰忍者として教育を受けてきた生粋の忍者。仲間や使命のために己の命を懸けて戦い抜く、熱い激情を持つ。1年半ほど前、義理の兄の鏃龍堂がクーデターを起こして鏃家を壊滅させたのを憎悪しており、その復讐のために動いている。当時は次期当主としてあいさつ回りに行っていたため、難を逃れたが、仲間たちは三老を除いてほぼ壊滅。辛うじて金剛器だけは死守したが、その力を解放することができず、腐らせていた。ついには金剛器に宿る朔夜からも見限られ、灯下肇に金剛器を盗まれる。肇を龍堂の刺客と思って殺そうとするものの、当の朔夜の命令に従い、攻撃を止めた。無関係の一般人である肇を仲間に引き込むことに抵抗があったが、彼の才能と覚悟を見て、仲間として認めている。素人ながら圧倒的な才能を持つ肇に、当初は劣等感を抱いていたが、共闘するうちに彼を信頼するようになる。ふだんはまともだが、実は美少女好きのマゾヒストという変態性癖を隠し持っている。朔夜が好みのタイプで、彼女から「残念忍者」と辛辣な態度で扱われているが、それすら鼻血を出して喜んでいる。

犬轌 (いぬぞり)

影繰忍者「鏃家」に長く仕える「鏃の三老」の一人で、ニット帽をかぶった老齢の男性。物腰が穏やかな好々爺で、鏃真琴のことを孫のようにかわいがっている。影繰の腕はかなりのもので、本物そっくりの影を作り出したり、簡易的な拠点「漆黒邸」を作り出したりと、多彩な技を身につけている。また防御力に秀でているため、三老の中では「盾」の役割を持つ。

雉鍋 (きじなべ)

影繰忍者「鏃家」に長く仕える「鏃の三老」の一人で、恰幅のよい体型をした老爺。年齢は73歳。物静かで優しい性格をしている。影繰は体から切り離すとたちまち形を失い、消滅してしまうが、鏃家に伝わる影の遠距離攻撃「翔影(とびかげ)」を習得しており、翔影の腕前は鏃家の中でも最高峰の実力を誇る。超遠距離からの精密攻撃をすることができるため、「鷹」の呼び名を持つ。一方で心臓に持病があるために体力がなく、激しい運動ができない。灯下肇に翔影の技術を教え込んでいる。

猿滑 (さるすべり)

影繰忍者「鏃家」に長く仕える「鏃の三老」の一人で、サングラスを掛けた老爺。気難しい性格で、ぶっきらぼうな言動が多い。三老の中では体術に秀でており、老齢ながら目にも止まらない俊敏さを持つ。戦闘時には両腕に影繰で巨大な手甲「猿手甲」を作り出して戦う。

鐙 絢音 (たかつき あやね)

影繰衆「鐙家」の次期当主である少女。ピンクのメッシュの入った黒髪をボブカットにして、星のようにきらめいた瞳を持つ。金剛器「月夜見の有明」の解放者でもある。現影繰衆最強の存在だが、鐙絢音自身はアイドルのプロデュースに熱を上げており、あくまで本職は「現役JKアイドルP(プロデューサー)」と語っている。つねにハイテンションな言動で周囲を引っ掻き回す人物で、言動の8割は特に意味はない。また性に奔放な部分があり、灯下肇のことを気に入り、誘惑しようとするなど行動が無軌道でつかめない。

鏃 龍堂 (やじり りゅうどう)

鏃真琴の義理の兄で、野性味のある剣呑な雰囲気を漂わせている。年齢は25歳。たくましい体つきをした偉丈夫で、髪を長く伸ばしている。豪快な性格で、その巨大な力を思うままに振るって、「夜」の支配を掲げて行動している。暴虐を繰り返しているが、不思議なカリスマ性を漂わせており、その力を恐れつつも惹かれ、彼を信奉する者も多い。1年半前、鏃家でクーデターを引き起こし、先代当主や同門の忍者を虐殺した。しかしその行動には謎が多く、真琴を殺すなと命令していたり、灯下肇が戦闘不能になった際も金剛器をそのまま放置していたりと、クーデターを起こしながら当主の座にはこだわっていない。仲間たちのことを独自のあだ名で呼ぶ癖がある。

草薙 (くさなぎ)

鏃龍堂のそばに控える、頭巾をかぶった小柄な少女。年齢は15歳。一人称は「童(わらわ)」で、龍堂の懐刀を自称し、鐙絢音からも龍堂一派の中で一番厄介と評されている。双子の姉がおり、姉を救うために龍堂の一味に加わった。巨大で強力な影をあやつることができ、本気を出すと巨大な鬼の鎧を生み出してあやつることができる。

熊須 累 (くます るい)

元鏃家に所属していた女性の影繰忍者。青みがかった髪を結ってまとめた若い美女で、口元にホクロがある。鏃真琴とは同門で年が近いこともあって仲がよかったが、クーデターの惨状を直視し、恐怖から自分の命を守るためならなんでもする卑劣な人間へと豹変している。クーデターで生き残った四人の忍者の一人だが、四人とも再び忍者として生きていく気力はなく、残りの三人は「忍を辞めるためには死しかない」という掟に従って自殺。しかし熊須累は自殺する勇気もなく、真琴の恩情にすがって、生きたまま忍を辞めさせてもらった。鏃龍堂の存在に心底怯えており、生き残ったあとはひそかに彼らに従い、真琴に恩を仇で返している。のちに真琴を襲い、龍堂への手土産として、彼女から金剛器を奪う。金剛器の力を無理やり引き出し、猿滑に重傷を負わせるものの、累が手にした力は朔夜の残り香程度の力にしか過ぎず、朔夜に逆に力を掌握されて敗北する。その後、破顔によって回収され、鏃家の邸宅で再び灯下肇たちに襲い掛かる。生き残るためなら命乞いや裏切りも平気で行うため、破顔たちからもあくまで「仲間候補」としての扱いしかされず、最終的には見限られる。

破顔 (はがん)

鏃龍堂の仲間の男性で、つねに鎧甲冑のような影装束を身にまとっている。素顔を隠した人物で、ひょうひょうとした性格をしている。高い精度で影繰をあやつることができ、本物そっくりな変装を得意とする。また、人体を粉みじんに吹き飛ばす技「臓(わた)隠れ」を得意とし、その技でクーデターの際には鏃家の忍者たちを大量虐殺した。このため、その惨状を目にした熊須累からは怯えられている。

海鈴 ミツタカ (みすず みつたか)

鏃龍堂の仲間の男性で、黒のスーツを身にまとっている。年齢は28歳。おしろいをした公家のような化粧をしている。一人称は「ミー」で、英語混じりの奇妙なしゃべり方をする。「五情の影」の一つ、恐怖をあやつる「恐車の影」を習得しており、他者を恐怖で支配する戦法を何より得意とする。影に触れただけで対象を戦闘不能にする強力な能力を持ち、鏃真琴を再起不能状態まで追い詰めている。灯下肇に対しても恐怖の感情で優位に立つが、肇の反撃で恐怖を逆流させられて敗北する。恐怖の情をあやつるため、相応の訓練を積んできたが、人外の恐怖を目の当たりにしてきた肇には敵わず、取り乱して逃亡。龍堂に助けられ、そのまま帰還する。

その他キーワード

影繰 (かげくり)

影をあやつる技。影の形を自由自在に変え、実体を持たせて他者を攻撃したり、影をまとって身を守ったりすることができる。また熟練者であれば、影を精緻に形作り、本物そっくりな影を作り出すことができる。この技術を応用し、自らに精緻な影をまとって他者に変装したり、身を隠したりすることもできる。熟練者の影は同じ影繰をあやつる者でも、簡単に見抜くことはできない。このほかに、陰陽五行に対応する感情の力「五情の影」を影にまとわせることで、影にさまざまな力を与えることができる。影は自由自在に形を変えることができるが、影であるため、本体から切り離してしまうと消滅する。基本的に影繰で遠距離攻撃することはできないが、鏃家には影に五情の力を薄くまとわせることで、遠距離攻撃を可能とする奥義「翔影」が存在する。

器炭 (うつわずみ)

鏃家に伝わる術書。門外不出の重要なもので、次期当主とされていた鏃真琴ですら、どのようなものか見たことがない。その正体は特殊な力を宿した手のひら大の炭の塊。硯ですって墨として使い、この墨で特殊な紋様を刻み込むことで、命の活動時間の影に当たる睡眠時間中に器炭の記憶を読み解くことができる。器炭の使用者は、夢の中で戦闘を繰り返し、その力を磨いていく。使用にリスクはなく、夢の中で死んでもすぐに復活することができるが、それ故に戦いに取りつかれてしまうと、好戦的になってしまう場合がある。

書誌情報

影繰姫譚 全7巻 KADOKAWA〈電撃コミックスNEXT〉

第7巻

(2022-06-27発行、 978-4049145106)

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