恋愛トラウマ女子の婚活コメディ
本作は、妖や人ならざる者が人間の中に紛れて暮らすアパートを舞台にしている。恋愛のトラウマから男性不信に陥りながらも、結婚を焦る限界女子のつかさが、隣人のシングルファーザーの春幸との複雑な関係や、彼女に取り憑いた狐の妖、玉藻と共に婚活に奮闘する姿がコミカルに描かれる。妖と人間のかかわり、そして家族の絆を感動的に、時には笑いを交えながら表現した、大人向けのハートフルコメディが楽しめる。
失意からの再出発、そして運命的な出会い
婚約者に浮気され、住む家を追い出されたつかさは、失意のままアパートに引っ越し、酒に溺れる日々を送っていた。そんなある日、泥酔していたところを隣人の春幸に介抱され、彼の家で目を覚ます。春幸は近所でも有名なシングルファーザーで、前妻を亡くし、幼い息子の狐太郎と娘の美狐を育てる多忙な日々を送っていた。爽やかで優しい春幸や、あどけない狐太郎と美狐に親しみを感じたつかさは、新しい生活に希望を抱くが、春幸の前妻を名乗る狐耳の生えた謎の女性、玉藻の霊が現れ、トラブルに巻き込まれる。春幸と玉藻との出会いは、恋愛に疲れ果てたつかさの運命を大きく変えることになる。
奇妙な三角関係と深まる絆
霊感をまったく持たない春幸は、幽霊となった前妻の玉藻の存在に気づかず、玉藻はすっかりつかさの部屋に取り憑いてしまう。玉藻は、男手一つで子育てをする春幸からつかさを遠ざけるため、彼女に婚活を勧める。しかし、玉藻の思惑とは裏腹に、つかさは理想の男性とも言える春幸にどんどん惹かれていく。一方、春幸は玉藻との思い出を忘れられずにいたが、子育てや家事で忙しいため、つかさが伊里家に出入りするようになる。隣人同士で助け合ううちに、家庭的なつかさの優しさに春幸も少しずつ心惹かれていく。これらの過程で明らかになる春幸と玉藻の不思議な関係、そして傷つきながらも幸せを追い求め続けるつかさの切ない恋の行方も見どころとなっている。また、つかさが春幸や子供たちと共に過ごす微笑ましい日常や、何かと揉め事の多い彼女と玉藻のコミカルな掛け合いも魅力となっている。
登場人物・キャラクター
大上 つかさ (おおかみ つかさ)
春幸が住むアパートに引っ越してきた女性。年齢は28歳。デパートの総菜売り場で働いている。黒髪をショートヘアにしている。男性を見る目がまったくなく、これまでの恋愛はすべて失敗に終わっている。しかし、料理や家事が得意で、家庭的な一面も持ち合わせている。失恋のショックから酒に溺れていたところを隣人の春幸に介抱され、感謝の気持ちから彼の家事や育児を手伝うようになった。互いに協力し合う中で、春幸の純粋さと優しさに惹かれ、次第に好意を抱くようになる。
伊里 春幸 (いさと はるゆき)
つかさと同じアパートに住むシングルファーザーのイケメン。愛称は「ハル」。つかさが働くデパートのスーツ売り場に勤務している。妻の玉藻とのあいだに授かった双子、息子の狐太郎と娘の美狐の三人で暮らしている。家事や料理が苦手なため、子育てには苦労している。鈍感な性格でかなりの天然ながらも、誰に対しても親切で家族思いの一面を持つ。つかさには時おり、家事や育児を手伝ってもらうなど、互いに協力し合っている。霊感はまったくない。
玉藻 (たまも)
春幸の前妻であり、その正体は狐の妖。橙色のロングヘアに狐耳と尻尾を持つ美しい姿をしている。夫の春幸とのあいだに双子の狐太郎と美狐を授かり、幸せな家庭を築いていたが、家族を残して亡くなってしまう。その後、幽霊となってアパートに取り憑いていたが、春幸に介抱されたつかさに警戒心を抱き、追い出そうとしたり、付きまとったりするようになる。生前、玉藻自身は妖であることを周囲に隠し、人間として生活していた。
書誌情報
恋する2DK、あやかし前妻憑き。 全3巻 KADOKAWA〈角川コミックス・エース〉
第1巻
(2023-12-04発行、978-4041143377)
第2巻
(2024-05-02発行、978-4041148211)
第3巻
(2025-02-04発行、978-4041157862)







