概要・あらすじ
記憶喪失の警察官的場イサムは同僚からは腕の悪い警察官と見られているが、凶悪犯と対峙した時は古武道の動きを取り入れた身のこなしと、超人的な射撃能力を用いて犯人が自滅したように見せつつ、立てこもり事件などを解決していた。その力に目をつけた特殊機動殺人課(特殺課)の帝塚の手引きでエリート女性警察官の梓弓鶴とともに特殺課に入隊、仲間たちと共にネオテラーと呼ばれる特殊なテロリストたちとの戦いに身を投じることになる。
自身の体を食って超人的な生命力を持つネオテラーが、さらに他者を糧にできる神に昇華したことで危機に陥ったイサムは、謎の老人墓場忌太郎の助言で“気”を操る力に開花し神殺しの力“死気”を発現させる。これによってネオテラーとの戦いは終結したが、次いで死気の力を使い、意思を持った銃である拳銃神が現れ、特殺課は壊滅状態となる。
記憶を取り戻したイサムは、同じく神殺しの力に目覚めた弓鶴と共に決戦に赴く。
登場人物・キャラクター
的場 イサム (まとば いさむ)
交番勤務の警察官。ズボラで鈍くさく銃も扱えない人物と思われているが、実は凄腕の元殺し屋で、凶悪犯罪者を一目で見抜き、その超人的な身体能力と射撃技術で犯罪を解決する。その腕を見込まれて特殊機動殺人課に転属し、ネオテラーや、それが昇華した神、そして拳銃神といった超常的な犯罪者や怪物と戦うようになる。 幼いころの記憶を失っているが、“死祭”と呼ばれる生と死をつかさどる一族の出で、不死身の存在をも消滅させる神殺しの力“死気”を使うことができる。かつて梓弓鶴が死祭の血を継いだ時、その重圧から記憶を消したことを受けて、自身も記憶を消去していた。特殺課の団子桜が拳銃神の巫女となった後に記憶を取り戻し、弓鶴と共に桜に戦いを挑む。
梓 弓鶴 (あずさ ゆづる)
公務員一種試験をパスしたエリート女性警察官。特殊機動殺人課の手引きで的場イサムを探っていた。イサムの力を利用したい上層部の意向で、その制御役として特殺課に転入させられる。元々ガンマニアで、人を撃つことには慣れているが特殺課が相手をする異形のテロリストには苦戦する。 かつて両親が拳銃神にとりつかれ、幼いころのイサムと戦ったことがある。その際、当時の“死祭”であった死祭彩音が死んだことで、次の死祭に選ばれるがショックでその記憶は消えていた。拳銃神が復活した後で記憶を取り戻し、イサムと共に団子桜との決戦に赴く。
仁倉 刑次 (にくら けいじ)
特殊機動殺人課の一員。的場イサムと同様に古武道の達人で銃を使わず、刀で犯罪者やネオテラーに立ち向かう。犯罪者を殺すことにためらいがなく、拘置所での戦いにおいてはネオテラー、そして神に昇華した相手に立ち向かう際、周囲の人間を巻きこみイサムに止められる。 “死気”こそ使えないが“気”の心得があり、刀から人間の体程度なら簡単に切断する衝撃波を放つことができる。
墓場 忌太郎 (はかば きたろう)
拘置所にいた、ひょうひょうとした性格の謎の老人。書類の上では毎年処刑されていることになっていた。“気”の扱いに成熟しており壁や床のなかに溶けこむ、分身を生み出す、“気”で弾丸を作るといった超人的な能力を持つ。ネオテラーとの戦いに苦戦する的場イサムの前に現れ“気”を使った戦い方を披露し、記憶を封印していたイサムが“気”および“死気”による戦法を思い出すきっかけを作った。
団子 桜 (だんご さくら)
特殊機動殺人課の技官。五つ子の弟たちともに新作の銃器開発にいそしんでいる女性。やや性的に変態なところがある。自分が直接戦いの役に立てないことを知り、また好意を寄せていた的場イサムと梓弓鶴が死線をこえた絆をはぐくんでいることに嫉妬し出奔、拳銃神に見込まれて“死気”をはじめとする生死を操る力を獲得、かつて特殺課が殺した者たちとともに新たな特殺課を結成し巫女と呼ばれる存在となる。
死祭 彩音 (しまつり あやね)
“死祭”の一族の女性。10年前にアメリカの小さな町に拳銃神が現れた際的場イサムと共にこれを討ったが、拳銃神の最後の一撃で死亡、死祭の役目をその場に居合わせた梓弓鶴に継承し、自身は精神のみの存在となって弓鶴のなかにいた。イサムが“死気”の力を取り戻した際に、弓鶴のなかで覚醒する。 死気と対になる“抗気”を使うことができ、死気を使用して生と死の分岐点となる世界にワープしてしまうイサムを現代に呼び戻すことができる。拳銃神が復活した際、イサムと共に再びこれを討つが、とどめを刺しきらなかったことで拳銃神の一撃を受けて消滅してしまう。
計目 善三郎 (はかりめ ぜんざぶろう)
特殊機動殺人課の一員である中年の男性。発生した怪事件に対してネオテラーの関与の有無を探る役目を担っており、自ら前線に出ることは少ない。特殺課への転属を命じられたが、その場所を知らなかった的場イサムを、警察署の地下深くにある特殺課の部署へと導いた。
団子桜の弟たち (だんごさくらのおとうとたち)
姉である団子桜と共に特殊機動殺人課でメカニックをやっている五つ子。みんな同じ顔をしている。初めて特殺課にやってきた的場イサムをからかうなど、5人そろって子供じみた性格をしているが腕は確かで、日々ネオテラーにも有効で強力な銃器を開発している。桜が出奔し拳銃神の巫女となった後は、姉を元通りにするか、あるいは倒してしまうようイサムに願った。
端元 真悟 (はしもと しんご)
特殊機動殺人課の一員。総髪で、体格のいい男性隊員。特殺課入隊直後、課の慣習に反抗し仁倉刑次に倒された的場イサムを他の隊員と共にリンチにかけるが、その後は隊員として行動を共にするようになる。相撲部屋でネオテラーによる事件が起きた際、イサムと一緒に潜入調査に赴くが、そこで現役力士にも負けないパワーを見せ、相撲取りとしての才能を見出されスカウトされていた。
ピューパ
“さなぎ”という意味の名を持つ殺し屋。生まれつき外皮がない奇病におかされている。人の皮を全身に被って他人に成りすます変装の達人で、皮を複数着こむことで次々と変身して捜査の目をくらます。的場イサムに“犯罪者の目”を見抜かれて正体を暴かれ、梓弓鶴を人質に自らのプライドを守るため決戦を挑む。
薬丸 博也 (やくまる ひろや)
特殊機動殺人課の一員。犯罪者や同僚の警官を殺した過去を持つメンバーばかりの特殺課にあって、唯一人殺しの経験がない人物。死体を愛し、食べることもあるネクロフィリアで、その性質から特殺課にスカウトされた。犠牲者の遺体などを検視してネオテラーの関与を見抜き、その特性を推察する。
ネオテラー
『拳銃神 THE GUN SPIRIT』に登場する怪物の総称。特殊機動殺人課が対処する超常的な犯罪者で、ネオ+テロリストの造語でネオテラーと呼ばれる。自身の死後に発生した強い後悔や怨みの感情から甦ったゾンビのような存在で、弱点とされる自身の一部分以外を食って生命力に転換しており、肉体的にはほぼ不死身。自身の肉体を食っているうちはネオテラー、昇華して他者の肉体を糧にできるようになると神と呼ばれるようになる。
その他キーワード
拳銃神 (けんじゅうしん)
『拳銃神 THE GUN SPIRIT』に登場する武器。銃職人だった梓弓鶴の父親が10年前に作り上げた意思を持つ銃。的場イサムら“死祭”の人間と同様に“死気”を放つことができ、人を殺すたびに、より巨大な口径を持つ銃に変身する。暴力団員をだまして人殺しをさせて成長し、弓鶴と出会った時は父親の幻覚を見せて弓鶴を自身の巫女にすることで、意思持つ銃からさらに拳銃神に昇華しようとした。 弓鶴には拒絶されるが、後に無力感から自暴自棄になっていた団子桜を見出し、己の巫女とする。
死気と抗気 (しきとこうき)
『拳銃神 THE GUN SPIRIT』に登場する用語。的場イサムら“死祭”の人間と巫女を得た拳銃神が扱える超常的な力。“死気”は対象の生命力、生命として存在できる時間を失わせられるため、ほぼ不死身のネオテラー、そしてそれを超越した神に対しても有効な対処手段となる。対して“抗気”は死気によって失われた生命力すらも復活させるもので、この2つの気をもって神に立ち向かうのが死祭一族の役割だった。