新しいきみへ

新しいきみへ

最愛の妻に浮気されたと思い込み、生まれ故郷へ逃避行した冴(さ)えない教師の佐久間悟は、そこで出会った不思議な少女、相生亜希に付きまとわれるようになる。パンデミックで崩壊しつつある世界の片隅で繰り広げられる恋愛奇譚。「ウルトラジャンプ」で2021年10月号から掲載の作品。

正式名称
新しいきみへ
ふりがな
あたらしいきみへ
作者
ジャンル
パンデミック
レーベル
ヤングジャンプコミックス(集英社)
巻数
既刊6巻
関連商品
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あらすじ

女子高校で教師を務める佐久間悟は、有給の日にほかの教師の依頼を受け、生徒が起こしたトラブルを解決するために歓楽街を訪問していた。無事にトラブルを解決して帰途についた悟は、酒に酔った妻の佐久間亜希が見知らぬ男とホテルに入る姿を目撃してしまう。激しく動揺した悟は電車に飛び乗り、勢いのまま仙台へと向かう。翌朝、仮病で仕事を休んだ悟は仙台を一通り観光したあと、小さい頃の夢だった日本一周を達成するため、1週間かけて電車で全国の観光地を巡ったのちに、生まれ故郷の小田原へとたどり着く。少子高齢化ですっかり寂れた街中を見て回っていた悟は、そこで偶然出会った不思議な少女に荷物運びをお願いされる。たまに見る夢の中に現れる黒髪の少女と面影が似ている謎の少女に戸惑いつつも、悟は手伝うことを了承。街を連れまわされた悟は、お礼として少女に取り留めのない愚痴を聞いてもらった末、少女に言われるままいっしょにホテルへと入ってしまう。しかし、最後の一線を越える直前、妻の亜希との馴(な)れ初めの記憶が脳裏に浮かんだ悟は、何もせずにそのまま帰宅の途につく。帰宅した悟は、そこで亜希の浮気が自らのカンちがいであったことを知り、安堵(あんど)すると共に生まれ変わった気持ちで新学期を迎えるのだった。だが、新入生の担任となった悟は、小田原で出会った謎の少女、相生亜希がクラスに編入して来たこと、しかも彼女に結婚指輪を盗(と)られたことを知り愕然(がくぜん)とする。最後の一線を越えていないとはいえ、相生とホテルに行ったことが発覚すれば社会的な死は免れないと思った悟は、相生に対して何もなかったという同意を得て、結婚指輪を返してもらおうとする。しかし、好きになったものは生まれ変わっても手放さないと断言する相生は、結婚指輪の返還を拒否し、それ以降ずっと悟に付きまとうようになる。後日、帰宅中に少年に絡まれていた相生を助けた悟は、彼女に高層ホテルの展望台へと連れていかれる。相生の不可思議な言動に謎の既視感を覚える悟に対し、相生は自分が本当に悟のことを愛していることを伝える。二人が不思議な逢瀬(おうせ)を重ねる中、日本をはじめとする世界中では、感染者が激しく吐血した末に無残な死を遂げる、謎の奇病が流行しつつあった。

登場人物・キャラクター

佐久間 悟 (さくま さとる)

さえない風貌をした中年男性。とある女子高校で教師を務めている。寝ぐせのついた黒髪に無精ひげを生やしている。生真面目ながら、つねにおどおどしている気弱な性格で、日々流されるように生きている。妻の佐久間亜希とマンションで二人暮らしをしている。一部の生徒からは「サックマン」というあだ名で呼ばれている。潔癖症気味ではあるが、風呂に入るのは嫌い。また、クリーニングしたスーツのタグを毎回取り忘れて登校してしまうなど、かなりズボラでドジな一面がある。自分に自信が持てず、他人の冗談もすぐに真に受けてしまう。相手が誰であっても毅然(きぜん)とした態度が取れないため、周囲の人たちからいいように使われてしまうことが多い。佐久間悟本人もそれを自覚しており、悩む様子を間近で見ている亜希からは仕事を辞めた方がいいとアドバイスされている。しかし、強い責任感から退職を決意することができないでいる。学生時代は世界を変える研究者になることを夢見ていたが、ある事情により教職員となった。ここ数日、どこか見覚えのある高校生くらいの黒髪の少女に、「きみはまた失敗した」と言われる、不思議な夢を見ることがあるのを気にしていた。ある日、生徒が起こしたトラブルを解決するために歓楽街に赴いた際、妻の亜希が見知らぬ男と浮気をしているとカンちがいし、そのショックから勢いのまま、1週間かけて電車で全国の観光地を巡ったのちに、生まれ故郷の小田原までたどり着く。そこで偶然出会った不思議な少女、相生亜希と、成り行きでホテルへ入ってしまう。結果的に何も起こらなかったものの、相生に結婚指輪を盗られたうえ、新学期が始まったその日、悟自身が担当するクラスに転入して来たことで再会。一連の事態の発覚を恐れた悟は、結婚指輪を返すように相生にお願いをするも、それを拒否した彼女からつきまとわれ、積極的なアプローチを受け続けるようになる。相生には初対面の時から夢で会っていた黒髪の少女の面影を見ており、いつの間にか相生に惹(ひ)かれている自分に気づく。

相生 亜希 (あいおい あき)

高校生の女子。目の大きな美少女。茶髪のショートヘアで、ミステリアスな雰囲気を漂わせている。明るくて社交的な性格ながら、時おりすべてを見透かしているかのような憂いのある表情を見せる。妻の佐久間亜希に浮気をされたとカンちがいした佐久間悟が、そのショックから勢いのまま、1週間かけて電車で全国の観光地を巡ったのちに、生まれ故郷の小田原で出会った。悟がたまに夢の中で見る黒髪の少女に面影が似ており、傷心の悟の愚痴を聞いたうえでホテルに誘い込んだ。その際に悟の結婚指輪を盗み、新学期開始時に悟が教師を務める女子高校へと入学した。悟が担任をしているクラスに編入し、再会を果たす。結婚指輪を取り戻そうとする悟に対し、結婚指輪を返すのを敢然と拒否。悟に対しなんでも言うことを聞くように脅迫したうえで付きまとい、積極的にアプローチを繰り返すことになる。なぜか悟のことを本気で愛しており、悟について何かを知っているようなそぶりも見せる。また、1か月前まで同級生だった男子の顔をほとんど忘れていたり、自宅の電話番号が公共機関につながる偽物の番号だったりと、その正体は謎のヴェールに包まれている。

佐久間 亜希 (さくま あき)

佐久間悟の妻で、刑事を務める女性。黒髪をミドルヘアにしている。神奈川県警の捜査一課に配属されている。勝ち気な性格で、声の大きな毒舌家。悟と共に、マンションで二人暮らしをしている。職場では優秀な刑事として同僚からも頼りにされており、優柔不断な悟とは異なり即断即決ができる。また、集中力も高く、何をやっても器用にこなす。周囲から面倒ごとを押し付けられる気弱な悟に対して、職場を辞めた方がいいとアドバイスしていた。口が悪くぶっきらぼうながら、悟のことを深く愛している。女性の同僚と飲み歩いていた際、偶然その姿を見た悟に浮気をしているとカンちがいされてしまう。たびたびショックを受けて日本中を放浪する癖のある悟の行動を、クレジットカードの使用履歴を見て完全に把握していた。浮気とカンちがいして、そのショックから勢いのまま、電車で全国の観光地を巡ったのちに生まれ故郷の小田原から1週間後に帰宅した悟を、何も言わずに暖かく迎えた。日本各地で謎の奇病が蔓延(まんえん)し始めた際は現場に投入され、米軍がこのパンデミックで50億人は死ぬと予想していることを捜査員に伝えた。

吉本 菜月 (よしもと なつき)

佐久間悟が勤務する女子高校で体育教師を務める女性。スタイル抜群の巨乳の持ち主で、髪を肩口で縛っている。能天気でおっとりした性格の、生徒思いな不思議ちゃん。生真面目ながら不器用な佐久間悟を萌(も)えの百貨店であると感じ、好意を抱いている。悟のことをつねに観察しており、事あるごとに話しかけている。悟が傷心で1週間学校を休んだあと、結婚指輪をしていないことに気づき、事態を誤解して彼を励ましていた。新入生の相生亜希からは、なんとなく冷ややかな目で見られている。能天気だが勘の鋭い一面もあり、言動が不自然な相生のことが気になり、彼女の家に電話をかけた結果、電話番号が偽物であることを知ってしまう。

黒髪の少女

佐久間悟がたまに見る夢の中に現れる謎の少女。お堀端の桜並木で、黒髪の少女から「きみはまた失敗した」と言われるのが、どの夢でも共通している。悟自身も彼女に言い知れぬ既視感を感じており、妻の佐久間亜希の若い頃の姿であり、悟が道を踏み外しそうになった時に現れる幻影ではないか、と自分なりの推測を立てていた。見た目や雰囲気はかなり違うものの、傷心の悟が逃避行した小田原で出会った相生亜希にも、悟は謎の少女の面影を感じ取っている。

井上 (いのうえ)

佐久間悟が勤務する女子高校で教師を務める男性。短髪のがっしりした体格で、朴念仁なうえに生真面目な悟をつまらない人間だと思っている。悟から友人の話という体で、生徒とホテルに行った教職員の話を聞かされるが、一瞬で悟の体験談であることを見抜いていた。

小林 (こばやし)

佐久間悟が勤務する女子高校で教師を務める女性。学校を無断欠勤したため、ほかの教師が小林が一人暮らしをしているアパートを訪問するが、返事がなかったためひとまず様子見されていた。しかし、その翌日にアパートの一室で、吐血して血まみれとなった無残な死体で発見される。

書誌情報

新しいきみへ 6巻 集英社〈ヤングジャンプコミックス〉

第1巻

(2022-02-18発行、 978-4088921976)

第2巻

(2022-08-19発行、 978-4088923413)

第3巻

(2022-11-17発行、 978-4088925288)

第4巻

(2023-04-18発行、 978-4088926384)

第5巻

(2023-08-18発行、 978-4088927527)

第6巻

(2023-12-19発行、 978-4088930893)

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