明智警部の事件簿

本作は、さとうふみやの『金田一少年の事件簿』のスピンオフ作品。『金田一少年の事件簿』の人気キャラクターである明智健悟が主人公を務め、彼の警部時代の活躍を描いた警察ミステリー。『金田一少年の事件簿』 の原作者の一人である天樹征丸は、本作は本編のような派手なトリックこそないものの、丁寧に推理を重ねていくさまが大きな魅力となっており、警視庁きってのエリート警部･明智の天才性をみごとに表現していると語っている。また、警察内の深い闇が取り上げられているのも特徴で、自分の信じる正義を貫くため、明智が組織に歯向かう覚悟であらゆる犯罪に立ち向かう姿も見どころとなっている。

『金田一少年の事件簿』が探偵ミステリーであるのに対し、本作は刑事ミステリーであるため、取り扱う事件は本編とは趣きが異なっている。『金田一少年の事件簿』は主人公の金田一一が事件に巻き込まれるのに対し、明智健悟は自ら事件の起こった現場に足を運び、その事件を解決に導いていく。明智が後輩の小林竜太郎を相棒にして事件を解決するバディミステリーであり、小林の抜けっぷりに明智が毒のあるツッコミを入れる掛け合いが本作の魅力の一つとなっている。また、本編の影の主人公ともいえる「怪人」は登場しない。

本作の主人公･明智健悟は卓越した頭脳を武器に、「正義」を貫くために小林竜太郎をはじめとした同僚たちとさまざまな事件を解決に導いていく。しかし事件は次第に警察内部の深い闇に切り込み、「正義」と「警察」を天秤にかけるようになり、警察という組織に対して正義とは何かを問う内容となる。『金田一少年の事件簿』に登場した警視･明智健悟がなぜ冷徹な人間となったのか、その軌跡が本作で明らかになる。