作品の概要
基本情報
さとうふみやの代表作で、後に長期シリーズ化される「金田一少年の事件簿」シリーズ1作目。case2巻までは金成陽三郎が原作、それ以降は天樹征丸(樹林伸)が原作・原案を務める。
要旨と舞台設定
1990年代の日本を舞台に、高校生探偵・金田一一が遭遇する殺人事件の謎を解き明かしていく物語。一は、幼なじみの七瀬美雪や警視庁の剣持勇警部と共に、複雑なトリックが仕掛けられた事件に挑む。
ストーリー展開
事件の多くは閉鎖空間で発生し、連続殺人の形を取る。そして、犯人は「怪人」と呼ばれる二つ名を持ち、独自の動機と計画的な手法で犯行を実行する。一は、現場に残された証拠や関係者の証言から真相にせまっていく。
ジャンル的特徴と位置づけ
本作は、トリックの提示と解決、犯人の動機の解明、そして事件の背景にある人間関係が事件のカギを握る本格ミステリー。読者参加型の推理が可能なように、最初に証拠が提示され、論理的な推理過程を経て真相が明らかになる。
作品固有の表現技法と特徴
作品の構成は、事件の発生から捜査、真相解明までを基本とし、各事件には固有のテーマや舞台設定が用意される。犯人の怪人名、事件に関連する伝説や都市伝説なども物語の重要な要素として組み込まれる。
世界観の構築と設定
世界観は、現実の日本社会を基盤としており、学校や観光地、娯楽施設などの日常的な場所が舞台となる。警察組織や法制度も現実に即した形で描かれ、リアリティのある推理展開の基礎となっている。
社会的影響
本作は、日本のミステリー漫画の定番として認知され、後続の作品に多大な影響を与えた。『金田一37歳の事件簿』など、派生作品も展開されている。
連載状況
講談社「週刊少年マガジン」1992年45号から2001年2号まで連載。
受賞歴
1995年第19回「講談社漫画賞」少年部門。
メディアミックス情報
テレビドラマ
第1シリーズ:1995年7月から1995年9月まで放送。主演は堂本剛。
第2シリーズ:1996年7月から1996年9月まで放送。主演は第1シリーズ同様、堂本剛。
第3シリーズ:2001年7月から2001年9月まで放送。主演は松本潤。
スペシャルドラマ『金田一少年の事件簿 吸血鬼伝説殺人事件』:2005年9月24日放送。主演は亀梨和也。
第4シリーズ『金田一少年の事件簿N(neo)』:2014年7月から2014年9月まで放送。主演は山田涼介。
第5シリーズ『金田一少年の事件簿 THE FILES OF YOUNG KINDAICHI』:2022年4月から2022年7月まで放送。主演は道枝駿佑。
実写映画
『金田一少年の事件簿 上海魚人伝説』:1997年12月13日公開。
劇場アニメ
第1作『金田一少年の事件簿 オペラ座館・新たなる殺人』:1996年12月14日公開。
第2作『金田一少年の事件簿2 殺戮のディープブルー』:1999年8月21日公開。
テレビアニメ
第1作『金田一少年の事件簿』:1997年4月から2000年9月まで放送。
第2作『金田一少年の事件簿R』第1期:2014年4月から2014年9月まで放送。
第2作『金田一少年の事件簿R』第2期:2015年10月から2016年3月まで放送。
あらすじ
登場人物・キャラクター
金田一 一 (きんだいち はじめ)
私立不動高校2年生。名探偵と呼ばれた祖父「金田一耕助」を持つ、素人探偵。年相応にスケベで、いい加減な性格に見えるが、根は真面目で正義感が強い。人懐っこい性格からか同世代の友人が多い。太い眉がトレードマーク。ミステリー研究会と演劇部に所属。運動音痴で、学業成績も留年寸前の悪さだが、洞察力、推理力に長け、IQ180を誇る。 祖父に教えられたマジックの知識と技術や、スリの手腕を持ち、時に事件解決に役立たせるが、同時にちょっとした邪心から悪用する事もある。些細な違和感を感じ取る直感的な能力を持つが、探偵としては、基本的には状況証拠を丹念に積み重ねていくタイプ。止むを得ない事情を持つ犯人に対しては、罪を憎んで人を憎まず的な対処をする事が多い。 幼馴染の七瀬美雪とは相思相愛だが、お互い素直にはなれず「友達以上、恋人未満」の関係性が続いている。決め台詞は、「謎は解けた!」、「犯人はこの中にいる!」或いは「ジッチャンの名にかけて!」。東京都不動山市在住。童貞。誕生日は8月5日、身長170cm、体重58kg、血液型B型。
七瀬 美雪 (ななせ みゆき)
私立不動高校2年生。金田一一の近所に住む幼馴染。黒髪ロングヘアの美少女。真面目で面倒見のいい性格で、学業成績も良く、生徒会長を務める程の、才色兼備な優等生。連載当初は、大人しい守られるタイプのヒロインだったが、後半に行くに従いアクティブになり、ハジメに対するツッコミなどが過激になると同時に、ワトソン的役割も強くなって行く。 ミステリー研究会で部長を務める。また演劇部にも所属。ハジメとは相思相愛だが、お互い素直にはなれず、「友達以上、恋人未満」の関係性が続いている。誕生日は11月24日、身長160cm、体重48kg、血液型A型、スリーサイズB88W58H89。
剣持 勇 (けんもち いさむ)
警視庁刑事部捜査一課所属の警部。48歳。叩き上げで、登場当時は金田一一の事を疎んじていたが、事件を通じ彼の能力を認め、良き理解者となる。警察官としての誇りを持つ、熱血漢で人情に厚い。熱意とは裏腹に、洞察力、推理力に極めて乏しい事もあり、複雑な事件の解決能力は今ひとつ。反面、柔道が得意で黒帯五段の腕前で、犯人の捕縛力には極めて優れる。 年若いハジメに対して、物心両面に渡って後見人的な役割をする事もある。和枝という妻、三人の子供、母が家族に居る。グルメな一面も持つ。身長182cm、体重80kg、血液型O型。
明智 健悟
警視庁刑事部捜査一課所属の警視。キャリア組。28歳。あらゆる知識に長け、長身、容姿端麗なエリートだが、自信過剰で能力に劣る物を見下しがちな性格。ただし、信念に燃える側面も持ち、自身が納得さえすれば融通も利き、止むを得ない事情を持つ犯人に対しては温情を掛ける事もある。スポーツ、芸術、テーブルゲームなどが趣味。 セスナや、ジャンボジェットの操縦技術を持つ。語学にも長け四ヶ国語以上を操る。私立秀央高校出身。警視総監賞の最年少受賞者。ロサンゼルス市警での勤務経験あり。金田一一とは、性格の違いもあり犬猿の中。ただし、お互いの能力は認めており、信頼関係も強い。眼鏡着用。独身。趣味感覚が一般人とズレている為、その優れた能力への畏敬と同時に、変人としても扱われている。 身長180cm、体重70kg、血液型AB型。
速水 玲香 (はやみ れいか)
17歳。14歳でデビューした人気アイドルタレント。芯が強く勝ち気な性格だが、親しい人間には年相応の弱さも見せる。ウェーブ気味のセミロングヘアーが特徴。「雪夜叉伝説殺人事件」にて登場。容疑を掛けられていた所を、金田一一に助けられ、好意を持つ。幼い頃に母が病死したらしく、速水雄一郎に育てられる。 何かを首に巻き付ける事にトラウマを持つ。七瀬美雪とは、恋のライバルにして、良き友人。複数回に渡って登場するが、登場毎に何らかの災難にあう。身長157cm、体重36kg、血液型O型、スリーサイズB83W55H84。
高遠 遙一 (たかとお よういち)
23歳。前髪を分けた、目つきの鋭い細面の青年。自らを「犯罪芸術家」と称し、「地獄の傀儡師」を名乗る殺人鬼。マジックの技能を持つ。私立秀央高校出身。「魔術列車殺人事件」で登場後、シリーズを通じて金田一一の宿敵となる。登場時の事件で、天才マジシャンだった母、近宮玲子を陥れ、死亡させた人物達へ復讐を遂げ、一旦は逮捕されるが脱獄する。 脱獄後は、天性の勘を頼りに、復讐心を持つ者を見つけ、計画を授けるなどの殺人教唆を行うようになる。愉快犯的に犯行を繰り返すが、自らの行動に、独特のポリシーを持ち、ターゲットに対しては、極めて冷酷だが、約束や恩に関しては、義理堅い面も見せる。また、計画の実行にジャマにならない者にも、危害をおよばさない。 授けた計画から逸脱した人間には、自らの手で死を与える事もある。事件を起こす場合は、何らかの方法でハジメを呼び出す傾向を持つ。ハジメとの関係を、「光と闇の双子」「平行線」と例え、事件を挟んで対極に立つ存在であると同時に、事件を欲する点では同類としても見ている。 去り際には「Good Luck」などの英語の台詞を言う事が多い。事件に関わらない時は、マジシャンとして子供達に、自らを題材にした人形劇やマジックショーを見せている。異母妹が居る。体重50kg。
佐木 竜太 (さき りゅうた)
私立不動高校1年生。佐木竜二の兄。眼鏡を掛けた細身の少年。金田一一の後輩。ミステリー研究会に所属。「佐木映像会社」の息子で、趣味でビデオカメラ「キャモン・ビデオアイ」を常に携帯し、不思議なものや、事件を記録し続ける。物陰や隙間等からビデオカメラ越しに覗いていたり、気配を消して他人に忍び寄るなど、少々不気味な奇行が目立つ。 「異人館ホテル殺人事件」で、犯人の仕掛けたトリックに気が付いてしまい、口封じの為に殺害される。その後、同ポジションの弟が登場したため、回想などでは佐木1号と呼ばれる。ハジメの夢に幽霊姿で登場し、身の危険などの警告を暗黙的に伝える事もある。血液型AB型。
佐木 竜二 (さき りゅうじ)
私立不動中学3年生。佐木竜太の弟。佐木竜太の死後、同じポジションである記録係を兼ねた、余り特殊能力を持たない読者目線に近い存在の人材として登場した。容姿も大体同じだが、物静かだった兄と比べると単純で明るい。年相応にスケベで、金田一一と悪乗りする事もある。ビデオカメラを愛し、8mmカメラマニアに、カメラを捨てられた時は激怒した。 勝手に「金田一はじめ探偵事務所」のWEBページを作成し、依頼を受け始めた事もあった。血液型AB型。
金田一 二三 (きんだいち ふみ)
金田一一の母方の従妹。9歳で小学3年生。髪型は上結びのツインテール。顔つきは、ハジメに良く似ている。家業の手伝いをしていた為か、年の割にはしっかりしている。外面は極めて良いが、本性は狡賢く生意気。何かとませているが、耳年増なだけで根は純真。未熟ではあるが探偵の才能を持ち、ハジメの助言を得てではあるが、殺人事件を解決した事もある。 誕生日は10月3日、身長124cm、体重25kg、血液型O型。
村上 草太 (むらかみ そうた)
私立不動高校2年生。金田一一の中学時代からの同級生。ハジメと七瀬美雪の共通の友人。ミステリー研究会所属。常識人で真面目な性格であるが、若干ストーカーじみた発言をした事もあった。ハジメとは良く一緒に遊びに行く仲。塾を紹介した事もあった。美雪に好意を寄せるが、美雪の心はハジメの方を向いている事は良く理解している。 親が弁護士であるため、自身も弁護士を目指している。出身は千葉県身長170.6cm。
いつき 陽介 (いつき ようすけ)
フリールポライター。登場時30歳前半。いつき陽介はペンネーム。本名は樹村信介。正論を振りかざし、人当たりが悪いが、一度信頼した人間への信は厚い。本人は一匹狼を気取るが、実際は多くの人からの人望を集める。水難にあいがちな運まわりの結果、水や船に対する重度のトラウマを抱えている。金田一一や七瀬美雪の理解者の一人で、ハジメが殺人容疑を掛けられ逃亡した時は、彼を全面的にサポートした。 独身。最上葉月と言う女性と交際していた過去があるが、悲恋に終わった。現在は、知人の娘である都築瑞穂を引き取り二人暮しをしている。誕生日は10月3日、身長176cm、体重65kg、血液型B型。
真壁 誠 (まかべ まこと)
私立不動高校3年生。推理大賞を獲った事もある現役高校生推理作家。好色でワカメの様な髪型をしている。ミステリー研究会所属。推理能力や女性関係で敗北した、金田一一に対して恨みを抱き、事あるごとに厭味を言う。高校生推理作家と言う事になっているが、実際は、鷹島友代という女子生徒がゴーストライターを務めている。 本人は、友代を利用しているつもりでいるが、実際は彼の方が利用されている。しかし、彼はその事に気が付いていない。
怪盗紳士 (かいとうしんし)
狙った獲物を鮮やかに盗んでいく神出鬼没の怪盗。絵画などの芸術作品をターゲットとするが、金塊を盗んだ事もあった。芸術作品の場合は、そのモチーフに悪戯的な改変を加え、元の形を消して、「モチーフごと」盗みさってしまう。基本的に一人で盗みに入るが、大勢の部下を持ち、盗品の搬出や脱出の手助けをさせる。 「紳士」という名前だが、正体は、スタイルの良いロングヘアの女性。変装の達人であり、美術雑誌記者「醍醐真紀」の姿を良く利用する。あくまで盗みが専門であり、殺人などは行わないが、盗みによる被害総額は50億を下らないといわれる。金田一一に、煮え湯を飲まされる事もあるが、それ以上に、彼を出し抜きやり込めている、作中唯一の人物。
太刀川 都 (たちかわ みやこ)
金田一一の中学時代の旧友。「雪影村殺人事件」に登場。雪影高校2年。元気で明るい正統派田舎娘。ショートカットにカチューシャ姿で、丸眼鏡を掛けている。文才があると自称し、推理作家を志望している。ハジメより背が高い。同級生の死を切欠に、ハジメと再会した。 再会後に起きた事件では、七瀬美雪の替わりに、ワトソンポジションを務める。ハジメに懸想していたが、再び言い出せないままに別れる事となった。
クレジット
続編
金田一少年の事件簿R (きんだいちしょうねんのじけんぼりたーんず)
『金田一少年の事件簿』の続編。名探偵金田一耕助を祖父に持つ高校2年生の少年、金田一一が、大がかりな復讐殺人のトリックを次々と暴いていくミステリー漫画。複数の事件で宿敵、高遠遙一の存在が背後に浮かび上が... 関連ページ:金田一少年の事件簿R
金田一37歳の事件簿 (きんだいちさんじゅうななさいのじけんぼ)
さとうふみやの『金田一少年の事件簿』の続編。前作から20年が経過して社会人となった37歳の金田一一が、再びさまざまな怪事件に巻き込まれ、その謎に挑む姿を描くミステリー。前作の登場人物も、時間の経過によ... 関連ページ:金田一37歳の事件簿
金田一パパの事件簿 (きんだいちぱぱのじけんぼ)
さとうふみや『金田一37歳の事件簿』の続編。現代の日本を舞台に、探偵事務所を開設した金田一一が、一人息子の九十九と共にさまざまな事件の謎に挑む探偵ミステリードラマ。講談社「コミックDAYS」で2025... 関連ページ:金田一パパの事件簿
関連
明智警部の事件簿 (あけちけいぶのじけんぼ)
「金田一少年の事件簿」シリーズのスピンオフ作品で、漫画は『トモダチゲーム』などで知られる佐藤友生が担当。舞台となるのは『金田一少年の事件簿』の数年前で、明智健悟の警部時代に焦点を当て、明智が部下の小林... 関連ページ:明智警部の事件簿
金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿 (きんだいちしょうねんのじけんぼがいでん はんにんたちのじけんぼ)
さとうふみやの『金田一少年の事件簿』で起こったさまざまな事件を、それぞれの犯人の視点から描いたスピンオフ作品。異なる動機とトリックを持ちながら、それらすべてを金田一一に見抜かれてしまった犯人達の物語が... 関連ページ:金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿
金田一少年の事件簿30th (きんだいちしょうねんのじけんぼ さーてぃーす)
ミステリー漫画や推理漫画の金字塔として知られる、さとうふみやの代表作である「金田一少年の事件簿」シリーズの連載30周年を記念した作品。過去の「金田一少年の事件簿」シリーズと同様に、多数のミステリー作品... 関連ページ:金田一少年の事件簿30th
書誌情報
金田一少年の事件簿File 34巻 講談社〈講談社漫画文庫〉
第1巻
(2004-08-04発行、978-4063607734)
第2巻
(2004-08-04発行、978-4063607741)
第3巻
(2004-08-04発行、978-4063607758)
第4巻
(2004-08-04発行、978-4063607765)
第5巻
(2004-09-10発行、978-4063607932)
第6巻
(2004-09-10発行、978-4063607949)
第7巻
(2004-10-08発行、978-4063608090)
第8巻
(2004-10-08発行、978-4063608106)
第9巻
(2004-11-12発行、978-4063608304)
第10巻
(2004-11-12発行、978-4063608311)
第11巻
(2004-12-10発行、978-4063608489)
第14巻
(2005-01-12発行、978-4063608731)
第15巻
(2005-02-10発行、978-4063608854)
第19巻
(2005-04-12発行、978-4063609127)
第20巻
(2005-04-12発行、978-4063609134)
第22巻
(2005-06-10発行、978-4063609332)
第26巻
(2005-10-12発行、978-4063609738)
第27巻
(2012-01-12発行、978-4063708257)
第28巻
(2012-02-10発行、978-4063708295)
第29巻
(2012-03-09発行、978-4063708387)
第30巻
(2012-04-12発行、978-4063708424)
第31巻
(2012-05-11発行、978-4063708448)
第32巻
(2014-05-09発行、978-4063849929)
第33巻
(2014-06-12発行、978-4063849936)
第34巻
(2014-07-11発行、978-4063849943)
金田一少年の事件簿 講談社〈講談社漫画文庫〉
file 12
(2004-12-01発行、978-4063608496)
file 13
(2005-01-01発行、978-4063608724)
file 16
(2005-02-01発行、978-4063608861)
file 17
(2005-03-01発行、978-4063608960)
file 18
(2005-03-01発行、978-4063608977)
file 21
(2005-05-01発行、978-4063609196)
金田一少年の事件簿 : 短編集 講談社〈講談社漫画文庫〉
2(鏡迷宮の殺人)
(2005-07-01発行、978-4063609455)
4(怪盗紳士からの挑戦状)
(2005-09-01発行、978-4063609660)







