黒髭荘は人々の記憶に残らない洋館
葛木信二郎が下宿し、尋が管理人を務める黒髭荘は、広大な敷地を有しながらも、人々の記憶に残ることは少ない。その理由は、管理人の尋や大家の大鯰三太夫をはじめ、信二郎を除くすべての住人が人外であることに起因している。コウモリや猫又、化け狸たちが暮らす黒髭荘では、さまざまな騒動が巻き起こり、信二郎はその騒動を楽しみながら、次々とトラブルを解決に導いていく。
陰陽師の姉弟は何者なのか?
騒がしい日常を送る信二郎たちの前に、陰陽師の姉弟・勘解由小路サマラと勘解由小路カルマが現れる。彼らは捕らえた人魚を干からびさせ、猿の血を与えて蠱術を完成させようとしたり、土蜘蛛や犬神をあやつったりするため、当初は信二郎たちの敵と見なされていた。しかし、ある事件をきっかけに共闘することになり、サマラが過去に信二郎の兄・悌一郎と交流を持っていたことが明らかになる。人外たちに対しては冷徹な態度を示す一方で、人間に対しては温かな表情を見せる二人との関係が、本作の展開に深みを与えている。
葛木信二郎を取り巻く恋の行方
信二郎は、特別に美男子というわけではなく、ふだんは頼りない印象を与える青年で、世間からはあまり評価されていない書生と見なされている。しかし、彼は人間であれ人外であれ、分け隔てなく優しく接し、困っている人がいればできる限り手助けをしようとする。そんな信二郎の内面を知るにつれて、多くの女性たちが彼に惹かれていく。また、黒髭荘の管理人である尋と、陰陽師のサマラは、信二郎に恋愛感情を抱いており、控えめながらも積極的にアプローチを続けている。さらに、黒髭荘には信二郎の初恋の相手であり、悌一郎の許嫁でもある半猫又の女性・操緒も下宿しており、彼女の存在が物語に緊張感をもたらしている。
登場人物・キャラクター
葛木 信二郎 (かつらぎ しんじろう)
小説家を目指す書生の男性。黒髭荘に下宿しながら、生活費を稼ぐために家庭教師などのアルバイトをしている。黒髪の短髪で、アンダーリムの眼鏡をかけている。祖母が巫女だった影響で、人外の存在を見ることができるが、強い妖気に触れると肌がかぶれてしまう。祖母の教えに従い、妖怪たちにも心があり、悪事を働く際には必ず理由があると信じているため、困っている妖怪たちの悩みを聞き、解決に協力することを厭わない。その優しさと誠実さから、黒髭荘の住人だけでなく、人外からも信頼されている。また、幼い頃から共に過ごした「紅焔鬼(ぐえんき)」と呼ばれる希少な妖怪・ちまとは、姉弟のような深い関係を築いている。
尋 (ひろ)
黒髭荘の管理人を務める化け狸。ふだんは14歳ほどの少女の姿をしている。着物にエプロンを身につけ、長い黒髪を二本の三つ編みにまとめている。化けることは得意だが、身長があまり高くないため、恐ろしい姿に変身しても威圧感に欠けることがある。基本的に誰に対しても優しく、料理が得意なため、下宿人たちから非常に頼りにされている。しかし、好奇心が旺盛で、特にオカルトに関する噂話を好み、そういった話を耳にすると真相を追い求めたくなってしまう。葛木信二郎に恋愛感情を抱いており、信二郎が美しい女性と接触すると嫉妬心をあらわにすることもある。
書誌情報
書生 葛木信二郎の日常 全8巻 小学館〈サンデーGXコミックス〉
第1巻
(2011-06-17発行、978-4091572776)
第8巻
(2014-12-19発行、978-4091574015)







