死神探偵と憂鬱温泉

死神探偵と憂鬱温泉

事件に巻き込まれやすい体質の探偵、鹿神孝が、遭遇した事件を解決していく探偵ミステリーで、「死神探偵」シリーズの1作目。雪におおわれた温泉宿で起こる殺人事件を描く「死神探偵と憂鬱温泉」、遺言に隠された謎に挑む「変わらぬ娘」の2つのエピソードが収録されている。「Bstreet」vol.1からvol.5にかけて掲載された作品。

正式名称
死神探偵と憂鬱温泉
ふりがな
しにがみたんていとゆううつおんせん
作者
ジャンル
推理・ミステリー
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あらすじ

死神探偵と憂鬱温泉

探偵をしている鹿神孝と、妻の鹿神みちる、後輩で刑事のは、休暇で訪れた温泉宿で、女性の首つり死体を発見してしまう。しかし孝は、事件に巻き込まれやすい自分がこの宿にいたら、さらなる被害者が出るかもしれないと考え、捜査を地元警察に任せて下山しようとする。だが、外はひどい吹雪で宿を出ることができないでいた。 そこに、スキーに行っていた大学生の泊り客が戻って来る。彼らに話を聞いた孝は、死体となっていた女性が寺澤祐子という彼らの連れであったことを知る。だが、温泉宿の主、橋本が、被害者の身元を知らせるため警察に連絡をしようとしても、電話がつながらない。そのうえ携帯電話は圏外になっていた。孝たちは、雪山の温泉に完全に閉じ込められてしまったのだ。 この中の誰かが犯人ではないかと、疑心暗鬼になる大学生たち。その暗い雰囲気に耐えられず別室に向かった大学生、藤島もまた殺されてしまう。こうして孝は、やむを得ず連続殺人事件に挑むこととなる。

変わらぬ娘

ある日鹿神孝は、探偵として坪内美子の屋敷に招かれる。美子の依頼は、屋敷の主で病死した夫、坪内栄三が残した不思議な手紙を解明して欲しいというものだった。手紙には美子宛に「君にあげたい物がある」と書かれていたが、具体的な物の名前や場所は一切記載されていなかった。その後、屋敷の探索を始めた孝の前に、栄三のひ孫、が現れ、探し物を手伝うと申し出る。そして彼女は、窓の外に見える「栄三の家」の存在を孝に伝えるのだった。 「栄三の家」と呼ばれる彼のアトリエには、広い部屋に同じ女性を描いた肖像画が、数多く飾ってあった。茫然とする孝の前に美子が現れ、この肖像画は全部、栄三が描いたものだと説明する。だが美子はこの肖像画を見たくないと語り、いきなり壁にかかっていた1枚の肖像画を手斧で壊し、屋敷に戻っていく。 アトリエにも屋敷にも、手紙に書かれた遺品と思われる物はない。悩む孝は、雪の「肖像画に見られている」という言葉を思い出し、栄三の手紙に隠された謎を解明するヒントを摑む。

登場人物・キャラクター

鹿神 孝 (ししがみ こう)

探偵を生業とする青年。昔から事件に巻き込まれやすい体質のため、親しい人の中には「死神」と呼ぶ者もいるが、鹿神孝本人はその名で呼ばれることを嫌っている。基本的には真面目で淡々とした性格なので、妻の鹿神みちるには頭が上がらず、立場が弱い。事件に対する時は冷静で観察眼に優れているが、後輩である関との卓球の勝負に挑んで勝利し、無邪気に喜ぶ子供っぽいところもある。

鹿神 みちる (ししがみ みちる)

鹿神孝の妻。高校時代はクラスメイトだった。前髪をセンターで分けたストレートロングの髪型をしている。真面目で天然な性格は学生時代から変わっていないが、結婚してからは、はっきり意見を言うようになった。特に孝に対しては強く自己主張している。楽観的なところがあり、結婚して苗字が鹿神となり、関に「死神が2人になった」と言われても気にしていない。 関と一緒になって、孝をからかうことがある。

(せき)

鹿神孝の後輩の青年。高坂警察所轄の刑事。若者らしい短髪のツンツンヘアにしている。単純な熱い性格で、明るい雰囲気を漂わせており、その軽い口調から、温泉宿で出会った大学生たちとすぐに仲良くなった。孝を慕っているが、彼からは観察眼が足りないため、刑事には向かないと指摘されている。一方で、柔道は全国レベルの強さを誇る。孝が風呂で襲われて助けを求めた際は、浴室の壁を壊しながら現れるなど、武闘派として孝を支える。

橋本 (はしもと)

鹿神孝と鹿神みちる、関が旅行で泊まった温泉宿の主人。息子や息子の嫁と一緒に宿を切り盛りしている。七三分けで眼鏡をかけており、物静かで真面目な性格。一方で泊り客である寺澤祐子が亡くなっているにも関わらず、それが自分の宿の泊り客かどうかさえわからないなど、他人に対する興味が薄い。雪のために宿に閉じ込められたことを知っても、たいして驚いた様子は見せず、淡々と仕事をこなしていた。

寺澤 祐子 (てらさわ ゆうこ)

温泉宿に泊まっていた女子大学生。肩につくくらいの長さのセミロングの髪型をしている。サークルメンバーとともにスキーに来ていたが、風邪をひいていたため雪山には行かず、北野弘美とともに宿に残っていた。首つり状態で死んでいたところを、宿を訪れた鹿神孝と鹿神みちる、関によって発見された。

北野 弘美 (きたの ひろみ)

温泉宿に泊まっていた女子大学生。ショートカットの髪型で、大きな眼鏡をかけている。サークルメンバーとともにスキーに来ていたが、生理痛のため雪山には行かず、風邪をひいていた寺澤祐子とともに宿に残っていた。しかし寺澤とは違う部屋で過ごしていたので、彼女が亡くなった原因は知らない。寺澤に彼氏を取られたことがあり、その恨みから祐子を殺害したのではないかと、中村に激しく糾弾される。

中村 (なかむら)

温泉宿に泊まっていた女子大学生。前髪をセンターでわけ、セミロングの髪型をしている。サークルメンバーとともにスキーに来ていたところ、事件に巻き込まれた。寺澤祐子と一緒に宿に残っていた北野弘美を、寺澤殺害の犯人だと決めつけて激しく責めたので、北野とは険悪な仲になる。寺澤に何らかの秘密を握られていた様子がある。

藤島 (ふじしま)

温泉宿に泊まっていた女子大学生。ウェーブがかったボブヘアにしている。サークルメンバーとともにスキーに来ていたところ、事件に巻き込まれた。寺澤祐子が殺された後、北野弘美と中村が激しく言い争う様子に嫌気がさし、サークルメンバーと過ごしていた部屋を出た。その後、宿の離れから内線電話で中村をカラオケに誘っている最中に刺殺された。

今川 (いまがわ)

温泉宿に泊まっていた男子大学生。長身で、ツンと尖った短髪にしている。サークルメンバーとともにスキーに来ていたところ、事件に巻き込まれた。寺澤祐子と藤島の死後、鹿神孝に指示され、関や桜井とともに、宿内に怪しい人物がいないか捜索活動を行う。

桜井 (さくらい)

温泉宿に泊まっていた男子大学生。肩にかからないくらいの髪型をしている。サークルメンバーとともにスキーに来ていたところ、事件に巻き込まれた。気さくな性格で、出会った当初は、彼女がいないと言う関に「大学生を紹介しましょうか?」などと軽口をたたいていた。仲間が殺された後も比較的冷静で、鹿神孝の質問にも雄弁に答えている。 孝に指示されて、関や今川とともに、宿内に怪しい人物がいないか捜索活動を行う。

坪内 栄三 (つぼうち えいぞう)

鹿神孝の遠い親戚の老人。妻である坪内美子の依頼によって孝が屋敷を訪れた時には、既に病死していた。生前は自らが住む屋敷の庭にアトリエを作り、戦前から戦後にかけて雇っていた女中、北林織絵の肖像画ばかり描いていた。美子に謎めいた手紙を遺す。

坪内 美子 (つぼうち よしこ)

坪内栄三の妻。老年で、長い髪を低い位置でお団子にしている。栄三が遺した手紙に書かれている内容の意味がわからず、探偵である鹿神孝に解読を依頼した。孝に対しては、礼儀正しく慎ましやかな態度をとる。かつて屋敷で女中として働いていた北林織絵と栄三が男女の仲だったと考えており、栄三が描いた織絵の肖像画を嫌っている。 孝が栄三のアトリエをはじめて訪れた際には、壁にかけられた肖像画を斧で壊し、その激情ぶりを見せた。

(ゆき)

坪内栄三のひ孫の少女。セミロングの長さの髪を、ツーサイドアップにしている。坪内美子の依頼で探し物をする鹿神孝と一緒に、栄三のアトリエ内を捜索した。好奇心旺盛で活発な性格で、細かなことによく気付く。栄三が描いた北林織絵の絵が自分を見ているみたいだと言ったり、屋敷内の変わった香りに気付いたりと、孝に捜査のヒントを与える。

北林 織絵 (きたばやし おりえ)

戦前、坪内栄三の屋敷で働いていた女中。ストレートロングの髪型をした女性で、父親のわからない子を生んで消息不明になった。その残された子供を栄三が養子として育てたのが雪の祖母である。坪内美子は、栄三と北林織絵が男女の関係を持ち、子をなしたのだと考えていた。

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