あらすじ
第1巻
ミステリーマニアの女子高校生・大堂寺繭良は、友人が巻き込まれた連続殺人事件「二刀流の死神事件」をきっかけに、燕雀探偵社の少年探偵を名乗る謎の少年ロキと出会う。繭良はロキと闇野竜介の協力を得て、犯人から友人を救い出し、殺人事件を無事解決する。繭良はこれを機にロキの助手を名乗るようになり、ミステリーと難事件を求め、毎日のように燕雀探偵社に通うようになる。しかしロキの正体は、北欧の最高神オーディンによって人間界に追放され、力を失って子供の姿になっていた悪戯と欺瞞の邪神だった。ロキはオーディンから、犯罪や暴力に走る人間の心に取り憑いた「魔」を落としていれば、いずれ神界に戻すと命令されていた。オーディンの命令に従う事にしたロキは怪事件を解決しながら、人間に取り憑いた魔を落とし続ける。そしてロキは半ば義務、半ば暇つぶしで探偵家業を続けるうちに、人間界に現れるほかの神々とも再会し、彼らとにぎやかな日常を過ごしながら、怪事件に挑み神界への帰還を目指すのだった。
第2巻
大堂寺繭良の高校で文化祭が開催され、繭良は闇野竜介と共に模擬店を開いていた。繭良のクラスメイトの鳴神は闇野を怪しく思い、闇野はそんな鳴神に対し謎の恐怖心を抱く。一方、ロキは繭良と合流するが、女性教師の石橋が転落死する事件が起こる。文化祭は中止となるが、その事件は事故死として発表される。しかし、石橋が多くの生徒の恨みを買っていた事から、事故ではなく殺人だったという噂が流れ始める。事件当日、「儀式が成功した」と話していた女子グループの会話を聞いていたロキは、彼女達が事件にかかわっていると睨み、繭良を通してアリバイ検証を始める。学校に潜入し直接話を聞いたロキは、女子グループの一人・伊東が石橋を殺した犯人だと見抜き、彼女の魔を落としたロキは屋上で鳴神と対面する。鳴神の正体は雷神トールで、彼は偶然、神界から人間界に落ちてしまい、学生のふりをしながら神界に帰る方法を模索していた。結局、神界に帰る方法が分からない鳴神はそのまま人間界で暮らす事となり、ロキの日常はますますにぎやかになっていく。
第3巻
大堂寺繭良、闇野竜介と共に買い物をしていたロキは、街で交通事故に遭いそうになっていた少女・大島玲也と知り合う。そしてロキは、玲也の中に北欧の女神フレイヤが封じられている事をすぐに見抜く。ロキはとまどいながらも鳴神に相談するが、フレイヤが人間界に来ている理由や、人間の少女になっている理由はわからないままだった。そんな中、ロキ達は見野から、大島家の食事会に誘われる。玲也と再会したロキは、彼女が悩みを抱えている事に気づく。玲也には予知夢を見る力があり、彼女は父親の死も予知夢によって予見しており、同時に資産家でもあった亡き父の遺産を巡る、大島家の遺産争いに巻き込まれていたのである。父親の死後、さらに死人が出るという不吉な予知夢を見た玲也は、父親の遺言の謎を解くよう、ロキに依頼する。しかし食事会の夜、遺産を求めて集まった玲也の親戚・杉蔵と里美が、何者かに殺害されてしまう。さらに犯人の殺意は、事件を捜査するロキにも向けられる。
第4巻
鳴神のアルバイト先の水族館に来ていた大堂寺繭良とロキは、見学中に職員が水槽で溺死する事件と遭遇する。この事件にはロキに恨みを持つ光の神へイムダルが深くかかわっていた。同時にヘイムダルが人間の心の闇につけこみ、魔を増幅させてあやつる事で、ロキの仕事を邪魔していたと判明する。ヘイムダルと再会し、彼が仕掛けるゲームに参加する事になったロキは、神々の争いに繭良が巻き込まれそうになっている事にも、危機感を抱いていた。一方、ヘイムダルはノルン三姉妹と手を組み、ロキを貶めようと企んでいた。後日、繭良に誘われて人気占い師が集まる「占いの館」を訪れたロキは、意味深な発言をする女性の占い師と出会う。そんな時、人気占い師のマダムが何者かに殺害される事件が発生。同時にヘイムダルの策略で館に閉じ込められてしまったロキ達は、ダイイングメッセージから容疑者を絞り、犯人を見つけ出そうとする。三人の容疑者の占いを通して犯人を特定し、魔を落としたロキは、占い師のふりをしていた必然の女神ヴェルダンディーと出会う。
第5巻
ある日、ロキが昼寝から目覚めると、体が大きくなって元の姿である覚醒ロキに戻っていた。大人の姿のままで街を散策していたロキは、アルバイト中の鳴神、ヴェルダンディーに遭遇する。ロキの覚醒は、えっちゃんに溜まった魔力を活用したヴェルダンディーの実験によるもので、あくまで一時的な覚醒だった。魔力が戻ったと実感していたロキは神界に戻り、刺客を送り込んで来るオーディンを問い詰めるつもりでいたが、ヴェルダンディーに無理だと告げられ神界への帰還をあきらめ、しばらくそのままで過ごす事になる。その頃、ヘイムダルの策略で覚醒し、魔を増幅された事でロキに憎悪を抱くフレイヤは、ロキの命を狙って行動を開始していた。以前からフレイヤに憎まれている理由が気になっていたロキは、鳴神の指摘で初めてフレイヤからの好意を知るが、気高くプライドの高い彼女が自分に片思いしているとは信じられずにいた。その後、街で麻薬密売事件に巻き込まれたフレイヤは、密売組織のアジトでロキと再会する。フレイヤの魔が増幅している事を悟ったロキは、彼女の攻撃に反撃せずに、魔を落とそうと試みるのだった。
第6巻
新たな刺客フレイと戦ったロキは、次々と刺客を送り込んで来るオーディンに対し、複雑な疑惑を持つようになっていた。そんな中、ウルドを追いかけジャングルに迷い込んだロキと鳴神は、いつの間にか巨人族の国ウトガルドに来ていた。謎の少女に導かれ、ウトガルド城で王に出会ったロキ達は、元の世界に戻るための条件として、王とさまざまな勝負を繰り広げる事になる。三人は式神召喚対決や大食い対決などで戦うが、王は圧倒的な強さで次々と勝利し、ロキ達はすべての勝負に敗北してしまう。しかし王の圧勝の秘密は、彼が仕掛けたなぞなぞによるものだった。ロキがなぞなぞの答えを解き明かし、鳴神が王に殴りかかった瞬間、ウルドが現れる。彼女は王を「ウトガルドロキ」と呼び、さらに彼の素顔は、覚醒ロキと瓜二つの青年だった。ウトガルドに出入りしていたウルドの目的は、ロキとウトガルドロキを引き合わせる事であり、この二人の出会いは神界にも大きな影響をもたらす出来事となる。不敵な笑みを見せるウルドの言葉と、ロキにそっくりなウトガルドロキの正体に疑問を残したまま、ロキと鳴神は人間界に強制送還される。
第7巻
バイトをクビになった鳴神に連れられ、ロキは釣堀に来ていた。そこでのんびり釣りをしていたフレイと遭遇したロキ達だったが、鳴神との釣り対決に負けたフレイは、ロキの呪縛を警告したうえでその場を去ってしまう。ヘイムダルはフレイと共に、ロキに呪縛をかけ捕らえるための作戦を練っていたが、フレイのマイペースな行動に邪魔され、作戦は難航する。その後、ロキは鳴神と大堂寺繭良とも離れ、フレイ達を捜して再び釣堀を訪れる。そこに潜んでいたヘイムダルとフレイに不意打ちを受けたロキは釣堀に落とされ、そのまま誘拐されてしまう。家に帰らないロキを心配し捜索に出た闇野竜介は、神界から解放されウルドに導かれたフェンリルと再会する。闇野はロキが消えた経緯を聞くために学校を訪れるが、行方不明になったロキを心配する繭良は、いつもの元気をなくし意気消沈していた。その頃、ヘイムダルのアジトに幽閉されたロキはフレイの呪縛を受け、拘束状態になっていた。神界に帰れなくなったロキのもとを訪れたヘイムダルは、奪われた目を取り戻そうとロキの目に手を伸ばす。
登場人物・キャラクター
ロキ
燕雀探偵社の少年探偵を名乗る謎の少年。栗色の短髪で、大きなリボンを首元で結んでいる。助手の闇野竜介と二人で暮らしており、探偵稼業をしながらさまざまな怪事件を解決している。一見ふつうの少年だが、博学かつ頭脳明晰で、推理も得意。神話や錬金術、オカルト関連、茶道や剣道まで心得ており、非常に幅広い知識を持つ。正体は悪戯と欺瞞を司る北欧の邪神。悪戯を繰り返した事でオーディンの怒りを買い、子供の姿にされ本来の魔力も失った状態で、人間界に落とされている。その際にオーディンから、人間に取り憑いた魔を落とすように命じられており、探偵稼業を通して魔を落とし続ける事で、故郷である神界への帰還を目指している。神界の三体のモンスターであるミドガルズオルム、フェンリル、ヘルの父親でもある。本来は強力な力を持つ男神だが、携帯電話などの機械や車が苦手。またカナヅチで泳げない、自覚はないが音痴など複数の弱点がある。理知的で気まぐれ、少々天然な性格の持ち主。神々のあいだではプレイボーイとして有名で、女神だけでなく人間の女性にもモテる。反面子供は苦手だが、大島玲也は何故か平気で、なかよく接している。
大堂寺 繭良 (だいどうじ まゆら)
ミステリーマニアを名乗る女子高校生。桃色のロングヘアでリボンを付けている。学校ではミステリー研究会に所属し、部長を務めている。天真爛漫で好奇心旺盛な性格で、かなり天然な女性。ミステリーや怪事件が大好きで、危険な怪事件に巻き込まれる事もある。友人が巻き込まれた「二刀流の死神事件」をきっかけに燕雀探偵社の存在を知り、ロキと出会う。事件解決以来、半ば押しかけ気味に燕雀探偵社に出入りするようになり、ミステリー体験を求めながらロキの助手を名乗るようになる。ロキとよくいっしょにいるものの、彼や闇野竜介の本当の正体は知らない。当初は闇野に一目ぼれしていたが、ロキがふつうの子供ではない事に気づき、次第にロキを気にするようになる。幼少期に母親を亡くしており、父親の大堂寺操と神社で二人暮らしをしている。生前の母親に貰った「にゃんこ探偵」という絵本がきっかけで、探偵やミステリーに興味を持つようになるが、昔の事はほとんど覚えていない。へイムダルが人間界に現れてからは、彼とロキの戦いをはじめとした北欧神同士のトラブルに、知らずに巻き込まれるようになる。
闇野 竜介 (やみの りゅうすけ)
ロキに仕える謎の青年。黒髪の長髪を後ろで縛り、メガネをかけている。つねに丁寧な敬語で話し、穏やかで優しい性格。料理や家事が得意でふだんはロキの身の回りの世話をしているが、事件の際はロキの探偵助手を務める事もある。一見ロキの保護者のように見えるが、正体はロキの息子・大蛇ミドガルズオルム。ヘル、フェンリルの弟でもあり、ヘルからは別名の「ヨルムンガンド」と呼ばれている。かつてオーディンによって海に封じられていたところを、オーディンに追放されたばかりのロキに助けられ、彼と共に人間界に降りる。ふだんは人間のふりをしているが、ロキによって封印が解かれ覚醒すると、大蛇の姿になる。父親のロキに対してはファザコン気味で、彼の健康をつねに気遣っているため、インスタント食品など栄養バランスの悪い食事を嫌う。神界では鳴神(トール)に何度も倒されたトラウマがあり、彼におびえつつ自分の正体を隠し続けている。通信販売や通信教育が趣味で、鳴神に対抗するためにトンファーなどを習っている。
大堂寺 操 (だいどうじ みさお)
大堂寺繭良の父親で新山真澄の友人。神社の神主。霊感があるので、ロキのルーン魔法や式神が見える。ロキを妖しい存在と認識し、警戒している。妻に先立たれていて、一人娘の繭良をとても大切にしている。繭良に関してかなりの心配性。ロキにはまゆらパパと呼ばれている。
新山 真澄 (にいやま ますみ)
警視庁捜査一課の警部。ハードボイルドな生活を送る中年男性。新米刑事の山田康之とコンビを組んで捜査をしている。大堂寺操の友人。操の娘・繭良を心配し、事件に巻き込まれないよう警告している。よく事件に首を突っ込むロキたちのことは、捜査の邪魔で迷惑だと思っている。
山田 康之 (やまだ やすゆき)
警視庁捜査一課の新米刑事。警部の新山真澄とコンビを組んで捜査をしている。将来、部下に「ヤマさん」と呼ばれるのが夢。よく新山の許可を得ずに、ロキたちに捜査情報を教えてくれる。
えっちゃん
『魔探偵ロキ』に登場するキャラクター。ロキが降霊術に失敗して呼び出した式神。ウサギのような長い耳をもったかわいい姿をしている。後にノルン三姉妹のヴェルダンディーに改造されて、魔落としで集めた魔力を溜める貯蔵庫の役割を与えられる。貯めた魔力でロキを本来の大人の姿に戻すことができる。
鳴神 (なるかみ)
大堂寺繭良のクラスメイトで、日々アルバイトに励む男子高校生。ロキからは「ナルカミ君」と呼ばれている。正義感が強く熱い性格の持ち主。一見ふつうの男子だが正体は北欧の雷神トールで、オーディンの息子でもある。ロキとは神界にいる頃からの旧友で、腐れ縁のような関係。ある日人間界に落ちてしまい、帰る方法を探しながら人間として暮らすようになる。愛用の武器「ミョルニル」を神界に置いてきてしまったため、代わりとしてつねに木刀を持ち歩いている。一見ふつうの木刀だが、魔に取り憑かれた人間を攻撃すると、魔を落とす事ができる。人間界ではつねに貧乏で、狭いアパートで一人暮らしをしている。アルバイトをしているが食べ物に飢える事が多いため、赤貧神呼ばわりされたり、ロキに食事をたかりに来る事もある。のちに、オーディンからロキの抹殺を命じられて人間界に来ていた事を思い出すが、地道に魔落としを続ける彼と接する内に、本当に殺す必要があるのかと疑問を抱くようになる。思考や観察を重ねた結果、自分の正義を貫いてロキを殺さないという結論に至り、へイムダル達に狙われるロキに味方するようになる。
垣ノ内 光太郎 (かきのうち こうたろう)
イケメンで女の子が好きな男子高校生。親はロキたちの暮らす町にあるいろいろな店の経営をしている資産家。光太郎は親に反発している。ロキとは気が合う。
大島 玲也 (おおしま れいや)
街で交通事故に遭いそうになっていたところをロキに助けられた女子小学生。「忘却の錬金術師」の異名を持つ学者を父親に持つ令嬢。資産家でもあった父親が亡くなったあとに発生した、大島家の遺産争いの事件でもロキに助けられ、次第にロキに片思いするようになる。予知夢を見る不思議な力を持っており、夢の内容がよく当たってしまうため、怖い夢を見るたびに憂鬱になっている。一見おとなしく健気な少女だが、その正体はフレイヤが人間に転生した姿で、ブリーシングの首飾りを身につける事でフレイヤに覚醒する。ただし、大島玲也でいる時は女神としての自覚はなく、神界で過ごした記憶も残っていない。当初はへイムダルに無理やりブリーシングをつけられた事でフレイヤに覚醒した。しかし、ロキがほかの女性となかよくしているのを見て強い独占欲や嫉妬心が生まれると、ブリーシングなしでも覚醒するようになる。一定時間が経つと元に戻り、フレイヤとして過ごした時の事も覚えていないが、徐々にもう一人の自分の存在を感じ取っていく。
フレイヤ
豊穣や美、愛を司る北欧の女神。ウェーブがかかった金髪のロングヘアで、高貴で気高く大人っぽい女性の姿をしている。フレイの妹で、兄からは「フレイヤちゃん」と呼ばれ溺愛されている。ロキを追って大島玲也として人間界に転生するが、玲也の姿で過ごしている時は、フレイヤとしての自覚はない。神界にいた頃から、密かにロキに片思いしていたが、彼にふられたと勘違いし、次第に恨むようになる。長らく玲也の中で眠っていたが、へイムダルの策略によって玲也がブリーシングの首飾りを身につけた事で覚醒し、元の姿に戻る。その後はヘイムダルに増幅された魔に惑わされ、憎悪のままにロキを殺そうとする。しかし再会したロキに魔を落とされ、励まされた事で再び玲也の姿になる。その後はブリーシングがなくても、玲也のロキへの思いが強まる事で、フレイヤに覚醒するようになる。しかしロキへの憎悪は消えており、今まで彼への恋心を抑えていた反動から、堂々と迫るようになる。プライドが高い性格だが、ロキを殺そうとしたヘルを叱咤激励するなど、母性の女神らしい一面を見せる事もある。
ヘイムダル
ロキに恨みを持つ光の神。オーディンの命令でロキの神格を剥奪するよう命令され、人間界に降りる。人間界では「東山和実」を名乗りながら小学生男子の姿をしており、塾にも通っている。伸びた前髪で右目を隠しており、使い魔として大きな鷹を連れている。オーディンを敬愛しており、神界にいた頃から彼と仲のいいロキに嫉妬していた。真実や未来を見通す千里眼のような目を持つが、オーディンの命令を受けたロキに右目を奪われた事で、ロキを強く恨むようになる。当初は人間の魔を増幅させてあやつる事でロキを邪魔していたが、のちにフレイヤや大堂寺繭良を利用したり、フレイと手を組んだりする事で、ロキを追い詰めようとする。しかし、複数の失敗を重ねた事でオーディンの失望を買い、神格を剥奪されて神界に帰れなくなってしまう。ふだんは爽やかで明るい少年のふりをしているが、陰湿で執念深い面があり、神格を失ったあともロキに対してさまざまな嫌がらせをしている。だが失敗する事が多く、ロキから返り討ちにされる事もある。フレイとは何かと手を組んでいるものの、マイペースで気まぐれな彼には振り回される事が多い。
フレイ
北欧の豊穣の神で、長い黒髪の青年の姿をしている。語尾に「なのだ」「ぞい」を付けて話す。ロキのライバルを名乗り、人間界では探偵をしているロキに対抗して、怪盗を名乗っている。美術品などを狙って予告状を出し、たびたびロキと対決を繰り広げている。元はロキ抹殺に失敗したヘイムダルの代理として、オーディンの命令を受け、新たな刺客として人間界に来ていた。しかし、使命や本来の目的を見失って暴走するなど、非常に変わり者でマイペースな性格。ヘイムダルと手を組んでいるもののマイペースな性格が災いし、私情で動いては彼を困らせたり、失敗に終わる事が多い。フレイヤの兄でもあり、妹を「フレイヤちゃん」と呼び溺愛するなど、かなりのシスコン。ルーン魔法が得意で、その実力は覚醒ロキよりも優れている。また発明も得意で、「神話界の平賀源内」を自称しており、グリンブルスティのロボットや改造カラオケマイクをはじめとした、奇妙なメカを次々と発明している。怪盗業の中で大堂寺繭良に一目ぼれし、彼女を「大和撫子」と呼んで会うたびにアタックしている。
オーディン
『魔探偵ロキ』に登場するキャラクター。北欧神話の最高神。本編には名前だけしか登場しない。ロキを神界から追放し、人間に取り憑く魔を払うよう使命を与えたり、一方で鳴神やヘイムダルにロキを殺すように使命を与えたりしている。何を考えているのか、本編ではほとんどわからない謎の存在。
フェンリル
ロキの息子。3匹のモンスターの長男。その外見は、世界を覆うほどの巨大な口と牙を持つ黒い魔狼。長いあいだオーディンによって拘束されていたが、ロキがウトガルドロキと出会った事で解放され、神界から逃げ出す。その後はウルドに導かれ、父親のロキを追って人間界にやって来る。ふだんは黒い雄犬の姿をしているが、闇野竜介やヘルと同様ファザコンで、ロキの前では猫を被っている。敬愛するロキの前では子犬のぬいぐるみのような姿に豹変し、彼を「ダディ」や「お父さん」と呼んで甘えるような態度をとる。反対にロキがいない場では無愛想でやさぐれたような態度になり、ロキの事も「オヤジ」と呼ぶようになる。言葉を話す事ができるが、ふつうの人間にはまるで犬が歌を歌っているようにしか聞こえない。好きなものは散歩と鯛焼きとコロッケ。
ウルド
ノルン三姉妹の長女。運命と過去を司る女神。ショートカットで、あまり感情を表に出さないクールな性格。妹のヴェルダンディーやスクルドとは異なり、あまり態度には出さないものの、ロキの事を慕っている。謎かけのような不可解な言動が多く、その内心は同じ運命の女神であり妹でもあるヴェルダンディーとスクルドにも、ほとんど明かさない。一時期はヘイムダルと手を組んでいたが、彼を裏切ったあとは二人の妹とも離れ、謎の単独行動を繰り返すようになる。解放されたフェンリルを人間界に導いたり、ウトガルドロキと接触するなど、その行動は不可解な点が多く、ロキや妹達でも理解・予想ができない。
見野 (みの)
大島家の執事をしている男性。つねに冷静で無表情、穏やかで控えめな老人。元は大島玲也の父親に仕えていたが、父親の死後は玲也の送迎など身の回りの世話をしている。
千束 すずめ (ぜんぞく すずめ)
私立美術館の館長を務めている男性。世界的なコレクターを自称しているが、変わったセンスの持ち主で、美術館はあまり繁盛していない。密売ルートやブラックオークションを通してブリーシングの首飾りを入手するが、その本当の力や価値は知らずに展示していた。最新のシステムを用いるなど、美術館の警備には力を入れている。美術館で起こった事件を解決したロキの有能さに惹かれ、新たな秘書にスカウトする。
ヴェルダンディー
ノルン三姉妹の次女。運命と現在の必然を司る女神。黒髪のロングヘアで、大人っぽい女性の姿をしている。当初はヘイムダルの命令で、女性占い師のふりをしてロキに近づくが、ヘイムダルの敗北後もロキの前に現れては意味深な発言をしたり、間接的にロキをサポートするようになる。おっとりした丁寧な言葉遣いと曖昧な態度で真意をはぐらかす事が多く、たびたびロキを困惑させている。マイペースなノルン三姉妹の中でも特に変わり者で、一見おしとやかで優しいが腹黒い。また、注射器を持ち歩いたり、妙な薬や実験でロキを振り回したりなど、マッドサイエンティストな一面もある。ロキを慕っているが、覚醒ロキよりも子供の姿のロキの方が好み。
覚醒ロキ (かくせいろき)
ロキが覚醒し、邪神としての本来の力を取り戻した姿。神界にいた頃の本来のロキの姿であり、子供の姿の時よりも髪色が明るくなる。また、背も伸びて青年の姿になるため身体能力も向上し、魔力が復活してさまざまなルーン魔法を使えるようになる。式神の召喚をはじめとした降霊術なども得意で、神界にいた頃は「ネクロマンサー」の異名も持っていた。当初はヴェルダンディーの実験によって、えっちゃんに溜まった魔力を受け取る形で覚醒する。以来、魔を落とし続けてドラウプニルの腕輪に溜まった魔力を使用する事で、一時的にこの姿に戻れるようになるが、一定時間が経過すると再び子供の姿になってしまう。最高神オーディンとは古くからの盟友であり、血を分けた義兄弟でもある。ヘイムダルに再会したあとは、オーディンが刺客を差し向けて来る理由、人間界に落とされた本当の理由を追うようになる。
ヘル
闇野竜介を襲った謎の少女。ウェーブのかかった長髪で学生服を着用し、丸いメガネをかけている。正体はロキの娘で、3匹のモンスターの長女であり、神界では地獄の番人を務める。闇野やフェンリルと同様ファザコンな面があり、父親のロキを心から敬愛している。一見、美少女の姿をしているが、生まれつき半身が腐食しており、人間界では図書館に身を潜めている。このため「醜いからロキに捨てられた」と思い込み、ショックを受けると同時に、彼に連れられて人間界に降りた闇野に嫉妬する。また捨てられたショックや嫉妬心をオーディンに利用されて刺客として差し向けられ、闇野を襲ったあとロキを図書館に誘い込んで殺そうとする。しかしロキと再会後、同行できなかったのは、腐食した体では人間界の空気に耐えられないためだったと知り、ロキへの誤解を解く。同時に自分が醜いから捨てられたわけではなく、愛されていたと安心するが、腐食が進行していたために人間界の空気に耐えられず消滅する。腐食を克服するために世界中の本を読んだため非常に博識で、ロキとの知恵比べも互角の実力。
垣ノ内 綾菜 (かきのうち あやな)
燕雀探偵社に依頼を持ち込んだ女性。垣ノ内光太郎の叔母。おっとりした性格の優しい人物。大学教授をしていた父親の不可解な死の解明を、ロキに依頼する。光太郎と同様霊感や勘が鋭く、ふつうの人間には見えないえっちゃんや、ロキが魔落としする様子も見えていた。ロキがふつうの子供ではない事も見抜いており、魔の媒介となっていたニーベルンゲンの指輪をロキに託す。のちに茶道の家元の青年、金安弘幸と結婚する。
スクルド
ノルン三姉妹の三女。運命と未来を司る女神。ロングヘアをツインテールにまとめている。明るく元気な性格で、ロキには昔から片思いしている。恋愛には積極的で、ロキに対しては特に感情表現が豊かになり、全身全霊でアタックしている。子供のロキよりも、覚醒ロキの方が好みだが、子供のロキが大人っぽい表情を見せた時はメロメロになる。当初はヘイムダルに従っていたが、彼の敗北後は単独行動が増え、姉のウルドやヴェルダンディーよりもロキに協力的になる。しかし運命の女神という立場上、神々の運命やオーディンの事情などは詳しく語る事ができず、慕っているロキにあまり助力できない現状に、複雑な葛藤を抱いている。一度は神界に帰るが、ロキを追ってグリンブルスティの子供「グリンちゃん」に乗って、再び人間界に降り、ロキと再会した。
グリンブルスティ
神界に住む巨大な猪。大きな背中に神を乗せて駆ける事ができ、神々の乗り物代わりになっている。フレイの発明したロボットとしても登場し、フレイの乗り物のように使われている。スクルドは金色の猪の姿をした子供のグリンブルスティに「グリンちゃん」と名付け、人間界に降りる乗り物として飼っている。
舞 (まい)
「悪魔のオルガン」の噂が流れる小学校に通う女子小学生。黒髪のポニーテールに大きなリボンを結んでいる。音楽室の悪魔のオルガンの悲鳴を聞き、一人で怯えていたところで、事件を調査中のロキと出会う。自分を励ましてくれたロキの事が気になっている。
ウトガルドロキ
ウトガルド城の主。神々と敵対する巨人族を統べる王。ふだんは伸びた前髪で目元が隠れているが、その素顔は覚醒ロキと瓜二つで、銀髪の青年の姿をしている。クールで無口な性格で、他人をからかうのが好き。ルーン魔法が得意で、その実力は覚醒ロキとも互角。巨人族の国、ウトガルドに迷い込んだロキと鳴神と出会い、人間界に戻ろうとする彼らと謎かけ対決を繰り広げる。ウトガルド国に出入りしているウルドとも知り合いで、その目的や正体は謎が多い。
集団・組織
ノルン三姉妹 (のるんさんしまい)
運命を司る北欧の三人の女神で、世界樹ユグドラシルの「ウルドの泉」に住んでいる。長女のウルド、次女のヴェルダンディー、三女のスクルドの三姉妹で、それぞれが神界や神々の過去、現在、未来の運命を司っている。当初はヘイムダルに従いつつ、彼と勝負したロキに対し、運命の予言を授けていた。しかしウルドがヘイムダルを裏切ったあとは、バラバラで行動するようになる。それぞれが別々の形でロキとかかわり、彼を密かにサポートしたり、進むべき道を教える。愛情表現はそれぞれ異なるが、三人共ロキの事を慕っている。
場所
燕雀探偵社 (えんじゃくたんていしゃ)
ロキと闇野竜介が住居兼事務所として住んでいる探偵社。一見、西洋の屋敷のようだが、中には不気味な骨董品や生物がコレクションとして置かれている。もともとは古びた洋館で、人間界に来たばかりのロキが魔法で改装したうえで活用している。当初は不気味で近寄りがたい雰囲気があったが、大堂寺繭良が出入りするようになってからは、徐々に明るく優雅な雰囲気の洋館に変化していく。また鳴神や大島玲也なども訪れるようになったため、事あるごとにロキの友人が集まる駆け込み寺や、神々の同窓会の場と化している。
神界 (しんかい)
北欧神話の神々が住んでいる世界。ロキや鳴神の故郷でもある。雄大な自然が広まり、神々だけでなく人間界には存在しない、さまざまなモンスターや精霊も多く住んでいる。
その他キーワード
ブリーシングの首飾り (ぶりーしんぐのくびかざり)
フレイヤが身につけている黄金の首飾り。別名は「ブリーシンガメン」。フレイヤが肌身離さずつけていた伝説のアクセサリーだが、千束すずめの美術館に展示され、のちにヘイムダルの手に渡る。大島玲也をフレイヤに覚醒させる力を持ち、ロキを狙ってフレイヤを利用しようとしたヘイムダルによって、玲也の首元に付けられる。
ドラウプニルの腕輪 (どらうぷにるのうでわ)
ヴェルダンディーが作った金の腕輪。ロキが身につけている。えっちゃんが魔力を蓄積できる特殊な式神であると判明したあと、ヴェルダンディーがえっちゃんの体の一部を腕輪型に加工して作った。その後はロキに託され、彼が魔を落として得た魔力を溜めておくための重要なアイテムとなる。溜まった魔力を消費する事で、ロキは覚醒ロキに戻る事ができる。
式神 (しきがみ)
ロキが降霊術によって召喚する使い魔の総称。しかしロキは、人間界では魔力を封じられているため、失敗に終わったり、力の弱い式神しか召喚できなくなっている。えっちゃんをはじめ、靴作りの式神やフライパンの式神などが召喚されており、役目を終えたあともロキの周囲をうろついている。
魔 (ま)
人間の心に取り憑く悪魔や悪霊のような存在。憎悪や嫉妬、悩みなどを抱えた者には、特に魔が憑きやすくなっている。人間だけでなく神々に寄生する事もあり、ケルベロスやファーブニルなど伝説上の魔物や悪魔などが、魔として現れる事もある。魔に憑かれた者は心の闇が増していき、暴力や犯罪などに走りやすくなるため、さまざまな怪事件にもつながっている。ロキはオーディンの命令により、探偵稼業を通して人間に憑いた魔を落としている。