永遠の0

永遠の0

百田尚樹の処女小説「永遠の0」のコミック版。原作小説は2013年にテレビ東京系列でテレビドラマ化、2015年には映画化もされている。第二次世界大戦時、「海軍一の臆病者」と呼ばれ、若くして特攻に散った戦闘機乗り宮部久藏という男がいた。太平洋戦争終結60年を機に、そんな彼の足跡を孫姉弟が追う姿を描く。原作は百田尚樹。

正式名称
永遠の0
ふりがな
えいえんのぜろ
原作者
百田 尚樹
作画
ジャンル
武器・兵器
関連商品
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概要・あらすじ

司法浪人4年目の佐伯健太郎はある日、フリーライターをしている姉の佐伯慶子から電話を受ける。ある新聞社の企画で太平洋戦争終結60年を記念して、戦争体験者の証言を集めることになったので、手始めに自分たちの祖父の宮部久藏について調べてみないかというのだ。早速、祖父の戦友会について調べていく健太郎だが、出てくるものは「海軍一の臆病者」、「命を惜しむ者」など、特攻に散ったという事績と結びつかないものばかり。

調べるほどに祖父、久藏についての謎は深まっていく。

登場人物・キャラクター

佐伯 健太郎 (さえき けんたろう)

祖父の大石賢一郎に憧れて弁護士を目指すも司法試験に落ち続けて4年。最近ではすっかりやる気が失われて勉強も手につかない、26歳の青年。姉である佐伯慶子の勧めで、賢一郎から以前に聞いていた血のつながりのある本当の祖父、宮部久藏について調べ始める。姉から伝え聞く「特攻隊はテロリスト」と、戦友たちから聞く「海軍一の臆病者」という祖父の評価とのギャップに悩みつつ、祖父の事績を調べていく。

宮部 久藏 (みやべ きゅうぞう)

佐伯慶子、佐伯健太郎姉弟の実の祖父。大正8年生まれで、昭和9年に大日本帝国海軍に入隊。昭和20年8月、南西諸島沖にて戦死した。享年26歳。戦友たちからは「海軍一の臆病者」と罵られることも多いが、部下や教え子たちからは優れた操縦士、指揮官と慕われている。単に戦闘機の操縦技術に優れるだけではなく、碁を嗜み、高い戦略眼も持つ。 妻の宮部松乃(大石松乃)と娘の清子を何よりも大事にしていて、戦時下においても生きて帰ることを第一だと公言してはばからない。

佐伯 慶子 (さえき けいこ)

佐伯健太郎の姉で、フリーライター。新聞社からの依頼で太平洋戦争60年記念企画の「戦争体験者の証言」を集めるという事業に関わり、数年前に祖父の大石賢一郎から聞いた実の祖父である宮部久藏について興味を抱く。健太郎に比べて周囲の影響を受けやすく、言動が一定しない。企画を通じて知り合った新聞記者、高山隆司の好意に気持ちが揺れる。

長谷川 梅男 (はせがわ うめお)

元海軍航空兵。昭和17年秋、ボルネオの第三航空隊からラバウル航空基地に転属して宮部久藏と知り合う。激しい戦闘でも被弾痕のない久藏の機体を見て感じ入り、列機で戦いたいと憧れる。小学校では優秀な成績だったが、家が貧しく8人兄弟の6番目ということもあり進学を断念。大阪の豆腐屋へ奉公に上がる。そこで事件を起こしていられなくなり昭和11年、海軍へ入隊。 自らの危険を顧みない「体当たり戦法」を得意とし、三菱一式陸上攻撃機をかばって被弾、左腕を失う。自分が右腕を失った戦闘でも機体に被弾すらしなかった久藏を「海軍一の卑怯者」と孫の佐伯健太郎、佐伯慶子の前で罵った。戦後も決して恵まれていたとはいえず、忸怩たる思いを抱えながら生きてきた。

伊藤 寛次 (いとう かんじ)

松山市在住の元海軍中尉。空母「赤城」の搭乗員で、真珠湾攻撃のために中国から転属してきた宮部久藏と知り合う。優れた腕を持つ久藏に対して親近感を覚えるが、彼の「家族のために死ねない」という言葉には違和感を抱く。その後、ミッドウェイ海戦まで共に戦い続けるが、赤城の防空に出撃した久藏とはそのまま生き別れる。 ミッドウェイ戦で目を負傷し、訓練教官となった。戦後はミッドウェイ海戦史を独自に調査した。

愛澤 海波 (あいざわ かいは)

大学1年生で伊藤寛次の孫娘、ユカリの同級生の美少女。戦争体験者の言葉が消えたら日本が再び戦争をするという信念のもと、彼らの話をテープに残す事業を一人で行っている。佐伯健太郎と共に宮部久藏の事績を追う、久藏ファン。コミック版オリジナルの登場人物で、原作となった小説には登場しない。

井崎 源次郎 (いざき げんじろう)

東京在住の元海軍航空兵。ラバウル航空基地の三菱零式艦上戦闘機搭乗員。ミッドウェイ戦後の昭和17年7月、転属してきた宮部久藏と知り合い、互いに同じ小隊の2番機、3番機を務めた。久藏が小隊長になった後は、同期の小山と共に列機を務めた。久藏とはラバウル航空基地で1年以上も共に戦ってさまざまな影響を受けた、彼を最もよく知る一人。 甲事件後に空母翔鶴に転属し、久藏と別れた。久藏が撃墜し、脱出後も追撃をしたアメリカ海軍航空士官、トニー・ベイリー大尉とは戦後に知り合っている。佐伯健太郎たちに久藏の話をした後、ガンにより死去。

永井 清孝 (ながい きよたか)

和歌山在住の元海軍整備兵。ラバウル航空基地で宮部久藏の三菱零式艦上戦闘機を整備していた整備主任。機の不調に厳しく整備兵たちに嫌われていた久藏にもその仕事ぶりを評価されており、永井清孝自身は彼に対して好感を抱いていた。戦闘の合間に碁を打つ久藏と語り合い、彼が志願した理由を知る。

武田 貴則 (たけだ たかのり)

元海軍航空中尉で特攻要員。筑波航空基地で特攻隊になるべく宮部久藏の教えを受けた。当初は成績になかなか「可」を出さない久藏に反感を抱いていたが、事故で死亡した同期も「立派な男だった」といって上官に逆らう宮部が、学生たちを特攻させないように「可」をださなかったことを知り、考えを変える。戦後は一部上場企業の社長として日本経済を支え、経済発展の礎となった。 戦前から戦後の「メディアの変節」には不信を抱いている。

高山 隆司 (たかやま りゅうじ)

新聞記者で戦後60年事業のスタッフ。佐伯姉弟が宮部久藏について調べるきっかけとなった人物。典型的な左翼思想の持ち主で、戦争中の日本を洗脳されていたとし、「特攻隊はテロリスト」と公言してはばからない。佐伯慶子に好意を抱いているが、反応は今ひとつ。離婚歴のあるバツイチ。

景浦 介山 (かげうらかいざん)

東京在住の元海軍航空兵で、殺人の前科もある元暴力団員。昭和18年秋にラバウル航空基地に転属し、宮部久藏と出会う。剣豪の宮本武蔵に憧れ「剣禅一如」をモットーとしており、「命第一」の久藏とは相容れない。また、久藏と模擬戦の結果破れ、「宮部に命を握られた」と感じ彼を憎んでいると公言している。本土に帰った後に鹿屋航空基地で久藏と再会し、特攻する久藏の直掩につくも発動機の故障で離脱、生還。 戦後は暴力団構成員となり、ヤクザの囲いものとなった久藏の妻、宮部松乃を救出した。

大西 保彦 (おおにし やすひこ)

九州在住の元海軍通信士。鹿屋航空基地から出撃する櫻花隊からの通信を受けていた。宮部久藏は特攻機の直掩につき精神を病んでいったが、そんな彼の最期を知っている一人である。佐伯健太郎、佐伯慶子は、彼の紹介で「宮部の最期の謎」を手に入れる。

大石 賢一郎 (おおいし けんいちろう)

元海軍航空兵の特攻隊員で、現在は弁護士。筑波航空基地で宮部久藏の教えを受けた武田貴則の同期。筑波航空基地上空で米軍のコルセアに不覚をとった久藏をかばい銃弾を受け、入院した。その縁で久藏のコートを譲り受けている。特攻出撃をしたものの機関の故障で生還した。戦後は宮部の妻だった宮部松乃を探し出して結婚した。

大石 松乃 (おおいし まつの)

宮部久藏の妻で、佐伯健太郎の祖母。久藏と共に過ごしたのは結婚から真珠湾攻撃までの一週間と、ラバウル航空基地から帰還した後の数日だけ。終戦後はヤクザの囲いものになるも景浦介山に助け出されて大阪へと逃がされる。廃墟となった大阪で暮らしていた頃に大石賢一郎と出会い、その後彼と再婚する。

場所

ラバウル航空基地 (らばうるこうくうきち)

パプアニューギニア、ニューブリテン島の都市。太平洋戦争期には大日本帝国陸海軍の基地があり、ここから日本軍はオーストラリアやポートモレスビー、ガダルカナル島などに出撃した。宮部久藏の他、石岡、井崎源次郎、永井清孝、景浦介山が所属していた。

筑波航空基地 (つくばこうくうきち)

茨城県筑波市にあった帝国海軍の航空基地。元は戦闘機専修の訓練基地であったが戦局の悪化によって次第に特別攻撃隊訓練や出撃基地となっていった。宮部久藏が教官をしていた頃に大石賢一郎、武田貴則が特攻要員としてその教えを受けていた。

鹿屋航空基地 (かのやこうくうきち)

九州鹿児島県にある航空基地。太平洋戦争期にはここから日本海軍の特別攻撃部隊「神雷部隊」が出撃した。本作『永遠の0』では宮部久藏が三菱零式艦上戦闘機で出撃しているが、本来は特攻専用機「櫻花」の出撃基地である。現在では航空自衛隊の基地になっている。久藏の他に、大石賢一郎、景浦介山、村田が所属していた。

その他キーワード

三菱零式艦上戦闘機 (みつびしれいしきかんじょうせんとうき)

太平洋戦争中に日本海軍が主力としていた艦上戦闘機。形式番号は「A6M」。良好な操作性に加えて高い運動性能と火力、長い航続距離を誇るが、防弾性能が低く構造が脆弱なのが欠点。いくつか種類があるが、本作『永遠の0』中には初期の二一型、中期以降の五二型だけが登場する。

三菱一式陸上攻撃機 (みつびしいっしきりくじょうこうげきき)

太平洋戦争中に日本海軍が爆撃や雷撃に多用した陸上攻撃機。単に中型攻撃機の略称として「中攻」と呼ばれることもある。三菱零式艦上戦闘機よりも大きく鈍重だが、より多くの爆弾や魚雷を搭載できる。本作『永遠の0』中では本来の爆撃雷撃以外に、特別攻撃専用機「櫻花」の発射母機としても使用される。

赤城 (あかぎ)

日本海軍が使用した航空母艦。巡洋艦から改装された空母で、背の高いシルエットが特徴。宮部久藏が真珠湾攻撃からミッドウェイ海戦まで搭乗した。ミッドウェイ海戦では作戦の油断を突かれて被弾し、搭載していた爆弾や魚雷に誘爆して炎上、沈没した。

タイコンデロガ

アメリカ海軍の航空母艦。宮部久藏が特攻を敢行するも搭載していた爆弾は起爆せず不発。対空砲火をかいくぐって特攻を成功させた久藏に感じ入った艦長は、久藏と搭乗機を水葬に付した。

クレジット

原作

百田 尚樹

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