神器「宇宙の卵」によって実現した地球王家の栄華
地球で発見された神器「宇宙の卵」は絶対無敵の力を秘めている。外見はクラゲが被(かぶ)さったブリリアントカットの宝石のようで、人間の頭部よりも一回り大きい。所有者は無限の攻撃力と防御力を、その配偶者と嫡子も無限の防御力を得ることができ、飢えることもなくなる。また、不意打ちに対しては自動的にバリアが発生する。このバリアは能動的に範囲を広げることも可能で、乗っている宇宙船を丸ごと包み込むこともできる。主人公クリスの先祖である初代地球王、ラジャス・ユガは、宇宙の卵の加護を背景に宇宙の6割を平定する偉業を成し遂げた。その後、宇宙の卵は子々孫々に受け継がれ、現在でも地球王家による支配体制を維持する要として機能している。なお、地球王家の見解によれば、宇宙の卵は「争いを繰り返す知的生命体」というバグへの対策として「神」が用意した修正パッチのようなものである。
全宇宙14兆人の女性から最強の花嫁を選ぶ「地球女王決定戦」
かつて初代地球王、ラジャスは、宇宙最強であることを王妃の条件に掲げて「地球女王決定戦」を催し、優勝者のグリム・ローサ(のちの銀狼グリムヴィアス)を妻とした。それ以来、地球王家では王子が16歳になると大会を開いて花嫁を選定する慣わしとなった。大会にエントリーした女性は「婚約者」と呼ばれ、左手の薬指に「婚約指輪(エンゲージリング)」と呼ばれる証(あかし)が情報印刷される。指輪には獲得ポイントを管理する機能が備わっており、エントリー時点でのポイントは1点。このポイントをほかの婚約者と奪い合い、1000点に到達すれば予選に出場できる。勝者が敗者から1点を奪うルールが基本で、0点の状態で負けると失格になる。また、合意が得られれば、任意のポイントを賭けて戦うことも可能。予選は32個の惑星で順番に実施されるバトルロイヤルで、各惑星の予選を突破した婚約者が、地球で開催される本選トーナメントに出場できる。なお、花嫁は王妃としての任期20年、退位後に残る影響力も考慮すれば約30年に渡って絶大な権力を行使でき、母星に莫大な利益をもたらすことが可能となっている。つまり、地球女王決定戦は現代における星々の代理戦争なのである。
宇宙の破滅を望むジョージ・ライアーとの戦い
「地球女王決定戦」と並行して、地球王家の「宇宙の卵」による加護を貫通する方法を知る、謎の男性ライアーとの戦いが描かれる。彼は社長、科学者、小説家、演出家、音楽家、酒の評論家などさまざまな肩書きを自称する不審人物で、大勢の女性を従えており、大会に出場する「婚約者」六人の指導者にして後援者でもある。手駒の女性たちを「娘」と呼称し、自らを「父」と呼ばせている一方で、利用価値が無くなった娘をスイッチ一つで処刑するなど、その扱いは極めて辛辣。ライアー自身も地球王家に伝わる「妃技(ひぎ)」の数々を使用したり、ジャナ星人の固有能力である「細胞極化(グリム・ロア)」を発動したりと、底知れない実力を秘めている。また、存在を完全に隠蔽する「全撹乱機能(オールセンサージャマー)」の技術を保有しており、付け入るスキがない。のちにクリスの前に現れ、クリスに先んじて宇宙を滅ぼすつもりだと宣言。やがて、その計画は地球女王決定戦の会場で実行に移された。
登場人物・キャラクター
クリシュナ・ユガ
14代地球王になることを定められた地球王家の王子。眼鏡をかけている。年齢は15歳で、愛称は「クリス」。逆立った黒髪に目は赤く、白いロングコートを身につけ、コロネットを斜めに被っている。外見こそ地球人だが、母親がガルマイア星人のため卵から孵化(ふか)した。宇宙最高学府のクシャーノ大学に10歳で入学した神童で、「星間飛翔・単為生殖可能な星食生物の人工合成研究」の論文で最優秀賞を受賞した。現在は生物学者として活躍し、300以上もの論文を発表。野外調査にも熱心で、将来的に宇宙を旅することを夢見ている。ビジネス面でも非凡な能力を発揮し、取得した特許は100以上。複数の会社を経営しており、奴隷供給惑星を20個も購入できるほど稼いでいる。格闘センスも抜群で、歴代王妃の技を再現する「妃技(ひぎ)」を修得している。また、ジャナ星人の血が流れており、「細胞極化(グリム・ロア)」で身体能力を向上させることも可能だが、防御に関しては「宇宙の卵」の加護に依存している。あらゆる面で優秀だが、心の機微には疎く、法や倫理を無視して好奇心の赴くままに行動するマッドサイエンティスト的な素養があり、加護の序列チェックと嘯(うそぶ)いて母親に大剣を振り下ろしたこともある。王家の末代である自分の遺伝子こそ最強と証明するため、自らの遺伝子をもとにクローンのカルキを生成。彼女に英才教育を施し、「地球女王決定戦」に出場させて自らの花嫁にしようとする。なお、友人は若き生物学博士のミムラ・クラーリオただ一人で、カルキの育成に協力してもらっている。
カルキ
クリスの遺伝子から生成されたクローンの少女。生成から5年ほどの月日を人工羊水で過ごし、15歳に相当する肉体へ成長した。スタイル抜群で目は赤く、体毛は性転換の影響で白く変色している。外ハネのショートカットで、髑髏(どくろ)型の髪飾りをしている。この髪飾りには緊急用バリア、接近警告などの機能が搭載されている。クリスが用意した教育用AIカーマから英才教育を施され、歴代王妃の技を再現する「妃技(ひぎ)」を修得。また、精神への多大な負担を覚悟のうえで、脳内時間を圧縮して従来の60倍の訓練を積む裏技を取り入れ、未来予知にも近い先読みで相手を封殺する戦法を確立した。しかし、肉体強度は妃技を放った自分の手が折れてしまうほど脆(もろ)く、優勝を争えるレベルに達していない。クリスと同じ遺伝子ながら、王家に加護を与える「宇宙の卵」の効果も適用外であり、遠い先祖に由来する「細胞極化(グリム・ロア)」を発現させて肉体強度を補うことが目下の課題となっている。「地球女王決定戦」で優勝してクリスの花嫁となることを望まれているが、設定ミスによって彼に好意を抱いていない。それどころか、カーマから「クリスが支配者になると好奇心で宇宙を滅ぼす恐れがある」との試算を聞かされており、大会までにクリスの人格を矯正し、破滅を阻止しようと考えている。最悪の場合、優勝して加護を得た直後にクリスを殺害し、自ら宇宙を治める覚悟を固めている。
クレジット
- 原作
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江藤 俊司