概要・あらすじ
高校一年生の神保聖はいじめられっ子だったが、謎を秘めた美術教師・美園亜由子と出会うことで、イメージチェンジに成功する。しかし、幼なじみの同級生・立川鮎子との初体験でトラブルを起こした神保聖は、自己嫌悪の末に失踪し、歌舞伎町で風俗嬢のヒモとなってしまう。その後、ヒモからホストになるなど波瀾万丈の人生を歩むが、様々な人々との出会いにより人間的に成長し、再び学校生活に復帰する。
一方、神保聖が惹かれ続ける美園亜由子は事故死した恋人への思いにとらわれ続け、彼の残した作品を完成させるためだけに生きていた。様々な人間関係が交錯する中、聖は予備校で美園と再会し、彼女への愛を確認していく。
登場人物・キャラクター
神保 聖 (じんぼ ひじり)
登場時は進学校に通う成績優秀な高校一年生。低身長、メガネ、天然パーマに加え、神保聖の名前がチンポイジリともじりやすいことから同級生にいじめられていた。そんなある日、美術教師・美園亜由子が男子生徒にフェラチオをしている現場に出くわしてしまう。これをきっかけに美園と知り合った聖は、彼女の助言を受けることで、イメージチェンジをはかり、アイドル系のイケメンに変貌する。 だが、聖は思いを寄せる幼なじみの立川鮎子の思いに引きずられ、美園先生の行為を通報し、学校から追い出してしまう。その後、鮎子との初体験でトラブルを起こした聖は、自身への嫌悪感から家出し、新宿歌舞伎町に流れ着く。そこで風俗嬢のヒモとなり、ホストとなるが、様々な人と出会うことで人間として成長していく。 ホスト時代の源氏名は聖夜。最後は店のナンバー1にまでのし上がった。結局、聖は1年の休学を経て高校に復帰したが、凄まじい人生経験と伸びた身長から、「ダブリの先輩」と畏敬され、女子にモテモテとなる。その後、予備校で美術講師となっていた美園先生と再会した聖は、彼女への思いを確認し、事故死した恋人との因縁にとらわれ続ける美園先生に向き合っていく。
美園 亜由子 (みその あゆこ)
神保聖が思いを寄せる女性。男の目をひきつける、ナイスバディの美人。胸のサイズはFカップ。聖の通う高校の美術教師だったが、男子高校生を誘惑し、その勃起した性器を写真にとる行為を繰り返していた。その行為を目撃されたことで聖と知り合い、いじめられっ子だった彼に助言することで、彼のイメージチェンジを手助けした。その後、男子生徒への淫行が聖の密告により発覚し、学校から追放処分を受ける。 だが、その後も予備校の講師となって同様の行為を繰り返した。彼女が男性性器の写真を撮り続けるのは、自分をかばって事故死した恋人・高瀬成俊の残した芸術作品を完成させるためであり、彼の存在しない世界から一刻も早く消えることを望みとしている。
立川 鮎子 (たちかわ あゆこ)
神保聖の高校の同級生で、幼なじみ。陸上部のマネージャー。高階守とつきあっていたが、守の思いが美術教師の美園亜由子に移ったことでふたりの仲は終わってしまう。その後、寂しさから聖に相談するようになり、美園先生に対する怨みを彼に伝えた。結果、聖は美園先生の問題行為を学校に通報し、彼女は退職を余儀なくされる。 その後、立川鮎子と聖は付き合うようになるが、二人はラブホテルでの初体験でトラブルを起こし、これが原因となって聖は登校拒否となり、失踪した。その後、鮎子にも様々な噂がつきまとうようになり、最後には転校していった。
遠藤 チカ (えんどう ちか)
SMクラブを経営する女王様。美園亜由子の親友で同じ美大に通っていた。幼少の頃、サディストの叔父に性的虐待を受けていたが、後にサディストとしてその叔父を屈服させた過去を持つ。壱村龍人のことを憎からず思っており、何かと彼の周りに出没する。臀部に龍人の手による蝶の刺青が入っている。美園と高瀬成俊の因縁を知る数少ない人物であり、神保聖が美園の心に光明をもたらすことを期待している。
壱村 龍人 (いちむら たつと)
美園亜由子と遠藤チカの美大の先輩であり、高瀬成俊の親友であった。高瀬のいない世界から消えることを望む美園のことを気づかっている。歌舞伎町でバーを営むマスターだが、地元の組のお抱え刺青師でもあり、自身の全身にも刺青が入っている。サングラスに無精髭の怖面で、接客もぞんざいだが、面倒見のよいところもある。 神保聖は歌舞伎町のホスト時代に、壱村龍人と知り合った。
華 (はな)
歌舞伎町に流れてきた神保聖を拾い上げた風俗嬢。そばかすと八重歯がトレードマーク。生きる気力を失いインポとなった聖をヒモとして養った。過去、弟と何か因縁があったようで、何かと聖と弟を重ね合わせる。普段は面倒見のよい優しい性格だが、生理になると情緒が不安定になる。
ジョーヌ・マルチネット・デュヴァイス (じょーぬまるちねっとでゅゔぁいす)
華、みくと同じファッション・ヘルス店で働く風俗嬢。フランス人と日本人のハーフで、Eカップのエキゾチック美少女。皆にはジュンと呼ばれている。華に見捨てられた神保聖をみくと共にマンションに引き取った。その後、仕事を求めた聖にボーイズ・バー「ア・ラ・紅人」を紹介し、ホストの職を斡旋した。名家の子女で、超お嬢様高校に通う女子高生でもある。 学生であることから、店では覆面をしてプレイすることが多い。パンク・ロックバンドのボーカルとしてカリスマ的な人気を誇るが、音痴である。バイセクシャルであり、みくを最上の恋愛パートナーとしている。フランス人の母親に「ジョーヌ」(黄色)という差別的な名前を与えられるなど、複雑な生い立ちの持ち主であり、母親が死去した際、フランス人のイトコたちに輪姦されたトラウマを持つ。 その後、彼女を引き取った父親とも体の関係を持っていた。
みく
華、ジュンと同じファッション・ヘルス店で働く風俗嬢。華に見捨てられた神保聖をジュンとともにマンションに引き取った。小柄でロリ顔。客もほとんとロリコンばかりだが、実は休学中の女子大生である。レズビアンであり、ジュンを最愛のパートナーとしている。フランスに留学するため風俗店で働いており、資金が貯まったことから旅立っていった。
鉤本 里子 (かぎもと さとこ)
神保聖の高校の2学年上の先輩。陸上部OG。神保聖が初めて付き合った女性。いじめを受け転校した過去があり、いじめられても毎日学校に通ってくる聖のことを気にかけるうちに好きになり、彼女から彼に告白した。サディストであり、聖を自宅に誘いSMプレイをもちかけるが、拒絶されてしまう。この結果、ふたりの関係は終了した。卒業後は、美園亜由子の紹介で遠藤チカのSMクラブに入店し、女王様として働き始めた。 その後、聖と歌舞伎町で再会し、自分の処女を捧げた。
高階 守 (たかしな まもる)
神保聖と立川鮎子の幼なじみで高校の同級生。高身長でルックスもよく女子の人気も高い。聖はもてる男になりたくて、高階守の真似ばかりした時期があった。陸上部に所属し、足の早い聖を部に勧誘した。鮎子と付き合っていた時期もあったが、守が美園亜由子に惹かれたことで、ふたりの関係は終了してしまう。
泉地 圭 (いずみち けい)
神保聖が登校拒否で休んでいた時期にやってきた転校生。ゲイであり、それが原因で転校してきた。歌舞伎町のニューハーフ・バーでチーママとして働いている。クラスから孤立していた立川鮎子にゲイの秘密を知られてしまうが、結果的に仲良しになった。ホスト時代、聖は歌舞伎町で女装した泉地圭と出会うが、彼がニューハーフであることに気づかずに惹かれ合ってしまう。 店では女装しているが、実は巨根の持ち主。
上総 (かずさ)
ボーイズ・バー「ア・ラ・紅人」支配人。推定30歳。神保聖にホストとしての才能を見いだし、彼に聖夜の源氏名を与えた。夜の世界での経験が豊富な苦労人で、確かな手腕でホストたちを統括する。かなりのマゾで、「奉仕」という言葉に敏感に反応する。遠藤チカのSMクラブの常連で、奴隷のひとりらしい。
翔 (しょう)
神保聖が働いていたボーイズ・バー「ア・ラ・紅人」のナンバー1ホスト。業界に入った瞬間からナンバー1だったと豪語する真の実力者。容姿端麗で、話術が豊富な上、あらゆる動作が優雅という完璧な存在。自分が抜けた後を任せられる存在として、聖のことを見込んでいる。
真里 (まり)
神保聖が働いていたボーイズ・バー「ア・ラ・紅人」の売れっ子ホスト。長く翔に次ぐナンバー2の地位をキープしていたが、聖の入店によりその座を追われてしまう。以来、何かと聖につらくあたった。一見、可愛い系のルックスだが、中身は肉食系。それゆえ、「かわいい顔して~」と言われることが多く、「あみん」というあだ名がつけられた。 売上のためには、店で禁止されている枕営業も辞さない。
土屋 聖子 (つちや せいこ)
神保聖の高校の後輩。留年した聖と高3で同じクラスとなる。軽音楽部所属で、「学年でピカ一の可愛さ」と男子から評判の女の子。いつもベロを出していることから「ペコ」のあだ名をもつ。聖の反体制的な雰囲気に惹かれ、何かとすり寄ってくる。ジュンに憧れてパンクロックを始めており、聖に一緒にバンドを組むことを申し出る。
加藤 鷹男 (かとう たかお)
神保聖の高校の後輩。ペコ(土屋聖子)のおさななじみで家は隣同士。3年間ペコと付き合っていたが、神保聖が登場したことで、あっさり乗りかえられてしまう。それでもペコのことが好きで、ずっと面倒を見続けるけなげな男。軽音楽部所属で、ジュンのバンドをペコに教えたのも彼である。ペコからは名前がAV男優に近いことから、よく加藤鷹と呼ばれてからかわれる。
高瀬 成俊 (たかせ なるとし)
美園亜由子の死亡した恋人。美園と遠藤チカの美大の先輩。壱村龍人の後輩で親友。母子感染による生来のHIVキャリアであり、それゆえの独自の境地によるコンセプチャル・アートを産み出し続けたアーティスト。ロンドンで個展が開催されるなど、彼の作品は生前から高い評価を受けていた。<改行>自身の病気のことから女性に心を許さなかったが、唯一、美園を受け入れ、恋人同士となった。 だが、幸せは続かず、高瀬成俊は美園をかばって事故死した。残された美園は、彼のライフワークを完成させるため、高瀬の残した女性性器の写真と同じ数だけの男性性器の写真を集める活動を開始した。