カッコよくなりたい少年と、魅力的なイケメン女子
高校生の智明とイケメン女子の一颯は、性別を意識せず親友として接している。しかし、ふとした瞬間に見せる一颯の自然なイケメンらしい仕草に智明が胸をときめかせたり、智明のさりげない優しさに一颯が心を動かされたりと、友情と恋愛の狭間(はざま)で揺れ動く二人の心情が丁寧に描かれている。
幼なじみとの12センチの約束
智明と一颯は幼なじみである。小学生の頃、一颯は「女の子らしくない自分」にコンプレックスを抱いていたが、智明はそんな彼女を「かっこいい」と称賛し、「いつか一颯以上にかっこよくなる」と約束した。その言葉をきっかけに、一颯は自分の個性を前向きに受け入れられるようになった。4年後、高校生になった二人の身長差は変わらず12センチのまま。智明はあの日の約束を胸に、その差を埋めようと努力を続けると共に、内面的も大きく成長している。
かっこよさの多様性を丁寧に描き出す
作者の直正也は、本作の構想段階で「ボーイッシュな女の子」を描きたいと考えていた。当初は対照的な主人公として「かわいい系」の男子を想定していたものの、他作品との差別化が難しく、物語の展開にも限界があることに気づく。悩んだ末、主人公も「かっこいい系」に設定することで、ヒロインとは異なる「かっこよさ」を表現できると考える。このような経緯から、本作は「かっこいい」を大きなテーマに、多様な「かっこよさ」とその裏にある人間の心情を丁寧に描き出している。
登場人物・キャラクター
椛 智明 (かんば ともあき)
とある高校に通う1年生の男子。一颯とは小学生の頃からの幼なじみ。刈り上げショートカットにしている。身長は172センチと男子の平均的な高さだが、一颯の身長を超えることを目標に日々努力を重ねている。五人きょうだいの長男で、下に四人の妹がいる。母親が仕事で忙しいため、家事も率先してこなし、料理が得意な家庭的な一面もある。長男らしい気配り上手な性格で、自然と人の輪の中心にいるタイプ。一颯のことは小学生時代からあこがれの存在として見ている一方で、彼女の人間的な弱さも理解しており、いざという時には身を挺(てい)して彼女を守ろうとしている。
立華 一颯 (たちばな いぶき)
智明と同じ高校に通う1年生の女子。智明とは小学生の頃からの幼なじみ。184センチの長身で細身の体型、凛とした整った顔立ちに、泣きぼくろがチャーミングな「男装の麗人」。スカートが苦手なため、学校の許可を得て男子制服を着用し、髪型もショートカットにしている。一人称は「俺」で、その振る舞いから男子と間違われることも少なくない。成長と共にそのイケメンぶりにさらに磨きがかかり、容姿端麗・文武両道なことから、高校では「王子」と呼ばれている。女子生徒からの人気は絶大で、ファンクラブが結成されるほどの知名度を誇る。小学生時代は、自分の「女子らしくない」見た目にコンプレックスを抱いていたが、智明に「かっこいい」と褒められたことで、自分の個性を前向きに受け入れられるようになり、二人はかけがえのない親友となる。








