治安の悪い場所ほど料理が美味(うま)い?
本作執筆のきっかけとなったのは、主人公・ジュンタロー(原作者の青木潤太朗)と友人Kの食事会。どちらも自由業で釣りが趣味の2人は、いろいろな外国で釣り旅行をしていたが、そこでKは「治安の悪い場所ほど料理が美味い」と主張する。「日本のように安全な場所では、70点から90点のものがどこでも食えるが、危険な場所では20点か5万点」だというのだ。「言われてみればそうかも」と思ったジュンタローは、「20点か5万点」の料理を求めて危険地帯に足を踏み入れることになる。なお、原作者・青木潤太朗と作画の森山慎は10年ほどの交流があり、もともとは一緒に釣り漫画をやろうとしていたという。しかし、もろもろの事情で実現せず、友人Kの言葉がきっかけで、異色のグルメレポートコミックに形を変え、本作の誕生となった。
実在する、怪しくも魅惑的な料理が描かれる
本作で描かれる料理はすべて実在するが、一般にはあまり知られておらず、原作者が危険地帯に実際に赴き、紹介しているものである。例えばメキシコ某所の「マフィアの拷問焼き(ロモアールトラボ)」は、服を着たまま焚き火に身を投げさせるという、メキシカンマフィアの伝統的な処刑に由来するもの。牛塊肉をオーガニックコットンの布地で包んで焚き火に投げ込んだ料理で、由来は恐ろしいが味は絶品である。また、エルビス・プレスリーの大好物で、食べ過ぎたせいで早死にしたといわれる本場アメリカの「エルビス・サンドイッチ」といった、それ自体が危険な食べ物も登場する。これらの料理が、旅のエピソードとともに詳細なレシピ付きで紹介されているのが本作の特長である。
登場人物はすべて美少女
本作の特長の一つは、登場人物が、基本的にすべて美少女である点である。これは、「原作者の脳が長年にわたる二次元の過剰摂取で壊れてしまっており、原作者の五感をとおして観測する世界には美少女しかいない」という理由からである。例えば、コワモテの武装した男性たちは自撮り棒を持った美少女たちに、全身タトゥーの大柄な男とショットガンは、見目麗しいエルフの女性と弓矢に変換されるのだ。この設定により「美少女×旅行×グルメ」という複数ジャンルの魅力をかけ合わせた作品となっている。
登場人物・キャラクター
ジュンタロー
釣りと旅行が好きな30代の男性。長年の二次元過剰摂取により脳が壊れ、周囲の人物がすべて美少女に見えるため、平気で危険地帯に足を踏み入れることができる。ちなみにジュンタローが認識している自身の外見は、前髪ぱっつんの黒髪ロングの美少女である。ある日、「日本のように安全な場所の料理は70点から90点だが、治安が悪い場所の料理は20点か5万点」という友人の言葉に同意。それ以来、5万点の料理を求め、世界の危険地帯へと足を踏み入れるようになる。本作の原作者、青木潤太朗がモデル。
ロブ
シカゴ生まれのアメリカ人男性。ジュンタローの目からはツインテールのかわいい少女に見えている。「シカゴフィッシングクラブ」というアマチュア釣り大会組織の代表。シカゴ行きを決めたジュンタローが、SNSでフォローしたことをきっかけに、初めての外国人の友達になった。シカゴで「ホットドッグ・アンド・フライ」や「イタリアン・ビーフ・サンドイッチ」を紹介する。
ロドリゴ
アマゾン生まれのブラジル人。ジュンタローの釣り友達。現地では「ちょっと有名な釣り名人」で「ちょっとお金持ち」な超美形の男性。ジュンタローの目からは、褐色の肌ときれいな目のキラキラした美人に見えている。アマゾナス州マナウスの「オレンジジュース」を紹介したり、焚き火の直火焼きサーロインステーキを振る舞ったりする。
クレジット
- 原作
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青木 潤太朗
書誌情報
鍋に弾丸を受けながら 5巻 KADOKAWA
第1巻
(2022-01-08発行、 978-4041120972)
第2巻
(2022-08-10発行、 978-4041126974)
第3巻
(2023-03-10発行、 978-4041134870)
第4巻
(2023-12-11発行、 978-4041142707)
第5巻
(2024-10-10発行、 978-4041153451)