あらすじ
第1巻
二子玉川学園に新任教師として川藤幸一が着任して来た。川藤は、二子玉川学園の前に勤めていた神田川高校で生徒を半殺しにしてクビになっていたという過去があり、二子玉川学園もまた半年前に野球部が暴力事件を起こしたために、公式戦への出場停止処分を受けていた。部員のほとんどが不良生徒であるという事を知った川藤は、自ら野球部の顧問になる事を願い出る。川藤は早速部員の一人である安仁屋恵壹と接触するが安仁屋は心をまったく開かない。だがそんな中、部員の一人・御子柴徹が野球に対する情熱を持っている事を知った川藤は、御子柴と共に野球部を再建する事を誓う。その頃、安仁屋は川藤の真実を知るために、川藤がかつて勤めていた神田川高校を訪れていた。しかし、そこで神田川高校の生徒とトラブルを起こしてしまう。
第2巻
神田川高校の生徒とトラブルを起こした安仁屋恵壹を引き取るために、かつて自身が勤めていた高校へと向かった川藤幸一は、安仁屋に自身が起こした事件の経緯を説明する。川藤が起こした事件はあくまでも不可抗力である事を知った安仁屋だったが、それでも川藤に従う気になれない。その頃、野球部員の一人である関川は、二子玉川学園の校長が川藤と自分達をぶつけて退学に追い込もうとしている事を偶然に知る。川藤の説得もあり、御子柴徹と共に野球をやる気になった関川だったが、それを「裏切り」と考えた新庄によって御子柴と共に重傷を負わされる。川藤は新庄に憤りを感じながらも、それでも新庄を必死に説得する。御子柴と関川に重傷を負わせた事で仲間達からも孤立してしまった新庄は、少しずつ川藤の言葉を受け入れていく。
第3巻
川藤幸一のもとに、用賀第一高校からの練習試合の話が舞い込む。用賀第一高校とは毎年定期的に練習試合を行っていたが、活動休止中の二子玉川学園野球部の状況から練習試合は困難となっていた。川藤はそれを受けるが、メンバーが御子柴徹と関川しかいない状況を知っている校長・村山は、試合までに9人揃えなければ川藤をクビにすると告げる。川藤は部員集めに奔走し、それに乗せられる形で若菜、桧山、湯舟、岡田がメンバーに加わる。だがその矢先、これまで野球部に虐げられて来た二子玉川学園の生徒達によって部員が襲われるという事件が起こる。部員達を襲った相手に心当たりのある安仁屋恵壹は、その相手を問い詰めるがそこを新庄が制止する。そこに合流しようとする若菜達を見つけた川藤は、自分達の誇りのために戦おうとしている若菜達を認め、「部活」という名目で彼らを送り出すのだった。
第4巻
野球部員達へのこれまでの報復として、彼らを襲ったのは同じ二子玉川学園の生徒達だった。結果的に乱闘にまで発展した事で責任を問われる川藤幸一だったが、今回の件は野球部を狙った生徒側に問題があると校長を説得し、用賀第一高校との練習試合まで処分保留となる。平塚や今岡を加えて8人となった野球部だったが、安仁屋恵壹と新庄は未だ野球をやろうとはしなかった。安仁屋の幼なじみである八木塔子は野球部のマネージャーとなり、安仁屋にも野球をやるように勧める。かつて安仁屋は野球をやっていたが、努力する事の虚しさから野球から遠ざかっていた。川藤はそんな安仁屋に勝負を挑み、川藤が勝てば部に戻るように説得する。迷いながらも川藤との勝負に臨んだ安仁屋は結果的に川藤に勝つものの、再び野球をやる決意を固め部に戻って来る。
第5巻
安仁屋恵壹を加え9人となった二子玉川学園野球部は再び始動する。9人揃うと思っていなかった二子玉川学園の校長・村山は驚くが、そう簡単に更生できるわけがないと、川藤幸一に言い放つ。それでも二子玉川学園野球部では、ポジションや打順も決まり、用賀第一高校との練習試合に臨む。半年前に暴力事件を起こした二子玉川学園野球部に対して完全に萎縮している用賀第一高校の選手達だったが、それに構わず先発投手の安仁屋は次々と用賀第一高校打線を三振に抑えていく。さらに攻撃では関川が得意の俊足を披露し、御子柴徹はそんな安仁屋と関川の実力に頼もしさを感じる。だが安仁屋は、この半年間まるでトレーニングをしていない事からスタミナ不足を感じていた。それでも安仁屋は自身の打席で場外ホームランを放つ。
第6巻
用賀第一高校との練習試合、序盤に安仁屋恵壹のホームランで先制した二子玉川学園野球部だったが、安仁屋のスタミナ不足と守備の乱れからすぐに逆転されてしまう。練習試合に勝つ事で野球部を守ろうとしていた安仁屋は、周囲が見えておらず自分の力だけで勝とうとしていた。その事を見抜いた川藤幸一は、安仁屋に代えて今岡をマウンドへと送る。その後も安仁屋を温存するために継投を繰り返す川藤だったが、安仁屋と御子柴徹以外は素人の集まりである二子玉川学園野球部は次々と失点する。安仁屋は、それでも勝利を信じて戦う仲間達を信じる心を取り戻し、勝つための作戦を立てる。だがその直後、用賀第一高校の野球部監督・国松の生徒に対する態度に怒った川藤は国松を殴ってしまう。
第7巻
用賀第一高校との練習試合の途中で、教え子達の夢を笑われた事に怒った川藤幸一は、対戦相手の監督である国松を殴ってしまう。暴力を振るわれた国松は、審判に没収試合にするように進言するが、試合はそのまま続行する。勢いを取り戻した二子玉川学園野球部は反撃を開始、点差を徐々に縮め、ついに同点に追いつく。さらに、安仁屋恵壹のホームランで逆転に成功する。だが、次にマウンドにあがった湯舟はあっさりとさらなる逆転を許してしまう。ここからの失点は許されないため、再びマウンドに登板した安仁屋は用賀第一打線を完全に抑え、次の回には再び反撃に転じ、関川が同点のランナーとして出塁する。この場面でついに二子玉川学園野球部10人目の男・新庄が登場し、代打として打席に立った新庄は長打を放つ。しかし関川がタッチアウトになり試合終了、二子玉川学園は惜しくも敗れる。それでも用賀第一高校相手に善戦した事に、野球部員達は確かな手応えをつかむのだった。
第8巻
用賀第一高校との練習試合で惜しくも敗れた二子玉川学園野球部は、本格的に甲子園出場を目指し始める。だがその矢先、用賀第一高校野球部監督の国松が川藤幸一に殴られた事を不服として二子玉川学園へと乗り込んで来る。国松から話を聞いた二子玉川学園校長の村山は、辞職という形で決着をつけると話す。だが辞めるのは川藤ではなく村山だった。かつて村山は、二子玉川学園野球部が甲子園出場を果たした時のメンバーでありキャプテンでもあった。村山は、不良の巣窟となってしまった野球部を自分なりに守ろうとしていたという事を知った安仁屋恵壹は、川藤と共に村山の気持ちに応える事を決意する。
第9巻
二子玉川学園に村山に代わる新たな校長として藤村が赴任して来る。さらにかつて川藤幸一の同僚だった真弓りえも新任教師としてやって来た。そんなある日、川藤は教頭の池辺から野球部にはもう一人、江夏卓という男がいた事を聞かされる。実は野球部が起こした暴力事件は、この江夏が大きく関係していたが、江夏は自主的に退学しすぐに野球をやるために目黒川高校へと転入していた。折しも二子玉川学園野球部の桧山は練習のために訪れたバッティングセンターで、その江夏達とトラブルを起こす。その場に居合わせた川藤は、江夏に対して野球の試合で決着をつける事を提案、目黒川高校との練習試合が決定する。
第10巻
かつて二子玉川学園野球部のメンバーだった江夏卓率いる目黒川高校との練習試合が決定し、川藤幸一は練習に熱を入れる。さらに、二子玉川学園教頭の池辺が野球部部長に就任、高校時代に甲子園出場経験のある池辺の指導を受けて、野球部員達の技術も着実に上達していく。川藤は、暴力事件を起こした江夏の存在こそが二子玉川学園の「亡霊」であり、その江夏を倒してこそ本当のスタートラインだと語る。こうして迎えた目黒川高校との練習試合だったが、江夏の前に二子玉川学園打線は抑えられ、安仁屋恵壹は目黒川高校4番の河埜にホームランを打たれてしまう。
第11巻
目黒川高校との練習試合、序盤に河埜のホームランで先制された二子玉川学園だったが、安仁屋恵壹の力投で後続を断つ。ホームランを打っても静まり返ったままの目黒川高校野球部に違和感を覚えつつも、二子玉川学園野球部は反撃を開始する。速球を投げる目黒川高校のエース江夏卓を打ちあぐねる二子玉川学園野球部だったが、若菜がスリーベースヒットを放ち、続く安仁屋のタイムリーで同点に追いつく。二子玉川学園野球部部長の池辺は、野球部員達の経験不足を不安視するが、それでも桧山や湯舟達野球部員は気合の入ったプレイを見せ、目黒川高校との試合を接戦に持ち込むのだった。
第12巻
目黒川高校との練習試合は中盤にさしかかっていた。中学時代に全員野球で名を馳せたメンバーで構成されている目黒川高校の野球部だったが、素人の集団である二子玉川学園野球部の予想外の善戦に少しずつやる気を失っていく。気の抜けた怠慢なプレイを見せるようになった目黒川高校に対して、二子玉川学園野球部は追加点を奪い逆転に成功する。しかし、目の前でやる気のないプレイを見せられた川藤幸一は、江夏卓達目黒川高校野球部員を叱咤し奮起を促す。川藤の言葉をきっかけに江夏達は本領を発揮し始め、二子玉川学園野球部のエース安仁屋恵壹の球をとらえ、あっさりと試合をひっくり返すのだった。
第13巻
目黒川高校との激闘が続く。二子玉川学園野球部エースの安仁屋恵壹はカーブを織り交ぜた投球で凌ぐが、そのカーブを狙われて次々と失点していく。野球の技術と経験が浅い二子玉川学園の野球部員達は目黒川高校の猛攻になすすべもなく、メンバー達にあきらめムードが蔓延する。だがそんな中でも新庄だけはやる気を見せ、あきらめかけていたほかのメンバー達も、少しずつ闘志を取り戻していく。試合は終盤に入り、疲れを見せ始めた目黒川高校エースの江夏卓をとらえ始めた二子玉川学園野球部の打線は点差を縮め、ついには代打・平塚平の満塁ホームランで逆転するのだった。だがその直後、目黒川高校の不良生徒達がグラウンドへと集まって来る。
第14巻
江夏卓に呼ばれて集まって来た目黒川高校の不良生徒達は、観客席で試合を見守る。打席に立った江夏は、安仁屋恵壹の前に三振に倒れ、不良生徒達も情けない江夏の姿を見限り去っていく。目黒川高校との練習試合は、そのまま二子玉川学園野球部の勝利に終わり、二子玉川学園野球部は練習試合で初勝利を飾るのだった。年度末になり、卒業と進級の時期を控えたある日、二子玉川学園野球部の御子柴徹と桧山は中学生の濱中大陽達とトラブルを起こしてしまう。実は濱中は二子玉川学園野球部の平塚平の後輩であり、過去に平塚に助けられた事から彼を崇拝していた。自身が野球部のエースであると吹聴していた平塚にあこがれる濱中は、平塚に無断で二子玉川学園野球部の練習の見学に訪れる。
第15巻
平塚平にあこがれる濱中大陽は、彼の雄姿を見ようと二子玉川学園野球部の練習の見学に訪れる。平塚は自身が野球部のエースであると濱中に吹聴しており、なんとか誤魔化そうとするが結局濱中にばれてしまう。そんな平塚とレギュラー争いをしている桧山は平塚に真剣勝負を挑み、平塚と桧山の姿を見た濱中は感動、春に二子玉川学園を受験する事を誓うのだった。4月になり、濱中は早速野球部に入部するが、その濱中のほかにも多くの入部希望者が現れる。だが彼らは、かつて不良だった野球部員にあこがれての入部であり、真剣に野球をするという目的ではなかった。新入生達は現在の野球部員の姿に失望し、彼らを倒して野球部を乗っ取る事を画策する。しかしそんな新入部員達の中には、中学時代に野球で鳴らした赤星奬志がいた。
第16巻
中学時代に野球の名選手だった赤星奬志は野球部に入部届を出すものの、甲子園出場には興味がなく将来はメジャーリーグに出場する事を目標としていた。安仁屋恵壹はそんな赤星に不信感を抱くが、新庄は赤星が隠れて努力をしている事を見抜く。そんな中、1年生達が野球部員達に対して襲撃をかけて来た。川藤幸一は、1年生の中心にいる上坂と屋上で対決し勝利する。応戦した若菜や新庄は1年生達を返り討ちにし、赤星はそんな野球部員達がかつての不良達ではない事を知る。川藤に敗れた上坂もまた、空手で日本一になる事を目指す事を決意するのだった。メジャーリーグに行く前に甲子園に出場する事を決めた赤星は改めて野球部に入部、安仁屋と共に野球部の中心選手となっていく。
第17巻
赤星奬志が加わり選手層が厚くなった二子玉川学園野球部は、練習試合で連戦連勝を重ねていく。そしてついに夏の甲子園出場をかけた予選がスタートした。前年度の予選で暴力事件を起こしたため周囲の冷たい目にさらされながら、二子玉川学園は初戦の用賀第一高校戦にコールドで勝利する。さらに続く二回戦もコールド勝ちを収めた二子玉川学園は、少しずつ周囲の注目を集めていく。しかし、そのほとんどは暴力事件を起こしたチームとしての注目であり、インターネットには誹謗中傷の書き込みもあとを絶たない。そんな中、三回戦も勝利した二子玉川学園は、甲子園の常連校である笹崎高校との対戦が決定する。笹崎高校の川上貞治はプロも注目する投手であり、中学時代の安仁屋恵壹も完全に抑えられた相手だった。因縁の相手を前に安仁屋は闘志を燃やす。
第18巻
甲子園出場をかけた夏の予選四回戦、笹崎高校と対戦する二子玉川学園野球部だったが、観客のほとんどは笹崎高校が二子玉川学園に圧勝する姿を期待していた。笹崎高校のエース川上貞治は、キレのあるフォークボールで二子玉川学園打線を翻弄し、4番の別所真澄は初回に先制の2ランホームランを放つ。反撃に出る二子玉川学園は、つなぐバッティングで1点を返すが、若菜が指を負傷してしまう。若菜の負傷を知った川藤幸一は、彼をベンチに下げ、代わりに赤星奬志をキャッチャーとして出場させる。若菜の無念を知った二子玉川学園野球部は、一丸となって笹崎高校に挑んでいく。
第19巻
笹崎高校のエース川上貞治をとらえ始めた二子玉川学園野球部は、着実に追加点を奪い逆転に成功する。追い込まれる川上だったが、去年の夏の甲子園で受けた屈辱を思い出し気合の入ったボールを投げ込む。優れた野球の才能を持っている川上は、かつてメンバーを見下したプレイをしていたが、甲子園に出場した際に連打を浴び自分一人だけでは野球ができないという事を痛感していたのだった。川上の気持ちに応えるように笹崎高校の4番・別所真澄は、逆転のホームランを放ち二子玉川学園のエース安仁屋恵壹をマウンドから引きずり降ろす。代わった赤星奬志は後続を断つものの、別所には第三打席にもホームランを打たれ、二子玉川学園は突き放されてしまう。
第20巻
別所真澄のホームランで2点差をつけられてしまった二子玉川学園野球部は、それでも試合をあきらめずに笹崎高校に挑む。しかし、御子柴徹がフライを取ろうとして負傷退場し、さらに関川も足に自打球を当ててしまうなど、二子玉川学園野球部はケガ人が続出する。それでもがむしゃらに点を取ろうとする二子玉川学園野球部の姿に、少しずつ観客の見る目も変わっていき、声援を送る人も増えて来た。執念で笹崎高校のエース川上貞治から1点を返した二子玉川学園野球部は、終盤の8回にツーアウトながらランナー2塁のチャンスを作る。
第21巻
予選での笹崎高校との試合も終盤の8回、二子玉川学園野球部は笹崎高校のエース川上貞治を攻めツーアウトながらランナー2塁のチャンスを作るが、得点する事はできなかった。試合は笹崎高校の1点リードのまま9回に入り、笹崎高校の監督はこのまま逃げ切るため打順の回って来た川上にわざと三振するよう指示を出す。しかし川上は、その指示を無視してバットを振ってしまう。ベンチの指示に従わなかった川上と笹崎高校の監督の様子を見た川藤幸一は、笹崎高校のベンチまで抗議に乗り込んでいく。川藤の行動に驚きつつも、二子玉川学園野球部は再び奮起し、代打として送り出された平塚平の打撃で同点に追いつき試合は延長戦へと突入する。
第22巻
延長戦へと進んだ笹崎高校との試合は、安仁屋恵壹のサヨナラホームランで幕を閉じ、二子玉川学園野球部はベスト16へと進出する。しかし、笹崎高校のベンチに乗り込んで抗議をした川藤幸一は高野連の理事会から厳重注意を受け、予選大会が終了するまでベンチ入りする事ができなくなってしまう。さらに、次の対戦相手である目黒川高校の試合を観戦に行った安仁屋達は、目黒川高校OBと乱闘騒ぎを起こしてしまい、二子玉川学園野球部の立場は一層悪くなっていく。そのうえ、安仁屋と関川はこの乱闘の際に負傷し、試合の出場すら危ぶまれてきた。それでも川藤は甲子園出場をあきらめず、目黒川高校戦に向けてのオーダーを組んで御子柴徹に渡す。二子玉川学園野球部は、負傷した安仁屋をピッチャーではなくファーストに回すという、変則的なオーダーで目黒川高校との試合に臨む。
第23巻
目黒川高校との試合が始まった。初回に新庄のホームランで先制した二子玉川学園野球部だったが、川藤幸一の不在とエース安仁屋恵壹が投げられない事から、少しずつ目黒川高校に点差を広げられていく。球場の外でラジオを聞きながら試合の様子をうかがっていた川藤は、偶然にも球場の勤務医である小山と出会い安仁屋に痛み止めを打ってもらうように懇願する。当初は難色を示していた小山だったが、川藤の必死の説得に折れ、安仁屋に痛み止めの注射を施す。二子玉川学園野球部は、近くに川藤が来ている事、そして安仁屋の甲子園出場にかける覚悟を知り再び奮起し、目黒川高校との中盤戦に臨んでいく。
第24巻
目黒川高校との試合で4-1とリードを奪われてしまうが、少しずつ点差を縮めていく二子玉川学園野球部。だが同点に追いつくチャンスで安仁屋恵壹が凡退し、試合は目黒川高校リードのまま終盤へと入っていく。絶体絶命の二子玉川学園野球部の窮状に、川藤幸一は自身の職をかけて、この試合だけでもベンチ入りさせてほしいと高野連理事会に願い出る。それを受けた理事会の許可を得て、川藤はベンチに入り指揮を執る。だが、それは同時にこの試合が終了すれば川藤が二子玉川学園を去るという事を意味していた。
登場人物・キャラクター
川藤 幸一 (かわとう こういち)
二子玉川学園高校の新任男性教師であり、教科は現代国語。教員歴8ヶ月の新人。1年B組担任(2年目は2年B組担任)。24歳男性。短く逆立てた髪が特徴。幼少期から父に格闘技を習わせられており空手二段。また体も頑丈で石頭。ネクタイが苦手。教育熱心な熱血漢で、折に触れて偉人の格言を引用する。 自身の座右の銘は「夢にときめけ 明日にきらめけ」。憤ると相手の地位に関わらず意見し、さらに興奮すると反射的に殴ってしまう癖がある。前任校の神田川高校では生徒を殴ってしまい、責任を取って辞職。暴力教師と噂された。二子玉川学園高校では不良生徒ばかりで問題の多い野球部の顧問を任され、野球部員に夢を持つこと、夢に向かい努力することの大切さを説き、彼らを感化していく。 だが自身の性向は直せず、公式戦で相手校監督に対し意見し、謹慎処分となる場面もある。野球は未経験で当初はルールも知らなかった。
村山 義男 (むらやま よしお)
二子玉川学園高校の校長。恰幅がよい白髪の男性で、横に張り出したもみあげと鼻左横のイボが特徴。試合中に殴打事件を起こした野球部の不良部員に頭を悩ませていた。退学処分を下さない、という同校の伝統を自分の代で崩したくない村山義男は、暴力教師の噂があった川藤幸一を呼び寄せ、彼と野球部員を互いに潰し合わせることで学校から排除しようとした。 村山義男の意に反し、川藤幸一の指導で野球部員が更正し始めてからも彼らを容易には信用せず、内部分裂や川藤幸一に条件付きで辞職を迫るなどいくつかの工作を行う。だが二子玉川学園高校野球部と用賀第一高校野球部の練習試合を見て考えを改める。 直後、川藤幸一が用賀第一高校野球部副顧問国松を殴ってしまったことの責任を取り、校長の職を辞した。43年前、二子玉川学園高校が甲子園に出場した際の野球部主将。
池辺 駿作 (いけべ しゅんさく)
二子玉川学園高校の教頭。やや小柄な男性で、側面を刈り上げた髪型に眼鏡が特徴。試合中に殴打事件を起こした野球部の不良部員を排除しようとする村山義男校長に対し、表立っては逆らわないが、生徒達が立ち直ってくれるならそれが望ましいと考えていた。野球部の顧問となった川藤幸一には好意的に接する。 43年前に村山義男校長と共に甲子園出場を果たした際の二子玉川学園高校野球部の名セカンドであった。後に野球経験のない川藤幸一を補佐するため野球部部長に就任。部員達に「池辺マニュアル」という、自分の野球知識を詰め込んだファイルを渡す。 このファイルの分かりやすさと実地指導の確かさを持って、部員達からは「おっさん」呼ばわりされつつも信頼を持って迎えられている。
安仁屋 恵壹 (あにや けいいち)
二子玉川学園高校の男子生徒で野球部員。クラスは1年B組(後に2年B組)。長髪が特徴の美男子。中学時代から野球をやっていたが、中学時代に自分を破った川上貞治投手が甲子園で惨敗する姿を見、努力を空しいと感じるようになった。野球部が不良の巣窟状態になっていた際は、部室に女子生徒を連れ込んで性行為に及んでいた。 新任教師川藤幸一が顧問となり、他の部員達が更正する中でも、「甲子園に行く」と軽々しく口にする川藤幸一に反発し合流しなかった。だが川藤幸一との勝負を経て、さらに幼馴染みでマネージャーの八木塔子からのキスの約束に後押しされ、野球部に戻る。 以前は外野手だったが肩の強さを生かしピッチャーに転向、最終的には150㎞/hのストレートを投げるエースとなった。打順は4番であり、同校野球部の主戦力である。.。
御子柴 徹 (みこしば とおる)
二子玉川学園高校の男子生徒で野球部員。クラスは1年B組(後に2年B組)。小柄で前髪を立てた短髪、童顔が特徴。温厚で真面目な性格。中学時代から野球をやっていたが、当時はレギュラーではなく「球拾い大臣」と仇名される立場だった。野球部が半年間試合禁止となり、不良の巣窟状態になっていた際には、部室の鍵係として顎で使われていた。 そのような状況下でも野球に対する情熱を持ち続けており、新任教師川藤幸一が顧問となった際には部室の鍵を川藤幸一に返し、真っ先に味方となった。その後野球部員が更正していく中で、野球に詳しいこともあり川藤幸一からキャプテンを任される。 曲者揃いの野球部をうまくまとめており、部員の信頼も厚い。感極まるとすぐ泣く。基本ポジションはセカンドで打順は2番。
新庄 慶 (しんじょう けい)
二子玉川学園高校の男子生徒で野球部員。クラスは1年B組(後に2年B組)。長身で、荒い金髪リーゼントに鋭い目付き、右耳のピアスが特徴。野球部が半年間試合禁止となり、不良の巣窟状態になっていた際にはリーダー格であった。粗暴な面があり仲間相手でも気に入らなければすぐ殴る。 新任教師川藤幸一が顧問となった際にも反発し彼にも暴力を振るう。しかし力で仲間を得ようとすることの誤りを指摘され、彼を認める。その後も部員達へのわだかまりから野球部には合流しなかったが、用賀第一高校野球部との練習試合の最終局面で、仲間のピンチを救うため代打としてバッターボックスに立った。 野球部更生後は友情に厚い面が生かされチームの要の一人となっている。基本ポジションはサード、5番打者で左の強打者として活躍する。
若菜 智哉 (わかな ともちか)
二子玉川学園高校の男子生徒で野球部員。クラスは1年B組(後に2年B組)。前髪がほつれたリーゼントと左耳のピアスが特徴。野球部が半年間試合禁止となり、不良の巣窟状態になっていた際にはリーダー格の一人だった。新任教師川藤幸一が顧問となった際には「本当にやりたいのはサッカーだ」と出任せを言った。 だが川藤幸一が本当にサッカー部への入部を取りはからおうとしてくれたことや、彼の前任校での評判を知り、心を入れ替えた。小学生の時に「東京から鎌倉まで逆立ちで歩く」と宣言し、テレビの取材まで来たのだがすぐに挫折し放棄したことがあり、トラウマになっている。 基本ポジションはキャッチャーで打順は3番。チームのムードメーカーとして活躍する。
関川 秀太 (せきかわ しゅうた)
二子玉川学園高校の男子生徒で野球部員。クラスは1年B組(後に2年B組)。金髪で髪を逆立てており、低い鼻と三白眼が特徴。野球部が半年間試合禁止となり、不良の巣窟状態になっていた際には部室にゲーム機などを持ち込んでおり、その一部は関川秀太が盗んだものだった。新任教師川藤幸一が顧問となった際、「本当にどうしようもない人間などいない」と言う彼の言葉を聞いて心を改め、御子柴徹に続いて二番目に川藤幸一に従った。 100m走10秒台を出す俊足の持ち主。「俺に盗めねーモンはねーよ」と豪語し、その脚を生かした出塁で二子玉川学園高校野球部に数多くのチャンスをもたらす。 基本ポジションはセンターで打順は1番。
桧山 清起 (ひやま きよおき)
二子玉川学園高校の男子生徒で野球部員。クラスは1年B組(後に2年B組)。額を出した髪型にまばらな顎ひげが特徴。野球部が半年間試合禁止となり、不良の巣窟状態になっていた際には部室にたむろする不良生徒の一人だった。新任教師川藤幸一が顧問となった際、そもそも野球に興味がなかったためなかなか復帰しなかった。 だがスポーツ店で練習試合相手の用賀第一高校の生徒に二子玉川学園高校野球部を馬鹿にされたことで発憤し、岡田優也、湯舟哲郎と共に部活に合流する。また目黒川高校野球部の部員とバッティングセンターでいざこざを起こしたことで、練習試合のきっかけを作った。 ポジションはショートで守備は上手い。一方打撃は弱く、特にミートが下手で打順は6番あるいは7番。チーム全体のことを考え、打順を代打の平塚平や若菜智哉に譲る場面もあった。
岡田 優也 (おかだ ゆうや)
二子玉川学園高校の男子生徒で野球部員。クラスは1年B組(後に2年B組)。ドレッドヘアが特徴。野球部が半年間試合禁止となり、不良の巣窟状態になっていた際には部室にたむろする不良生徒の一人だった。新任教師川藤幸一が顧問となった際、そもそも野球に興味がなかったためなかなか復帰しなかった。 だがスポーツ店で練習試合相手の用賀第一高校の生徒に二子玉川学園高校野球部を馬鹿にされたことで発憤し、桧山清起、湯舟哲郎と共に部活に合流する。当初レフトだったが左利きを生かすため後にライトに。冷静な性格。目黒川高校野球部の河埜とは中学校が同じで、同じ程度の不良であった河埜が野球をしているというだけで大目に見られることに劣等感を感じていた。
湯舟 哲郎 (ゆふね てつろう)
二子玉川学園高校の男子生徒で野球部員。クラスは1年B組(後に2年B組)。広がり気味に逆立った髪が特徴。野球部が半年間試合禁止となり、不良の巣窟状態になっていた際には部室にたむろする不良生徒の一人だった。新任教師川藤幸一が顧問となった際、そもそも野球に興味がなかったためなかなか復帰しなかった。 だがスポーツ店で練習試合相手の用賀第一高校の生徒に二子玉川学園高校野球部を馬鹿にされたことで発憤し、岡田優也、桧山清起と共に部活に合流する。ビビり癖あり。「にゃーっ」と叫びながら打つ「猫打ち」でヒットを決めたことがある。基本ポジションはファーストで打順は8番。 女性教師真弓りさに気がある。
平塚 平 (ひらつか たいら)
二子玉川学園高校の男子生徒で野球部員。クラスは1年B組(後に2年B組)。大柄な体格で、側面刈り上げの髪型に薄い鼻ひげが特徴。野球部が半年間試合禁止となり、不良の巣窟状態になっていた際には部室にたむろする不良生徒の一人だった。新任教師川藤幸一が顧問となった際には、同級生八木塔子にモテたくてコーラス部に所属していたが、彼女が野球部のマネージャーになったため野球部に復帰した。 性格は単純でおだてに乗りやすい。代打要員で野球は同学年の部員では一番下手。だが重要な局面で起用された場合には必ずと言って良いほどめざましい活躍を見せ、特に顔面近くに飛んできたボールは必ず打つ。 大言壮語の癖が有り、偶然ヤクザから助けた中学生の濱中大陽に「自分が二子玉川学園高校のエースだ」と吹聴したこともある。
今岡 忍 (いまおか しのぶ)
二子玉川学園高校の男子生徒で野球部員。クラスは1年B組(後に2年B組)。中分けで前髪だけ金髪なのが特徴。野球部が半年間試合禁止となり、不良の巣窟状態になっていた際には部室にたむろする不良生徒の一人だった。平塚平と特に親しく、彼にコーラス部に誘われたりしていたため、新任教師川藤幸一が顧問となった後にも野球部への復帰が遅れた。 スター選手ではないが器用で何でもこなす。当初ライトだったが後にレフトに。リリーフ投手を務めたことがあり、アンダースローで打者の度肝を抜いた。打順は9番。一本足打法でヒットを打ったこともあり、意外性のある活躍が多い。
濱中 大陽 (はまなか たいよう)
二子玉川学園高校の男子生徒で野球部員。二子玉川学園高校野球部が不良集団から立ち直った翌年に入ってきた新一年生。背が低く金髪が特徴。中学生時代には自分を偶然ヤクザから助けてくれた平塚平を、彼の言うとおり同校のエースだと信じていた。その話を確かめる際に見学した二子玉川学園高校野球部に惚れ込み、入学・入部。 思い込みが激しく浅慮。また口から出任せを言う癖がある。根性もなく、千本やっていると言った素振りはまともにこなせず、ランニングの途中でタクシーを使い、禁煙すらできていないという、努力という言葉の似合わない男。笹崎高校との試合では観客席に向かってつばを吐き、球場全体を敵に回した。
赤星 奨志 (あかぼし しょうじ)
二子玉川学園高校の男子生徒で野球部員。二子玉川学園高校野球部が不良集団から立ち直った翌年に入ってきた新一年生。メジャーリーグを目指しており、多摩川体育大学の野球部と一緒に個人練習していた。中学時代から野球をやっており選手間では有名だったが、高校野球に興味がないため家から近いという理由で二子玉川学園高校を選ぶ。 同校では全生徒が部活動を行う決まりがあるため、形式だけ野球部に入り幽霊部員で通そうと考えていた。だが新一年生による野球部への暴行に巻き込まれた際に部員に助けられたのをきっかけに、部活に出るようになった。投げてよし、打ってよしのオールラウンダー。 ピッチャーとしては球速は普通だが球種が多く、安仁屋恵壹とエースの座を争う。キャッチャーを務めた際にはささやき戦術まで駆使した。
上坂 (かみさか)
二子玉川学園高校の男子生徒で野球部員。二子玉川学園高校野球部が不良集団から立ち直った翌年に入ってきた新一年生。体格がよく、オールバックと細いヘアバンドが特徴。空手経験者。まだ野球部が不良の巣窟だと思い込み、不良界の東京制覇を目指す足がかりとして入学・入部した新一年生達のリーダー格。 だが野球部はすでに更正しており、やり場をなくした怒りを叩き付けるため、仲間を率いて校内で野球部員を襲撃する。上坂はその最中、野球部顧問川藤幸一に屋上に連れて行かれ、空手で対決し敗北を喫する。その後は空手部に入り、まっとうな道での東京制覇を目指す。 後に川藤幸一をチンピラから助ける場面もあった。
八木 塔子 (やぎ とうこ)
二子玉川学園高校の女子生徒。クラスは1年B組(後に2年B組)。後ろ髪が外に跳ねたショートヘアが特徴。野球部員の安仁屋恵壹の幼馴染みで、友人以上、恋人未満の関係。当初はコーラス部部員であったが、不良の巣窟から立ち直りつつある野球部をサポートするためマネージャーとなった。 中学校時代にも野球部マネージャーだったため、顧問ながら野球経験のない川藤幸一よりはるかに野球に詳しい。
真弓 りえ (まゆみ りえ)
二子玉川学園高校の女性教師。教科は英語で、ソフトボール部顧問も務める。ショートヘアの美人。空手二段。藤村忠志新校長の姪。二子玉川学園高校出身で、前任校は川藤幸一の前任校でもある神田川高校。規律に厳しく清廉潔白がモットーだが、川藤幸一と野球部には予断を持っている。 一方で不健康な食事をしている川藤幸一に弁当を作ったりもしており、多少、気のある様子が見受けられる。当の川藤幸一は真弓りえを苦手としている。野球部員の湯舟哲郎に惚れられている。
藤村 忠志 (ふじむら ただし)
二子玉川学園高校の新校長。白髪交じりの髪に口ひげが特徴。寒いダジャレを言う癖がある。元神田川高校教頭で、三年間で偏差値を7も上げる実績を残した。胃痛持ちで、病気のため一度職を辞した。だが強く請われて、野球部顧問川藤幸一の暴力行為の責任を取って辞職した村山義男校長の跡を継いだ。 真弓りえの伯父。川藤幸一の行動にはいつも胃を痛めているが、野球部に対する態度は比較的偏見がない。
国松 (くにまつ)
用賀第一高校野球部副顧問。小太りで背が低く、関西弁。高校野球を神聖視しており、不良集団である二子玉川学園高校野球部を練習試合で叩き潰そうと考えていた。部員のプレーが気にくわないと口汚く罵り、平手打ちまで行う。ピッチャーの角が左足を怪我した際にはそのまま投げ続けさせようとした。 その対応に怒った二子玉川学園高校野球部顧問川藤幸一に殴られるものの、審判はむしろ国松を注意し、試合を続行した。後日、首にわざとらしくコルセットをはめて二子玉川学園高校に抗議に訪れたが、村山義男校長の辞職に機先を制され、憤慨しつつも帰って行った。夏の地区予選では用賀第一高校野球部のビデオ係を務めていたが、一回戦で当たった二子玉川学園高校野球部のあまりの強さに狼狽し、投手に「打者に当てろ」と卑怯な指示を出していた。
江夏 卓 (えなつ すぐる)
目黒川高校の男子生徒。一年生の野球部部員。かつては二子玉川学園高校野球部に所属、試合中に相手ピッチャーをバットで殴打する事件を起こし、二子玉川学園高校野球部を半年間の試合禁止に追い込んだ。その後すぐに野球を続けるため目黒川高校に転校、野球部に入る。 元より品行方正ではなかったようだが目黒川高校に行って不良化が進行、短髪を金髪に染め、左耳にピアスをしている。ポジションはピッチャーで速球を得意とするが変化球も投げられる。打撃も上手く才能があるが、チームプレーをする気がない。自分の才能を鼻に掛けて他者を見下すタイプ。バッティングセンターで偶然二子玉川学園高校野球部の桧山清起と再会したことから二子玉川学園高校と目黒川高校の練習試合のきっかけを作った。
沢村 (さわむら)
目黒川高校野球部の監督。白髪に口ひげと顎ひげを生やしており、眼鏡を掛けた男性で、杖を突いている。一見して物静かな好々爺風で人当たりも良い。監督生活42年、数々の問題校を強豪へと立ち直らせた名将。才能はあるが素行に問題のある部員を集め、一年生最初の試合までは自由に行動させる。 そして最初の試合でボロ負け状態に追い込まれたところで試合放棄を申し出、部員の反省を促すのを常としていた。だが目黒川高校と二子玉川学園高校の練習試合では、二子玉川学園高校の顧問川藤幸一が目黒川高校のメンバーを叱りつけたため、あえて試合を続行、敗北を経験させた。 翌年夏の地区予選には、チームプレーができる状態にまで鍛え直した部員達で臨んだ。
千葉 (ちば)
笹崎高校野球部の監督。ガッシリした体格で薄い口ひげと顎ひげが特徴の男性。1970年代に同校が強豪校であったころのピッチャーであり、甲子園の準決勝でノーヒットノーランを達成した。かつてはデッドボールを受け、脳しんとうを起こした直後にもマウンドに立つほどのがむしゃらなプレースタイルであった。 だが自分達の卒業後に凋落した笹崎高校野球部を立て直すため監督に就任した際には、自らの経験に即して勝つための管理野球に徹し、私情を殺しチームに尽くすスタイルで笹崎高校を鍛え直す。天狗になっていた一年生ピッチャー川上貞治の鼻を折るため、甲子園のマウンドで1回に12失点するまで交代させない、といった非情な判断も行った。 しかし二子玉川学園高校との試合では、二子玉川学園高校顧問川藤幸一に意見されたことにより、かつての熱い思いを呼び覚まされた。
川上 貞治 (かわかみ さだはる)
笹崎高校野球部の男子生徒で野球部員。大きな耳が特徴。ピッチャーでストレートと大差ないスピードのフォークが武器。一年生の時は自分の腕を鼻に掛けた高慢な性格だったが、甲子園のマウンド上で1回に12失点という敗北を味わったことにより、チームのためのプレーを心がけるようになる。 しかし夏の地区予選で二子玉川学園高校と戦った際、彼をライバル視する安仁屋恵壹の熱いプレーや、二子玉川学園高校顧問川藤幸一の「青春の夢に忠実であれ」という言葉に触発され、最後まで投げ抜く情熱的なプレーを見せる。
別所 真澄 (べっしょ ますみ)
笹崎高校野球部の男子生徒で野球部員。大男で、目の下にペインティングをしているのが特徴。笹崎高校の主砲で、次回ドラフトの目玉となるだろうと目されているスラッガー。豪放磊落な性格で、やや的外れなことを言う天然ボケの面もあるが、夏の地区予選で二子玉川学園高校と戦い延長戦に突入した際には、同校ピッチャー川上貞治を叱咤激励するなど、チームの精神的支柱の一つにもなっている。
集団・組織
二子玉川学園高校野球部 (ふたこたまがわがくえんやきゅうぶ)
『ROOKIES』に登場する高校の野球部。ある試合で、当時在籍していた部員江夏卓がバットで相手校ピッチャーを殴打、さらに応援の生徒多数がグラウンドに雪崩れ込む乱闘事件を起こし、半年間対外試合禁止の処分を受ける。元々不良も一定数いる学校だが、この件でさらに悪名を轟かせた。新任教師川藤幸一が赴任し顧問に就任した時点では、部員は一年生しか残っておらず大半が不良生徒だった。 だが川藤幸一の指導により野球部員は行動を改め、甲子園を目指すようになる。野球経験のない川藤幸一を補佐するため、甲子園出場経験のある池辺駿作教頭が部長を務めている。なお同校野球部は43年前に甲子園出場を果たしており、村山義男校長と池辺駿作教頭は当時の野球部員であった。
用賀第一高校野球部 (ようがだいいちこうこうやきゅうぶ)
『ROOKIES』に登場する高校の野球部。監督が「地区予選は三回戦以降が本番」と言い放つほどの強豪。川藤幸一が顧問を務める二子玉川学園高校野球部とは毎年練習試合を行っている。だが二子玉川学園高校の村山義男校長が「試合できないかもしれない」と連絡した結果、レギュラーは別の学校と試合を組んでしまった。 そのため国松副顧問が率いる一年生チームが二子玉川学園高校との練習試合に臨む。二子玉川学園高校野球部を不良の巣窟と思っているため内心ビビっている反面、野球は素人であろうとたかをくくっている。部員は国松の横暴な指導を苦々しく思いながらもそれに従っている。練習試合には1点差で辛くも勝利。 後に夏の地区予選で成長した二子玉川学園高校野球部と再戦するが、今度は用賀第一高校側がレギュラーメンバーであったにも関わらずコールド負けを喫した。
二子玉川学園高校ソフトボール部 (ふたこたまがわがくえんこうこうそふとぼーるぶ)
『ROOKIES』に登場する高校のソフトボール部。女子のみの部。顧問は笠間(後に真弓りえ)。不良集団から立ち直りつつある二子玉川学園高校野球部(ただしエースで4番打者の安仁屋恵壹は欠席)と練習試合を行い、0対18で勝利した。野球部のメンバーは、この敗北を機に禁煙を決意する。 ピッチャーの亀山恵子はかつて1日だけ野球部の代理マネージャーを務めたことがあり、野球部部員の人気が高い。
目黒川高校野球部 (めぐろがわこうこうやきゅうぶ)
『ROOKIES』に登場する高校の野球部。監督は沢村。不良が多いことで有名だが野球は名門で、秋季大会ではベスト16に入った。部員の江夏卓他数名が、二子玉川学園高校野球部の桧山清起といざこざを起こしたことから、一年生チームで二子玉川学園高校野球部との練習試合を行う。 ピッチャーで打撃センスもある江夏卓、キャッチャーでホームランバッターの河埜拓哉をはじめ、メンバーは野球推薦で集められたエリート揃い。ただし素行は悪く試合中にベンチで煙草を吸い、ラフプレーを好んで行い、チームプレーもなっていない。練習試合では途中で二子玉川学園高校の顧問川藤幸一に叱りつけられた。 練習試合では二子玉川学園高校に負けたが、夏の地区予選では三回戦で二子玉川学園高校と再戦。チームプレーのできるチームに成長しており二子玉川学園高校を苦戦させた。
笹崎高校野球部 (ささざきこうこうやきゅうぶ)
『ROOKIES』に登場する高校の野球部。監督は千葉。1970年代は強豪校であり、地元江戸川区の誇りだったが、ここ数年は一回戦負けの常連にまで凋落していた。かつて甲子園出場を経験したOBである千葉が監督を務めるようになってから再び勢いを取り戻してきた。1970年代はがむしゃらな超攻撃型野球がスタイルだったが、現在は徹底した管理野球。 例えばピッチャーは怪我を避けるためバッティング時にはどんな局面でも勝負を避けるなど、個人の意地や思いは殺してでもチームのために尽くすことが求められる。メンバーはフォークを武器とするピッチャーの川上貞治、ドラフトの目玉と目されるスラッガーの別所真澄などがいる。 夏の地区予選三回戦で二子玉川学園高校と対戦。途中二子玉川学園高校の顧問川藤幸一が笹崎高校ベンチに乗り込んで千葉に意見するというハプニングもあったが、延長戦まで戦い二子玉川学園高校に敗れている。
書誌情報
ROOKIES 14巻 集英社〈集英社文庫(コミック版)〉
第1巻
(2007-09-14発行、 978-4086186629)
第2巻
(2007-09-14発行、 978-4086186636)
第3巻
(2007-10-18発行、 978-4086186643)
第4巻
(2007-10-18発行、 978-4086186650)
第5巻
(2007-11-16発行、 978-4086186667)
第6巻
(2007-11-16発行、 978-4086186674)
第7巻
(2007-12-13発行、 978-4086186681)
第8巻
(2007-12-13発行、 978-4086186698)
第9巻
(2008-01-18発行、 978-4086186704)
第10巻
(2008-01-18発行、 978-4086186711)
第11巻
(2008-02-15発行、 978-4086186728)
第12巻
(2008-02-15発行、 978-4086186735)
第13巻
(2008-03-18発行、 978-4086186742)
第14巻
(2008-03-18発行、 978-4086186759)