比呂美を救えるか? 『アイアムアヒーロー』の現状。478 Pt.

ナニかが壊れる音がする――。妄想の中でしか現実に勝てず、そんな自分に付き合ってくれる彼女との仲にも、不安と不満が募る。
ある日、現実の世界が壊れ、姿を変えていく……。漫画家のアシスタントである鈴木英雄35歳が居るのは、日常と非日常、平凡と狂気が交差する“異形”の世界だった。
突然始まるZQN（ゾキュン）と呼ばれるゾンビによる恐怖の世界で鈴木英雄が繰り広げる物語。

コミックは現在20巻まで発売。2016年に実写映画化もされた。

完全に変貌した世界。
ZQNとなった感染者は世界中に溢れ、普通の人間は何処かに隠れているのだろうか。見つけることはできない。
世界中で同時多発的に発生したZQN。彼らには何かしらの統一した意志があるようだ。
スペイン・バルセロナでは、サグラダ・ファミリアの上に謎の建造物が現れている。
それは多くのZQN達が集合して出来上がったものだった。ZQNに感染した者たちは、急速に融合を繰り返し、様々な形態へと変貌を遂げていく。最早人型のZQNは少数となりつつあった。
バルセロナを歩き回る、アタマと脚だけのZQN。人間のように冷静な思考回路を持つそれは、何かしらの意志に、誘導されるように動き続ける。

これから世界はどうなっていくのか。

やがて彼は植物となって大地に根を下ろし、ながい思考の果てへと旅立っていく。

日本では英雄たちが巨大ZQNに追いかけられていた。
自転車を必死でこぐ英雄が目指すのは、英雄たちに気が付き救助に駆け付けた一艘の釣り船。
間一髪逃げることができた英雄と比呂美。疲れ果て眠りに落ちる英雄と同じ夢をみたことから、比呂美は確信する。

「英雄君も感染しているかもしれない。」

他者との思考の共有。それがZQNに感染した人間が持つ共通の症状だったのだ。
そして比呂美は自分の意志が小田を殺したことに気づく。ゴミ回収車にはねられた時、小田は死ねばいいと思った。その思いが小さな赤ん坊のZQNに伝わり、噛みつかせることにつながったんだと。
巨大ZQNは比呂美を追って移動している。彼らは比呂美に語りかけている「一緒に行こう」と。
己が小田を殺したことに気づいた比呂美は、巨大ZQNに自ら捕まりにいくのだった。

20巻目にして遂に、ZQNの知性が描かれた。今まではただ感染して暴れるゾンビのような存在だったZQNだが、彼らが目指しているものが何なのかが明らかになりつつある。

ひとつになること

それがZQNの目的だと語られている。

果たして巨大ZQNに取り込まれた比呂美を、助け出す事ができるのだろうか。
いよいよ佳境に入った『アイアムアヒーロー』。今後も見逃せない。