ツンデレ魔女と、保育士の青年が心通わせるハートフルストーリー。舞台は1955年の南仏。主人公・リュリュは魔女一族の生き残りだ。彼女は魔力を封じ込めるための首輪をはめられ、小高い丘の上にある古城の施設に半ば軟禁状態で暮らしていた。ある日その施設に新人保育士として、カミロ・バーキュアスなる青年がやってくる。一度も行ったことのない外の世界へ憧れを抱いていたリュリュは、カミロを利用して外に出ようと禁じられている魔法を彼にかけてしまう。
施設では園長と看護師のニコルがリュリュを監視しており、魔法でイタズラをする彼女に手を焼いていた。カミロは外に出たいと訴える彼女をあっさり連れ出し、街や海を案内する。そして初めての光景に感動を覚える彼女に、大人になるための予習だと一瞬首輪を外すのだった。彼は魔法に怯むことなく、唯一の理解者としてリュリュに接し、彼女もまた全幅の信頼を寄せるように。意地っ張りな性格が災いし当初は衝突していたニコルたちとも誤解が解け、心を通わせてゆく。外界を知らず心を閉ざしがちだったリュリュが、カミロと出会ったことによって人として成長してゆくさまにほのぼのとした気持ちにさせられる。彼女の心に芽生える淡い恋心の行方も温かく見守りたい。
国を守るべくかりそめの奴隷となった姫と、彼女を操る少年が織りなすバトルファンタジー。王都リバレーディアに暮らす隻眼の少年・レゾは貧しい靴磨きだ。庶民の彼にも温かな眼差しを向ける姫・エクレルトリカを唯一の拠り所にしている。ある日、姫を反逆者として指名手配するという勅令が街中を駆けめぐり、うっかり彼女を庇う発言をしたレゾもまた追われる身に。追手をかい潜り家に戻った彼を待ち受けていたのは、ベッドに横たわる姫の姿だった。
姫は突然、父である王から逆賊の疑いをかけられ、命からがら逃げてきたのだ。王の横には仮面をつけた謎の男・サリバンがいたという。彼こそが王を操る黒幕だと確信した二人は、国を救う方法を探るためリバレーディアを出ることに。そのために姫が下した決断は、レゾの奴隷になることだった。魔道具「覇者の腕輪」をレゾがつけることにより、彼女の身体は首輪や足枷をつけた奴隷の姿となる。二人は行く先々で仲間を見つけ、サリバンと対決してゆく。姫を守りたいと思う一方、目的のため心を鬼にして彼女を傷つけるレゾが痛々しい。国を守るため高潔な精神を保つ姫の強さと潔さには心打たれる。サリバンの真の目的と闘いの行方にも注目したい。
首輪を付けられた男女が、生き残りをかけ殺人に手を染めてゆくサバイバル・サスペンス。主人公の少年・高橋孝太郎は、目が覚めると見知らぬ廃墟の一室にいた。首には南京錠のついた鎖が巻き付いており、傍らには同じ首輪を付けられ眠る少女・北沢愛がいた。高橋が声をかけると北沢はいきなり彼にビンタを見舞う。高橋は学校に行く途中襲われ連れてこられたことを話すと、彼女も同じ境遇だったことが判明。状況を把握する間もなく、謎の指令が彼らに向けられる。
高橋がスマホを覗くと、ロッカーを開けるよう謎のボイスメッセージが届く。そこには、注射器と男の写真が入っていた。声の主曰く、制限時間内に写真の男に注射器をさせとのこと。なんと、二人の首輪の中にも同じ薬品が仕込まれており、いつでも彼らを処分できると脅される。二人は廃墟を彷徨い、写真の男と格闘のすえ注射器をさすことに成功。薬品のため見るも無惨に身体が解け、男は絶命する。その後も高橋たちは指令通りに溶解殺人を繰り返すが、同じ首輪をする東野と松屋と名乗る男女に出会い脱出すべく共闘を図る。彼らが何の目的で選ばれたのか、首輪や薬品の謎などミステリー要素満載だ。人間の身体が溶ける描写がグロテスクかつリアルであり、骨太な物語をより引き立たせている。
屈強なオーガと奴隷の少女のふれあいと、彼女をめぐる闘いを描いた異世界ファンタジー。舞台は、巨大な鬼の一族であるオーガの村。その中でも、泣く子も黙るほどの屈強なオーガ・ガディスは襲った馬車の中から人間の少女を見つける。貧しい身なりに首輪をはめた奴隷の彼女を食べるため果物で釣ったはいいものの、満面の笑みを浮かべてお礼をする姿に食べることにためらいをおぼえる。ガディスは少女を仕方なく村に連れ帰るが、実は彼女には重大な秘密が隠されていた。
村に着いた少女は献身的に仕事を手伝い、ガディスを戸惑わせる。彼の連れ合いであるミザリもまた、薄汚れた彼女を風呂に入れるなどして面倒をみるうちに絆されてゆく。彼らはすっかり少女に夢中になり、オーガと人間のスローライフが始まるかと思われた。だがその矢先、オーガから彼女を救おうとした半魔の行商人の手によって彼らは引き離されてしまう。それがきっかけで彼女はさまざまな敵から命を狙われるが、背後には元王宮魔術師の男・ウォルフガングの陰謀が渦巻いていた。恨みを持つウォルフガングと、彼女を守りたいガディスたちとの間で壮絶な闘いが起こる。ただの奴隷だと思われた少女の意外な正体と、屈強なオーガとの対比が面白い。屈託のない彼女の無邪気さと芯の強さに心癒される。
江戸を舞台に、首輪をはめられた少年と彼を守る剣士が妖魔と闘う戦国バトルファンタジー。主人公・神寄(かより)は幼い頃、父にはめられた醜い首輪のため鬼子と忌み嫌われ、をはめられたことがきっかけで母を亡くし、孤独に生きてきた「人撃ち」の少年だ。生前の母が江戸城の奥女中をしていたことから、神寄は父を探し出し復讐するためにまだ徳川吉宗が支配する江戸へと向かう。しかし、江戸に入るや否や羽の生えた巨大な妖魔が彼に襲い掛かる。そんな彼の前に現れたのは、屈強な狂武士・乙春(おばる)だった。
乙春は、神寄の首輪の模様と同じ紋が首元にあった。父の手先と勘違いし反発する彼を尻目に、乙春は甚大な力で妖魔を撃退する。神寄は連行され、世話係の大岡越前守忠相(おおおかえちぜんのかみただすけ)から、神寄は徳川吉宗の息子であると告げられる。大岡越前曰く、吉宗は江戸を襲う銀の羽の妖魔集団「天一坊」を封じ込めたが、再び復活した彼らを倒すには神寄の首輪に秘められた魔力が必要であるとのこと。当初は吉宗に恨みを持っていた神寄だが、自らの首輪を外すべく乙春と共に天一坊たちと闘い、諸国を巡ってゆく。本作は、呪われし少年だった神寄と、彼に忠誠を誓い寄り添う乙春の絆の物語である。ぜひ最後まで見届けてほしい。