とある農業大学を舞台に、二人の女子が学生生活をエンジョイするドタバタコメディ。主人公・枝下桜(しだれさくら)は地元の「田舎大学」に入学するが、周囲を杉の木に囲まれているせいで花粉症によって学生が次々と脱落していく過酷な環境である。一方、桜のクラスメイトである色葉(いろは)もみじは東京出身の都会っ子だ。入学早々、もみじにさまざまな試練が襲いかかる。続編に『農学女子 追試!』『農学女子 豊作!』がある。
もみじは都会の大学のようなキャンパスライフに憧れていたが、現実は異なるものだった。どこまでも続く野山の風景、午後6時に閉まる商店街、おしゃれに気を使わない桜たちにショックを受ける。おまけにキャンパスには家畜が自由に動き回り、カエルや猪なども遭遇し放題だ。もみじは動物たちに怯えつつ、時にはミニスカで凍死しそうになったり、時には野山で遭難しかけたりという試練を乗り越えながら一人前の農大生になっていく。桜もまた、環境に不慣れなもみじを助けつつも、農作物との物々交換で学食をゲットしたり、ターザンロープで登校するなど個性的な大学生活を謳歌する。なかなか想像のつかない田舎の農業大学の一コマがリアルに描かれており、牧歌的な読後感を与えてくれるだろう。
脱サラ農家の男性と異世界から迷い込んだ女騎士の同居生活を描いたほのぼのスローライフ漫画。主人公・佐伯莞爾(かんじ)は山間部にある三山村でひとり農業を営んでいる。かつては都会で働くエリートサラリーマンだったが、両親の死をきっかけに脱サラし、故郷に戻ってきたのだった。7月のある日、莞爾は農作業を終え自宅で晩酌をしようとしたところ、激しく扉を叩く音に気付く。扉を開けた彼の目に飛び込んできたのは、西洋風の甲冑を身に纏った女騎士だった。
女性は「クリス」ことクリスティーナ・ブリュンヒルデ・フォン・メルヴィスと名乗り、一晩泊めて欲しいと懇願する。莞爾はクリスをコスプレの外国人と勘違いするものの、ただならぬ様子の彼女を見て宿を提供する。クリスは異世界であるエウリーデ王国の者であり、「蛮族」に襲われ逃げているところを魔法により現代の日本に飛ばされたという。彼女の身の上話を半信半疑で聞いていた莞爾であったが、行くあてのないクリスを匿い同居生活を送ることに。クリスもまた、農業を手伝ううちに少しずつ生活に慣れていく。現代の農家というシチュエーションに、クリスを取り巻く中世風の空気観が妙にマッチしている。少しずつ心を通わせていく二人の恋の行方からも目が離せない。
東北の寒村を舞台に、農業に携わる家族の暮らしとふれあいを描いたヒューマンストーリー。主人公・杉村太平は東京育ちの活発な少年だ。ある日、父・良平の「田舎に帰って農業をやる」との一声で、彼の生まれ故郷である秋田県日暮村に引っ越すことに。それから2年、太平は村の暮らしにもすっかり慣れ、正月は妹・ミズナと共に雪原を駆け回り、隣家の「オド」こと高山政太郎の家にお年玉をもらいに行くのであった。関連作に『おらが村』『ふるさと』がある。
行きしなに二人は、電柱にしがみつくオドの姿を見かける。何と、地震が来たことを自分の体調不良のせいだと勘違いしていたのだ。太平から真実を伝えられ、恥ずかしさの余りお年玉を2倍にすると宣言するオドであった。太平たちはオドたち高山家に助けられながら、夏は堆肥作りに挑戦したり、冬は雪の上をそりで堆肥引き(こえひき)したりと農業の担い手になっていく。一方、村おこしに奔走していた良平は、誰も作らなくなっていた幻の農作物「日暮れカブ」の復活に心血を注いでいた。本作は東北の一般的な農村ののどかな描写が見どころである一方、冬の出稼ぎによる人不足や嫁不足・害獣など農家が抱える深刻な問題もクローズアップされている。農業について考える契機を与える一冊だ。
とある高校を舞台に、「農業」がきっかけで出会った男女が繰り広げる学園ラブコメディ。星ヶ島高校は普通科と農業科、二つの科があるがそれぞれの生徒たちは対立していた。農業科に在籍する1年生・山野やえは「MYくわ」を常に持ち歩くほど活発な農業ガールだ。ある日、やえは学校の畑を何者かが踏み荒らした跡を見つける。普通科の生徒の仕業に違いないと確信した彼女は、放課後に待ち伏せて問い詰めることに。しかし、畑に現れたのは意外な人物であった。
やえの前に現れたのは、普通科の生徒・草柳(くさやなぎ)豊であった。踏み荒らされた畑に心を痛め、注意喚起の看板を置きに来たのである。その姿に一目惚れのやえだが、なんと彼は普通科の中で「微笑みの貴公子」と呼ばれるモテ男子であることが判明する。しかし、草柳はスマートな見た目とは裏腹に、植物を愛する心優しい少年だった。やえの幼なじみで彼女に密かに思いを寄せる農業科男子・大根青巳(おおねあおみ)の邪魔や、普通科の女子たちの嫉妬に負けず二人は少しずつ距離を縮めていく。本作は、ドタバタコメディの要素もありながら、農業や植物の豆知識も豊富で興味深い。恋の行方もさることながら、随所に現れる二人の農業への熱い思いを感じることのできる一冊だ。
異世界に「転移」した青年が、農村での生活を謳歌するスローライフコメディ。主人公・街尾火楽(まちおひらく)は、大学卒業後ブラック企業に勤めたことで病に倒れ、僅か39歳でこの世を去る。死後、神により異世界に転移することを告げられた火楽は3つの願いを叶えてもらうことに。健康な身体・人の少ない場所・農業をやることを所望した彼に、神は「万能農具」を授け異世界へと送り出す。火楽がたどり着いた場所は、誰もいない森の中であった。
火楽は神によって、人っ子ひとりおらず食べ物も飲み物もない場所に飛ばされていた。戸惑いながらも火楽は試しに万能農具を使うと、思いのほか楽に地面を耕すことができることに気づく。おまけに万能農具は斧やドリルなどに形を変えられるため、それを駆使して寝床や水を確保することに成功する。耕した畑から芽が出ているのを見て、自ら開墾したこの地を守ることを決意する火楽であった。猛獣のつがいを手なづけ仲間にしたり、吸血鬼や天使族など異種族から来た女性たちを娶るなどやりたい放題ながら、火楽は村長として村を大きくしてゆく。前世で苦労した分、すべて彼の思い通りに事が運ぶのが痛快だ。次々と村に集まってくる異種族たちとのふれあいやドタバタ劇も面白い。