世界において人類が未踏破の場所はなくなった。
そんな時、南海の孤島ベオルスカに巨大な縦穴、アビスが発見された。穴の直径は1キロほどもあり、その深さは未だに解っていない。なんらかの影響で、地上からの観測ができず、穴の中を探るには人間が自らの力で探索するしかない。
やがて穴の回りには世界中から底を目指す人々が集まり、オースの街の原型が出来上がっていった。
それが今から1900年前のこと。
物語の主人公はリコという小さな女の子。母親は有名な探窟家。リコは覚えていないのだが、小さい時に穴の底に潜ったまま戻ってくることはなかった。そういった両親を亡くした孤児たちは、組合が運営する孤児院で育てられている。
リコの夢は母親と同じ白笛の探窟家となり、アビスの底を目指す事。そんなある日、リコにチャンスが訪れる。アビスのごく浅い場所だが、初めて探窟する許可が下りたのだ。
WEBコミックガンマにて連載中。コミックは最新4巻まで発売中。
白笛を目指すリコ。
しかし道は果てしなく険しい。この笛というのは、探窟家の階級を表すもの。
リコは見習いの赤笛だが、他に一人前の蒼笛、師範代となる月笛、達人の黒笛、そしてヒトの限界を超えてアビスへと挑み続ける白笛と分けられている。白笛は国家的な英雄で、リコの母親は殲滅のライザと呼ばれる伝説の白笛だったのだ。
だが、理想と現実は違う。
初めての探窟で、リコはいきなり命の危機を迎える。巨大な生物に襲われ喰われると思った瞬間、謎の光が生物を撃退した。
その光は倒れていた小さな少年ロボットが放つものだった。
記憶のないロボットの少年にリコはレグと名前を付ける。
調べてみると母親が遺した手紙に描かれていた謎のシルエットに、レグはそっくりだった。
レグはアビスの深部から登ってきたのだろうか? 手紙には短くこう書かれていた。
奈良の底で待つ
リコや孤児院の仲間たち、レグも良いのだが、3巻で登場するキャラクター、ナナチがとても魅力的だと思う。
黎明卿ボンドルドの人体実験によって、アビスの呪いをすべて親友のミーティーへと強制的に引き受けさせた結果、ボンドルド曰く、アビスの祝福だけを受ける事に成功したナナチは『奇跡の子』と呼ばれるようになった。
その姿は人間ではなく、うさぎの着ぐるみをきたような、ふわふわのもこもこの姿なのだが、それがいい。
とてもかわいい。そのもふもふ具合が良くて、リコもレグもナナチをとても可愛がる。その扱いは、まるでペットのよう。
鳴き声もまたかわいいのである。完全にヒロインポジションをリコから奪っている。
鋼より硬い猛毒の針を持つタマウガチの毒にやられて死にかけたリコを救ったナナチ。毒を排除して、レグが切り落とそうとした腕を再生するために、植えられた水キノコを切除するのだが、どうやら水キノコには腕からの神経が繋がっているようで、激痛がリコを襲う。そして当然のごとくの失禁……。
冒険の途中、アビスの何処にでも咲いているトコシエソウに擬態するクオンガタリに寄生された探窟家が見つかる。
幼虫を脳へ寄生させ、犠牲者を生餌とするクオンガタリ。描写がエグい。目の奥でもぞもぞと動く幼虫。脳を侵され痛みも何も感じないまま、とにかくただ生きている犠牲者。
可愛い絵柄にも関わらず、冒険の非情な現実を見事に描く本作。現実の前に命は簡単に消えるというリアルさが凄い。
最新4巻ではついに、宿敵と対面する。そしてアビス第5層の呪いにさらされるリコ。実験台として利用されるレグ。宿敵の人でなし度などなど見どころは満載だ。
リコやレグと一緒に一緒にアビスの底を目指そう。