とにかく歌がアツい、『マクロスF』の世界1,168 Pt.

「マクロス」シリーズの3作目にあたり、2008年にTVアニメが放送された。
マクロス25周年と銘打たれた記念作品で、前作『マクロス7』から13年後の公開となり、河森監督自身がシリーズの集大成とした作品。

『マクロスF』の舞台となるのは西暦2059年、初代『超時空要塞マクロス』で描かれた第一次星間大戦からちょうど50年後の世界。
第一次星間大戦でゼントラーディとは和解し共に繁栄を誓い合うことになったのだが、フロンティアの世界ではバジュラと呼ばれる謎の異星生命体に襲撃される。ヒロインであるランカ・リーの歌の力には、バジュラを抑制する働きがあることがわかり、アイドルとしてデビューした彼女の歌の能力を使ってバジュラと戦うことになっていく。
マクロスギャラクシーの歌姫、シェリル・ノームと彼女達を守る民間軍事プロバイダーS.M.S所属の早乙女アルトの三角関係も見ものだ。

TVシリーズは、全25話で構成され、劇場版2作品もその後公開された大人気作品。

本作の最大の魅力は音楽である。それを裏付けるのは、音楽スタッフに菅野よう子を迎え入れた点だ。
菅野よう子はマクロスのOVA作品、『マクロスプラス』でアニメ音楽界に入ってきた「マクロス」シリーズとは縁の深い音楽家で、他にも「カウボーイビバップ」、「攻殻機動隊」、「創世のアクエリオン」といった数多くの人気アニメ作品の音楽を担当してきた。
菅野よう子の音楽は、作曲はもちろん編曲に非常に特徴があり、またジャンルもクラシックやテクノ、民族音楽などを融合させた独特な音楽のため、一度聴いたら忘れないインパクトがある。
これが『マクロスF』でも遺憾なく発揮され、約5000通の応募からオーディションで選ばれた新人・中島愛による正統派アイドル的なランカ・リーの楽曲と、既に歌手デビューをしていたMay’nによるDIVAのような圧倒的な歌唱力をあわせたMay’nの楽曲の対比がまた面白く、シングルはオリコンチャートの上位に続々と食い込むヒットを記録した。その楽曲数は「マクロス」シリーズ随一である。

前述した、楽曲の大ヒットに加え、アニメ作品ではDVDとBlu-ray Discが同時発売された最初の作品である。
3DCGを使用した美麗な映像のため、BDの売り上げが好調で、それまではまだまだ普及率で及ばなかったDVDの販売枚数を上回り、年間のBD売り上げの一位も記録したほど。これにはCGにこだわり続けた河森監督の功績あってのことといえるだろう。

その他、「一番くじ」に見られるようなキャラクターグッズ展開やコラボイベントなども盛んに行われ、商業的にも大きな成功を収めた作品だ。

「マクロス」シリーズは、一見、何から見たら良いのか、ロボットものは難しい、などと思うかもしれないが、ストーリーだけでなく、歌という観点からも楽しめるので、気軽に観てみてほしい。
本作でも『超時空要塞マクロス』のリン・ミンメイが歌う曲が登場するなどの繋がりが感じられるので、他のシリーズを観てみたくなるはずだ。