有頂天家族

有頂天家族

森見登美彦の小説『有頂天家族』のコミカライズ作品。京都に暮らす狸の下鴨矢三郎が、ほかの狸たちや人間の弁天、天狗の如意ヶ嶽薬師坊との交流で多忙な日々を送りつつ、亡き父親である下鴨総一郎の死の謎にせまっていく姿を描いたファンタジー。「月刊コミックZERO-SUM」2018年10月号から連載の作品。

正式名称
有頂天家族
ふりがな
うちょうてんかぞく
原作者
森見 登美彦
作画
ジャンル
ファンタジー
 
動物擬人化
関連商品
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あらすじ

第1巻

京都に暮らす狸の下鴨矢三郎は、得意の化け術を駆使して、日々を面白おかしく暮らしている。矢三郎が神通力を失った天狗の如意ヶ嶽薬師坊と、狸から恐れられる弁天の橋渡し役として走り回る中、矢三郎の兄である下鴨矢一郎は、次代の狸界のリーダーである偽右衛門を選出するための、偽右衛門選挙の準備に奔走していた。対抗馬である夷川早雲は、矢三郎たちの叔父でありながらもなぜか下鴨家を憎み、息子である金閣銀閣と共にさまざまな嫌がらせを仕掛けてくる。

第2巻

五山の送り火が近づき、下鴨矢三郎たちは前年、金閣たちに焼き落とされた空飛ぶ納涼船の代わりを探していた。如意ヶ嶽薬師坊の持つ空飛ぶ茶室「薬師坊の奥座敷」を借りることを思いつくが、薬師坊の奥座敷は弁天に下げ渡されており、さらに弁天は貸してもいいが、もし壊したら金曜倶楽部で座敷芸を披露するように求め、それがもし務まらなければ、年末に狸鍋にすると矢三郎を脅す。戦々恐々としつつ送り火当日を迎えた矢三郎たちだが、やはり金閣たちから打ち上げ花火による攻撃を受け、薬師坊の奥座敷を粉々にしてしまう。

第3巻

下鴨矢三郎弁天から逃げている数か月のあいだ、世話係の不在をいいことに一度も風呂に入っていなかった如意ヶ嶽薬師坊を風呂に入れるため、矢三郎たち兄弟は銭湯へとやって来た。そこで如意ヶ嶽薬師坊から生前の下鴨総一郎の思い出を聞き、父親との思い出に浸る。しかしその最中、偽右衛門選挙から手を引くようにと、金閣銀閣が脅しをかけに姿を現す。下鴨矢一郎は早々に金閣、銀閣を退けるものの、その後、金閣から総一郎の死の原因について思いがけない言葉を聞くこととなる。

第4巻

偽右衛門選挙の当日、下鴨矢三郎夷川海星の様子がおかしいことに気づき、下鴨矢二郎のもとへ相談に訪れていた。その時、突然に雷雨と暴風が吹き荒れる。雷が苦手な母親、下鴨桃仙を救うために下鴨神社へと戻った矢三郎だがそこにすでに桃仙の姿はなく、海星は矢三郎に、桃仙が夷川の手下たちにさらわれたことを告げる。さらに夷川早雲が、下鴨矢一郎金曜倶楽部に差し出すために捕縛したこと、かつて下鴨総一郎を金曜倶楽部に提供したのも早雲であることを告白し、救えなかったと懺悔する。

関連作品

小説

本作『有頂天家族』は森見登美彦の小説『有頂天家族』を原作としている。また、本作に登場する淀川長太郎は、森見登美彦の小説『四畳半王国見聞録』に、金曜倶楽部の大黒は同じく森見登美彦の小説『夜は短し歩けよ乙女』にも登場している。

TVアニメ

2013年7月から本作『有頂天家族』のTVアニメ版『有頂天家族』がKBS京都ほかで放送された。TVアニメの内容は本作と漫画版とほぼ同様だが、漫画版では朱硝子がアルミ製の扉を開けた先にあるのに対し、TVアニメ版の朱硝子はモデルとなったバーの入り口そっくりであるなど、細かい差異が見られる。下鴨矢三郎を櫻井孝宏、弁天を能登麻美子、如意ヶ嶽薬師坊を梅津秀行が演じている。

登場人物・キャラクター

下鴨 矢三郎 (しもがも やさぶろう)

下鴨神社付近に暮らす狸で、下鴨総一郎と下鴨桃仙の三男。主に男子大学生くらいの人間に化けることが多いが、女子高校生や、さまざまな人物に化けることができる。総一郎から頭の悪さだけを受け継ぎ、化けることだけが取り柄だと陰口を叩かれているが、如意ヶ嶽薬師坊の世話係を務めていること、弁天と正面から話せる程度には気に入られていることから、一部の狸からは一目を置かれている。かつて魔王杉の事件を引き起こしたことを反省して、自ら如意ヶ嶽薬師坊の門下を脱し、数年のあいだ会っていなかった。弁天が初恋の相手だが、弁天が人間であり、下鴨矢三郎自身が狸であるという理由から失恋している。ふだんはボサボサ髪の冴えない男子大学生の姿であることから「腐れ大学生」という通り名がある。

弁天 (べんてん)

如意ヶ嶽薬師坊の弟子で人間の女性。かつて琵琶湖のほとりにいたところを如意ヶ嶽薬師坊にさらわれ、半ば強引に弟子にされた。道行く人々が振り返るほどの美人で、非常に色香がある。しかし、冷血で非情な面があるために狸たちからは恐れられており、その姿を見るだけで冷や汗が止まらなくなる狸も多い。西崎源右衛門商店の奥にある海に沈んだ洋館を、拠点の一つにしている。金曜倶楽部に所属してからは「弁天」の名で通っているが、本名は「鈴木聡美」。

如意ヶ嶽薬師坊 (にょいがたけやくしぼう)

天狗の老齢な男性。頭頂部の禿げた白髪頭で口周りに髭を蓄えており、赤玉ポートワインを愛飲していることから「赤玉先生」とも呼ばれている。魔王杉の事件が起きて以来、神通力を失ってしまい、鞍馬天狗たちとの陣取り合戦にも敗れてコーポ枡形に引きこもるようになった。ただし、この事件を下鴨矢三郎と弁天が引き起こしたことも承知したうえで二人を許しており、矢三郎はそれを負い目に感じている。大の風呂嫌いで、うまく言いくるめなければ何か月も風呂に入らない。高慢でひねくれ者なため、正直に物を言えない性格で、下鴨家一同を「毛玉」と称し、事あるごとに文句を言いながらも愛している様子がみられる。矢三郎と弁天の師匠であり、弁天に恋しており度々ラブレターを届けているが、弁天からは素っ気ない態度で接されている。

下鴨 矢一郎 (しもがも やいちろう)

下鴨神社付近に暮らす狸で、下鴨総一郎と下鴨桃仙の長男。人間に化けるときは前頭部の髪を逆立て、和装に身を包んだ成人男性の姿になる。総一郎から責任感だけを受け継いだといわれており、生まじめさだけが取り柄で器が小さいと思われている。総一郎を尊敬し、立派に跡を継ぐことが息子としての役割だと考えているために次代の偽右衛門を狙っており、律儀に狸界の風潮にも従っているため、むやみに姿を変えたりしない。偽右衛門選挙にも積極的で誠実に取り組んでおり、夷川早雲のように賄賂を贈るような行為を不快に思っている。ふだんは冷静だが、パニックに陥るととたんにポンコツになり、怒りが頂点に達すると虎の姿に化けるため、「鴨虎」という通り名を持っている。

下鴨 矢二郎 (しもがも やじろう)

下鴨神社付近に暮らす狸で、下鴨総一郎と下鴨桃仙の次男。以前は肩までの髪をオールバックにした成人男性の姿に化けることが多かったが、総一郎の死をきっかけにカエルの姿に化け、六道珍皇寺の古井戸の中に引きこもっている。総一郎からのんきさだけを受け継いだといわれており、洛中において最もやる気のない狸として知られ、酒を飲んでやる気に満ちているとき以外はほとんど馬鹿だと思われている。また、酒が回った際には「偽叡山電鉄」に化けて市内を走り回り、洛中の人間を震撼させていた。現在はカエルの姿のまま、元の姿に戻ることができない。実は夷川海星に片思いしており、その苦しい胸の内を総一郎だけには相談していた。

下鴨 矢四郎 (しもがも やしろう)

下鴨神社付近に暮らす狸で、下鴨総一郎と下鴨桃仙の四男。人間に化けるときは男子小学生くらいの姿になる。総一郎から純真さだけを受け継いだといわれており、非常に気が弱く心優しい性格をしている。底抜けの繊細さが弱点でもあり、少し威圧されるとすぐに尻尾を出してしまうことから「尻尾丸出し君」という通り名でも呼ばれている。微弱な発電能力があり、携帯電話の充電などを行うことができる。社会勉強の名目で偽電気ブランの製造工場で働いているが、金閣、銀閣からいじめられている。

下鴨 桃仙 (しもがも とうせん)

下鴨神社付近に暮らす狸で、下鴨矢三郎たち四兄弟の母親であり、下鴨総一郎の妻。宝塚歌劇団の熱烈なファンで、宝塚大劇場にも通っている。主に長い髪をポニーテールにした割烹着姿の女性に化けることが多いが、夕暮れ時になると宝塚歌劇風の美青年に化けてビリヤード場などに出向いている。また、その姿から「黒服の王子」という通り名がある。何よりも雷が嫌いで、雷鳴を聞くと化けの皮が剥がれてしまう。非常に愛情深く、矢三郎たち兄弟全員が、総一郎の跡を継ぐにふさわしい立派な狸であると信じて疑っていない。かつて淀川長太郎に命を救われたことから、とても恩を感じている。

下鴨 総一郎 (しもがも そういちろう)

下鴨神社付近に暮らす狸で、下鴨矢三郎たち四姉弟の父親であり、下鴨桃仙の夫。人間に化けるときは恰幅のいい和装の男性の姿になり、顎全体に豊かな髭を蓄えていた。人格者として知られており、狸たちからの人望が厚く、如意ヶ嶽薬師坊も盟友として扱うなど一目を置いていたが、金曜倶楽部によって年末の狸鍋にされ、この世を去った。下鴨矢二郎とはよく酒を飲むほど仲がよく、矢二郎にだけ「矢三郎が一番自分によく似ている」と語っていた。

夷川 早雲 (えびすがわ そううん)

夷川発電所付近に暮らす狸で、金閣たちの父親。下鴨総一郎の弟ということもあり、下鴨矢三郎たちにとっては叔父にあたるが、なぜか下鴨家を目の敵にし、非常に憎んでいる。人間に化けるときは目の下にクマのある、恰幅のいい和装の男性の姿になる。偽電気ブランの売り上げもあり、非常に裕福で寿老人をはじめとする人間相手にも商売を行っている。しかし、狸のあいだでは、夷川早雲は私腹を肥やすことばかりを考えており、偽右衛門になったら狸界が危機に陥ると煙たがっている者も多い。偽右衛門選挙にあたっては次代の偽右衛門となるために、欲深い狸たちに酒を振る舞ったり、金銭を渡したりと画策している。また、たくさんの狸を「夷川親衛隊」と名づけて手下にしており、下鴨家への嫌がらせなどはほとんどこの親衛隊にやらせている。

金閣 (きんかく)

夷川発電所付近に暮らす狸で、夷川早雲の次男であり夷川海星の兄。銀閣とは双子でもある。人間に化けるときはマッシュルームボブヘアで、前髪が真っすぐ切りそろえられた男子大学生くらいの姿になる。「樋口一葉」を秋の寂しさを表した四字熟語だと銀閣に教えるなど、知ったかぶりが多い。

銀閣 (ぎんかく)

夷川発電所付近に暮らす狸で、夷川早雲の三男であり夷川海星の兄。金閣とは双子でもある。人間に化けるときはマッシュルームボブヘアで、前髪を左側にまとめた男子大学生くらいの姿になる。金閣を尊敬しており、金閣から教わった「樋口一葉」を秋の寂しさを表した四字熟語だと信じている。

夷川 海星 (えびすがわ かいせい)

夷川発電所付近に暮らす狸で、夷川早雲の娘であり、かつて下鴨矢三郎の許嫁だった。なんらかの事情があって矢三郎の前でその姿を見せることはないが、人間に化けるときは大きめのカーディガンを羽織った女子高校生の姿になる。矢三郎に対しては非常に口が悪く素っ気ないが、下鴨矢二郎が狸の姿に戻れなくなったと知った時には一日中泣き通すなど、とても心優しく、下鴨桃仙からも気に入られている。

八坂 平太郎 (やさか へいたろう)

八坂神社付近に暮らす狸で、現在偽右衛門を務めている老齢な男性。瘦せた体型で、外ハネの白髪をしている。偽右衛門の役目を面倒くさく思っており、あくまで代理だと話している。早く正式な偽右衛門を決定させ、八坂平太郎自身は南の島にバカンスに行こうと考えているため、大切な会合の際にもアロハシャツを着用して、その気迫を表している。

岩屋山金光坊 (いわやさんきんこうぼう)

天狗の老齢な男性。狸に優しく穏やかな性格で、黒ぶち眼鏡を掛けている。現在は岩屋山天狗の地位を二代目にゆずり、大坂の日本橋で中古カメラ店を趣味で営んでいる。移動には空を飛ぶよりも、京阪電車の方が快適だと公言しており、如意ヶ嶽薬師坊からは天狗らしくないと文句を言われることも多い。如意ヶ嶽薬師坊の昔なじみであり、ひねくれ者の如意ヶ嶽薬師坊に率直に物を言える数少ない人物でもある。

淀川 長太郎 (よどがわ ちょうたろう)

人間の初老の男性で、大学で教鞭を執る農学博士。金曜倶楽部では「布袋」と呼ばれている。かつて前足をケガして動けなくなった下鴨桃仙を助けたことがあり、桃仙のかわいらしさ、律儀なしぐさに胸を打たれて以来、狸を心から愛するようになった。非常に食い意地が張っており、昆虫をはじめとしてどんな動植物でも食べる。愛するからこそ食べ、さらに食べるからにはおいしく食べてやるのが食う者の義務だという信念を持っており、どうせなら死んだあとは狸に食われてその栄養になりたいと考えている。下鴨総一郎と最後に話した人物でもあり、その最期の言葉を下鴨矢三郎に語って聞かせた。矢三郎は淀川長太郎を、総一郎と非常に似ていると好感を持っている。

寿老人 (じゅろうじん)

人間の老齢な男性で、金曜倶楽部のリーダー的な存在。背中までの長い白髪に、長い髭を蓄えた仙人のような容姿をしている。弁天を金曜倶楽部にスカウトした人物でもあるが、高利貸しであるという以外素性が知れず、怪しげな技も使える。夷川早雲を狸と知りつつ懇意にしており、金曜倶楽部の年末の会合に偽電気ブランを大量に買いつけるなどしている。

へそ石様 (へそいしさま)

非常に高名な狸で、京都の頂法寺にある石に化け続けている。あまりにも狸としての正体を現さないため、本当はただの石なのではないかとも考えられていたが、幼少時の下鴨矢三郎が松葉を燃した煙でいぶしたところ、正体を現したため、再び人々にあがめられるようになった。偽右衛門選挙前になると、狸界の長の代替わりを報告するために、候補の狸とその支援者たちがへそ石様のもとへ集まる決まりがある。

集団・組織

金曜倶楽部 (きんようくらぶ)

弁天が所属している秘密結社。大正時代から続いており、月に一度、金曜日に七福神の名前を持つ会員七人が会合を開くことからその名前が付けられた。年末の会合では必ず狸鍋を食べるという習慣があることから、狸たちからは蛇蝎(だかつ)の如く嫌われている。かつては谷崎潤一郎も所属していたとされる。

場所

コーポ枡形 (こーぽますがた)

如意ヶ嶽薬師坊が暮らしている、かなり築年数のたった木造のボロアパート。枡形商店街の近くにあり、赤くぬられた塀が目印となっている。部屋は四畳半の狭い畳じきとなっており、廊下は人が歩くと軋むほどに古びている。

朱硝子 (あかがらす)

狸が集まるバーで、新京極にある。経営者も狸であり、主に偽電気ブランや赤玉ポートワインを提供している。入店するには通りに面しているアルミ製の扉を開け、地下に入らなければならない。客のほとんどは狸だが、たまに弁天も飲みに訪れ、店内を戦慄させている。店主は下鴨矢三郎が弁天と深くかかわりすぎているため、いつか狸鍋にされるのではないかと心配している。

西崎源右衛門商店 (にしざきげんえもんしょうてん)

三条高倉にある扇屋で、弁天が拠点の一つにしている場所の入り口となっている。店の奥へ入ると深い海があり、その沖に大正時代に貿易商が建てた洋館が、時計台部分を残して沈んでいる。近海にクジラなども住んでおり、弁天は西崎源右衛門商店に滞在しているあいだはリゾート地のような過ごし方をしている。

その他キーワード

偽右衛門 (にせえもん)

京都に住むすべての狸を束ねる、ただ一匹の狸が名乗ることを許される名跡。偽右衛門選挙で選出される決まりで、先代は下鴨総一郎が務め、多くの狸から尊敬されていた。現在は八坂平太郎が偽右衛門として京都の狸を取りまとめているが、あくまでも代理を名乗っている。平太郎自身が偽右衛門の役目を面倒がっていることから偽右衛門選挙が行われており、下鴨矢一郎と夷川早雲が候補者に名乗りを上げている。

偽電気ブラン (にせでんきぶらん)

電気ブランを模した酒。夷川発電所の裏にある製造工場を夷川早雲が経営しており、偽電気ブランを密造している。狸たちから愛飲されており、朱硝子で提供されているほか、寿老人の持ち込みによって金曜倶楽部の面々も口にすることがある。

風神雷神の扇 (ふうじんらいじんのおうぎ)

弁天が持っている扇。かつては如意ヶ嶽薬師坊がつねに懐中に忍ばせていたが、弁天の笑顔見たさに弁天へ下げ渡された。風神の描かれた面で大きくあおげば大風が吹き、雷神の描かれた面で大きくあおげば雷雨を起こすことができる。

薬師坊の奥座敷 (やくしぼうのおくざしき)

天狗の使う乗り物の一種。茶室の形をしており、茶壺に赤玉ポートワインを注ぐことで、それを燃料にして空を浮遊することができる。かつては如意ヶ嶽薬師坊の持ち物だったが、弁天の笑顔見たさに弁天へ下げ渡された。前年の五山の送り火の際に、金閣たちの打ち上げた花火で納涼船を焼き落とされた下鴨矢三郎たちが、納涼船の代わりに借り受けようと如意ヶ嶽薬師坊と弁天に交渉した。

偽右衛門選挙 (にせえもんせんきょ)

京都に住む狸の代表である偽右衛門を選出するための選挙。候補者が複数現れると行われ、選挙が本格化する直前に候補者と支援者がへそ石様のもとに集まり、選挙の開催を報告する決まりがある。また、選挙と言いつつもすべての狸による投票が行われるわけではなく、長老狸たちの推薦で決定する。先代の偽右衛門である下鴨総一郎は夷川早雲との選挙に勝利している。また現在は、下鴨矢一郎と早雲が次代の偽右衛門を競っている。

魔王杉の事件 (まおうすぎのじけん)

如意ヶ嶽薬師坊が神通力を失った事件。当時、西の方で起こった大地震で右往左往する人間を笑いに行くといった如意ヶ嶽薬師坊の悪趣味を諫めるために、下鴨矢三郎と弁天が共謀して起こしたもの。如意ヶ嶽薬師坊が遠出する際によく休憩場所として使用する魔王杉に矢三郎が化け、どちらが本物の魔王杉か判別できなかった如意ヶ嶽薬師坊が転落した。それ以来、如意ヶ嶽薬師坊はほとんど飛ぶことができなくなり、神通力も失ってしまった。

五山の送り火 (ござんのおくりび)

大文字をはじめとする京都の夏の風物詩。狸たちは毎年この日の夜に、浮かれる人間たちに調子を合わせて空飛ぶ納涼船を出し、五山の送り火を楽しむ伝統があり、各家庭の家長は布袋に扮して七福神の宝船を模した宴会を行う。下鴨矢三郎たちの所持していた納涼船は前年の五山の送り火の際、金閣たちの打ち上げた花火によって燃え落ちたため、薬師坊の奥座敷を代替品とした。

偽如意ヶ嶽事件 (にせにょいがたけじけん)

かつて下鴨総一郎が起こした事件。如意ヶ嶽薬師坊とケンカを起こした鞍馬天狗が如意ヶ嶽に入り込んでは、如意ヶ嶽薬師坊に対して侮辱的な行為を繰り返していることを知った総一郎が、如意ヶ嶽そのものに化け、入山した鞍馬天狗たちを化かして一泡吹かせた。ただし1週間以上も化け続けたことから、その後1か月も総一郎は寝込むことになった。

クレジット

原作

森見 登美彦

キャラクター原案

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