来世は他人がいい

来世は他人がいい

作者の小西明日翔が『春の呪い』の次に発表した作品。鉄男名義でWEB上に発表していた作品のリメイク。現代日本、極道の世界が舞台。ヤクザの家に生まれた染井吉乃と深山霧島、二人の奇妙な恋愛関係を描いたバイオレンスコメディ。講談社「アフタヌーン」2017年10月号から連載。niconico×ダ・ヴィンチ「次にくるマンガ大賞2018」コミックス部門第1位受賞。宝島社「このマンガがすごい! 2019」オトコ編第8位受賞。

正式名称
来世は他人がいい
ふりがな
らいせはたにんがいい
作者
ジャンル
恋愛
レーベル
アフタヌーンKC(講談社)
巻数
既刊8巻
関連商品
Amazon 楽天

極道の孫同士の婚約から始まる、スリルと笑いの娯楽作品

ある日突然、関西最大の指定暴力団四代目桐ヶ谷組直系染井組組長の染井蓮二と、関東最大の指定暴力団五代目砥草会直系深山一家の深山萼総長が兄弟盃(さかずき)を交わす。関東・関西の巨頭の和睦が進む中、染井蓮二の孫の染井吉乃と深山総長の孫の深山霧島の婚約が勝手に進行する。吉乃は突然のことに憤慨するが、流されるまま東京の深山一家の家で暮らすことになる。優しく爽やかなイケメンぶりを発揮する霧島だったが、街で吉乃をナンパした輩に対し、異常なまでの暴力を振るう。そして、吉乃に対しても本性をさらけ出すが、吉乃もまた普通の女子高生ではなかった。極道の孫同士である二人の緊張感あふれる関係と、はみ出し者たちが繰り広げるスリルと笑いが本作の魅力である。

キレると超怖い吉乃×笑顔のドMモンスター霧島

霧島には二面性があり本心が見えないモンスターである。1週間も経たないうちに吉乃に飽きたといい、自分のために身体を売って金を稼いできてくれと笑顔で話す。わがまま女に振り回されたいという願望があったが、吉乃は期待外れだったという。霧島は人生をメチャクチャにされたいという破滅的で危険な男だった。一方、吉乃は平穏な暮らしを望んでいるが、根っこは極道の血を引く女である。「霧島を死ぬほど惚(ほ)れさせ、1年経ったら容赦なく捨てて帰ってこい」と祖父にけしかけられ覚悟を決める。2週間後、身体を売れと言われた通り腎臓の片方を売ってきたという吉乃は、霧島の眼の前に400万円の札束を置く。そして「調子に乗ってたら人生メチャクチャにしたる」と啖呵(たんか)をきった。それを聞いた霧島は、すっかり吉乃に惚れてしまい、以降彼女をストーカーのように追い回す。こうして二人のクレイジーな関係が始まった。

地獄の三角関係

大阪にいた頃、吉乃が何かと頼りにしていたのが鳥葦翔真である。翔真は、染井組組長、蓮二の事実上の養子であり、吉乃の2歳年上の家族である。吉乃のことを大切に思う翔真は、霧島の奇行に悩む吉乃のことを心配しており、必要であれば霧島を殺すことまで考えている。一方の霧島も、吉乃と親しすぎる翔真の存在を苦々しく思っており、翔真に対して痛烈な皮肉を放つ。吉乃をめぐり、翔真と霧島は会うたびにバチバチの火花を飛ばしあうのである。作者の商業デビュー作『二人は底辺』では、吉乃と翔真の中学生時代の出会いが描かれており、本作のスピンオフのような内容である。本作の構想が先にあり、読み切りの依頼があったとき、吉乃と霧島では1話だけの物語が作りにくいと考え、吉乃と翔真を主人公にした経緯があるという。

登場人物・キャラクター

染井 吉乃 (そめい よしの)

高校3年生の女子。ロングヘアーが特徴で、周囲からは「梅田のホステス」などと呼ばれている隙のないタイプの美女。大阪で生まれ育ち、大阪弁を話す。関西最大の指定暴力団四代目桐ヶ谷組直系染井組組長の染井蓮二を祖父に持つ。生まれる前に交通事故で父を亡くしている。芯は強いが流されやすい性格。周囲を振り回しがちな祖父を反面教師に育ったため、ヤクザの一家で育ったにもかかわらず人柄は普通。祖父が旧知の仲である関東の暴力団・深山一家の総長、深山萼と兄弟盃を結んだことをきっかけに、深山の息子の深山霧島との婚約を勝手に結んできてしまう。憤慨するが、結局流されて東京の霧島の家で暮らすことなる。半年間は平穏に暮らすが、霧島がドMクソ野郎の本性を表したことに反発し、霧島に復讐することを決意。しかし、そのことで霧島から本気で惚れられることになってしまう。

深山 霧島 (みやま きりしま)

高校3年生の男子。関東最大の指定暴力団である五代目砥草会直系の深山一家総長の深山萼の孫。総長の萼は実際は大伯父だが、小5のとき上級生と同級生20人の身体中の骨をへし折った事件を起こし、総長に預けられた。眉目秀麗で成績もよく、幼いころから空手を習っており、文武両道を地で行く少年。そのため、ヤクザの息子ということで周囲から一歩引かれてはいるものの評価は高い。常に笑顔を絶やさず、優男そうに見えるが、一方で犯罪行為にまったく躊躇(ちゅうちょ)することなく、平気で他人に凄惨な暴力を振るえる二面性がある。さらに、自分の周囲を巻き込むほど破滅的な目に会いたいという被虐願望の持ち主。許嫁(いいなずけ)になった染井吉乃のことは、当初は暴力団組長の孫娘であることから甘やかされて育ったわがまま娘だろうと思い込み、自分のことを好き勝手に振り回してくれるだろうと期待していた。 そういった意味では普通に育っていた吉乃のことを一度は見限り、身体を売ることを強要したほどだったが、その後自分への復讐を宣言した吉乃に本気で惚れてしまう。以降、吉乃の気を引こうと躍起になり、吉乃からはますます気味悪く思われている。

染井 蓮二 (そめい れんじ)

関西最大の指定暴力団四代目桐ヶ谷組直系染井組組長で、染井吉乃の祖父。深山一家総長深山萼と兄弟盃を結んだことをきっかけに、勝手に深山総長の息子・深山霧島と自分の孫娘との婚約を計画し、それを報道関係者にも教えまわるほど調子のいい性格。その上、吉乃を東京に送ろうとし、トントン拍子で深山一家の家に吉乃が住むように話を進めてしまう。 吉乃と霧島が上手く行っていないことを知ると「一年掛けて惚れさせたあとで捨てろ」と電話で吉乃に申し付ける。

深山 萼 (みやま がく)

関東最大の指定暴力団である五代目砥草会直系の深山一家の総長。物語冒頭で、関西最大の指定暴力団四代目桐ヶ谷組直系染井組組長・染井蓮二と兄弟盃を結んだことで、関係者の間でも話題になっている存在。染井蓮二とは旧知の仲で、染井吉乃のことは「蓮二が女になったよう」と評する。

(たちばな)

深山一家の構成員の一人。スキンヘッドで目つきの鋭い男性。深山霧島の兄貴分に当たる人物。言葉遣いは乱暴だが、霧島からは「いい人」といわれている。砥草会の三次団体である赤座興行会長の娘がさらわれた事件を受け、同じくらいの年齢の染井吉乃を預かっていることで、万が一にも事件に巻き込まれることがないよう、しばらく霧島と行動をともにするよう吉乃に申し付ける。

書誌情報

来世は他人がいい 8巻 講談社〈アフタヌーンKC〉

第1巻

(2017-11-22発行、 978-4065103760)

第2巻

(2018-07-23発行、 978-4065116609)

第3巻

(2019-05-23発行、 978-4065148358)

第4巻

(2020-06-23発行、 978-4065197714)

第5巻

(2021-05-21発行、 978-4065233306)

第6巻

(2022-03-23発行、 978-4065268636)

第7巻

(2023-01-23発行、 978-4065299197)

第8巻

(2023-10-23発行、 978-4065333129)

SHARE
EC
Amazon
logo