天草諸島を舞台にした、従兄妹の甘酸っぱい恋愛物語
本作は熊本県の天草諸島を舞台に、田舎暮らしの豊かな情景を描いている。思春期真っただ中の望が、スキンシップ好きな従妹の爽に振り回されるコミカルな展開が見どころとなっている。従兄妹ならではの微妙な距離感が、甘酸っぱい恋愛の雰囲気を一層引き立てている。
無邪気な甘えと揺れ動く思春期の心情
小学6年生の爽は、日に焼けた褐色の肌が印象的な元気いっぱいの少女。非常に人懐っこく、時には「距離感がバグっている」と言われるほどスキンシップが激しい。幼さゆえに異性に対する恥じらいが少なく、従兄の望には純粋な好意を素直に表現し、膝の上でゲームをしたり、いっしょにテレビを見たりと、いつもべったり甘えている。一方で、望が自分のことを好きなのは当然だと信じており、「私のことが好きだよね?」と無邪気に問いかける小悪魔的な一面も持ち合わせている。物語が進むにつれて精神的にも成長し、望との触れ合いに対して年相応の戸惑いや羞恥心を感じるなど、思春期特有の揺れ動く心情が丁寧に描かれている。
熊本弁と地元スポット満載の田舎生活
本作には、天草四郎像といった観光名所から、地元のスーパーや海水浴場など、生活に密着したさまざまなスポットが登場する。登場人物たちが交わす温かみのある熊本弁も魅力の一つで、読者の理解を助ける解説も添えられている。特に、東京出身の主人公、望の視点を通じて、都会と熊本とのギャップや意外な共通点がリアルに描かれており、まるで天草で暮らしているかのような「擬似的な田舎生活」を存分に味わうことができる。
登場人物・キャラクター
望 (のぞむ)
東京出身の中学2年生の男子。年齢は14歳。一見すると慎重な性格に見えるが、実際は考えるより先に行動してしまうお人好しな一面を持つ。女性に対して素直に褒め言葉を口にするなど、無自覚の天然ジゴロでもある。夏休みを過ごすため、熊本に住む叔父の家を訪れ、数年ぶりに小学6年生の従妹、爽と再会する。天真爛漫でスキンシップが激しい爽に振り回され、毎日ドキドキさせられている。当初は年上としての威厳を保とうとしていたが、次第に彼女の存在が心の拠り所となり、スキンシップがないと寂しさを感じるようになる。両親は仕事で多忙を極め、ジュニアアイドルとして活動する妹の葵も寮暮らしのため、家族とのつながりが希薄な環境で育った。実は夏休み前に学校で起きたある事件が原因で心に深い傷を負い、精神的に追い詰められた状態で熊本へやってきた。その後、父親の独断で転校手続きが進められ、望の知らぬ間に夏休み以降も熊本で暮らすことになる。
爽 (そう)
熊本出身の小学6年生の女子。年齢は12歳で、望の従妹。健康的な褐色の肌を持つ。活発でエネルギッシュな性格で、つねに動き回り、I字バランスも難なくこなす優れた運動神経の持ち主。一方で、母親のしつけの影響から、行儀や姿勢がきちんとしており、家事全般もそつなくこなす家庭的な一面もある。ふだんは熊本弁を話すが、望と話す時など状況に応じて標準語を使い分けている。夏休みに帰省してきた望と再会して以来、彼にべったりと付きまとい、近すぎる距離感や過剰なスキンシップでいつも望を振り回している。幼いために好意と恋愛感情の区別がまだはっきりしていないが、望に対する思いは自覚しており、ほかの女子に取られたくないという強い独占欲を持っている。同級生から「おとこ女」とからかわれる容姿と性格にコンプレックスを抱いているため、自分の女性としての魅力には無自覚なところがある。
書誌情報
いとこのこ 4巻 KADOKAWA〈ドラゴンコミックスエイジ〉
第1巻
(2024-05-09発行、978-4040754253)
第2巻
(2024-09-09発行、978-4040755557)
第3巻
(2025-03-07発行、978-4040758428)
第4巻
(2025-09-09発行、978-4040760902)







