お慕い申し上げます

お慕い申し上げます

お寺の中で繰り広げられる三角関係の恋愛やライバル関係を主軸に、色欲や嫉妬、執着といった煩悩に苦悩しつつ、生死と無常を見つめる物語。仏教や僧侶、寺院の置かれる現状も大きな割合で描かれている。

正式名称
お慕い申し上げます
ふりがな
おしたいもうしあげます
作者
ジャンル
宗教
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概要・あらすじ

祥願寺の跡継ぎである清玄は、立派な僧侶になるため妻帯はしないという高い志と色欲の間で、悶々と悩む日々を送っていた。そんな折、檀家からの見合い話を断れず、以前からのファンであった日本代表マラソンランナーである清沢節子とお見合いをすることになった。清玄は心揺れながらも縁談を断るが、節子は自らの暗い感情からくる悩みを住職に相談した際に聞かされた説法に心を動かされ、その日のうちに祥願寺へ弟子入りする。

清玄は表面上は僧侶として節子に説法しつつも、内心は戸惑い、恋心と性欲に悶々とする。そんななか、清玄の幼なじみにしてライバルでもある清徹が、他の寺から1年半ぶりに戻ってきた。こうして、それぞれが抱える事情と感情から、3人は複雑な三角関係を構築していくことになる。

登場人物・キャラクター

清玄 (せいげん)

祥願寺の跡取りで、現在は副住職を務めている。本名は「佐伯清玄」。太眉と垂れぎみの大きな目が特徴。真摯に仏の教えに向き合おうと、妻帯はしないと決心しているものの、若さゆえに煩悩に負けてセックスやオナニーをしては、そのたびに後悔している。中学生の頃、清沢節子が走る姿に強く心を惹かれて、彼女の載った雑誌を集めていた。 弟子入りしてきた節子には僧侶として真面目に仏の教えを説くものの、自身は節子への想いを捨てられず恋心や性欲に悶々としている。清徹とは幼稚園からの幼なじみで、優秀な清徹に苦手意識がある。檀家には少し頼りなく思われている。

清沢 節子 (きよざわ せつこ)

長い黒髪の美人で、左目の下にほくろがある。元オリンピック日本代表のマラソン選手だったが、ライバルの山本恵に勝てず、走ることをやめた。山本へのねたみそねみに苦しみ、救いを求めて寺へ嫁入りにくるが、清玄に断られ破談となる。その後、悩みを聞いてくれた佐伯峰博に影響され、祥願寺へ住み込みで弟子入りする。 1年半ぶりに祥願寺へ戻った清徹にキスをされてから、清徹に惹かれるようになる。

清徹 (せいてつ)

祥願寺の僧で、清玄とは幼稚園からの幼なじみ。檀家である高木家の次男で、本名は「高木徹」。細い眉と切れ長のつり目が特徴。幼少時から抱いていた死への恐怖と向き合うために、僧侶となった。縁故のある寺へ手伝いに行っていたが、1年半ぶりに祥願寺に戻ってきた。頭も顔も良く、女性からも好かれる。

佐伯 峰博 (さえき ほうはく)

祥願寺の住職を務める人物で、清玄にとっては祖父にあたる。僧位は大僧正。垂れた眉に糸のような細い目、福耳を持つ飄々とした小柄な好々爺。その言葉は清玄をはじめ、清沢節子や清徹に大きな影響を与える。

佐伯 秀子 (さえき ひでこ)

祥願寺の役員。佐伯峰博の娘で、清玄にとっては母親にあたる。峰博と同じく小柄で、髪型は眉上で前髪を切りそろえたボブ。清沢節子が清玄の嫁になるものだと思っており、檀家たちにもそのように紹介した。

佐伯 琴美 (さえき ことみ)

清玄の妹で、佐伯秀子の娘にあたる。ロングヘアで清玄と同じく垂れ目の少女。清玄と清沢節子のお見合いの際、別室から望遠鏡で様子をのぞいていた。節子の現役時代の目を気に入っており、現在も悪くない目をしていると評している。

おばあさま

清玄の祖母で、佐伯峰博の妻にあたる。髪型はおかっぱボブで、きっちりとした和装。園芸を好み、寺の庭や私的な庭を整えている。私的な庭の掃除を清沢節子と清徹に頼むが、清徹に寺の私物化であると断られる。

福田 照恵 (ふくだ しょうえ)

一人娘として産まれ、父親から剛衛寺の住職を継いだ。剃髪しており、大きな垂れ目をしている。手伝いに来ていた清徹を気に入って、婿として迎えたいと思っている。ジョギング中に倒れた清沢節子を寺に運びこみ介抱した。

高木 一 (たかぎ はじめ)

檀家である高木家の長男で、清徹の兄ながら清徹とは似ていない。相談役の父親の代理として役員会へ出席した。飄々とした性格で、意見は遠慮なく口にする。実家から離れて生活していたが、清徹が出家したことで呼び戻された。

山本 恵 (やまもと めぐみ)

元オリンピック日本代表、金メダリストのマラソン選手。清沢節子とはチームメイトで、世間からはライバル視されていたが、現役時代、節子は山本恵に一度も勝つことができなかった。現在は衆議院議員として活躍している。

ヒロエ

清玄の友人である三河屋の息子の祖母。小学生だった清玄が巣から落ちて死んだヒナを供養していた際、バイクで通りかかり会話をした。死後の世界などまっぴらだと言っていたが、古い付き合いの佐伯峰博の寺へ、亡くなる前に戒名を受け取りにきていた。

ねたみちゃん、そねみちゃん

清沢節子の体から湧いて出ては消える、ねたみやそねみ、感情の昂りが具象化したもの。節子の心象風景の中にも登場する。大きさは拳大から口より小さいものまであり、二つ分けにして両側で結んだお下げのような髪型に、子供のような体型をしている。人間には視認されず、声も聞こえない。

場所

祥願寺 (しょうがんじ)

承安3年(1173年)に創建された寺院。市の重要文化財に指定されており、十一面観音像が安置されている。清玄をはじめとした佐伯家の人々や清徹が寺族として暮らしており、のちに弟子入りした清沢節子もともに寝起きするようになる。

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