フリーカメラマンが仏教学院に入学
物撮り専門のフリーカメラマンである善行は、東日本大震災による経済の低迷やデジタルカメラの普及の影響で、長い間厳しい状況に置かれていた。そんな折、叔母の法子から、彼女の兄であり善行の伯父にあたる智志の体調が優れないことを知らされる。智志は石川県にある善福寺の住職を務めているが、後継ぎがいないため、もしものことがあれば善福寺が廃寺になってしまう。法子はその事態を避けるため、善行を後継者候補にしようと決意し、彼女が学費を負担するという条件で関東仏教学院への進学を勧める。カメラマンとして行き詰まりを感じていた善行は、仏教の知識がないことに不安を抱きつつも、入学面接に臨み、みごと合格を果たす。こうして関東仏教学院に入学した善行は、カメラマンとしての仕事と久しぶりの学生生活を両立させることになる。
築地本願寺に併設された関東仏教学院
善行が通う関東仏教学院は、築地本願寺に併設された仏教専門の教育機関で、「東仏」の愛称で広く知られている。この学院に入学するためには特別な資格や知識は必要なく、学生の年齢層は18歳から70歳までと幅広い。入学後は、1年間をかけて夜間授業やレポート形式で仏教の基礎を学ぶ。そして、翌年の春に「得度」と呼ばれる修行試験に合格することで、卒業と同時に住職の資格を取得することができる。授業を受ける際の服装や髪型は自由だが、得度の際には指定された法衣を着用し、男性は坊主頭に、女性は髪を後ろで束ねる必要がある。また、仕事との両立も考慮されており、ほかの大学との併学も認められている。
関東仏教学院本科の生徒たち
善行が通う関東仏教学院本科には、現役の女子大学生である日野灯や、東京大学の印度哲学科を卒業した加賀民生、かつて関西の企業に勤務していた星川など、年齢も経歴も異なる個性的な生徒が集まっている。学生には社交的な人が多く、飲み会を開いたり、夏休みに共同でボランティア活動に参加したりと、授業以外でも積極的に交流を深めている。善行以外の生徒は全員、仏教に関する知識が豊富で、最初は戸惑っていた善行も彼らの助けを借りながら、やがて一人前の僧侶にふさわしい知識を身につけていく。そんな中、善行は灯に一目惚れしてしまうが、年齢差を気にしてその気持ちを表に出さないように努めている。しかし、一部の学生にはその思いが見抜かれており、善行の恋路を温かく見守られている。
登場人物・キャラクター
藤井 善行 (ふじい よしゆき)
関東仏教学院の本科に在籍している男性。年齢は38歳。クラスメイトからは「ゼンギョーさん」の愛称で呼ばれている。長年、物撮り専門のフリーカメラマンを生業にしていたが、叔母の法子からの依頼を受けて関東仏教学院に入学した。生真面目な性格で、少し内向的で要領が悪いため、ほかの学生たちにからかわれることも多い。また、コンプレックスを抱えており、思い切った行動を取ることを苦手にしている。しかし、いざという時には男気を見せる勇気や、他者の短所を受け入れる寛容さも持ち合わせているため、内面を重視する人々からは好かれやすい。カメラマンとしての仕事に誇りを持ち、関東仏教学院に通いながらも、仕事の依頼をこなしている。
日野 灯 (ひの あかり)
関東仏教学院の本科に在籍している女子。年齢は20歳。住職の家庭に生まれ育ち、昼間はほかの大学で、夜は関東仏教学院で勉学に励んでいる。「住職の子は泣いてはいけない」という信念を持ち、幼少期から家族に涙を見せたことがなく、母親は既に他界し、父親の余命もわずかという状況でも、その信念は揺るぎない。デジタルやハイテク製品を好まず、善行のために清書したノートを用意するなど、几帳面で気配り上手な一面を見せる。また、写真に強い興味を抱いており、善行がカメラマンであることを知ると、写真の撮り方を教えてほしいと懇願するようになる。
クレジット
- 原作