お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件

不摂生な生活を送っていた高校1年生の藤宮周と、その隣人である学校一の美少女、椎名真昼の甘く焦れったい恋を描く。マンションの隣人は、学校で「天使様」と呼ばれるほどの可憐な少女だが、周にとっては隣人以上の存在ではなかった。そんなある雨の日、公園のブランコに腰かけるずぶ濡れの真昼を見かけた周は、おせっかいを承知で半ば強引に差していた傘を手渡す。翌日、雨に濡れたせいで風邪を引いた周を見かねた真昼は、「借りを返す」といって周の部屋に入る。真昼に看病されながら、これが彼女との最初で最後の交流だと決めつけていた周だったが、その後二人は交流を深めていくことになる。

周の看病をした真昼は、汚い部屋とろくなものを食べていない様子に呆（あき）れ返ってしまう。素っ気なく振る舞う真昼だったが、不摂生が目に余るという理由で、周に手料理を差し入れするようになり、やがては彼の部屋で料理を作り一緒に食事をするようになる。さらに部屋の掃除も行うことになり、足を滑らせた真昼が周に抱きつくという赤面ハプニングも発生する。そんなある日、偶然真昼の誕生日が4日後だと知った周は、日頃の感謝を込めて可愛いクマのぬいぐるみをプレゼントする。それを大事そうに抱きしめる真昼の表情に、周は思わず頭を撫（な）でそうになってしまう。最初はお互いに異性としての関心はないと言い合っていた二人が、ともに過ごすうち、次第に心惹かれていく様子を丁寧に描いていく。

容姿端麗で成績優秀、「天使様」と呼ばれるほど可憐。それでいて驕（おご）らず謙虚でおとなしいため、真昼は男女ともにモテまくりの美少女である。しかし、素の真昼は少々毒舌で、周のだらしなさを遠慮なく責め立てる。しかしそれは悪意からではなく、口うるさい母親のおせっかいのようなものである。一方、天然で無防備なところもあり、不意をつかれると慌てて年相応の姿を見せたり、周の言葉に喜んであどけない笑顔を見せたりもする。そんな真昼と一緒にいることを、「心地良い」と感じる周だが、あくまで友人としての好意だと自分に言い聞かせていた。クリスマス、お正月と一緒にいる時間が増えるにつれ、お互いの心に特別な感情が育まれていくが、二人はそれを隠し続ける。そんな甘く焦れったい関係が本作の魅力である。