世界観
ゾンビとサバイバル生活が題材。突如起きた異変により、人類をはじめとする哺乳類たちが謎のウイルスに感染する。感染すると、腐敗した姿で非感染者を襲い、ゾンビのようになってしまう。幸運にも難を逃れた女子高生たちは高校の校舎内で学園生活部を設立し、前向きに生活しようとするが、さまざまな困難が彼女たちを襲う。
作品誕生のいきさつ
原作者の海法紀光は、コミックス1巻のあとがきで、食事中に浮かんだ「学校の教室で、楽しそうにお茶会をしている女の子。そして窓の外から見える荒れ果てた都市」という情景が本作『がっこうぐらし!』の着想の基になったと語っている。そのイメージを想像通りにイラストにしてくれる作画担当の千葉サドルとの出会い、自分の構想を面白いと感じてくれた人達との数々の縁によって本作が生まれたとのこと。
作品構成
本作『がっこうぐらし!』は現在、大きく分けて3部構成となっている。1部は主人公の丈槍由紀達が私立巡ヶ丘学院高校で生活する「高校編」、2部は私立巡ヶ丘学院高校を卒業後、新天地を目指す「卒業旅行編」、3部は聖イシドロス大学に到着後の生活を描く「大学編」となっている。時間経過による登場人物の精神状態の変化や、新たな仲間の登場による個々の関係性の変化を描く事で、作品全体の緊張感が保たれている。
あらすじ
第1巻
高校3年生の丈槍由紀は「学園生活部」という、その名の通り学校で食事や寝泊まりをしながら、生活する部活に所属している。設備の充実した校内、親しい生徒達、そして部員の恵飛須沢胡桃、若狭悠里、顧問を務める佐倉慈の三人と楽しく生活する由紀だったが、実はそれはすべて、由紀が見ている幻であった。現実の校内は、由紀が見ている世界とはまるで違う悲惨な状態となっており、校内には「かれら」と呼ばれるゾンビのような、動く人間の死体であふれかえっていた。さらに、慈はすでに亡くなっており、校内の生存者は由紀、胡桃、悠里の三人しかいない。しかし、胡桃と悠里は由紀を尊重して、あたかも慈がそこにいるかのように振る舞っていた。屋上で野菜を育て、家計簿をつけて資源を管理し、「かれら」が現れれば倒しながら、三人は何とか学園生活を続けていく。ある日三人は、自分達の生存を伝えるため、屋上から手紙を飛ばす事を思いつく。そしてそれは、ショッピングモール「リバーシティ・トロン」で避難生活を送る少女、直樹美紀の目に留まるのだった。
第2巻
高校2年生の直樹美紀は、ショッピングモール「リバーシティ・トロン」で、たった一人で避難生活を送っていた。かつての「リバーシティ・トロン」には美樹の友人である祠堂圭など、十一人の生存者が暮らしていたが、そのうちの一人が「かれら」に嚙まれた事により感染。その後、被害が拡大して合計で九人が死亡する事となった。さらに生き残った二人のうち、圭は先日「リバーシティ・トロン」を出て行ってしまったのである。
その頃、丈槍由紀達は、遠足と称して、校外に出る計画を立てていた。「かれら」であふれかえる駐車場からどうにか車を確保し、街を見て回る三人だったが、どこにも生存者はおらず、恵飛須沢胡桃の自宅にも誰もいなかった。やがて「リバーシティ・トロン」へ到着した三人は食料の確保やショッピングをして楽しむが、そこに「かれら」が現れ、三人は「リバーシティ・トロン」を出ようとする。しかし、そこで由紀が、自分達を追いかけて来る美紀の姿を発見する。「かれら」に囲まれた美紀をどうにか救助した由紀達は、気を失った美紀を連れ、四人で私立巡ヶ丘学院高校に戻る事にする。
第3巻
直樹美紀が目を覚まし、丈槍由紀達は、美紀を「学園生活部」の仮入部部員として受け入れる事にする。しかし美紀は、由紀の明るすぎる言動と、存在しないはずの佐倉慈の話に戸惑っていた。そんな美紀に、恵飛須沢胡桃と若狭悠里は事情を説明し、いっしょにいるあいだは由紀に合わせてほしいと頼む。しかし美紀は納得できず、ある日、由紀と二人きりになったのを機に、由紀が見ているのは幻であり、由紀は現実逃避していると指摘してしまう。由紀はそれを理解できず、一度は険悪な雰囲気になるが、初めて二人でじっくり話した事で、絆は深まるのであった。これにより美紀は「学園生活部」に正式に入部する決意をし、自分なりに由紀達と向き合っていく事にする。しかしその直後、美紀は図書室の本に挟まっていた「職員用緊急避難マニュアル」を発見する。マニュアルには私立巡ヶ丘学院高校の地下2階に非常避難区域があると書かれており、居ても立っても居られなくなった胡桃は、すぐさま単身現地へ向かう。しかしそこには「かれら」と化した慈の姿があった。動揺した胡桃は、腕を慈に嚙まれてしまう。
第4巻
恵飛須沢胡桃が「かれら」と化した佐倉慈に嚙まれ、重傷を負ってしまった。胡桃が「かれら」と化すのをただ見ているしかないのかと、青ざめる若狭悠里だったが、直樹美紀が「職員用緊急避難マニュアル」内に、私立巡ヶ丘学院高校の地下2階の非常避難区域には薬もある、という記述を発見した事により、今度は美紀が単身非常避難区域へ行く事になる。美紀は途中で慈と遭遇したものの、なんとか薬の獲得に成功し帰還。正気を失い、暴れていた胡桃も投薬により落ち着き、翌朝には起きて会話できるまでに回復するのだった。その後、胡桃の体調が戻ったのに合わせて、四人は改めて非常避難区域へ向かい、そこにあった大量の食糧や、避難生活に関する資料を回収する。そして今後の手掛かりとして四人は「ランダル・コーポレーション」という企業と「聖イシドロス大学」という大学の二つの場所の存在を知るのだった。
第5巻
「かれら」に嚙まれた恵飛須沢胡桃が回復し、丈槍由紀達は、いずれは私立巡ヶ丘学院高校から別の場所へ向かわなくてはならないと思いつつも、具体的な計画には至らずにいた。そんなある日、私立巡ヶ丘学院高校へ向かって突如ヘリコプターが飛んで来る。助けが来たのかと驚く由紀達であったが、ヘリコプターは学院を目の前にして墜落し、火災が発生してしまう。胡桃、直樹美紀が搭乗者の救助に向かい、由紀と若狭悠里は先に非常避難区域へ向かうという形で二手に分かれるが、胡桃達がたどり着いた時には、搭乗者はすでに死亡していた。二人は落胆し、一時は「かれら」に囲まれて危機に陥るものの、由紀のアシストにより、なんとか非常避難区域まで生還する。しかし、火災により校内の電気は使えなくなってしまい、由紀達はとうとう学院を去る事を余儀なくされるのだった。そこで胡桃達は「ランダル・コーポレーション」と「聖イシドロス大学」のどちらへ行くべきか迷うが、由紀が、自分達は高校を卒業するが、社会に出る前にまだやりたい事があると言った事から「企業」ではなく「大学」、つまり聖イシドロス大学へ向かう事を決意する。
第6巻
丈槍由紀達は、私立巡ヶ丘学院高校を去り、聖イシドロス大学へ向かう事になった。道中を卒業旅行に例えた由紀は大はしゃぎするが、恵飛須沢胡桃ら三人は、由紀が、胡桃がケガを負って以来少しずつ現実を受け入れ、前向きに変化している事に気づいていた。そんな四人の乗る車に、突如AMラジオが流れてくる。若い女性DJの声に、生存者がいると知った四人は喜ぶが、放送局と思われるラジオ局に四人がたどり着いた時には、DJはすでに「かれら」と化していた。さらにその直後、直樹美紀は、胡桃が薬によって完治したのではなく、嚙まれて以来体温が低下し、なぜか「かれら」に人間と認識されなくなっている事を知る。美紀がその事実にショックを受けていると、今度は、鞣河小学校に生存者がいるかもしれないという情報が舞い込む。結局そこには誰もいなかったが、このところ精神に不調をきたし、過去の辛い記憶を思い出してばかりいる若狭悠里に異変が起きる。悠里は由紀が「かれら」と化した小学生達に贈ったくまのぬいぐるみを、人間の少女、るーちゃんだと思い込み、拾って来てしまったのだ。
第7巻
丈槍由紀達は、とうとう聖イシドロス大学にたどり着く。しかしそこは生存者達が「穏健派」と「武闘派」に別れ、対立する場所であった。着いて早々「武闘派」に命を狙われた由紀達は「穏健派」が集まる「サークル」の面々に保護され、当面のあいだ、いっしょに生活する事になる。「サークル」代表の出口桐子から大学内の事情を聞いた由紀達は「サークル」の面々と親しくなり、平穏な日々を過ごす。しかし、ある夜直樹美紀は、理学部の前で突如謎の人物に声を掛けられる。そこで得た、この世界はすでにほぼ滅んでいるという情報にショックを受ける美紀だったが、そこに「ランダル・コーポレーション」の調査へ行く計画が持ち上がる。由紀達と桐子達を合わせた計七人は二手に別れ、現地へ向かうものと、大学に残るものに別れる事になるが、ぬいぐるみであるるーちゃんを八人目の人間だと思い込んだままの若狭悠里は、るーちゃんと共に大学に残ると言い出す。一方、その頃「武闘派」では、高上聯弥が「かれら」と化す事件が起きていた。
第8巻
頭護貴人を中心とする「武闘派」は、高上聯弥が「かれら」と化すように仕向けたのは「穏健派」の仕業であると考え、「穏健派」を襲う計画を立てていた。まず貴人、神持朱夏、右原篠生の三人が図書館にいる稜河原理瀬を拘束し、城下隆茂は外にいた恵飛須沢胡桃を狙うが、胡桃は自身が「かれら」に人間として認識されなくなっているのを利用して「かれら」の群れに隆茂を誘い込み、「かれら」に襲わせて殺害する。貴人達はそれからも喜来比嘉子、光里晶、出口桐子を捕獲し、偶然通りがかった丈槍由紀も連れていく。一方その頃、騒ぎに気づいた直樹美紀は、若狭悠里と二人で逃げようとするが、朱夏と篠生に見つかり、るーちゃんを奪われ、捨てられた状態で閉じ込められてしまう。
第9巻
「武闘派」によって閉じ込められた部屋で丈槍由紀、若狭悠里、直樹美紀は再会する。そこに右原篠生が現れ、高上聯弥を殺したのは由紀達三人のうちの誰なのかと尋ねるが、三人が否定すると、篠生はなぜか由紀達を解放して去っていく。そこに単身逃げ出した稜河原理瀬も合流するが、理瀬は腕にケガをしていた。そのため、由紀ら三人は理瀬を置いて二手に別れ、由紀と悠里は安全な場所で美紀を待ち、美紀は恵飛須沢胡桃とるーちゃんを探しに行く事となった。しかしその途中で、美紀は頭護貴人に遭遇する。貴人は「かれら」に嚙まれていないにもかかわらず体調を崩しており、存在しない解毒剤を求めて美紀達を探していたのである。しかし美紀には、貴人の感染に心当たりがあった。先日理学部にいる謎の人物と話した際、「かれら」の持つウイルスは嚙まれる事により感染するだけではなく、空気感染の恐れもあると聞いていたからである。貴人のスキをついて美紀は逃げ出すが、神持朱夏がサイレンを鳴らした事により、大学構内に大量の「かれら」が集まり始め、朱夏以外の生存者全員が危機に陥る。そんな中、由紀は胡桃を発見して救助し、悠里もるーちゃんを発見。悠里はそこにやって来た篠生と共に校内へ向かい、光里晶と合流した美紀も戻ろうとしていた。だが悠里、篠生、美紀、晶が揃ったところに貴人が再び現れ、美紀を殺そうとする。しかし篠生によって撃退された貴人は、観念して去っていく。そして貴人は、味方であるはずの朱夏に裏切られて殺される。そして朱夏は車で一人大学を去るが、そこを「かれら」に囲まれ、その生死は不明なまま、聖イシドロス大学にようやく平和が訪れるのだった。
特殊な描写
キャラクターによって、世界の見え方が大きく違うという特殊な描写がある。たとえば、丈槍由紀の目には荒廃した私立巡ヶ丘学院高校の校舎が、美しい通常の状態に見えるなど。また、その見え方の違いにより、「キャラクターAにとってキャラクターBは実在している。しかし、A以外のキャラクターにとってBは初めから存在していなかったり、生きていないものに見えているのではないか」という描写が随所にみられるのも作品の特徴。
単行本の装丁
コミックスカバー下の本体表紙には、「SCHOOL-LIVE! DESIGN WORKS」と題し、毎巻キャラクターのデザイン資料が掲載されている。基本的には各巻の背表紙に登場するキャラクターの資料が載っており、7巻は背表紙キャラクターの出口桐子だけでなく、喜来比嘉子、光里晶、稜河原理瀬の計4名分のデザインが掲載されている。
コラボレーション
ゲームソフト「ニトロプラス ブラスターズ -ヒロインズ インフィニット デュエル-」
2015年7月、アーケード用ゲーム「ニトロプラス ブラスターズ -ヒロインズ インフィニット デュエル-」とのコラボレーションとして、本作『がっこうぐらし!』の主人公丈槍由紀がゲーム中に登場した。内容はパートナーキャラクターとして由紀を選ぶと、援護技「クラスのみんな」を用いて彼女がサポートをしてくれるというもの。なお、由紀は「ニトロプラス ブラスターズ -ヒロインズ インフィニット デュエル-」のPlayStation4版とPlayStation3版にも登場している。
ソーシャルゲーム「グリモア ~私立グリモワール魔法学園~」
2016年2月、ソーシャルゲーム「グリモア ~私立グリモワール魔法学園~」とのコラボレーション企画が行われた。内容はアニメ版『がっこうぐらし!』をモチーフにした特別ステージが登場したり、本作『がっこうぐらし!』のキャラクターの限定カードや、本作のキャラクターと「グリモア ~私立グリモワール魔法学園~」が一緒に描かれた限定カードが登場し、ゲームに使用できるというもの。
タイアップ
2016年2月カラオケDAMとのタイアップ企画「がっこうぐらし!×DAM★ともプレゼント企画」が開催された。内容は、DAMのカラオケで、アニメ版のOP・ED曲でもある課題曲「ふ・れ・ん・ど・し・た・い」「アフターグロウ」を歌うと、5名に丈槍由紀役の水瀬いのりのサイン入りポスターが当たるというもの。期間中は、課題曲をLIVE DAM STADIUM、LIVE DAMのいずれかで歌うとアニメ映像も流れた。
メディアミックス
TVアニメ
2015年7月から9月にかけて、安藤正臣監督によるTVアニメ版が放送された。シリーズ構成を原作者である海法紀光、キャラクターデザインを飯塚晴子が担当している。キャストは丈槍由紀役を水瀬いのり、恵飛須沢胡桃役を小澤亜李、若狭悠里役をM・A・O、直樹美紀役を高橋李依が演じた。
公式アンソロジーコミック
2015年7月より、芳文社から公式アンソロジーコミックとして「がっこうぐらし!アンソロジーコミック」シリーズが刊行されている。「がっこうぐらし!アンソロジーコミック 穏」「がっこうぐらし!アンソロジーコミック 壊」「がっこうぐらし!アンソロジーコミック 極」などが発売されている。
webラジオ
2015年7月から12月にかけて、インターネットラジオステーション「音泉」でラジオ番組「こちらGSH 学園生活部・放送局」が放送された。パーソナリティは丈槍由紀役の水瀬いのりと、恵飛須沢胡桃役の小澤亜李が務めた。また、放送をまとめたCDが2015年9月と2016年1月に発売された。
ドラマCD
2015年8月14日、東京ビッグサイトにて開催されたコミックマーケット88でドラマCD版「夏休み編 ひとときの休日」が販売された。キャストはTVアニメ版と同じく丈槍由紀役を水瀬いのり、恵飛須沢胡桃役を小澤亜李、若狭悠里役をM・A・O、直樹美紀役を高橋李依が演じた。
登場人物・キャラクター
丈槍 由紀 (たけや ゆき)
私立巡ヶ丘学院高校3年C組に所属する女子生徒。桃色のボブヘアをヘアピンで留め、猫耳の付いた黒い帽子をかぶっている。部活動は学園生活部に所属しており、部内ではムードメーカ―的存在を担っている。のんびりとした天真爛漫な性格で、他の生徒に比べ、やや精神的に幼いところがある。特に異変後は精神的なショックに耐え切れず幼児退行し、1人だけ「校内が崩壊前の状態に見える」という特殊な視覚認識を持つようになってしまった。 地図を読むのが得意など、意外な場面で力を発揮し、しだいに現状と向き合うようになっていく。
恵飛須沢 胡桃 (えびすざわ くるみ)
私立巡ヶ丘学院高校に通う3年生の女子生徒。暗い紫色のストレートロングヘアをリボンでまとめツインテールにし、黒と白のボーダーの手袋をはめている。部活動は学園生活部に所属しており、護身用のシャベルでかれらを積極的に狩る役割を果たしている。活発で男勝りな性格で、男性のような口調で話す。常にシャベルを携行し、身体の一部のようになっていることから、丈槍由紀には「もうシャベルと結婚しちゃえば」と言われることも。 平和だった頃は、憧れの先輩と同じ陸上部に所属していた。
若狭 悠里 (わかさ ゆうり)
私立巡ヶ丘学院高校に通う3年生の女子生徒。紫がかった茶髪のストレートロングヘアを、左側の一部だけ輪っかにしてバレッタで留めている。カーディガンを羽織り、左目の下にほくろがあるのが特徴。部活動は学園生活部に所属し、部長を務めている。生真面目で母性的な性格で、部内でも家計簿をつけたり園芸活動を積極的に行い、学業がおろそかになりがちな他の部員に勉強を促し釘を刺すことも。 立場上、部の母親的存在として振る舞っているが、精神的には追い詰められてきている。「るーちゃん」という妹が1人いたが、異変後の生死は不明。
佐倉 慈 (さくら めぐみ)
私立巡ヶ丘学院高校の国語教師を務める若い女性。切りそろえた前髪に肩まで伸ばしたウェーヴ、そこからお尻のあたりまで伸ばしたストレートロングヘアを1つに結んでいる。おっとりとした穏やかな性格で、生徒たちからは「めぐねぇ」の愛称で親しまれている。学園生活部の顧問として常に丈槍由紀たちの傍におり、由紀に多くのアドバイスを授けている。 異変前、他の教師から職員用緊急避難マニュアルを受け取っていた。
直樹 美紀 (なおき みき)
私立巡ヶ丘学院高校2年B組に所属する女子生徒。ショッピングモール「リバーシティ・トロン」で避難生活を送っていたが、遠足に訪れた学園生活部員たちと出会い私立巡ヶ丘学院高校にやってくる。淡い茶色がかった灰色のショートカットヘアに、制服の下にタートルネックを着ているのが特徴。丈槍由紀たち学園生活部員より学年が下なためタイが青く、敬語で接する。 クールで合理的な性格だが、それゆえに由紀の奇妙な言動を見過ごせず、彼女が解離性同一性障害ではないかと捉えている。以前は友人の祠堂圭と行動をともにしていた。英語が得意。
祠堂 圭 (しどう けい)
私立巡ヶ丘学院高校に通う2年生の女子生徒。直樹美紀の友人で、異変当日は美紀とともにショッピングモール「リバーシティ・トロン」で買い物をしていた。前髪を真ん中で分け、ボブヘアをハーフアップにしている。異変当日は美紀とともに上の階へ避難したことで無事生存。美紀やリーダーたちとともに生存者グループを形成し、避難生活を送っていた。 しかし、ある日を境に笑わなくなり、美紀のもとを離れた。避難生活時はリーダーに憧れていた。
るーちゃん
鞣河小学校で若狭悠里が発見した少女。淡い茶色がかった灰色の髪を黒いボンボンの髪飾りでツーサイドアップにしている。その髪飾りから、頭に熊の耳が生えているように見えるのが特徴。発見時は極端に無口で自分の名前を言えなかったことから、悠里が実妹の愛称である「るーちゃん」と呼ぶようになった。謎の多い少女だが、学園生活部の中では悠里に次いで丈槍由紀もよく面倒を見ている。 悠里の回想に登場する、彼女の妹に非常によく似ている。
出口 桐子 (でぐち とうこ)
聖イシドロス大学情報科学部に所属する女子大学生。構内では「穏健派」に属しサークルの代表を務めている。腰のあたりまである灰色のロングヘアを1本の三つ編みにしてまとめ、眼鏡をかけているのが特徴。気さくでおおらかな性格で、一人称が「ボク」など中性的な雰囲気がある。丈槍由紀たち学園生活部がやってくるまでは喜来比嘉子や光里晶とともに自堕落な日々を送っていた。 しかし由紀たちの懸命さに心を打たれかれらの正体を探るべく「トーコゼミ」を開講する。
喜来 比嘉子 (きらい ひかこ)
聖イシドロス大学工学部に所属する女子大学生。構内では「穏健派」とサークルの一員として活動している。黒髪ボブヘアが特徴。他のサークル会員である出口桐子や光里晶に比べると無口で物静かだが、構内の非常用電源と地下食料庫を発見した功労者でもある。桐子と晶同様自堕落に暮らしていたが、丈槍由紀たち学園生活部の登場により気を引き締める。 工作や修理が得意。
光里 晶 (ひかりざと あき)
聖イシドロス大学の文系の学部に所属する女子大学生。構内では「穏健派」とサークルの一員として活動している。明るいオレンジ色の髪を巻いてポニーテールにし、リボンでまとめている。髪色は染髪なのか、生え際が黒くなっているのが特徴。社交的で他人に気を遣う性格で、大学に現れた丈槍由紀たち学園生活部が打ち解けやすいようため口で話すよう提案する。 出口桐子と喜来比嘉子同様自堕落に暮らしていたが、学園生活部の面々と出会い、彼女らとともにかれらの情報を集める活動を始める。怖いものが苦手。
稜河原 理瀬
聖イシドロス大学文化人類学部に所属する女子大学生。異変後の生存者だが主に図書館で過ごし、光里晶には図書館の「ヌシ」と呼ばれている。肩につかない長さの桃色の髪に、右寄りの位置で分けた長い前髪で、左目が隠れているのが特徴。中性的な口調で話し、本を愛するあまり寝泊りも図書館で行っている変わり者。聖イシドロス大学図書館の本をすべて読むのが夢で、異変により新刊図書が増えなくなったことに少しだけ安堵している。
スミコ
聖イシドロス大学に通う学生。サークルに所属していたが、現在の動向は不明。サークルノートには多くの痕跡があり、文学的な書き込みと「スミコ」の書き方を変えたさまざまな名義を使用していた。ノートの7ページ目から参加しなくなり、光里晶に「布地を探す」と言い残して姿を消した。
理学部の女性 (りがくぶのじょせい)
聖イシドロス大学の理学棟にいる女性。顔は見えないが、腰まで伸ばしたストレートロングヘアにタートルネックのセーターを着て、白衣を羽織っている。異変後理学棟にこもりかれらの研究を行っているが、安全管理に厳しい構内の生存者に知られてはいけないと考え、単独で作業を続けている。偶然付近を訪れた直樹美紀にインターホンを通じて声をかけ、彼女に情報提供をする。 喫煙者で「six star」を愛煙している。
武闘派のほくろの男性 (ぶとうはのほくろのだんせい)
聖イシドロス大学の武闘派に所属する若い男性。明るい色の髪の毛を外にはねさせて革ジャンを羽織り、口元にほくろがあるのが特徴。「穏健派」と会話する際も高圧的で一方的な態度をとり、学園生活部員たちのことも物のように捉えている節がある。
武闘派のカチューシャの女性 (ぶとうはのかちゅーしゃのじょせい)
聖イシドロス大学の武闘派に所属する若い女性。ゆるくウェーヴがかった胸のあたりまで伸ばしたロングヘアを、カチューシャでまとめている。「穏健派」に対しては武闘派のほくろの男性同様高圧的な態度をとり、シノウが「穏健派」と会話することすら嫌がる。
武闘派の帽子の男性 (ぶとうはのぼうしのだんせい)
聖イシドロス大学の武闘派に所属する若い男性。ストレートの長髪を1つに結び、無精ひげを生やしキャップを被っている。構内で不審な行動をとる恵飛須沢胡桃がウィルスに感染しているのではと考え、彼女に襲いかかる。喫煙者。
高上 れん (こうがみ れん)
聖イシドロス大学の武闘派に所属する若い男性。小柄な身体にくせっ毛にそばかす、眼鏡をかけているのが特徴。大学構内に到着直後の学園生活部をボウガンで襲う。シノウと交際しておりかれらを狩る役割を担う彼女を案じているが、狩りの実力は彼女に劣る。体調が好ましくない状態にある。
シノウ
聖イシドロス大学の武闘派に所属する若い女性。切りそろえた前髪に、腰まで伸ばしたロングヘアを右側でサイドテールにし巻いている。おとなしい雰囲気だが高い狩りの実力を誇り、アイスピック1本で多数のかれらを倒すほどの力を持っている。高上れんと交際しており、よくお腹をさするしぐさをしている。
リーダー
異変後、ショッピングモール「リバーシティ・トロン」内で生き残った11名を束ねている若い男性。祠堂圭の憧れの人でもある。前髪を斜めに分け、長めの髪の毛を外にはねさせている。居住区の5階を生存者たちとともに住みやすいように改造し、作業は男女分業にするなどのルールを作った。明るく親しみやすい雰囲気で、探索中も皆が喜ぶものを積極的に探すなどの人柄から、圭以外にも慕われていた。
DJ (でぃーじぇい)
「巡ヶ丘ワンワンワン放送局」を名乗り、巡ヶ丘市のどこかからAMラジオ放送を行っている若い女性。ボブヘアに派手な服装と、耳に付けた無数のピアスが特徴。充実した設備の放送局で生存者と連絡を取るため、音楽と明るいトークで番組を盛り上げていたが、時折咳き込んでいるなど体調面に不安が見られる。
太郎丸 (たろうまる)
異変後、丈槍由紀が発見した迷い犬。毛並みもよく、一見元気な様子だった。しかし首にかれらに噛まれたと思われる傷があり、不安視した佐倉慈が預かった。その後やはりウィルス感染が発覚し、慈は由紀に「飼い主が見つかった」と伝え校外に戻したが、また私立巡ヶ丘学院高校へ戻ってきてしまう。名は由紀が名付けた。
集団・組織
学園生活部 (がくえんせいかつぶ)
若狭悠里が部長を務める、私立巡ヶ丘学院高校にある部活動のこと。顧問は佐倉慈。異変直後「自分たちは避難生活ではなく、部活動の合宿として学校で暮らしている」という考えのもとに設立された。部の心得として「夜間は単独の行動を慎み、常に複数で行動する」「互いに助け合い支え合い楽しい学園生活を送る」などのさまざまな決め事がある。 夜間の校舎を歩く「肝試し」、節電のための電気停止時に行う「キャンプ」、ショッピングモール「リバーシティ・トロン」まで足を伸ばす「遠足」などさまざまな部活動を行った。部室は生徒会室を使用している。
サークル
出口桐子が代表を務める、聖イシドロス大学「穏健派」グループが集まるサークルのことで、事実上「穏健派」と同義の集団。名称候補には「自堕落同好会」「くっちゃ寝友の会」などもあったが、却下された結果特定の名は付けず「サークル」とのみ呼ばれている。部室内には多数のゲーム機や漫画、DVDなどがあり、遊ぶ設備は非常に充実している。 桐子たちはそれを活かして「24時間耐久ゲーム会」「24時間耐久映画鑑賞」「24時間耐久アイスクリーム」などをして活動していた。
武闘派 (ぶとうは)
異変後、聖イシドロス大学を規律第一で仕切り始めた集団。かれらと戦う力を持つ人間を集め、ボウガンなどの武器も所持している。外出後は身体検査を行っており、外出者を室内で下着姿にして怪我がないのを確認後、同性のメンバーが徹底的に調べる入念なチェックがある。「穏健派」のことはよく思っておらず、見下した態度をとる。
場所
私立巡ヶ丘学院高校 (しりつめぐりがおかがくいんこうこう)
巡ヶ丘市に位置し安藤丈児が校長を務める、丈槍由紀たちが通う私立高校。1987年に設立された学校で「自主自律」を教育理念に掲げている。学校を社会の縮図として捉えており、生徒たちに幅広い体験を行ってもらうことを目的にさまざまな設備を取り揃えている。設備内容は菜園、浄水施設、発電設備と多岐に渡り、自給自足をはじめとするさまざまな仕事を営むことができる。
菜園 (さいえん)
私立巡ヶ丘学院高校の設備の1つ。校舎の屋上とグラウンドの2か所に設置されており、私立巡ヶ丘学院高校はその他に校外にも契約農場を所持している。主に課外講座や園芸部の部活動で使用されており、収穫した食料は生徒たちの食用のみならず校外でも販売されていた。学園生活部は屋上の菜園を利用しており、重要な食料源となっている。
リバーシティ・トロン (りばーしてぃとろん)
直樹美紀が暮らしていたショッピングモールのこと。全6フロアで構成されており、地下1階は食料品。1階はフードコート・広場・ステージ。2階はアクセサリー・服飾品・高級品。3階は女性服・子供服。4階は紳士服。5階は寝具・本・電化製品売り場となっている。異変後は美紀を含め11名が避難していたが、丈槍由紀たちが訪れた際にはもう美紀しか生活していなかった。
聖イシドロス大学 (せいいしどろすだいがく)
職員用緊急避難マニュアルの「拠点一覧」にあった大学のこと。丈槍由紀たち学園生活部は、マニュアルと地図をもとにここへ「進学」する道を選び出発した。私立巡ヶ丘学院高校同様、校内には避難生活用の十分な設備があり現在は安全といえる。しかし異変直後は電気等が発見されておらず、感染も続いたため多数の学生が亡くなりかれらと化した。 その後、生存のため規律第一で校内を仕切り始めた武闘派と、それに賛同しなかった「穏健派」の2派閥に別れ避難生活を送っている。
その他キーワード
かれら
異変後、ウィルス感染によりゾンビのような姿となった生物のこと。生存者を無差別に襲い、噛みつくことで感染を拡大させ仲間に変えてしまう。個々の動きは鈍く、頭部を破壊するなどの手段で活動を停止させ、倒すことができる。感染対象は哺乳類のみで、鳥類には感染しない。音と光に反応し近づいていく習性があり、階段は苦手で、よく燃えるため炎には弱いなどの特徴がある。
職員用緊急避難マニュアル (しょくいんようきんきゅうひなんまにゅある)
佐倉慈が私立巡ヶ丘学院高校の別の教師から受け取った、緊急事態発生後、校内での避難生活を送る際のマニュアルのこと。「校長及びその代理より指示があった場合」「A-1警報の発令時」「外部よりの連絡が途絶し10日以上が経過した場合」のみに開封する決まりになっていたため、慈は異変時まで内容を知らなかった。異変後の対応指示や感染症の詳細、校舎全図、緊急連絡先等の記載がある。 学園生活部は職員用緊急避難マニュアル入手後、緊急連絡先から次に向かう場所を選ぶ相談をした。コミックス3巻の巻末に詳しい内容が掲載されている。
部活動日誌 (ぶかつどうにっし)
佐倉慈が執筆した、学園生活部の様子を記録したノートのこと。表紙とノート内に私立巡ヶ丘学院高校の校章があしらわれたB5サイズのノートで、中は縦書き12行となっている。異変後、校内が多少落ち着いてきた頃に執筆が開始され、異変当日の様子や、慈の苦悩が綴られている。コミックス4巻の巻末に詳しい内容が掲載されている。
電波受信記録 vol.29 (でんぱじゅしんきろく ぼりゅーむにじゅうきゅう)
聖イシドロス大学情報生化学部の青襲椎子が、電波の受信記録を記録したノートのこと。表紙に飾り枠のついた、横書き30行のノートとなっている。中には祠堂圭や「巡ヶ丘ワンワンワン放送局」のDJと思われる人物が行った放送、ランダル・コーポレーションの求人放送などを聞き取った記録が残っている。コミックス6巻の巻末に詳しい内容が掲載されている。
サークルノート
聖イシドロス大学「穏健派」のサークルに所属する4名が記載したノートのこと。表紙に聖イシドロス大学の校章があしらわれたA4サイズのリングノートで、中は方眼。ゴム紐で留められるようになっているのが特徴。サークルの活動記録というよりも、4名が好きな場所に好きなことを書き、時折お互いの質問に答える、といった形式をとっている。 スミコはこの中で多くの書き込みを残しているものの、その後姿を消している。コミックス7巻の巻末に詳しい内容が掲載されている。
ダリオマン
丈槍由紀がよく話題にするヒーローキャラクターのこと。胸にアルファベットの「D」のマークが入った戦闘服にマントをまとった、痩せた男性のような姿をしている。敵の「目玉壊すマン」と戦っている最中に異変が起きたため、由紀はその後の展開を知らずにいる。出口桐子は内容を知っており、その話題で盛り上がることもある。
クレジット
- 原作
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海法紀光(ニトロプラス)