あらすじ
第1巻
高校入学早々、吉岡ゆいこは酷い風邪を引いたせいで1週間欠席してしまった。その際に電話をくれたクラス委員の松原の声に、ゆいこは胸の高鳴りを感じる。ゆいこはこのまま休み続けると、クラスで浮いた存在になってしまうと無理矢理登校するものの、無理がたたって廊下で倒れてしまう。そんなゆいこに手を差し伸べる松原だったが、彼の頭部は茶色の紙袋で覆われており、顔が見えなかった。松原はなぜ紙袋をかぶっているのかを説明する事なく、ゆいこを保健室へと連れていき、やさしく介抱する。(第1話「松原くん」、第2話「約束」)
雨の日の朝、ゆいこは偶然にも登校中の松原といっしょになる。紙袋が濡れないのかと内心心配するゆいこだったが、松原がかぶっている紙袋は、はっ水加工が施されていた。ぎこちなく歩いているゆいこと松原の姿を、加賀谷優一は少し離れた場所から複雑な心中で見守る。(第3話「いつまで」)
ゆいこが購買部で最後の一つになったメロンパンを買おうしていたところ、同じくメロンパンを狙っていた優一と手が重なってしまう。優一は松原といっしょにいた女子だとすぐに気づき、ゆいこは思わず笑顔になる。しかし次の瞬間に優一はゆいこに対し、「どうせ自分を通して松原がなぜ紙袋をかぶっているのか知りたいのだろうけど、自分は絶対教えない」と冷たく言い放す。(第4話「牽制」)
なぜ紙袋をかぶっているのかを質問しないゆいこに対し、西園あきは苛立ちを覚える。あきは自分が直接聞くといって、松原に直球の質問を投げかけるが、優一が失礼な奴だと一触即発の状態に陥り、ゆいこは焦る。その後、ゆいこ達のクラスは体育の時間を使ってスポーツテストが実施された。球技が苦手なゆいこに対し、松原は丁寧なアドバイスを送る。そこでゆいこはあきの態度を詫び、松原も優一がなぜ熱くなってしまったのかを語る。(第5話「衝突」、第6話「友達だから」)
堅物の生徒会長として有名な兵頭誠は、松原が学校の風紀を乱していると、わざわざゆいこ達のクラスに乗り込んで来た。松原に対して兵頭は紙袋を取るように命ずるが、松原は頑として紙袋を外そうとしない。(第7話「兵頭誠」)
第2巻
兵頭誠に紙袋を注意される松原だったが、松原は自分の主張を曲げず、絶対に外す事はなかった。そんな中、吉岡ゆいこは兵頭と会話をしている松原の声がいつもより微妙に震えている事に気づく。そしてゆいこは思わず兵頭の腕を摑み、「松原は優しい人だから、これ以上責めないでほしい」と懇願する。(第8話「やさしいひと」、第9話「隠さないと」)
朝、ゆいこの自宅まで迎えに来た西園あきは、ゆいこの兄の吉岡恭士郎と顔を合わせる。恭士郎は、最近ゆいこが妙に身だしなみを気にするようになった事を、あきに相談する。恭士郎に対して密かな思いを寄せるあきは、何気ない雑談をしているだけで穏やかな気持ちになっていく。(第10話「夏の始まり」)
松原は自分の感情を隠しているつもりだったが、先日兵頭から責められた際、動揺した気持ちをゆいこに悟られてしまった事を気にしていた。その一方で、松原は少し嬉しかったと、自分の胸の内を加賀谷優一に語る。(第11話「隠せない」)
校門の前で、生徒会役員達による服装チェックが実施されていた。兵頭と顔を合わせて青ざめるゆいこだったが、一方の兵頭はゆいこを意識して顔を真っ赤にしてしまう。それを生徒会役員の瀬島涼一と青山雪に目撃され、兵頭に対してゆいこが好きなのではないかと質問責めにする。兵頭はゆいこを気に入っている事は認めたものの、ゆいこには嫌われているだろうと自信なさそうに答える。(第12話「仲良くなりたい」、第13話「違うんです」)
ゆいこが兵頭と会話をしているところを目撃した松原は、ゆいこが責められているのではないかと心配すると同時に、何やら複雑な気持ちを抱いたと優一に相談をする。それに対して優一は、松原がゆいこに恋をしているとすぐに理解したが、松原自身は気づいていない。そこで優一は松原に対し、ゆいこを昼食に誘ってみてはどうかと提案する。(第14話「知りたい」)
第3巻
松原は吉岡ゆいこを誘い、昼食を共にする。そこでお互いの家族について話をするなど二人は親睦を深めていく。会話の中で、松原はどうして紙袋をかぶっているのか知りたいかとゆいこに問うと、ゆいこは話したくなったらでいいと、深く追求しない。一方、兵頭誠はゆいこと話をしようと、ゆいこの教室を訪れていた。教室へ戻ったゆいこは自分が不在中に兵頭が訪ねて来たと西園あきから聞き、兵頭がいると思われる生徒会室へと向かう。(第15話「ランチ」、第16話「落ちる」、第17話「訪問」、第18話「誤解」)
松原がかぼちゃ好きだと知ったゆいこは、休日に料理上手な兄の吉岡恭士郎にかぼちゃ料理を習う事にした。一方の松原は、新しい紙袋にこれまでにはない微妙な表情を描いていた。そして休み明け、ゆいこは松原のために作ったかぼちゃの煮物を学校に持って行くが、クラスメイトの女子が華やかなラッピングをしたお菓子を、好きな人に渡そうかと悩んでる場面に遭遇。自分のかぼちゃの煮物が酷く地味に感じてしまったゆいこは、松原が喜ぶのかどうか不安を覚えるが、あきの後押しもあり、勇気を出して松原に渡しに向かう。一方、ゆいこと松原が親しそうに会話をしている姿を目撃した兵頭はショックを受け、まるで抜け殻のようになっていた。そんな兵頭に対し、瀬島涼一は物事はもっとシンプルに考えるべきだとアドバイスを送る。(第19話「それぞれの休日」、第20話「君のため」、第21話「信じてあげる」、第22話「伝わりますか」、第23話「大真面目」)
登場人物・キャラクター
吉岡 ゆいこ (よしおか ゆいこ)
高校1年生の女子。入学してから1週間、酷い風邪を引いてしまい、欠席していた。休んでいるあいだに電話をくれた松原の声にときめきを感じるものの、初対面時に松原の頭は紙袋で覆われている事に驚く。しかし松原の声とやさしい人柄に触れ、次第に恋心を抱くようになった。西園あきからは「ゆっこ」と呼ばれている。おとなしすぎず、元気いっぱいというほどでもない、バランスの取れた性格の持ち主。
松原 (まつばら)
高校1年生の男子。クラス委員長を務める。感情を悟られないため、つねに茶色の紙袋をかぶり、食事をする時も外さない。紙袋には目と口だけの簡単な表情が描かれており、「喜怒哀楽」の4種が存在している。必要に応じて紙袋をチェンジするが、日常生活では「楽」の笑顔を愛用している。紙袋ははっ水加工がされており、少しの雨では濡れる事はない。 紙袋をかぶるようになったのは過去の出来事が原因で、詳しい経緯は加賀谷優一しか知らない。非常にいい声をしており、吉岡ゆいこが松原に興味を抱くきっかけになった。優一からは「松っちゃん」と呼ばれている。紙袋ではなく、自分の内面を知りたいと接っして来るゆいこに対し、少しずつ恋心を抱くようになっていくが、松原本人はその自覚がない。
加賀谷 優一 (かがや ゆういち)
高校1年生の男子。松原とは中学校時代からの親友。松原からは「ゆう」と呼ばれている。松原が紙袋をかぶっている理由を知る人物。松原に対して興味本位で近寄って来る人達が許せず、最初は吉岡ゆいこに対しても辛辣に当たっていた。しかしゆいこが紙袋ではなく、松原の内面を知ろうとしている姿を見て態度を改めた。松原がゆいこに恋心を抱いている事は知っているが、松原がしっかり自覚するまで口を出すつもりはない。 基本的に思った事は包み隠さず口にするため、同じタイプの西園あきとは不仲。メロンパンが好物。
西園 あき (にしぞの あき)
高校1年生の女子。吉岡ゆいことは中学時代からの親友。ゆいこが松原に興味を抱いている事を知り、陰ながら応援している。思った事は何でも口にするタイプのため、同じタイプの加賀谷優一とはそりが合わない。ゆいこの兄の吉岡恭士郎に密かに片思いをしている。
兵頭 誠 (ひょうどう まこと)
吉岡ゆいこらが通う高校の生徒会長を務める3年生の男子。非常にまじめで堅物な人物として知られており、風紀を乱すようなふざけた行いをする生徒を嫌っている。つねに紙袋をかぶっている松原が気に入らない。一方、思わず笑ってしまうほど純粋な性格で、特に女性には奥手で、身体が少し触れられただけで赤面してしまう。そのため、一部生徒のあいだでは「激ピュア会長」とも呼ばれている。 松原がかぶっている紙袋について詰問した際に知り合ったゆいこに、不器用ながらも片思いしている。
瀬島 涼一 (せじま りょういち)
吉岡ゆいこらが通う高校の副生徒会長を務める3年生の男子。青山雪と共に「激ピュア会長を愛でる会」を秘密裏に設立しており、兵頭誠の言動を見守り、こっそり愛でている。基本的に兵頭はかわいがりとからかいの対象ではあるものの、本気で悩んでいる時にはアドバイスを送るなど、友情を育んでいる。
青山 雪 (あおやま ゆき)
吉岡ゆいこらが通う高校の生徒会書記を務める2年生の女子。瀬島涼一と共に「激ピュア会長を愛でる会」を秘密裏に設立しており、兵頭誠の言動を見守り、こっそり愛でている。クールで感情を表に出さないものの、おもしろいもの好きで、非常にノリがいい。
吉岡 恭士郎 (よしおか きょうしろう)
吉岡ゆいこの実兄の大学生。見た目も言動もゆいこによく似ている。やや抜けている天然ボケな性格の持ち主。毎朝自宅にゆいこを迎えに来る西園あきとは顔見知りで、雑談をする間柄。その一方であきから好意を寄せられている事には気づいていない。料理上手なため、ゆいこのお弁当はすべて吉岡恭士郎が作っている。