妄想から実体化した恋人とのラブコメディ
本作は「架空の恋人」をテーマに、妄想の創作に没頭する少年、裕里と、彼が生み出した謎の少女、未散の波乱に満ちた日常を描いたラブコメディ。物語は主に裕里、未散、そして風子の三人を中心に、高校生たちの三角関係が展開されるが、最大の特徴はヒロインの一人、未散が「裕里の妄想から実体化した少女」である点にある。裕里の理想を詰め込んだ美少女、未散は、彼への強い愛情ゆえに現実世界で思わぬトラブルを巻き起こす。理想と現実の狭間(はざま)で翻弄される裕里の青春と恋の行方が、本作の大きな見どころとなっている。
現実と妄想が交錯する究極の恋物語
転校を繰り返し、孤独な日々を送ってきた裕里には、5歳の頃から10年間続けてきた秘密の趣味がある。それは、自ら考えたオリジナルキャラクター「ミチル」の妄想を、イラストや小説として創作することだった。裕里は玉響市で一人暮らしを始め、玉響西高校に入学してからは友人にも恵まれていた。そんな中、現実の美少女であこがれの先輩、風子に恋をした裕里は、これまで周囲に隠してきた創作物の数々を捨てる決意をする。その決心の証として、妄想ノートを供養しようと神社を訪れたが、バッグの中のノートはすべて消えていた。驚く裕里の前に、彼が創り上げてきたとおりの姿で実体化したミチルが現れる。こうして、「蘭未散」と名乗るミチルと裕里のあいだで、現実とフィクションが交錯する究極の恋物語が幕を開ける。
裕里の葛藤が生み出した三角関係
裕里の創作から実体化したミチルは、「蘭未散」と名乗り、彼との同居生活を始める。やがて彼女はクラスメイトとして玉響西高校に通うようになる。未散の目的は、裕里が創作をやめるきっかけとなった「犯人」、つまり彼が恋心を抱く現実の女性を見つけ出すことだった。裕里の設定どおり、「目からビームを出す」などの超人的な能力を持つ未散は、時に暴走し、高校生活に大きな波乱を巻き起こす。その一方で裕里は、一見順調そうに見えて人知れずスランプに悩む風子と距離を縮めていき、現実の風子への恋心と、フィクションから生まれた未散への思いのあいだで葛藤するようになる。複雑な三角関係に揺れる裕里の選択が、それぞれの運命を左右し、感動的な結末へと向かっていく。
登場人物・キャラクター
葉村 裕里 (はむら ゆうり)
玉響西高校に通う1年生の男子。文芸部に所属している。愛称は「ユーリ」で、年齢は15歳。幼少期から母親の仕事の都合で転居を繰り返し、孤独を紛らわすために架空の彼女「ミチル」を創り出した。以来、5歳の頃から10年間にわたり創作や妄想を続け、自室は大量のイラストや設定ノートで埋め尽くされている。高校入学後、風子への恋をきっかけに「ミチル」からの卒業を決意するが、直後に彼女が実体化し、日常が一変する。風子目当てで入部した女子ばかりの文芸部では、文才も画力も皆無という醜態を晒(さら)すが、「ミチル」の創作に関してだけは神懸かり的な才能を発揮する。誕生日は12月1日、身長は167センチ。好きなものはオムライスとエビチリで、嫌いなものは酔いやすい乗り物とピーマン。
蘭 未散 (あららぎ みちる)
裕里が趣味の創作活動で生み出したオリジナルの美少女キャラクター。通称「ミチル」。黒のロングヘアに、左右それぞれに×と〇の形をしたヘアアクセサリーをつけている。裕里の「理想の女性像」をすべて詰め込んだ存在で、可憐(かれん)な容姿と一途な性格を兼ね備えている。表情豊かで感受性が強く、些細なことにも感動する。清楚でおとなしそうに見えるが、実は芯が強く好奇心旺盛な一面と共に、世間知らずで少し天然なところもある。もともとは裕里の妄想の産物に過ぎなかったが、創作趣味をやめる決意をした際、神社で設定ノートを焚き上げようとした瞬間に実体化した。その後は現実の女子高生として振る舞い、のちに裕里に無断で玉響西高校へ転入してくる。誕生日は12月1日、身長は157センチ。好きなものはチョコレートで、嫌いなものはクモ。
久住 風子 (くずみ ふうこ)
玉響西高校に通う2年生の女子。文芸部に所属している。裕里の一つ年上の先輩で、副部長を務めている。愛称は「フーコ」。黄土色のショートヘアが特徴的な美少女で、つねに冷静かつ控えめな性格だが、どこか儚(はかな)げな雰囲気を漂わせている。15歳の時に文芸誌の新人賞を受賞した天才少女作家でもあり、デビュー作『Q・シルエット』は10万部のベストセラーとなった。その美貌も相まってメディアからも注目を集める存在。校内では女子生徒からの人気が高く、教師たちにも将来を嘱望されているため、強い発言力と影響力を持っている。電子書籍の利便性を理解しつつも、紙の本に特別な思い入れを抱いている。誕生日は9月15日、身長は164センチ。一番好きなジャンルはラブストーリーで、好きなものは紅茶と読書と紙の本。嫌いなものは運動と悪口。
書誌情報
この彼女はフィクションです。 全4巻 講談社〈講談社コミックス〉
第1巻
(2011-06-17発行、978-4063845129)
第2巻
(2011-08-17発行、978-4063845419)
第3巻
(2011-10-17発行、978-4063845716)
第4巻
(2011-11-17発行、978-4063845907)







