50歳の年齢差を超えた絆
ボーイッシュな外見とは対照的に、内面的には夢見る乙女のような妙子と、おしゃれでエネルギッシュな老女、トラ。50歳という年齢差がありながらも、二人は男に捨てられたという共通の経験を持ち、その男性を待ち続けるという感情的な共鳴を通じて、固い絆で結ばれていく。他人からはその執念を嘲笑され、呆れられることもあるが、時に互いを叱咤激励し、慰め合いながら、ゆっくりと前進しようとする二人の姿が描かれる。
捨てられた男を待ち続ける二人の物語
妙子とトラは、50歳という年齢差を超えて、共に一人の男性を思い続け、待ち続ける人生を選んでいた。ある日、居酒屋での出会いをきっかけに、互いにとってかけがえのない存在であることを認識し、尊重し合う関係へと発展していく。二人はそれぞれの過去や男性に対する感情に共感しながらも、妙子はトラがくも膜下出血で倒れた際、「死なないで」と泣き崩れるほどの強い依存心を抱くようになる。忘れられない思い人に対する複雑な感情が交錯する展開が、本作のストーリーに大きな波を生み出している。
妙子の最終的な選択
妙子は、3年間音信不通だった彼氏、はゆるが戻ってきたあと、彼から瀬戸内海の島への移住を提案される。しかし、妙子が「行かない」と伝えても、はゆるはその意向を無視し続けるため、彼女は苛立ちを感じる一方で、はゆるについていきたいという気持ちも抱き、心が揺れ動いている。20年間待ち続けていた男性が亡くなったあと、自由に生きることを選び、好きなことをするようになったトラの姿を目の当たりにした妙子が、物語の後半でどのような選択をするのかが大きな見どころとなっている。
登場人物・キャラクター
嵯峨根 妙子 (さがね たえこ)
アラサーの女性。明るい茶髪をショートカットにしている。服のお直しを行う「NEUE」と、バー「まばたき」でアルバイトをしている。「はゆる」という彼氏がいるが、3年間も連絡が途絶えており、帰りを待つ自分を内心で哀れに思いながら日々を過ごしている。居酒屋「猫や」で偶然となりに座ったトラの話に反論したことがきっかけで、彼女との交流が始まった。恋愛に積極的なトラの姿を眩しい思いで見ていたが、実は彼女もまた逃げた男を待ち続けていることを知り、共感を覚えている。一度ははゆるのことを忘れ、引っ越しを考えたこともあるが、そのタイミングではゆるが自宅を訪れたため、別れられなくなる。友人のみちるからは「たえピ」と呼ばれている。
古谷 トラ (ふるや とら)
派手好きでおしゃべり好きな老女。長い白髪を高い位置でお団子にまとめ、眼鏡をかけている。40年間連れ添った男に逃げられたことを居酒屋「猫や」で愚痴り続けており、「世界一不幸な悲劇のヒロイン」が口癖。しかし、偶然となり合わせた妙子も似たような境遇だと知ってからは、「世界一」とは言わなくなった。次の恋を模索しているものの、逃げた男の帰りを待ち続けている。男が恋敵だった絹といっしょに生活したあとに亡くなったことを知った際には、一人で墓参りに行く勇気が出ず、妙子を誘った。孤独死して腐乱して発見されることを恐れ、妙子に家の合鍵を預けている。
書誌情報
そしてヒロインはいなくなった 全4巻 双葉社〈ジュールコミックス〉
第1巻
(2024-05-16発行、978-4575339444)
第2巻
(2024-06-17発行、978-4575339468)
第3巻
(2024-10-17発行、978-4575339567)
第4巻
(2025-04-17発行、978-4575339734)







