勇者が現世に戻ってからのドタバタラブコメ
本作は異世界召喚ものではあるが、異世界での冒険そのものではなく、冒険を終えて現世に戻ってきてからに焦点を当てた物語となっている。かつて勇者として戦い、異世界を救った日向が使命を終えて無事に現世へと帰還。日向は平穏な日々を取り戻すが、異世界での冒険に生きがいを感じ、現在の平凡な日常には何か物足りなさを覚えていた。そんな中、異世界で自分に対して重い愛を注ぐマリアベルが現世に転移してくる。そして彼女との生活を通して、異世界での冒険とは一味違った、主に性的な面で刺激にあふれる日々を送ることとなる。
マリアベルにとっての「異世界」である現世への戸惑い
マリアベルは元々異世界の住人ということもあり、現世の常識に疎い。そのため日常生活はもちろん、学校や同人誌即売会など、現世のさまざまな文化に触れていくにつれ、マリアベルは何かと日向に助けてもらうことになる。そんな二人のほっこりする様子も、本作の大きな魅力となっている。一方で、現世においては特異な外見であるにもかかわらず、根が素直ということもあり、マリアベルは周囲の人々にもすんなり受け入れられ、愛されるようになる。こうして、ダークエルフということで異世界では迫害に近い目に遭ってきたマリアベルにとって、現世は愛すべき第二の故郷となっていく。
日向とマリアベルの恋の行方
実は日向に思いを寄せる相手は、マリアベルだけではない。たとえば日向のクラスメイトである持田咲良は、同人作家として活躍しているが若干自己肯定感が低く、思いを寄せる日向に今一つ積極的に出られずにいる。ほかにも、娘と同様に闇を感じるほどに母娘愛が重く、子離れできないマリアベルの母親、ミラも登場する。彼女たちにかかわることで、日向とマリアベルの日常は、さまざまなトラブルに見舞われることとなる。同時に、これらの出来事を通じて、日向とマリアベルの関係性もゆっくりとだが着実に変化していく。
登場人物・キャラクター
春原 日向 (すのはら ひなた)
とある高校に通う男子。年齢は16歳。学生としてごく平凡な日々を送っているが、小さい頃に事故で両親を亡くして親戚の家に引き取られ、高校進学を機に一人暮らしを始めたという経緯がある。そのため、料理など日常の家事は身につけている。ちなみに、両親が亡くなった事故は自分のせいで起こったと考えており、その一件において重いトラウマを背負っている。実はつい最近まで、勇者として異世界に召喚され、ダークエルフのマリアベル、神官のセシル、亜人族のメイと共に魔王を討ち滅ぼしたが、使命を終えたことで現在の世界に帰還してきた。その後、自分を追って現世にやってきたマリアベルと同棲生活を始めることとなる。マリアベルを相手にした時のみならず、何かとラッキースケベな事態を巻き起こしがちだが、温厚で誠実な性格のため、基本的にはそれ以上の展開に発展することはない。異世界では「ヒナタ」と呼ばれていたこともあり、マリアベルには今でもそう呼ばれている。
マリアベル
ダークエルフの女性。黒く美しいロングヘアで胸が大きく、長身の美女。ダークエルフの特徴である褐色の肌に長い耳を持つ。異世界で勇者である「ヒナタ」こと日向と共に、魔王討伐に尽力した。その後、元の世界に帰った日向を追って、自らの力で現世に転移。日向と再会してからは、彼と同棲生活を開始する。素直で一途(いちず)な性格といえば聞こえはいいが、実は闇を感じさせるほどに愛が重い。初対面で日向に一目惚(ぼ)れして一方的に永遠の愛を誓ったが、日向からはやんわりと拒否されている。ただ、日向はその愛の重さに困惑しているだけで内心ではマリアベルに好意を抱いているため、基本的に彼女のすべてを受け入れている。元々異世界では魔法を得意としており、本来複数人がかりで行なう転移の魔法陣の術を、短期間でたった一人で成功させるなど、並外れた実力の持ち主。またその魔法の力は、現世に来てからも変わらず行使することができる。愛称は「ベル」。
書誌情報
ちょっとだけ愛が重いダークエルフが異世界から追いかけてきた 2巻 竹書房〈バンブーコミックス〉
第1巻
(2022-11-07発行、 978-4801978881)
第2巻
(2023-07-06発行、 978-4801980853)