金色姫妖蟲譚 霞の竜笛

金色姫妖蟲譚 霞の竜笛

蚕影家の金色姫の間が朽ち果てた時、封印された蚕の化け物「妖蠱」が解き放たれる。狙われた蚕影家の少女を守る霞之竜笛の精霊と妖蠱の戦いを描いている。蚕影山大権現金色姫という伝説にまつわる怪奇和風ファンタジー。「ハロウィン」1991年10月号、1993年8月号に掲載された作品。

正式名称
金色姫妖蟲譚 霞の竜笛
ふりがな
こんじきひめようこたん かすみのりゅうてき
作者
ジャンル
エルフ・オーク
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概要・あらすじ

蚕影恭子の家は古い茅葺きの家で、四方を変わった絵柄の欄間で飾る部屋があった。恭子の祖父は死ぬまで「あの家を壊してはいかん」と言っていたが、恭子の両親は祖父が亡くなると直ぐに家を取り壊してしまう。ある日、家を解体したら出てきた「霞之竜笛」という横笛を業者から受け取った恭子は、「霞之召喚法」と書いてある楽譜に従って横笛を吹いてみる。

そこに現れたのは能舞のような出で立ちをした美青年で、霞之竜笛の精霊「和丸」と名乗り、いきなり恭子にキスを迫ってくるのだった。

登場人物・キャラクター

蚕影 恭子 (こかげ きょうこ)

甘木高校のブラスバンド同好会に所属する女子高生。肝っ玉が据わっており、少々はねっ返りな性格。秘かに吉川に恋している。蚕影山大権現金色姫の伝説にまつわる家系の家柄で、「霞之竜笛」を吹いたところ、竜笛の精霊である和丸を召喚してしまう。和丸には「主様」と呼ばれている。

和丸 (ふくらまる)

能舞のような出で立ちの美青年。霞之竜笛の精霊で竜笛を吹くと現れる。蚕影恭子からの用命を済ませば笛に帰って行く。笛の精霊との誓約では、主との口吸いが決まりごとになっており、口吸いを嫌がる恭子や聖に少し寂しさを覚えている。人に乗り移ることが可能で、恭子を守るため吉川によく乗り移る。

吉川 (よしかわ)

蚕影恭子が通う甘木高校の古典の教師。ブラスバンド同好会の顧問を務めている。長髪に丸メガネをかけた、一風変わった若い男性。学校行事では決まって変な提案をし、ブラスバンド同好会の仕事を増やしている。恭子を守るために和丸に乗り移られることが多く、そのため学校内では吉川が化け物を退治したという伝説が、まことしやかに語り継がれている。

高畑 (たかはた)

蚕影恭子が通う甘木高校の同級生。ブラスバンド同好会に所属している。ポニーテールでメガネをかけた女の子で、恭子や小板橋と仲が良い。母親の葬式の際、母親の死体が顔を剥がされた状態であり、高畑の母の顔が虫のようなものにくっついた奇妙な生物を目撃したことを、恭子に打ち明ける。

高畑の母 (たかはたのはは)

高畑の母親で、上品な中年女性。蚕影恭子をおびき寄せようとしている蚕の化け物「妖蠱」に、顔を剥がされて殺された。その際、妖蠱は高畑の母の顔を自分の体に付け、高畑に見せつけるかのように家を徘徊した後に去って行った。

小板橋

蚕影恭子が通う高校の同級生。ブラスバンド同好会に所属している。ロングヘアに切れ長の目をした女の子。恭子と高畑と仲が良い。手の形をした蚕の化け物「妖蠱」に襲われ殺されそうになる。

(ひじり)

徳のある聖で、年の頃は50~60歳位。昔、蚕の化け物「妖蠱」を金色姫の間に封印した。封印が解かれた時のために笛を残したことが、蚕影恭子の家の古い書物に記されている。霞之竜笛の精である和丸の主であり、彼を「笛」ではなく「人」として扱っていたので、口吸いを極力避けていた。和丸には「聖様」と呼ばれていた。

諸来丸 (もろらいまる)

「朧の天鼓」に宿る鼓の精霊。和丸と同じく能舞のような出で立ちの美青年。主との誓約は叩かれることで、叩かれることに喜びを感じている。額に霊印を押され、金色蛇三郎に操られている。蚕影山大権現の秘事に詳しい蛇三郎よると、戦闘力は和丸より上とされている。

金色 蛇三郎 (こんじき へびさぶろう)

甘木高校の用務員として採用された中年男性。用務員とは仮の姿で、真の姿は蚕影山大権現の秘事に詳しい者。美しい精霊たちを集めて「聖御囃子教団(せいおはやしきょうだん)」を作って大金を儲け、精霊たちと甘い生活を送ることを夢見ている。ダンディなルックスから、女子生徒たちの注目の的となっている。

イベント・出来事

蚕影山大権現金色姫 (こかげさんだいごんげんこんじきひめ)

日本の蚕発生譚の伝説。金色姫という天竺のお姫様が日本に漂流して来て、蚕に生まれ変わったというもの。蚕影山神社は金色姫を祭る蚕の神社であり、蚕影恭子の家にあった古い書物によると、蚕影家の金色姫の間にある欄干に、徳のある聖が蚕の化け物である「妖蠱」を封じ込めたことが記されている。

その他キーワード

金色姫の間 (こんじきひめのま)

蚕影家にある4枚の欄干を四方に飾る部屋。この欄干は金色姫が生前継母から受けた4つの迫害を現しており、この4つの苦難が虫の一生に現れ、蚕は成長時に四度の休眠をすることが表現されている。蚕影恭子の家にあった古い書物によると、この欄干に蚕の化け物「妖蠱」が封印されていることが記されている。恭子の祖父が亡くなり、家を取り壊すことになったため、金色姫の間の封印が解かれてしまう。

霞之竜笛 (かすみのりゅうてき)

徳のある聖が残した笛。聖は蚕影家の金色姫の間の欄間に、蚕の化け物「妖蠱」を封じ込めたが、封印が解かれた時に妖蠱を退治できるように、笛を残した。その笛を吹くと、霞之竜笛の精霊である和丸が現れ、誓約として笛を吹いた主と口吸いを行い、主の命令に従う。

蚕影山大権現の秘事 (こかげさんだいごんげんのひじ)

蚕影山に伝わる鳴り物に宿る精霊及び「妖蠱」についての事柄。押しなべて鳴り物の精霊が妖蠱を退治するために主のもとに参上すること。鳴り物は竜笛を含め5霊あり、全国に散らばっている。「朧の天鼓」を手に入れ諸来丸を霊印で操る金色蛇三郎が、蚕影山大権現の秘事に精通しており、次は霞之竜笛の和丸を狙っている。

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