姿の見えないカノジョとの出会い
自宅アパートが家事になり、家具付き即日入居可で月8000円という格安物件に飛びついた大学生の野保康久。その部屋で待っていたのは、毎日のように起きるポルターガイスト現象だった。モノが飛び交うだけで実害はないからと無視を決めた野保だったが、ある日、パソコンの電源を切られ、明日提出予定だった書きかけのレポートを消されてしまう。さすがに怒った野保は部屋を飛び出すものの、ふと冷静になった時、その幽霊は自分に気づいて欲しかっただけなのかもと気づく。ホワイトボードとペンを買って部屋に帰った野保は「ボクに用があるならこれに書いて」と伝えると、宙を浮いたホワイトボードに「ありがとう」の文字が。こうして姿の見えないカノジョと野保の不思議な同居生活が始まった。
すれ違いコントのような展開が楽しい、幽霊との異色のラブコメディ
本作は顔も声も知らない幽霊のカノジョと大学生の野保との同居ラブコメディ。幽霊のカノジョは、ホワイトボードで筆談し、野保との会話を成立させる。姿は見えなくても、ホワイトボードに描かれる書き文字や顔文字、モノを動かす動作などで、カノジョのその時の感情をうまく表している。その姿が時に愛らしく、読者に親近感を与える。また、野保の大学の友人や野保のことが好きな女子たち、隣人などが個性的でさらに話を盛り上げていく。オカルトというよりもコメディ要素の強い作品。実体のないカノジョとの生活は、周囲に変な誤解や妄想をさせ、すれ違いコントのような展開がテンポよく繰り広げられる。
お人よしの天然ジゴロ×世話好きでキュートなカノジョ
野保は真面目でお人よし。何気ない振る舞いでいつのまにか女子を虜(とりこ)にしてしまう天然ジゴロ。少しズレていて、何でも言葉通りに受け取り、冗談も通じないことがある。カノジョは野保の部屋の元住民。姿は見えないがモノを動かすことはできる。自分以外の女子が部屋に入ることを嫌い、嫉妬する。わがままなところもあるが、世話好きで思いやりもあるキュートな女性。野保は勝手に通販で買い物をしたり、部屋に入った女性を乱暴な方法で追い出したりするカノジョに手を焼きながらも、自分のために尽くしてくれて、世話を焼いてくれる幽霊のカノジョとしだいに心を通わせていく。
登場人物・キャラクター
野保 康久 (のぼ やすひさ)
大学2年生の男性。お人よしでのんびりした性格をしている。物腰が柔らかく温和で優しいため、女子からモテる。火事で住みかを失い、月8000円という破格のアパートに入居する。その部屋で巻き起こる心霊現象を無視していたが、ある事件をきっかけにその霊と向き合おうとする。実家はお寺で、住職をしている父はお祓(はら)いもできる。時代劇が好きで、暴れん坊将軍より大岡越前派。地元の人からよく「おじいちゃんみたい」と言われていた。平和主義でカノジョと会うまで人とケンカをしたことがなかった。部屋には教科書と仏教の本しかないほど真面目で、友達からノートを貸してと言われることが多い。
カノジョ
野保の住む部屋の元住民。女性のようだが、姿は見えない。また、自分に関する記憶がなく、名前もわからない。伝えたいことはホワイトボードで筆談するが、嬉しいとき、怒っているときなどの感情をホワイトボードとペン一つで、わかりやすく表現する。家事が得意で、掃除、洗濯、料理まで完璧にこなす。しかし、部屋から出ることはできないので、食材は野保に買ってきてもらう。人見知りで、とくに女の子を部屋に入れることを嫌う。部屋にかわいい物を置きたくて、野保のカードで勝手にネット通販してしまったり、怒ると物を投げて癇癪(かんしゃく)を起こしたりするが、素直でかわいいところもある。